自らの肉体を捨てて、
電子の世界に飛び込んだ彼は、
自由を謳歌する。
その先に待ち受けていたものは…?
---------------—-
「はっ♡ はぁっ♡ はぁぁ♡」
女子大生・凛子のイヤらしい声が
部屋中に響き渡っているー
憑依された翌日ー
凛子は、憑依された直後にネットで
注文したものが到着すると、
さっそく、行動を始めたー。
猫耳メイド姿になって、
胸を触りながら顔を真っ赤にしている凛子ー
凛子は今、啓介という男に憑依されているー
大学生の啓介は、
自分の肉体を捨てて、自らを電子化することに成功したー
そして、パソコンやスマホなどの電子機器とつながっている
人間に憑依することができるようになったのだったー。
凛子は、啓介の高校時代の同級生。
特に親しくはなく、暗い啓介のことを
いつもからかっていた。
その仕返しとして、憑依されているのだー
♪~~~
凛子のスマホが鳴っているー
昨日からー
憑依されてから連絡がつかない凛子を
友達が心配しているのだー
大学にもバイトにもいかず、
猫耳メイド姿になって喘いでいるなんて
誰も思ってもみないだろう。
「--んっあぁ~♡ ごしゅじんさまぁぁ♡」
啓介のことをご主人様と呼ぶ凛子。
もちろん、本来の凛子はそんなこと言わない。
啓介に憑依された凛子は
今や啓介の操り人形だー
「はぁ~♡ はぁ~♡ あっ~♡」
乱れ切った姿で、ペロペロと床に落ちた
液体を舐める凛子。
「あぅぅぅ♡」
あまりの気持よさに身体がぶるぶると震える。
啓介はー
凛子にこんなことをさせていることに
優越感と快感を覚えていたー
凛子の口から、こんなにイヤらしい声が漏れているー
プライドが高い凛子が、猫耳メイド姿になって
自分に屈しているー。
あの凛子がーー
鏡を見つめる。
こんなに、顔を真っ赤にして
メスみたいに、あんあん喘いでいる。
「くひひひひひっ…」
凛子は思わず口から涎を流しながら笑ったー
クレジットカードで、勝手にエッチな衣装を買ってー
学校もバイトも放り出させて
こんなにエッチなことをさせているー
「あぁぁぁ…俺が支配者だ…!」
凛子は興奮のあまり自分を抱きしめながら叫んだ。
「俺が支配者だぁぁ!はっはぁぁ♡」
そのまま奇妙な笑い声を出しながら凛子は、
購入した大人のおもちゃで身体を刺激する。
「んあぁああああああっ♡」
隣に聞こえるかもしれないー。
でも、そんなの関係ない。
喘げ!
気持よくなれ!
もっとゾクゾクしろ!
狂ってしまえ!
凛子はあまりの興奮に、
激しく身体を震わせながら
力尽きたかのように、
その場であおむけに寝ころんだー。
「は~♡ は~♡ 部屋も滅茶苦茶…♡」
凛子は、そう呟くと、
スマホを手に取ってー
イヤホンをつないだ。
「さ~、このぐらいで十分かなぁ~」
最後に、イヤらしすぎる姿を自撮りして
それを凛子のツイッター上に載せたー
そして、啓介は、凛子の脳から飛び出して
再び、スマホを通じて、電子の世界へと帰っていくー。
最初、電子の世界に飛び込んだ時は、
啓介が作った特製のケーブルが必要だったが
一度電子化していればもう必要ない。
最初は、人間の肉体から、電子データになるために、
特殊な処理が必要だったから、
手間がかかったが、今の自分は”データ”になっているから
もう、そういうものは必要ないのだ。
「あっ…」
凛子が、猫耳メイド姿のまま、
その場に倒れる。
白目を剥いたままピクピクと痙攣している凛子ー
しばらくして、目を覚ました凛子は
自分の状況に愕然として悲鳴を上げたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「---ふ~~~!」
電脳世界に戻った啓介は
のびのびとしていたー
肉体はない。
だが、自我はある。
電子の世界は、ここちが良い。
人間の世界とは、何もかもが違うー。
色々なデータが飛び交っているー
それらデータに耳を傾けることもできるしー
ぼーっと、電子の海を漂うことだって、できる。
「----はぁぁぁぁぁ」
のんびりとする啓介。
この世界には、自分以外の人間は存在しないー
無機質なデータばかり。
だが、それがいい。
ここには余計な争いも存在しない。
