<憑依>無謀な暴走は他人の身体で①~暴走~

暴走ー。

スリルを追求する男は、
事故で大けがを負ってしまう。

自業自得ー。

けれど、男は、自分の起こした事故から”学んだ”

”無謀な暴走は、他人の身体で”すればいい、と。

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バイクで、爆走する男がいたー。

穂本 遼(ほもと りょう)-。

彼は、小さいころから、バイクが好きだった。
バイクへの憧れ。

だが、いつからだっただろうか。
彼は、”危険な方向”へと、進んでいくー

バイクによる暴走ー。

高校に入学した彼は
次第に道を踏み外していき、
地元のワルとつるむようになっていた。

そしてー
荒んだ彼の心とバイクに対する思いはー
彼を”暴走”へと走らせた。

バイクによる危険運転ー

仲間たちと一緒にバイクで
夜の峠を爆走したり、
時には、街中を爆走したりー
それを繰り返す日々ー。

いつ吹っ飛ぶかもわからない
この”スリル”
彼はゾクゾクしながら
バイクで爆走を続けていた。

けれどー
命は1個しかない。
身体は1個しかない。

バイクで暴走しながらも
”本当に危険”なことはしないようにしていた。
命がけの暴走はしないようにしていたのだー。

しかしー

「---!!」
一瞬のミスでーーー

彼は、転倒したー
猛スピードを出していたバイクから投げ出されて
激しく吹き飛ぶー。

遼の身体はーーー
動かなくなってしまったー

・・・・・・・・・・・・

病院。

「おう!遼!」
ワル仲間の若田(わかた)が、病院に見舞いに来る。

「----…おう、若田」
遼は、元気そうに振舞いながらも落ち込んでいた。

足も動かないー
手も満足に動かないー

あれだけの事故で、
死ななかったのは幸運だが、
それでももう、バイクに乗ることもできないし
日常生活を送ることもできない。

自業自得と言えばそれまでだし
事実、自分で勝手に暴走していたのだから、
自業自得なのだろう。

「---しっかし、派手にやらかしたなぁ」
赤い髪の若田が、笑いながら言う。

遼のことを笑っているわけではない。
遼が落ち込んでいるだろうと考え、
若田なりに気を遣っているのだった。

「--みんなも、心配してるぜ!
 早く元気になれよ」
若田が言うと、
遼は苦笑いしたー

「---…あぁ」

そう答える遼ー。

だが、もうー
みんなと一緒に走ることもできないー

来る日もー
来る日もー
病院のベットの上で寝ている毎日ー

遼は、”俺に生きている価値なんて
あるのか”と、思い始めていた。

足は相変わらず動かない。

”もう一生このままかもしれない”と
担当医の先生は言った。

「---くそっ」
遼は病室で一人、悔しそうに
歯ぎしりをするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな遼もーーー
無事に退院したー

