<憑依>実験体の暴走

とある研究所ー

そこでは、憑依能力の研究が行われていた。

が、ある日、
実験体が研究所から逃げ出してしまう…。

※リクエスト作品デス

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その研究所では、秘密裏に
”憑依薬”の開発が行われていたー

”憑依薬”の開発状況は最終段階ー
まもなく、実用化にまでこぎつけていた。

「神原所長」
若い女性研究員の深夏(みなつ)が言う。

「--なにかね?」
鋭い目つきの男・神原所長(かんばらしょちょう)が
深夏のほうを見る。

「--人体実験を行うって本当ですか?」
深夏の表情は青ざめている。

「ああ…あとは、人間が実際に効果を発揮できるかどうか、
 副作用はないかどうかを確かめるだけだからね」
神原所長の言葉に、深夏は首を振った。

「普通の治験とは違います。
 憑依薬は人体への負担も大きいですし、
 被害者が出る可能性が…」
深夏がそこまで言うと、神原所長は手をあげて
深夏を制した。

「--”上”からの命令だー」

この研究所では、”上”からの命令で憑依薬を
秘密裏に研究しているー
決して表ざたにすることはできないー。

そしてー

この憑依薬の完成のためならー

「---凶悪犯罪者の石沼次郎(いしぬま じろう)を
 好きにしていいと、上から連絡があった」

神原所長はそう言うと、笑みを浮かべた。

石沼 次郎とは
3年前に連続殺人を引き起こした犯罪者で
既に無期懲役が確定している。

「----き、凶悪犯なら、人体実験に使ってもいいと、
 そうおっしゃるのですか?」

深夏の言葉に
神原所長は頷いた。

「ーー憑依薬の研究はね…
 神への挑戦だ。

 神が我々人間に与える身体は、一人ひとつ。
 その神が作ったルールという牢獄から
 飛び出るときがやってきたのだよー。

 安いもんじゃないか。
 凶悪犯、一人の命など」

神原所長は、そう呟くと、不気味な笑みを浮かべたー

そしてー
人体実験が始まったー

縛り付けられた石沼 次郎を見つめながら
神原所長は笑う。

「やれ」
神原所長がそう言うと、
男性職員の会原(あいはら)が、スイッチを押す。

憑依薬が悲鳴を上げる石沼に注入されていくー

石沼はビクンビクンと痙攣をしているー

「--ふふふふふ…」
神原所長は笑みを浮かべながら
その様子を見つめるー

人間への投与が成功すれば
憑依薬はいよいよ実用段階に突入するー

石沼を隔離している部屋の壁には
霊体を遮断する特殊な加工がおこなわれていて、
部屋の外にいる人間が憑依されることはないー

「--よし、モルモットNo2を部屋に入れろ」
神原所長が呟く。

「はっ!」
男性職員の会原が頭を下げるー

モルモットNo2とは
石沼とは別の凶悪犯罪者だー。

桂(かつら)という名前の犯罪者が
悲鳴を上げながら連行されていくー。

石沼が憑依能力を手に入れたかどうか、
確認するために、用意されたのがこの桂。

「--石沼君。ひとつ取引をしよう。
 そこに今、放り込んだ桂という男に
 君が憑依することができたら、君は自由の身だ」

神原所長が笑いながら言う。

「--う…」
石沼は、神原所長を睨みつける。

もう一人の凶悪犯・桂は「助けてくれ!」と叫んでいる。

「--君に今、投与したのは試作段階の憑依薬。
 君は他人に憑依する力を得たー

 ま、その部屋には特殊な加工がしてあるから、
 我々には憑依できぬがね」

神原所長は、窓をつんつんとつつくと、
「さぁ、そこにいる桂に憑依したまえ。
 君が助かる道は、それだけだ」

神原所長は、
ガラス越しに部屋を見つめながら笑う。

石沼が桂に憑依することができたのであれば
憑依薬の人体実験は成功だー
桂ごと、石沼は廃棄処分するー

逆に、石沼が反抗したり、
憑依できなかったら、そのまま石沼は処分して
今度は、桂に憑依薬を投与するー

満足いく結果が出るまで
何度も何度も実験を繰り返してー
そして、

「うっ…うっ…あ、、、あぁああああ!」
部屋の中にいた石沼が突然もがき始めた。

「---!!どうした!?」
神原所長が叫ぶ。

「所長!副作用です!」
女性研究員の深夏が叫ぶ。

神原所長が唖然としながら
部屋のほうを見るー

”わたしが開発してきた憑依薬に副作用などあるはずがー”

