彼女が憑依されたのに、
まったく関心を示さない勝夫ー。
そんな彼に対して、
優衣に憑依したクラスメイトが
とった手段は…?
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「うふふふふふふふふふ~」
夜ー
部屋で優衣は、自分の髪を染めていたー
「くくくく~!」
優衣が笑いながら、
勝夫の驚く様子を想像するー
優衣を、めっちゃくちゃに変えてやるー
そして、
お前を驚かせてやるー。
優衣に憑依している哲也は笑いながら
そう呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
勝夫が登校すると、優衣が
まるでギャルのようなメイクになっていたー
金髪に、いかにもギャルな制服の着方、
メイクもギャルメイクになっているー
「うっふふふ~
勝夫~
あたしぃ~!こんなになっちゃったぁ~~
ウケる~☆」
哲也がわざと優衣の身体で挑発を続けるー
「---ウケるな」
勝夫が、失笑して座席に座る。
”完全にバカにされているー”
優衣に憑依している哲也はそう思ったー
そしてー
”優衣ちゃんがどうなろうと構わねぇ…
お前のその、すかした表情を
必ず滅茶苦茶にしてやるぜ”
優衣が歯ぎしりをしながら
勝夫を見つめるー。
「--ねぇ、あたし、達郎くんと
今からここでエッチさせられちゃうんだ~!」
優衣が笑いながら言う。
どよめくクラスメイト。
「--あたし~停学に、、
あ、いや、退学になっちゃうかもぉ~!
えへへへへへへへ~♡」
優衣がゲラゲラと笑う。
「--さ、達郎、ここで一緒に狂っちゃお!」
優衣が笑いながら達郎に近づく。
「い、、いいのかよ…?」
達郎の方が気圧されているー
しかし、優衣が
「あたしとエッチしたいだろ!??」と叫ぶと、
達郎はすぐに頷いた。
教室で服を脱ぎだす優衣。
クラスメイトたちは騒然としている。
勝夫が優衣のほうを見つめる。
だがー
その表情は無表情だー。
「---ほ~ら!」
優衣が、教室の窓の外に脱いだ制服を投げるー
こんなことしたら、優衣が大変なことになるだろうが、
それでも構わないー
この前、停学になっているから
今度は退学かもしれない。
優衣に憑依した哲也はそう思いながら
服を脱いでいき、
さらにはスカートも脱いで、窓の外に放り投げた。
下着姿になってっポーズを決める優衣。
それでも、勝夫は表情一つ変えない。
「----………」
達郎は顔を真っ赤にして優衣を見ている。
「---っ!少しぐらい反応しろよ!」
優衣が怒りの形相で叫ぶー。
「…っ、、くそっ!馬鹿にしやがって!」
優衣はどよめくクラスメイトたちを無視して、
下着にも手をかけたー
「---あっはははははははは!
ほら!お前がこの女を助けようとしないから
この女、教室で生まれたままの姿に
なっちゃったぞぉ~!」
優衣が全ての衣類を脱ぎ捨てて
両手で万歳をする。
「---そっか」
勝夫はそれだけ呟くと
興味なさそうにスマホをいじりはじめた。
「---なめてんのか!!!!」
優衣が大声で叫んだ。
「なめてないよ。
ただ、あきれてるだけさ」
勝夫の言葉に、
優衣は、激しく怒り狂うー
ここまでしても、こいつは何もー。
最初はちょっとした嫉妬だったー。
優衣を壊すようなことをするつもりはなかった。
だがー
哲也は怒りのあまり、暴走したー
もう、優衣がどうなったってかまわない。
「あぁぁぁああああ!くそっ!」
優衣はそう叫ぶと、達郎のほうを見る。
「達郎!あたしのここに
ぜんぶ出して!」
優衣が自分の身体を指さしながら叫ぶ。
「--はっ!?」
達郎が唖然としている。
「あいつの目の前で公開エッチしてやるのよ!
あたしの中に全部出して!」
クラスメイトたちは完全に困惑している。
達郎も引いているー
「---あぁぁぁぁ、もう!」
優衣が叫ぶ。
なにもかもが思い通りにいかないー
勝夫は、無反応のまま。
「---むかつくううううううううう!」
優衣はそう叫ぶと、
近くの生徒のペンを無理やり奪って
自分の身体に滅茶苦茶に落書きし始めた。
「ほら!お前の彼女、ぶっ壊しちゃうよ!
ほら!ほら!ほらぁああああ!」
優衣が、狂った声で叫ぶー
”おらああああああ!狼狽えろ!