手はなんとか動くようになったが
足は動かないー

遼は、車いす生活になってしまったー。

「-------」
絶望的な表情を浮かべる遼。

自分の生きがいであったバイクに
乗ることは、もう、できないー

「----もう一度、バイクに乗りたいか?」

「--!?」
突然、背後から声がして、
驚いて振り返る遼。

そこにはー
自分と同じように、車いすのようなものに乗った男がいた。

「あ、、あんたは!?」
遼が言うと、
車いすの男は、それを無視して続けた。

「もう一度、バイクに乗りたいだろう?」
車いすの男の言葉に、
遼は頷く。

「ーーーふふふ、まぁ、そうだろうな」
車いすの男はそう言うと、
遼に何かを差し出した。

「-ーーー受け取れ」
男は、ビンに入った液体のようなものを
遼に手渡す。

「これは?」
遼はそれを受け取りながら
車いすの男に尋ねた。

「--”憑依薬”」
車いすの男はそう言うと、
笑みを浮かべる。

「-憑依薬!?」
遼が驚きながら聞き返すと、
”この薬を飲むと、他人の身体に憑依できるんだ”
ーと、そう男は説明した。

「わしもな…
 昔、お前と同じようにバイクで大事故を起こした。

 そして、学んだんだ。
 暴走は自分の身体でするもんじゃない、とな。

 その憑依薬を使えば、他人の身体を乗っ取ることができる。
 その力を使えばー
 ”他人の身体”で暴走することができる。

 これが何を意味するか、わかるか?」

車いすの男に言われて
遼は思わず笑みを浮かべたー

「---そうか…
 他人の身体なら、、、」

そうー
他人の身体なら
どんな”暴走”をしたって関係ないー

どうせ、自分の身体じゃないのだからー。

そうー
死と隣合わせのような
超危険な暴走であったとしてもー

「そうだ。さすがは…」
そこまで言いかけて車いすの男は口を閉ざす。

「その憑依薬はお前にやろう。
 わしの50年の研究の成果だ」
車いすの男はそう言うと、
立ち去って行こうとする。

「-ちょ!、こんなすげぇもん俺に!?
 ってか、これ本物?」

遼は、車いすの男に向かって叫ぶ。

冷静になってみれば「憑依薬」なんて
存在するはずがー

「あ、あんたの名は!?」
遼が叫ぶ。

だがー
車いすの男はーー
もう、”いなかった”

「---!?!?(消えた!?)」
遼は驚きながらも、手渡された
憑依薬を見つめるのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後ー

「---元気ないけど、大丈夫?」
眼鏡の女子高生が、部活帰りの友達とコンビニで
買い物をしながら呟く

「他の高校にいるわたしの友達なんだけどさ~」
ポニーテールの女子高生が、ため息をつきながら答える。

「なんか、昨日、バイクで事故起こしたんだって」
そう呟く女子高生。

「---えええ…?その子大丈夫なの?」
一緒にいた眼鏡をかけた女子高生が心配そうに言うと、
ポニーテールの女子高生が答える。

「ーーう~ん…なんか、足はやばそうだったかなぁ…」
悲しそうに呟く。

「--あの子、バイクの免許も持ってなかったはずだし…
 そんな子じゃないんだけどなぁ~…」
ポニーテールの子が、そう呟いていると、
突然、隣にいたはずの眼鏡の女子高生が
いなくなっていることに気づいた。

「あれ?」
ポニーテールの子が振り向くと、
コンビニの駐車場に止めてあったバイクに
友達がまたがっていることに気づくー。

「---え!?!?な、なにしてるの?」
ポニーテールの子が叫ぶー

眼鏡の女子高生がニヤニヤしながら言う

「血がたぎってきたぁ…」
ヘルメットもせずに、そのままバイクを走らせる
眼鏡の女子高生ー

「--え!?!?ちょっと!!!えっ!?!?」
コンビニに一人残された
ポニーテールの女子高生は、唖然とすることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・

「ひゃっは~~~~~!」
スカートと制服、ツインテールの髪が
風でなびくー

嬉しそうに爆走する
女子高生ー

周囲の人たちが驚いて彼女のほうを見るー

大人しそうな高校生が、
ヘルメットもせずに爆走しているのだー

しかも、かなり危険な運転だ。

「ふふふふふふふ…
 あぁぁぁぁぁぁ…このスピード感!
 ゾクゾクするねぇ!」

可愛い声を歪ませながら
女子高生が叫ぶー

まさに”命がけ”だー。

このスリルは、最高だー
ゾクゾクが止まらないー

しかも、ゾクゾクしているのは
自分の身体ーではなく、
このJKの身体だー。

そう、彼女は”憑依”されていた。

憑依薬を手に入れた遼は、
無差別にその辺の人間に憑依して
バイクで爆走していたー。

これは、”学び”
自分の身体で爆走するのはリスクが高い。
だったら。他人の身体で暴走すればいいー
他人の身体であれば、
万が一バイクごと吹っ飛んでも問題はないし、
警察に捕まっても問題はないー

まさにー
”無敵”

「--くっふふふふふ…
 わたしは、無敵の女よ~~~!!!」

大声で叫んでみるー。
周囲が”やべぇやつ”を見る目で、少女を見つめるー

”どうせ暴走するなら、
 普段暴走しなさそうなやつで、暴走したほうが
 さらに興奮するしな”

