憑依薬開発を目指す研究所ー。
その闇が暴かれるー。
そして、再び”治験”が始まるー…。
--------------------—
竜馬と麻友の二人は
研究所の出口を目指して走っていた。
「--待ってくれ!初美さんをおいてはいけない!」
竜馬が叫ぶ。
麻友が立ち止るー。
お姉さん的存在だった研究員・初美は、
憑依薬治験の犠牲となり、
憑依させられた挙句、拷問にかけられて
ボロボロの状態になっているー。
「---もう、無理です」
麻友が首を振った。
「--仕方がないですよ」
麻友がクスクスと笑う。
残虐な発言を平気でする麻友ー。
潜入捜査という過酷な環境が
麻友をそういう性格にしたのだろうかー。
「--だめだ。仲間を放っては…」
「----」
麻友が目を閉じるー。
「--初美さんは、監禁されていた部屋から
移動されました。
なぜだか分かりますか?」
麻友の言葉に、竜馬は嫌な予感を覚えたー
そして、それは的中したー
「今朝、憑依した男を分離させるために
初美さんは”解体”されましたー。
もう、初美さんはこの世にはいません」
麻友は淡々とそう告げたー。
「--……、、こ、このまま放っておけば
他のみんなもあの女に…!」
竜馬が叫ぶ。
他の研究仲間も助け出さないといけない。
さもなければー
”憑依薬の治験”の犠牲になるー。
「--………」
麻友は竜馬のほうを見つめる。
「--憑依薬研究の証拠は手に入れました。
あとは、上の対応を待つだけです。
余計なことをする必要は……」
「ーーーするさ!俺は一緒に研究を続けてきた
仲間を見捨てることはできない!」
竜馬が叫ぶー。
竜馬と麻友は”目的”が違うー
麻友は憑依薬の研究をしているこの施設に
潜入捜査をしていたー
憑依薬研究の残虐な実態を入手した今、
麻友はもうこの施設には用はない。
だが、竜馬は違う。
竜馬は仲間を助け出したかった。
竜馬と麻友がにらみ合う。
「---…ヒーローきどりですか?
笑わせないでください」
「---君みたいな冷たい女にはなりたくないな」
麻友が舌打ちをして、竜馬を見つめるー。
竜馬は「脱出したいなら君一人で行け」と呟くー
麻友は、竜馬に向けて何かを言おうとしたー。
その時だったー
「うっ!?」
麻友がビクンと震えて、持っていた銃を落としたー
「--どうした!?」
竜馬が驚きながら言うと、
突然麻友はくすくすと笑いだした。
「ふふふふ…ふふふ、ふふ、はははははは!
あははははははははぁ~♡」
麻友の狂気的な笑い声ー
竜馬が唖然としながら麻友のほうを見つめていると
麻友はケラケラと笑ったー
「--まさか、研究所にネズミがいたなんてねぇ!
でもザンネンだったなぁ!
この身体はわたしのものだ!
あっハハハハハはは♡」
麻友が表情を歪めるー
「--な…」
竜馬が言葉を濁らせていると、
麻友は自分の胸を触り始めたー
「んふふふふふふ♡
いい身体しちゃって…
じっくり可愛がってやるわ…」
麻友は、顔を赤らめながら
へらへらと笑うー
そして、竜馬を見てほほ笑んだー
「憑依薬はーー、
もう、完成しているー」
麻友が両手を広げながら叫ぶー。
「--な、なんだって?
お、、お前は誰だ!?」
竜馬が叫ぶー
さっきまで話していた麻友ではない。
誰か、別の人間がー
「--由紀恵…と言えばわかる?」
麻友が言う。
由紀恵とは、研究所の所長の名前だー。
さっき、竜馬に憑依薬を打ち込もうとした際に
駆けつけた麻友に射殺されたはず。
「--正確に言えばー」
麻友が凶悪な笑みを浮かべて続けたー
「--由紀恵の中にいたモノー」
ーー!?