リアクションを起こせぇぇぇ”
優衣に憑依した哲也が叫ぶー
「---」
勝夫は、あきれた表情で優衣のほうを見るだけ。
まるで相手にされていない。
自分の身体にペンで下ネタを書きまくっていく優衣。
周囲は、あきれ果てているー。
「--……いいのか!?おい!?!?
お前の女、こんなことさせられてるぞ!!!いいのか!?」
黒板のほうに歩いて行って
黒板をペロペロ舐め始める優衣ー
はぁはぁと息を荒げながら
狂った行動を繰り返す優衣。
「--もうそろそろ授業はじまるぞ」
勝夫はそう言い放った。
あまりのリアクションのなさに唖然とする優衣ー
そこに先生が駆けつけて
全裸で体中に卑猥な言葉を書きまくった
優衣の姿を見つけて唖然としたーーー
優衣は、退学になってしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー。
帰宅した勝夫はため息をつきながら
机に座る。
机の上には写真が飾られているー。
笑顔の勝夫と、
勝夫より少し年下に見える
可愛らしい少女が写っているー。
「-----…」
勝夫は目を閉じるー
”お兄ちゃんーーー
わたし、、死にたくないよー”
妹の言葉が、頭の中に浮かんでくるー。
”大丈夫…必ず、必ず助かるから”
勝夫は、目に涙をためながら叫んだー。
妹はーー
とても難しい病気に侵されていた-
明るく、元気な性格の妹がー
どんどん、どんどん、弱っていくー
みるみる弱っていくー
毎日のように学校が終わると
勝夫は妹がいる病院へと向かうー
何度も何度も、
泣きながら祈ったー
”妹を助けてください”
とー。
でもー
妹は、死んだ-
勝夫は悟った。
”何をしても無駄なことがこの世にはある”と。
”奇跡なんて起こらない”とー。
死んだ妹の表情は
苦痛に歪んでいたー
それを見た時ー
勝夫は、すべての感情を失ったー
兄妹仲の良かった勝夫にとっては
想像以上のショックだったー。
・・・・・・・・
「----」
勝夫は目を開くー
妹の写真を見つめるのをやめて、
試験勉強を始めるー。
もうすぐ期末テストがあるー
そのための勉強だ。
この世界は、冷たいー
奇跡なんて、起こらないー。
絆は、引き裂かれー
無情にも、消えていく。
何かに期待するから
傷つき、心が壊れる。
だったらー。
だったら最初から期待しなければいい。
何に対してもー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
登校した勝夫は、優衣の机を見つめるー
優衣はもう、学校にはいない。
優衣があんな風にされてしまったのは
自分のせいだろうか?
いいや、違う。
どんなに助けようとしても、
優衣は助からなかっただろう。
何か反応を示せば、
優衣に憑依していた男子は
より調子に乗って
エスカレートしていく…
遅かれ早かれ、同じ結果に
なっていたはずだー
「--助けられないものは、助けられない」
勝夫はそう呟くと、
優衣のことなど忘れて、授業の準備を始めるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「--ひーっ…ふーっ…はー…」
退学になった優衣は、
髪もぼさぼさのまま、
見る影もない狂気的な容姿で
怒りを爆発させていたー
部屋でひたすら暴れまくる優衣。
勝夫の態度が気に入らないー
やつから彼女を奪って
滅茶苦茶にしてやったー。
だがー。
それなのにー
やつに負けた気がする。
勝夫は終始冷静で、
何をしても取り乱す様子はない。
「----…くそっ!
必ずお前を、あっと言わせてやる!」
優衣はボロボロの容姿のまま
家の外に向かう。
「ゆ、、優衣…!」
母親が優衣の豹変に困り果てている。
「そんな格好でどこにいくの!?」
ボサボサの頭に、だらしない格好の優衣を
呼び止める母親。
「--うるせぇよ」
優衣はそれだけ言うと、
勝夫の家に向かう。
♪~
勝夫の家のインターホンを鳴らす。
ちょうど勝夫が出てきた。
だらしない格好のままやってきた優衣を見ても
勝夫はノーリアクションだった。
「--あそびにきたよぉ」
優衣がクスクス笑いながら言うと、
勝夫は「そ。じゃあ、僕の部屋に」と言って
そのまま部屋に通してくれた。
”おいおい、自分の”元”彼女が
こんなだらしない格好で遊びに来ても
無反応かよ…”
そんな風に思いながら部屋に上がる。
部屋に上がると勝夫は
オレンジジュースとお菓子を用意してくれた。
「あのさぁ」
優衣はイライラした様子で言う。
「なんでさ、そんな冷静なんだよ?