遼は、女子高生の身体でそう思いながら
スピードをガンガン出して爆走するー

既に、通報もされていそうだが
そんなことは関係ないー

どうせ、自分の身体じゃないんだからー。

「ははははははは!このスリル!」

少女の身体で暴走を続けるー。
ゾクゾクがたまらない。

生きるか、死ぬかの
このスピード感。
ちょっと、間違えばあの世行きだ。

自分の身体であったならば、
ここまでの暴走をすることはできないー。

どんな無謀な暴走野郎でも、
派手に事故れば、その先に待っているのは
”死”であることを理解しているからだ。

だがーー
自分の身体でなければー。
どんなことだってできる。

「ひゃっは~~~~~~!!!」
可愛らしい顔を限界まで
歪めて、少女は交差点で派手にバイクを傾けてカーブをしたーー

しかしー
ちょうど、その道路は工事が終わったばかりで
路面がぬれていたー

「---!!!」

バイクがバランスを崩しーーー
ものすごい勢いで少女は放り出されるー
ヘルメットもしていない少女は
放り出された瞬間に、笑っていた。

「あ~~~~あ!
 事故っちゃったぁ~♡」
嬉しそうに叫ぶ少女ー

地面に叩きつけられてー
交通量の多い交差点でーー
大惨事が起きたー

・・・・・・・・・・・・・

「------ふふふふ」
自分の身体に戻った遼は笑う。

あの”車いすの男”が
誰だか知らないが、
他人に憑依できる力は、
素晴らしい力だー。

こんな力を貰えるのならば
こんな身体になっても良かったのかもしれない。

車いす姿になった自分を見つめながら
遼は笑うー

他人を乗っ取って
何も気にすることなく、存分に暴走できるー。

万が一事故を起こしても
自分の身体じゃないから関係ない。

万が一警察に捕まっても
自分の身体じゃないから関係ないー

しかもーーー
絶対にバイクで暴走しそうにない
やつに憑依して、
そういうことをさせると、さらにゾクゾクする。

たまらないーーー

「くくくく…まだまだ暴走するかぁ」
遼はそう呟くと、再び憑依能力を使った。

・・・・・・・・・・・

「----あはは…あは♡ あははははははは♡」
バニーガールの格好で爆走している女がいたー

遼に憑依されたOLだー。

遼のゾクゾクの追求はさらにエスカレートしたー

バイクで暴走する前に
乗っ取った女の身体でバニーガールの衣装を買って
それを着てバイクに乗ったのだー

街を爆走するバニーガール。
想像しただけで遼はゾクゾクしたー。

それを憑依の力で実際にやらせているーー

「あははははは
 この女、、何してるんだよぉぉぉ」

そう呟きながらミラーで自分の顔を確認するー

信じられないほどエッチな顔だー

「あはははははは!」
バニーガールの格好で爆走していると
身体にあたる風の感覚が全然違うー

”ひひひひ、もっともっと無謀な暴走を…”

バニーガール姿のOLが狂った笑みを浮かべるー

しばらく暴走すると、
遼は”この女にも飽きたな”と内心で思うと、
バイクから手を離して
万歳をしたー

「バニーガールあた~っく♡」

嬉しそうに叫ぶと、
目の前の建物にブレーキを踏むことなく、
バイクごと激突したーーー

「は~~♡ は~~~♡」
ボロボロになりながら
ニヤニヤしているOL。

身体がもう動かないー
力が抜けていくー

”えへへへへ…
 他人の身体なら、事故ったあとの
 弱ってく経験までできるぜ…”

やがて、
バニーガール姿のOLはニヤニヤしたまま
動かなくなったー

「---ははははははは!
 暴走、、暴走、、暴走だぁ!」

自分の身体に戻った遼は、
また、次の身体を使って暴走しようと画策し始めたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依能力でとにかく暴走するお話デス~!

私の中で一度没になったアイデアだったのですが、
元々書く予定だったお話が諸事情で中止になったので、
こっちを書くことにしました~!

続きは明日デス~!

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