やがて、石沼は青ざめたまま動かなくなったー。
死んでいるように見える。

「所長!扉を開けてください!」

死んだ凶悪犯の石沼と、
いまだに悲鳴をあげているもう一人の凶悪犯・桂のいる部屋に
深夏が入っていくー

その時だったー

ビクン!と一瞬深夏が震えたー

「---?」
神原所長が深夏のほうを見る。

深夏はにやりと笑みを浮かべると
実験室から外に出る。

そしてー

凶悪犯が逃亡した時のために
用意されていた銃を突然手にすると、
研究員の会原を銃撃したー

「--!?」
神原所長が驚くー。

「--ひっ…ひひひひひひひひひ
 あはははははははは~」
深夏が大笑いしながら両手を広げる。

「あ~~~…
 いい女の身体、げっとぉ~!」
深夏が舌をペロペロさせながら笑う。

「--…まさか、、、石沼!」
神原所長の言葉に深夏が笑う。

「そうだ!俺だよ…!くくくくく
 死んだふりにひっかかってくれるなんてなぁ~!
 おかげでこの女の身体はこの俺がもらった!」

深夏がゲラゲラと笑う。

自分の眼鏡をはずして放り投げる深夏。

「--ひっひひひひ…
 どうする?この女を撃つか?
 あ?」
深夏が挑発的な笑みを浮かべながら言う。

神原所長は両手を上げながら
「待て…話し合おうじゃないか」と呟く。

その表情はーー
焦っている表情ではなかったー

周囲の研究員たちは
戸惑っているー

目の前で同僚の会原が殺されたうえ、
憑依薬によって、深夏が
乗っ取られてしまったのだー

焦らないほうが無理だー。

「---へへへへへ…」

その時ー
実験室に閉じ込められていた
もう一人の凶悪犯罪者・桂が
隙をついて実験室から飛び出す。

「---ひゃはははは!」
それに気づいた深夏が笑いながら振り返って
桂を容赦なく撃つー

悲鳴をあげてその場に倒れる桂ー

だがー
パァン!