データは、嘘をつかない。
最初から、嘘のデータは嘘のままだし、
真実のデータは真実のまま。
入力する人間は嘘をつくが
入力されたデータは嘘をつかないー
「--お?」
啓介はとある反応を察知したー。
ネットニュースの記事だ。
”大学生、変死”
「---はは、俺のことか」
啓介はそのニュースにアクセスする。
言葉では言い表すことのできないような
電子空間を漂いながらー。
啓介の身体は死んだー。
”変死”と表現されているようだ。
まぁ、確かにその通りだ。
啓介には、既に自分の身体が
どうなっているのか確認することは
できなかったが、
中身は空っぽになっているはず。
もしかしたら心臓だけは動いている可能性はあるが、
いずれにせよ、脳死と判断されるだろう。
当たり前だ。
自分のクソみたいな身体には、
もう、”なにも”入っていないのだからー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「~~~~あっ~~~♡!!!!」
ギャルが身体を震わせながら、
潮を吹いているー
「うぁあぁぁっ♡」
啓介が憑依しているのだー。
”あぁ…これがビッチ女の快感か…”
啓介は、ギャル女の身を震わせながら
喜ぶー
半裸状態のまま、パソコンにケーブルをつなぐと、
啓介は、その女の身体から出て、
再び電子の世界へと戻っていくー
”今日は、早めに切り上げないといけないからな”
本当は、せっかく乗っ取った
ギャル女の身体でもっと遊びたかったが
今日は”二度と味わうことのできないお祭り”があるのだ。
このチャンスを逃したら、永遠に味わうことのできないお祭りだ。
自分は、”永遠の生”を手に入れた。
データ化した自分が、ネットを通じて
あらゆる電子世界を移動できる。
”無敵”と言ってもいい。
地球が滅んで、
ネットそのものが全部、失くなってしまわない限り、
自分に、”死”は存在しない。
だから、時間は”無限大”だ。
だがーそれでも、今日のお祭りは
1回しか味わうことができない。
それは、何か。
そう。
”自分の葬式”だー。
啓介は、自分の葬儀が行われる会場の
監視カメラにアクセスしたー
葬儀場の映像が見えるー
”はは…やっぱ、ほとんどいねーや”
啓介は笑った。
啓介の葬儀場には、
ほぼ誰もいなかった。
”ま、そうだろうな”と啓介は思う。
友達なんて必要ないと思ってたし
いじめてくるやつや、
からかってくるやつばかりだった。
自分を心配してくれる人間なんて、いない。
両親ー
親戚の人たちー
そしてー
”あ…”
啓介はふと、監視カメラの映像データを
見ながら、その人物の姿を見つめた。
陣内 春香(じんない はるか)ー。
幼馴染で、唯一啓介を助けてくれていた同級生。
春香も、啓介と同じ大学生だー。
「唐島くん…」
さみしそうに呟く春香。
春香の目から涙がこぼれている。
”--俺のために泣いてくれるなんて…
変な奴”
ひねくれている啓介は
そんな風に思った。
泣く必要なんてないのに。
俺は、ここにいるー
無限の命を手に入れてー!
肉体と言う牢獄から、解放されて!!!
「---わたしね…
唐島君のこと…
好きだったよ」
春香がさみしそうに小声でつぶやいたー
「---!?」
啓介は驚くー
”好き”
え…なに?
あの春香が、
どうしようもない、俺のようなやつを
好きだったというのか?
「--はは、嘘つきやがって~」
啓介は監視カメラの映像を見ながら笑う。
だがー
”待てよ?”
遺体に向かってまで嘘をつく必要はーー
まさか、本当にーーーーー
立ち去って行く春香ー
「---…え!?」
啓介は、唖然としていた。
”ちょっと待ってくれ!!今のはどういう意味だ!”と、
そう伝えたかったー。
だがー、
電子の存在である自分に伝える手段はなかった。
誰かの身体を乗っ取れば伝えられるが
今、この場に、電子機器とつながっている人間はいないー。
ネットに繋がったスピーカーがあれば
そこから声を出すこともできるが、
ネットに繋がったスピーカーが存在していない。
「---……え……」
啓介は唖然とするー。
自分のような人間のことを
好きになってくれるような人がいたのかー?
