バレンタインデー当日にまさかの女体化…!
女子としてバレンタインチョコを配る
彼の運命は…?
---------------—
「--あ、、あの、、良かったら…これ…」
顔を真っ赤にしながら
女体化した清五郎は
クラスの男子に義理チョコを配っていくー
その光景を遠目から見ながら
幼馴染の麗子はニヤニヤしていた。
「ふふふ…あんなに恥ずかしがっちゃって…」
麗子はとても楽しそうだ。
「---お~!ありがとな!」
清五郎からチョコを受け取った
男子の一人が喜んでいる。
「--あ、、いえ、、、、」
清五郎はぷるぷる震えているー
いつも同じ男子としてふざけたことを
話しているクラスメイトに
女子としてチョコを渡すー。
とても気持ち悪い感覚だ。
元々自分が女子ならなんとも思わないのだが
普段男子の自分が女子として、
いつもはゲラゲラ笑い合ってるようなクラスメイトに
チョコを渡す…
奇妙なことこの上ない。
「--うぅぅぅぅ…だめだ、変な気分になってきた」
清五郎が、弱音を吐きながら麗子のほうに
近づいてくる。
「ほ~ら!まだチョコ残ってる!」
麗子が言う。
「も、もう勘弁してくれよぉ~!
スカートも落ち着かないし…」
清五郎が言うと、
「--星奈ちゃ~ん!
チョコ配るのは女子の義務なんだって~」
と、麗子がニヤニヤしながら言う。
星奈…
勝手に決められた偽名だ…
女子としての偽名。
”チョコ配るのは女子の義務”とは、
清五郎が口にしていた言葉だー
単に自分がチョコを欲しかっただけなのだが
その言葉を麗子は根に持っているのかもしれないー。
「---ぐぐぐぐぐ」
清五郎は顔を真っ赤にして唇をかみしめる。
ここまでからかわれると
だんだん腹が立ってきた。
「お、覚えてろよこのヤロー!」
清五郎がぶるぶる震えながら言う。
「---あ、ほら!」
麗子が指をさす。
「まだ、義理チョコ渡してない男子が入ってきたよ!」
教室に戻ってきた男子生徒ー
それは、バレンタインデーを嫌悪する男子・猪口だった。
「げーっ!猪口!」
清五郎は思わず叫ぶ。
あいつにだけはー
あいつにだけは、チョコなんて渡したくない。
清五郎はそう思った。
何を言われるか、分かったもんじゃない。
「---は・や・く!は・や・く!」
麗子が言う。
「--くっそ~~~…!!!
おれは、、俺は!」
清五郎が嫌がっていると、
突然、麗子が清五郎を掴んで壁ドンした。
「ひっ!?」
清五郎は驚くー
いつもより、麗子の力が強い気がする。
「---いつも、力自慢してるけどさ、
今は同じ女子だもんね?」
麗子が笑う。
「--う」
清五郎は女体化したことで、
力も普通の女子並みになっていた。
いつものように、力で麗子を
払いのけることもできない。
「--配ろ?チョコ」
麗子が威圧してくる。
「はひっ…」
清五郎は、半分涙目でそう呟くと、
猪口のほうに向かっていくー
「ん?」
猪口が愛想なく清五郎のほうを見る。
清五郎は深呼吸してから
作り笑いを浮かべると、やっとの思いで口を開いた。
「あ、、あの…良ければこれを」
「--」
猪口は無反応だ。
そして、しばらく沈黙した後に答えた。
「--君も、お菓子屋の陰謀に踊らされているのか?」
とー。
「---え」
清五郎は猪口のほうを見た。
”始まったよ”と
思いながら。
「いいかい。チョコなんて100円も払えば
大きな板チョコを食べることができる。
それを、何千円も使ったり
何時間もかけてチョコを作ったり。
…そんなクソみたいな人生、
僕は送りたくないね」
猪口はそれだけ言うと、
清五郎を無視して歩き始めた。
「---あ、で、、でも、せっかくなんだし」
清五郎が言うと、
猪口は、チョコをひったくるようにして
奪い取った。
そしてー
そのままごみ箱に放り投げた。
「ホワイトデーのお返し目当てだろ?