竜馬が驚くー
「--お前たちがずっと接してきたのはーー
由紀恵という女じゃない。
あの女は乗っ取られていただけだ。
この、わしにな」
麻友がニヤニヤしながら言う。
研究所長の由紀恵は、
”あまりの若さ”から疑問を抱かれていた。
製薬会社の上層部に親がいるだとか
身体を売っているだとか、いろいろなうわさもささやかれていたし
時々、20、30代とは思えないような言動もあった。
そのつじつまが合った。
所長の由紀恵は、
身体を売っていたのではない
奪われていたのだとー
「お前たちは、本当の由紀恵と、一度も話をしたことがない。
ここに来た時には、既にわしが乗っ取っていたからな」
麻友は落とした銃を拾う。
「気に入っていたのに、あの身体は壊れちゃったからな。
代わりにこの女を貰うことにしたよ…くくくくく」
麻友は笑いながら銃を竜馬に向ける。
研究所のアラートが鳴り続けるー。
「---…憑依薬が完成してるって、どういうことだ」
竜馬は撃たれないように両手を上げながら訪ねる。
「--ふん…
憑依薬は既に完成し、わしを含めて
何人かの人間が既にそれを使っているー…
だがー…
今の方法では憑依薬を一人分作るのに
膨大な時間と資金がかかる。
今、君たちが研究しているのは
”改良型の憑依薬”
コストカットを行い、量産に適したタイプの
憑依薬だ」
麻友は、麻友本人とは違う口調で
説明を続ける。
そして、笑みを浮かべる
「コストカットすれば、人体に影響も
出るだろう。
だがー、クズたちの命で、治験を
繰り返していけば、いずれ必ず
憑依薬のコストカットに成功する。
モルモットなんて、いくらでもいるからな」
麻友の言葉を聞いて
竜馬の怒りが込みあがってくる。
「--…ひ、憑依薬を何に使うつもりだー…?
医療用というのは、ウソだったのか?」
竜馬が麻友を睨む。
麻友は笑いながら答える。
「もちろん、医療用にも使うさー
”表向きは”な。
だがー
本当の目的は”わしら”が、
可愛い女の身体を手に入れて
好き放題しーー
永遠に生きるために作っているのだ…
くくくく」
「わしらー?」
竜馬がさらに質問するー
しかし、麻友は竜馬に銃を向けたまま
「そろそろ質問は終わりだ」と、竜馬に
歩くように促した。
研究所の出口を目前にしてー
竜馬は脱出することはできずー
そのまま悔しそうに歯を食いしばりながら
来た道を引き返すことになってしまったー
「----お前には、特別コースを用意してやる」
麻友は、竜馬を隔離室に入れると、竜馬を乱暴に放り投げて
ケラケラと笑い始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「--所長の由紀恵さんの後任として、
わたしが、所長の代理を務めることになりました」
麻友が挨拶をする。
「----」
麻友が、由紀恵を射殺した現場にいた研究員の英治は
首をかしげるー
”いったい、何がどうなっているんだ?”
とー。
しかもー
麻友の雰囲気がいつもと全然違うー
まるで、
由紀恵が麻友に乗り移ったかのようなー。
「-----…」
英治は、隔離室に移された竜馬のことを考えるー。
”あいつも、終わりだなー”
とー。
「うぅぅぅぅぅぅ…」
隔離室では、竜馬に憑依薬の投与が行われていたー
「---ふっふふふふふふふ」
腕を組みながら麻友がその様子をご機嫌そうに
見つめているー
「--所長!これ以上は、危険です。
体内の数値に異変が」
「--続けなさい」
麻友は、冷たい声で言い放った。
「しかし!」
研究員が叫ぶ。
このままでは竜馬は、憑依薬の過剰摂取で、死ぬー。
「---続けなさい。
…聞こえなかったの?」
麻友が、悪魔のような声で言い放つー。
「---は、、、はい!」
研究員は怯えながら竜馬に憑依薬を投与するー
憑依能力を取り除いたタイプの
憑依薬で、人体への影響を確認しているー
竜馬は薄れゆく意識の中、
麻友を睨んだー
麻友は冷たい目で竜馬を見下しているー
”麻友に憑依しているやつを、どうにか
したところでーーー…
あいつは、しょせん…”
竜馬は、そこまで考えて
苦痛に耐えながら呟くー
「---憑依薬の研究の前線に来ているってことは…
お前、、”わしら”の中で一番下っ端なんだろ?」
竜馬は挑発的に笑うー
まだ、竜馬の闘志は消えていないー
麻友の言う”わしら”が何者なのかは分からないー
邪悪な老人たちの集まりだろうかー。
だがー
竜馬は最後の瞬間まで戦うことを決めていたー
「--は?」
麻友が表情を歪める。
「---…この下っ端じじい!」
竜馬が叫ぶー
「----うっさいわ!!」
麻友が大声で怒鳴り声をあげると、
隔離室に入ってくるー
そして、竜馬をグーで殴りつけた。
「わしを馬鹿にしやがって!