自分には何もない。
そう思い込んで啓介は肉体を捨てたー。
けれど…
「-----」
監視カメラへの接続をやめて、
電子の世界を漂う啓介ー
”好き?”
LOVEか、
それとも…?
いいや…
あの表情は…
ぷかぷかと電子の海を漂いながら
啓介はずーっと、考えていた。
ネット上のあらゆるデータを分析するー
分析しているのは、
”恋愛”について。
啓介は恋愛経験がない。
だから、葬儀会場での春香の反応も
よくわからなかった。
自分の遺体に向かって”好きだった”とは
どういうことなのだろうー。
ネットの掲示板ー
SNS-
質問サイトー
色々なもののデータを一気に見るー。
電子の存在となった自分にとっては
ネットに書かれた情報は
自分の知識と等しいー
あっという間にそれらのデータを得た啓介は、
”春香は、啓介のことが好きだった”という
結論にたどり着いた。
「--あぁぁぁ…」
啓介は不思議な気持ちになった。
気付けば
膨大な電子の世界で、
春香の写真やSNSを探し漁っていたー。
「----…」
そして、啓介はーー
行動に出た。
春香の家の様子を見つめるー。
ネットに接続された春香のスマホに
潜り込みー
そして、春香のスマホのカメラを利用して
春香の部屋を見つめるー
自分を好きになってくれた春香の
身体を、啓介は、乗っ取ろうとしていたー
だが、春香は、イヤホンなどを使って
音楽を聴いたりしないタイプの子だー。
だからー
春香に憑依するのは難しいー。
………”なんとかして憑依する方法はー”
啓介は、春香のことを
スマホのカメラを通して
見つめながら思うー。
春香を乗っ取る方法は何かないだろうかー。
考え抜いた結果、
啓介は”スマホから小さな音をブツブツと鳴らす”ことにしたー
ギリギリ人間に聞こえるか、
聞こえないかの範囲でー。
「---~~~~」
「--あれ?なんだろう?」
春香は不思議そうに、スマホを耳元に当てるー
「~~~~~~~」
春香の耳とスマホが密着するー
”いけるか?”
スマホと耳の密着した部分から
啓介は、データとなった自分を
春香の中に飛び込ませた。
「ひぃっ!?!?」
春香が激しく震えて、
そのままスマホを落とすー
「---あ…あ」
しばらく固まっている春香ー。
やがてー
春香は動き出した。
「あ…ふふふふふ…ふふふふ…」
春香が動きだす。
「あぁぁぁ…俺なんかのこと、好きになってくれてありがとぅぅぅ」
春香は顔を真っ赤にしながら自分を抱きしめたー
啓介の目的はー
春香を乗っ取ることではないー
よろよろと歩き出す春香ー。
そしてー
啓介の家に向かうー
啓介の身体は既に死んでいるが
部屋はまだ片付けられてなかったー
なんとかして部屋に入り込む春香。
そしてー
春香は笑いながらー
自分の耳にケーブルを突き刺したー
「んへへ、へへへへ、
春香ちゃんも、、、電子の世界に
来なよ~」
春香がニヤニヤしながら言うー
啓介の目的はー
”自分を愛してくれた春香”を
自分と同じ世界に連れていくことー
春香を電子化することー
「--ふふふふふふふ
わたしも、電子の世界にいくぅ~♡」
嬉しそうにそう呟く春香ー
”ダイブ”
そう書かれたボタンを押すー
春香の身体が震えたー
春香も、肉体という牢獄から解き放たれるときが来たのだー
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「---!?!?!?!?え?」
春香が目を覚ますと、
そこは、謎の空間だったー。
電子の世界ー
春香は、啓介に乗っ取られたまま、
勝手にデータ化されてしまったー
「--な、、なにここ!?!?!?!?」
春香が驚くー
自分の身体も存在しない、その世界でー。
怯える春香の前に、
啓介の意識がやってくるー
互いに、身体はないー
啓介が笑みを浮かべながら、
”好きって言ってくれて嬉しかった”と
意思を伝えたー。
だがー
春香の”好き”はー
啓介の思う”好き”ではーーー
なかったー
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
啓介の部屋では、
春香の身体がぐったりと、
泡を吹きながら倒れていたー
春香の意識は、電子の世界にー
身体は、もう、抜け殻だー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依がもし現実に実現するなら、
意識をデータ化してどうこう…
が、一番実現しそうな憑依…なのかも・・・??
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