自分の彼女が憑依されて
別れを告げられて
目の前で乱れて
退学にもなって、
しかも、家にまで遊びに来ている。
なんかさ、こう、コメントとか
リアクションはないの?」
優衣が言う。
だが、勝夫は「ないよ」と即答した。
「--くそっ!馬鹿にしてるのか!」
優衣が声を荒げた。
彼女に憑依している状態と言うのは、
いわば彼女を人質に取っているような状態でもある。
圧倒的に優衣が有利なはずだった。
しかしー
勝夫のあまりの反応のなさに
自分が追い詰められている気がする。
「---お?」
優衣が、勝夫の机の上に置かれている写真に
目をやる。
その写真には勝夫とその妹が写っているー
妹は既にーー死んでいる。
「--お~!お前、もしかして浮気してたのか?
なんだこの可愛い子!?誰だ~?」
優衣が笑いながら言う。
「--あ~そっかそっか!
お前、実は浮気してたんだな~!
だから優衣ちゃんがこうして俺に憑依されても
ノーリアクションだったってわけだ
なるほどなるほど~!
いやぁ、しかしかわいい子だな!?
誰だこの子~?
今度はこの子に憑依してエッチなことしまくって…」
ガン!
机に座っていた勝夫が机を思いっきり叩いたー
「え」
優衣の表情から笑みが消えるー
「---おい!」
勝夫が突然声を荒げた。
「--!?」
勝夫が優衣の胸倉をつかんで乱暴に引き寄せるー
「ひっ!?」
優衣は思わず驚いてしまうー
”お兄ちゃんーーー
わたし、、死にたくないよー”
勝夫は、妹の言葉を思い出すー
「---二度と…
二度と妹にふざけたこと言うんじゃねぇぞ」
勝夫が低い声で、今にも優衣を八つ裂きにしそうな
恐ろしい形相で、優衣を睨んだー
「は、、、はひっ…」
優衣は、びびってしまったー
勝夫が優衣を突き飛ばして
そのまま机に座る。
優衣は、あまりの驚きに
その場に漏らしてしまったー
「あ…あ…」
「---」
勝夫が振り返る。
「---汚いなぁ…」
勝夫はいつも通りの勝夫に戻っていた。
漏らした優衣に驚く様子もなく
淡々と掃除をする。
「でー?何の用でここに来たんだ?」
勝夫が言う。
もう、いつも通り冷静だー
優衣は、「あ、、、いえ、、、大丈夫…
も、、もう、優衣ちゃんから出ていこうかな~って
報告しにきただけだから」
と、呟いてそのまま外に飛び出したー
”勝夫はーー
何も感じていないんじゃなくてーー
過去の何かが原因でーー
感情を失っているか、
押し殺しているかーー”
優衣に憑依している哲也は
そんな風に思ったー
あの机に置かれていた写真はーーー”妹”-?
でも、勝夫の家の表札には妹の名前はなかったー
まさかー
妹は既に亡くなっているー?
”妹の死”が勝夫をあんなに無感情にしたのだとー
優衣に憑依している哲也は悟った。
そしてー
自分が開けてはならないパンドラの箱を
開けかけてしまったことを悟り、
恐怖するのだったー。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
優衣は、元に戻ったー
哲也は優衣から抜け出そうとしたが
既に自分の身体が死んでいたために
抜け出せず、
そのまま優衣として暮らしているー
優衣の記憶を読み取り、
優衣になりきっているー
高校は退学になってしまったが
別の高校になんとか入って
再び高校生活を送っているー
勝夫とも、再び彼女として付き合い始めたー
勝夫のことが、気になるようになってしまったー
あれからも勝夫は常に冷めているー
だがー
妹のことで、激怒した勝夫は
この世の何よりも恐ろしかった。
「優衣…」
勝夫は、優衣をとても大事にしてくれているー
リアクションは薄いけれどー
「----…」
勝夫は、優衣が元に戻ったと思っているー
いや…
本当は分かっているのかもしれないー
優衣は憑依されたままだと。
けれど、それを一切表情や口に出すことはない。
”不思議なやつだな…
でも、なんだか……”
いつかー
優衣として、勝夫を笑わせて見せるー
優衣に憑依して優衣として生きていくことになってしまった
哲也は、そう決意したー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
彼女が憑依されてもノーリアクションな
男子高校生のお話でした~!
ここまで薄い反応をされると
確かにびっくりしちゃいそうですネ!
お読み下さりありがとうございました~!
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