どいつも、こいつも!」
麻友の綺麗な手で、竜馬を何度も何度も
殴りつけるー
けれど、竜馬は、麻友のほうを
睨むようにして見つめた。
「ぬぬぬぬぬぬぬ…!
わしは下っ端などではない!
わしは、これから医療界を牛耳ることになる
総合医療連盟の役員のひとりだ!
貴様のようなごみと一緒にするでない!」
麻友の可愛い声が響き渡るー
「----総合医療連盟…」
竜馬が呟く。
麻友がはっとした表情を浮かべるー。
そんな名前は聞いたことがない、と
竜馬は思うー
2020年の現在ー。
そんな会社は存在しない。
裏で何か、邪悪な組織が動き始めているのかもしれないー
竜馬はそんな風に思うー
「それが、お前たちの所属組織の名前か?」
竜馬が言うと、
麻友は髪をぐしゃぐしゃに掻きむしって叫んだ。
「こいつを殺せ!」
とー
研究員が戸惑う。
「--どけ!」
戸惑う研究員を突き飛ばして
鬼のような形相をした麻友が、
注射器を奪い取り、竜馬に突き刺そうとする。
「----じゃあの」
麻友が不気味な笑みを浮かべたー
「---おおおおおおおおおおおおおお!」
背後から叫び声がするー
「--!?」
振り返る麻友ー。
背後から、ものすごい勢いでタックルを仕掛けてきたのはー
竜馬の同期の英治だったー
「--ぎゃあああっ!?」
麻友が激しく吹き飛ばされて、音を立てて倒れる。
「-英治!?」
竜馬が言うと、英治は”すまなかった”と呟いたー
一度は憑依薬開発のために竜馬を裏切った英治。
しかし、残虐な麻友の態度を目の当たりにして
考えを変えたのだった。
「う…」
薬を大量投与されて、弱っていた竜馬は
辛そうに立ち上がるー
「--俺たち、みんなここを抜け出すことにした」
英治が言う。
背後には、仲間の研究員たちがずらりと並んでいる。
「みんな…」
竜馬は呟く。
「ほら、行くぞ!」
英治と仲間に支えられて、竜馬は
研究所の外に向かい始めるー
「---はぁ…はぁ…」
ふらふらと立ち上がる麻友。
「くそどもがあああああああ!」
大声で叫ぶ麻友。
全員皆殺しだー。
全員憑依薬の実験台にしてやるー
そう思いながら、麻友が歩き出した
その時だったー
”計画は失敗だなー”
壁のモニターに、
女子高生が映し出されたー
「--!?」
麻友が表情を歪めるー
”総合医療連盟”の上層部ー
「---まだ、憑依薬を明るみに出すわけにはいかないー」
その言葉と共にー
有事の際のために、研究所に仕掛けられていた
爆弾がーー
爆発したー。
「---こっちだ!」
英治たちは、出口を目指していたー
竜馬は”仲間がいてよかった”と安堵の笑みを浮かべるー
その直後ー
研究所は、白い光に包まれてー
大爆発を起こしたー
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
憑依薬の研究は途絶したー。
世界の裏側で暗躍する
”総合医療連盟”なる組織の話も
明るみに出ないままー。
影で憑依薬の開発を進める闇ー…
その闇はー
長い年月をかけて、憑依薬を完成させた。
この時から30年近くが経過した2058年ー。
憑依薬は完成し、
総合医療連盟が、表に出てくることになるがー
それはまた、別の話であるー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依薬開発の研究所を舞台としたお話でした~!
利権とか色々絡んで、
実際に開発するにしても
大変なことになりそうですネ~
最後の「それはまた別の話」は
過去作品の”未来の医療”というお話に
繋がるようになってます~☆
興味があればどうぞー!笑
⇒未来の医療はこちら
コメント
SECRET: 1
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
やはり奴らに対抗するのは名付けてハムラビ法
…目には目を憑依には憑依で対抗するしかなさそう
もし薬で無く自然的に憑依の力を持つものが現れたら、最後は精神力の強い方が勝つと思う。
自分ならさらに組織ゆえに内部争いを誘発させたりするけど
しかしこのように外伝?などの話もやる事があるんですね少し油断してました。
と言う事は・・・完結したような話もまたする可能性があるという事かイイネ
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
無様>
コメントありがとうございます~!
完結していると思っていても
何か絡んでくることがあったりするかも
しれませんネ~
ふふふ