強欲な女子だな。」
ごみ箱にチョコが入るのを確認すると、
猪口はさらに付け加えた。
「--ほしいなんて一言も言ってないのに
男子はバレンタインにチョコを貰えると
喜ぶみたいな風潮、やめてもらえないかな?
正直言って迷惑なんだよ。
欲しがってもないのに
バレンタインでチョコを渡されて
ホワイトデーにお返ししろ??
どこまで勝手なんだ君たち女子は」
猪口の言葉攻めと、
女子になってこんなことをさせられている屈辱とー
元に戻れるのかどうかという不安でー
清五郎は、歯を食いしばって涙を流し始めていたー。
「--頭からっぽで
キャーキャー騒いでいるから
そういうことになるんだ。
いいか?バレンタインデーなんて
お菓子屋の陰謀だ。
2月14日はなんでもない普通の平日。
今日も平日だ。
学校に変なキラキラしたチョコを
持ってきて男子に渡すなんて、男女の
不適切な関係だ。
校則に男女関係の規定があるのを
知らないのか君は?
これだから女子っていうのは…
…!」
猪口は言葉を止めた。
清五郎は、泣き始めてしまっていたー
「……なんで…なんでそこまで
言われなくちゃいけないんだよ…」
清五郎の言葉に、
猪口は、一瞬驚いていたが
すぐにうすら笑みを浮かべたー
「--出た!すぐに泣けばいいと思ってる。
だから僕は女子が嫌いなんだ。
そうやって僕を悪者にするのか?
僕は悪いのか?あ?」
猪口の言葉攻めはとどまるところをしらないー。
「-ちょっと!もうやめなさいよ!」
清五郎が女体化してチョコを渡す様子を
ニヤニヤしながら見ていた麗子も
さすがに…と思ったのか、猪口と清五郎の間に
割って入った。
そして、悔し涙を流す清五郎をそのまま
なだめて、近くの空き教室へと連れて行ったー
「-ふん」
猪口は、そのまま不愛想に自分の座席に座る。
バレンタインに興味のない男子は
他にもいたが
猪口の態度には引き気味だった。
猪口は、そんな周囲の反応にも目もくれずに、
「なにを見てるんだ!?」と周囲に向かって叫ぶ。
「僕は生涯童貞を貫くぞ。ATMにはならない」
と叫ぶと、ふんぞりかえって小説を読み始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・
「--ごめん」
麗子が頭を下げる。
「いや、いいよ…猪口がああいうやつってのは
知ってたし…
でも…女子の立場になってみると
あそこまで言われるのはきついな」
清五郎が涙を拭きながら苦笑いする。
麗子は「まぁ、、猪口くんは特別、ああいう感じだからね」
と申し訳なさそうに言う。
「---…-ー」
チョコもあと1つ。
残りの一つだけは、ずいぶん立派な感じのチョコだ。
「そういえば、これは…?」
清五郎が尋ねる。
麗子が、清五郎に「配りなさい!」と渡してきた
チョコの中にひとつだけ、他とは明らかに違う
手作りのチョコレートがあった。
「--…ふふ、ちゃんとそれは残しておいたなんて」
麗子は意味深な笑みを浮かべると
ニヤニヤしながら続けた。
「それは、本命チョコレートよ」
麗子の言葉に、清五郎は「ほ、本命!?」と叫ぶ。
「そう。本命を渡そうチャレンジ!」
茶化すようにして言う麗子。
「だ、、誰に渡せば…」
清五郎は戸惑っている。
「--…誰にって?
そうねぇ」
麗子は考えるふりをしながら内心で思う
”わ、、わたしに決まってんでしょ!”
とー。
麗子は、
清五郎のことがーー
好きだったー
けれど、幼馴染モードが強すぎて
告白なんてできないー
そしてー
ある理由があって、
告白できないー。
だがー
今ならー
「--そ、、そうねぇ、じゃあ、、
わ、わたしが受け取ってあげようかしら」
「はぁ?」
清五郎は思わず声を大きくする。
戸惑う清五郎に、
麗子は顔を赤くしながら言う。
「ほ、、ほら、、事情を知らない他の子に
本命チョコ渡したら、変でしょ?
