<憑依>3日後に憑依される彼女②~迫る運命~

憑依されるまであと2日ー。

けれど、彼女はそのことを知らない。
”自分が2日後に憑依される”などと、
夢にも思っていないー。

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放課後ー
(憑依されるまであと2日)-

「--ふ~5時間目の国語はきつかったな~」
和哉が言うと、愛唯は
「わたしも結構いつも眠くなってるよ~」と
苦笑いしながら言った。

「へ~!杉原さんも眠くなることなんて
 あるんだな~!」
和哉の友人・洋平が笑いながら言う。

「--あるに決まってるじゃない~」
愛唯が笑いながら言う。

「いや、ほら、アイドルはトイレなんかいかない!
 みたいな感じで、
 まじめな杉原さんが眠くなるわけなんかない!
 って感じでさ~」
洋平が言うと、
愛唯は「なぁにそれ」とほほ笑んだ。

「---はは。まぁ6時間目が、
 騒がしい理科の授業で助かったよ」
和哉が言うと、洋平も「そうだな」と呟いた。

「でも、やっぱ、お前ら仲良しでいいよなぁ~」
洋平が、和哉と愛唯を見ながら言う。

洋平にも彼女がいるのだが、
洋平と阿津美は定期的に喧嘩をして
仲直りを繰り返しているー。
それに加えて、洋平の彼女である阿津美は、
清楚な生徒会長風な見た目のわりに
中身がとっても子供っぽく、洋平は
よく困らされているようだ。

「--なんだかんだ言って、阿津美ちゃんと草野くんも
 仲良しじゃない」
愛唯に言われて、
洋平は「まぁ~そうなんだけどさ」と呟いたー

「でも、ほら、2人を見てると、なんかこうさ…
 思っちゃうんだよ…
 杉原さんが欲しいな~、みたいなさ~」
洋平が愛唯を指さしながら言う。

「おぉい!キモイこと言うなよ!」
和哉が苦笑いしながら言うと、
洋平は「冗談だよ冗談!」と苦笑いしながら
自分の座席のほうへと戻っていく。

「まったく~」
和哉が洋平のほうを見ながら呟く。

愛唯も苦笑いしていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

生徒たちが下校して学校が終わるー。

和哉たちの担任の先生が、
生徒の集合写真を見つめているー。

「-------」
担任の先生は、静かにほほ笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・

憑依薬の到着予定日は、2日後ー。
いよいよ、憧れの人生を奪うことができる。

まるで、夢のようだ。

憑依したら何をするか。
そんなことばかり、最近は考えてしまう。

まずは胸を揉むか?
いいや、スカートの感覚を楽しむか?
髪でいろいろと遊ぶのもいい。

2日後は土曜日だから、
学校での憑依ではなくなるが、
ある意味ちょうどいいかもしれない。

憑依してから月曜日までに
女の子の身体に慣れておいて、
月曜日からは、女子高生として
エンジョイしたいー

この身体との付き合いもあと2日。
生まれてから、ずっとこの身体で生きてきたが、
もううんざりだ。
女として、快感を味わいたいー

憑依に成功したら、
色々な表情を浮かべてー
色々な格好をしてー
存分に楽しむんだー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー
(憑依されるまであと1日)

金曜日ということもあり、
登校してくる生徒たちには
なんとなくいつもと違う活気があった。

それもそのはず、
明日から2連休になるから、
気持ちがだいぶ楽なのだ。

「--へっへっへ!いいだろ~!」
親友の洋平が笑いながら言う。

遊園地のチケットを2枚、和哉に見せながら。

「明日、阿津美と一緒に遊園地に行くんだぜ~!」
洋平の言葉に、
和哉が「へ~」と塩対応をする。

洋平はなぜかいつも、阿津美とデートに行く前
必ず和哉に自慢してくる。
”わざわざ報告しなくていいよ”と思うのだが
なぜかいつも嬉しそうに報告してくる洋平。

「--ふふふ、楽しんできてね!」
和哉の彼女・愛唯が言う。

「おう!もちろんだぜ!」
洋平はそう言うと、さらに続ける。

「--遊園地に行くと、阿津美、すっごく可愛いんだぜ~!
 なんて言ったって、あの見た目で
 子供のようにはしゃぐからさ~っ可愛くてかわいくて」
洋平が一人、ノロけだしたー。

「ふふ、阿津美ちゃんのこと、本当に大好きなんだね~」
愛唯が言うと、
洋平は「おう!」と言いながら
嬉しそうに鼻歌を歌って、自分の座席の方に向かっていく。

「---はは、すごくご機嫌だな」
和哉が笑う。

阿津美は別のクラスだから、和哉はあまり話したことが
なかったが、確かに洋平の言う通り
清楚な見た目だがとても子供っぽい感じだ。
落ち着いた感じの愛唯とはだいぶ、性格が違う。

「-ーーわたしたちは来週の土曜日、楽しもうね」
愛唯がほほ笑むー。

和哉と愛唯は”来週の土曜日”に
デートの約束をしているー。

けれど、その”来週の土曜日の約束”が
訪れないことを、愛唯はまだ知らないー。

昼休みー
オカルト同好会の平五郎が、
トイレで愛唯のことを妄想しながら
一人、エッチなことをしていたー

「ぐへへ…ぐへへへへへ…」
トイレで奇妙な笑い声を浮かべる平五郎。

「-ふへ…ふへへへへ…」
愛唯にもしも憑依できたら何をしようー。
愛唯に憑依できたらーーー
いっぱいいっぱいエッチなことをしたいー

愛唯が絶対に着ないような服を着て
あんなことや、こんなことを楽しみたいー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「---それにしても、文化祭が
 近づいてくると愛唯に告白されたときの
 こと思い出すなぁ~」