転入生がいきなり、本命チョコを渡してくるなんて…」
清五郎は麗子の言葉を聞きながら
「?」「?」、と戸惑っている。
その様子を見て、焦れ焦れした麗子が叫ぶ。
「あ~!もう!いいからわたしにチョコを
渡しなさい!」
麗子が顔を真っ赤にしながら言う。
「あ、、え、あ?う、うん…」
清五郎はわけがわからず、
麗子に本命チョコを手渡そうとして、手を止める。
「で、でも、これ、お前が作ったチョコだよな?
それに…今、俺、女だし??」
「--友チョコってあるでしょ?
いいからわ、、、わたしに渡しなさい!」
清五郎は
首をかしげながら、
麗子に本命チョコを手渡したー
”やったあああああああああ!”
麗子は心の中で飛び上がりそうなほど
喜んだー
清五郎のことが実は好きだなんて言えないし
心の中のこの喜びを清五郎の前で
表現することなんて、できないけれど、
とにかくうれしいー
「ふ…ふふふふ」
麗子はニヤニヤしながら笑う。
清五郎が女体化したのはー
麗子の祖父が研究していた新薬を
清五郎が飲んでいた飲み物に混ぜたからだ。
バレンタインの前日に清五郎が飲んでいた
飲み物に、麗子は女体化する成分を盛ったー。
そして、この学校の父親は、
麗子の母親の元夫、つまり離婚した父親だ。
父親に協力してもらって、
女体化した清五郎を転入生に仕立て上げるのは
簡単だったー
「ふふふ…ふふふふふふ」
麗子はニヤニヤと笑い続ける。
清五郎は???になっているー。
そして
麗子はー
女子が好きだったー。
男子ではなく、女子が好きなのだ。
でも、清五郎のことも好きだった。
だから麗子は
清五郎を女子にして、付き合うと決めたー
「ふっふふふふ…
本命チョコをくれるなんて、
ありがとう!」
麗子は満面の笑みだ。
「い、、いや、、麗子が渡せっていうから…」
女体化したままの清五郎は戸惑っている。
「--ま、わたしが彼女になってあげるから
これからよろしくね~♪」
るんるんしながら麗子は
そのまま空き教室から立ち去っていくー
「---え…え?」
清五郎はわけもわからず、
そのまま教室に立ち尽くしたー
・・・・・・・・・・・
それからもー
清五郎が男子に戻ることはできずー
麗子の強引な行動で、
麗子と付き合うことになったー。
両親もー
学校もー
麗子もー
みんな、すっかり清五郎のことを
星奈として認識しているー。
清五郎自身も、なんだか
このままで良いような気がしてきたー
1か月が過ぎるー。
女子としての生活にもすっかり慣れた清五郎は、
最近では、”女子として生きるのも悪くない”
そんな風に思い始めていた。
今日は、麗子とのデート。
待ち合わせの場所に電車で向かうー。
「あ、そうだ」
メイクを整えようと、お手洗いに入る清五郎ー。
鏡で自分の顔を整えて、
そして、トイレを済ませて
トイレから出ようとする。
トイレに入ってきたOL風の女性と目が合う。
「きゃああああああああああああああああああ!?」
OL風の女性が悲鳴をあげた。
ーー!?
清五郎は、急に女性が悲鳴をあげたものだから
驚いてしまう。
驚いて、足早に女子トイレから飛び出す清五郎ー
駅のホームが悲鳴に包まれる
「な、、なんだなんだ?」
清五郎は、何が起きているのか
分からず、戸惑うのだった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
待ち合わせ場所ー
麗子が、ふとあることを思い出す。
「あーー…」
祖父から、他人を女体化させる薬を貰った時
祖父が言っていた言葉をうっかり忘れていたー
”効果は1か月で切れるからー
もし、相手をずっと女の子にしたいなら
定期的にこの薬を盛るんだぞ”
そう言っていたことを、忘れていたー
今頃、清五郎は
女の子の服装のまま、男に戻っているかもーーー
「---うっかり忘れてた!てへっ♪」
麗子は悪びれる様子もなく
舌を出してほほ笑んだ。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
バレンタインデーのお話でした~!
来年は…
また違うジャンルでバレンタイン系
小説を書いてみようと思います~!
ありがとうございましたー!
コメント