昼休みー
間近に迫った文化祭の話をしていた
和哉と愛唯。

和哉が文化祭実行委員の仕事をしていた時に
愛唯と親しくなっていったときのことを思い出す。

「-ふふふ…わたしも自分でよく勇気出して
 告白できたな~って今でも思っちゃう」
愛唯が笑うー。

愛唯は、恋愛には奥手で、
友達は多く、男子からの人気も高かったが
彼氏はこれまでに一度もいなかった。

そんな愛唯が、和哉に惹かれて
和哉に自分から告白したー。

愛唯を”雲の上の存在”だと思っていたのに
急に告白された和哉がびっくりしたのはもちろん、
自分から告白する、なんてことをした
愛唯自身もびっくりしていたー。

「---」
和哉が愛唯のほうを見る。

愛唯が、にっこりとほほ笑む。

「今年も、来年も、その先も…
 仲良くしていこうね」
愛唯の言葉に、
和哉は頷いた。

こんな幸せがずっと続けばいいー。
愛唯はそんな風に思う。

けれどー
その願いは、悲しい結末を迎えることになるー。

まるで、この時の会話が
最後の別れのフラグになるかのようにー。

愛唯と和哉が、直接話すのはー
これが”最後”になるー…
愛唯は、そんなことも知らずに
「あ、わたし、先生に提出しないといけないものがあるんだった!」と
和哉の前から走り去っていったー。

そんな愛唯の後ろ姿を見つめながら
和哉は優しく微笑んだー。

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放課後ー

愛唯は、今年も文化祭の実行委員を務めていて
今日は放課後に話し合いがあるー

「---はは、今日は一人で帰りか~!
 いつもイチャイチャして帰ってるのに~」
親友の洋平が笑いながら言う。

「ーー愛唯は文化祭の実行委員だからな」
和哉が言うと、洋平はニヤニヤしながら
「俺はイチャイチャしながら帰るぜ!」と笑った。

真面目そうな女子高生・阿津美がやってくる。

「洋平く~ん!おっまたせ~!」
見た目とは全然違う、子供のような仕草で
ぴょんぴょん飛び跳ねながら阿津美がやってくるー。

そんな光景を苦笑いしながら見つめる和哉。

「--じゃあな」

「おう」

洋平と阿津美が、イチャイチャしながら帰っていくー。

和哉は、自販機でお茶を購入して、
そのまま一人、歩き出す。

何気ない金曜日ー。
いつものように、普通に終わる金曜日ー

和哉の彼女・愛唯は
文化祭の話を終えて、
下校を始める

けれど
”普通”に過ごせる最後の日であることを
彼女は、まだ知らないー

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夜ー

和哉は、愛唯とLINEでやり取りをしていた。
話題はごくごく普通の話題。
特に、特別な話はない。

迫りつつある文化祭の話をしたり
お互いの趣味の話をしたり
学校の噂話をしたり。

和哉は、ネットを見ながら
愛唯からのLINEが届くと
それに返事をする。

愛唯は、勉強したり、
本を読んだりしながら
和哉からの連絡が来ると
それに返事をするー。

”じゃあ、また…。”
夜も遅くなり、和哉は
愛唯にそうメッセージを送る。

”-うん!また明日”
愛唯から返事が届く。

「----…」
和哉は、そんなメッセージを見つめながら
なんだか、少し寂しい気持ちになったー。

これから起きることをなんとなく察知しているのだろうか。

”ありがとう”
と、和哉がメッセージを送る。

そのありがとうにどんな意味が込められていたのかは
和哉自身にしかわからない。

”え?お礼言われるようなことしたかなぁ…?
 どういたしましてー”

と返事を送ってくる愛唯。

これが、和哉と愛唯の最後のやり取り。

運命の日はー
やってくる。

憑依される、当日がー
やってくるー

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土曜日ー
(憑依されるまであと0日)

”昨日も言ったケド、今日は遊園地デートだぜ~”
親友の洋平が嬉しそうに和哉にLINEを送ってくる。

「---はは」
和哉は苦笑いする。
さっそく来た。
洋平お得意のイチャイチャ自慢だ。

”ま~た、のろけ写真、俺に送ってくるつもりか?”
和哉はそう返事をして、立ち上がったー。

「---ふ~さて、そろそろ出かける準備をするかな」
和哉とのLINEのやり取りを終えた洋平は、
彼女の阿津美との遊園地デートの支度をするー。

そしてーー
ラベルのないペットボトルを手に取ると、
静かにほほ笑んだ。
中には、薄い色の液体が入っているー。

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ーーーー♪~~~

憑依薬が届いた。

ついにー
ついに、憑依できる。

「--ありがとうございます」
配達員の人に頭を下げる。

そして、自分の部屋に駆け込む。

”さよなら、俺の身体”

思い切って憑依薬を飲み干したー。

急激に力が抜けていくような感覚がするー
今までに感じたことのない感覚ー
これが、憑依薬かーーー。

女になったあとにすることを頭に描きながらー
彼は、身体から飛び出したー
幽体離脱したのだ。

そしてー

その瞬間はやってきたー。

その、直前まで、自分が身体を乗っ取られるなんて、
夢にも思っていない彼女ー。

「--ひっ!?」
ビクンと身体を震わせるー。

「あ…あ…え…???」
自分に何が起きたのかわからないー

分からないままー
彼女の意識は闇へと消えたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ついに憑依されてしまった彼女…!
果たして、どうなってしまうのでしょうか~

ちなみに昨日の①のあとがきで
「憑依されるのは最終話」と書きましたが、
②の最後に、ギリギリ憑依のところまで
入れることができました~!

続きはまた明日デスー

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