背後から音がした。

深夏が自分の身体を見つめる。

「ふひっ…」
そして、笑みを浮かべたー

深夏の身体から血が噴き出している。

「えへへ…女の血だぁ…」
深夏の手について血を嬉しそうに舐める深夏ー

「---所長!」
他の女性研究員が叫ぶー

深夏を撃ったのは、
神原所長だった。

「-我々は神に挑もうとしているのだ。
 憑依薬の完成のためなら
 多少の犠牲は仕方がない」

神原所長が、狂気的な笑みを浮かべながら
振り返る深夏に、もう1発、銃弾を放つ。

「ぐぁっ!」
深夏が口から血を流しながら笑う。

「ひひひ…ひ…
 マッドサイエンティスト野郎が…!」
深夏がニヤニヤしながら言う。

「--マッドサイエンティストで結構。
 時代への扉を開くのは、
 私のような、狂った研究者なのだよ」

そう言うと、神原所長は容赦なく、
深夏ごと凶悪犯罪者の石沼を葬り去ったー

深夏が動かなくなるー

女性研究員の深夏ー
男性研究員の会原ー
凶悪犯罪者の石沼と桂ー、
4人の遺体が横たわる状況に
周囲の研究者たちは唖然としている。

「ーー安心したまえ」
神原所長が笑みを浮かべながら
他の研究員たちを見るー。

「我々、政府から秘密裡に研究を
 依頼された選ばれた研究者たちだー。
 多少の犠牲は政府も目を瞑るさ」

それだけ言うと、
他の研究員に対して
「ごみ掃除は任せたよ」と
肩を叩きながら呟き、
神原所長はそのまま所長室へと戻っていったー

残された研究者たちには、
唖然とすることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・

1時間後ー

女性研究員の亜理紗(ありさ)は
笑みを浮かべていたー

「---亜理紗?大丈夫か?」
男性研究員の一人が
亜理紗に声をかける。

「えぇ…大丈夫よ…」
亜理紗はそう言うと、振り返りざまに
その男性研究員に液体を投げつけた。

「うわっ!?」
悲鳴を上げる男性研究員。

亜理紗が、笑いながら走り去っていくー

「くくくくくー
 俺は生まれ変わったー
 深夏とかいう女の身体は
 殺されても、俺は死なねぇ…!」

深夏に憑依していた凶悪犯・石沼は、
気体となって深夏の身体から抜け出し
この亜理紗に憑依したのだ。

「へへへへっ!憑依薬…
 いいもんくれたぜ」

幼い顔立ちの亜理紗が表情を
鬼のように歪めて笑うー

そして、亜理紗は研究所の外を目指して走るー

・・・・・・・・・・・・

「--いよいよ…憑依薬が完成する」
神原所長は自分の部屋で笑みを浮かべていたー

神原所長のバックに潜む
胡桃沢厚生労働大臣に報告を送るー

そしてー

「--わたしは、神になるー」
神原所長が邪悪な笑みを浮かべた
その時だったー

部屋に他の研究員が駆け込んでくる。

「--な、なんだね?」
神原所長が言うと、
研究員は叫んだー

「い、、石沼が!まだ生きてます!
 亜理紗の身体を奪って逃走中!」

その言葉を聞いて、神原所長は「なんだとぉ!」と叫んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

亜理紗が警備員たちをやり過ごして
出口に向かうー

”一人の女性研究員”が外出するー

そんなことはよくあることだ。

だから、亜理紗が乗っ取られていることを
知らない警備員たちにとって
亜理紗が通過することは何の異常事態でもなかった。

「---馬鹿なやつら」
亜理紗は悪い笑みを浮かべる。

「それにしても…憑依…すごい力だぜ」
亜理紗は自分の手を見つめながら
クスクスと笑うー

「他人の身体が、思いのままだー」
亜理紗は自分の手をペロペロと舐めると
「もう俺は誰にも捕まらねぇ」とゲラゲラと笑い、
そのまま歩き出す。

”全関係者に告ぐ”
神原所長の声が研究所内に響きわたった。

”研究員に凶悪犯罪者の石沼が憑依、
 逃亡している。
 外に向かう研究員を発見次第、捕獲せよ
 
 生死は問わない”

「--けっ」
亜理紗は舌打ちした。

これで、今までのように警備員たちを
苦労せずにやり過ごすことは
難しくなってしまったー

「---さっさとずらかるか」
亜理紗は笑いながら研究所の外に向かうー

「--止まりなさい!」
警備員の男が亜理紗に気づいて声をかけるー

「--ふふふ…この身体なら…」
亜理紗は服に手をかけて、
服を脱ぎ捨てた。

「こんなこともできるぜぇ!」
身体を見せつけて警備員がドキッとしている間に、
亜理紗は警備員に絡みついて、
そのまま首を絞めつけた。

「--へへっ」
服を脱ぎ捨てた亜理紗が笑う。

「便利な身体…いいや、俺の入れ物だぜ!へへへへへ」
亜理紗は下品に笑うと、
上半身下着姿のまま歩き出す。

警備員が戸惑う。

亜理紗は制服のズボンも脱ぎ捨てて
警備員たちを混乱させる。

”何をしている!早く確保しろ!”
神原所長の声が響き渡る。

所長は、警備主任の部屋で
部下たちに指令を下していたー

しかし、
亜理紗が捕まらないことに業を煮やした
神原所長は、そのまま部屋を飛び出した。

・・・・・・・・・・・・

「-----」
憑依された女性研究員・亜理紗は
研究所の建物から出て、
外に向かう敷地内に立っていたー

パァン!

背後から銃声が響き渡るー

「---!」
亜理紗が自分の身体を見つめるー

「---う…」
亜理紗が苦しそうな表情を見つめながら
背後を振り返ると、
そこにはー神原所長がいたー。

部屋から飛び出して、自らが追跡してきたのだ。

「人類の新たなる一歩…
 そのためなら私は、何人でも犠牲にする覚悟だ」

神原所長が驚く亜理紗にさらに銃弾を放つ。

亜理紗がその場に倒れて
苦しそうに声をあげる。

「しょ…しょちょう…どうして…」

とー。

亜理紗は、もう憑依されていなかったー
敷地内で解放されて
石沼は既に別の身体に移っている。
正気を取り戻した亜理紗は
近くの警備員に救出されて、
落ち着いたところで、外の空気を吸いに来ていたのだったー

「--!?」
神原所長が表情を歪める。

「あっははははははは!」
背後から別の女の笑い声が聞こえてきたー

「ばーか!」
警備員の女だったー。

神原所長が振り返るー。

痛い、痛いと苦しむ亜理紗の髪を掴んだ
警備員の女が笑うー

「ーーこの女は、もう解放されていたのに!
 あっははははは!人殺し!」
煽るように叫ぶ警備員。

神原所長が慌てて銃を取り出すー

しかしー
女警備員が突然倒れるー。

「ひゃははははは!最高だぜ!」
女警備員から飛び出す霊体ー

憑依能力にさらに馴染んだ石沼は、
気体になったり、液体になったりー
自分の身体を自由自在に変化
させられるようになっていたー。

もはや、無敵と言ってもいい。

「---くそっ!私の研究の邪魔をするな!」
神原所長が叫ぶー

「お前など!憑依する身体を全部なくしてしまえば」
神原所長が発狂して、
笑いながら、苦しむ亜理紗と
気を失ったままの警備員を撃つー

動かなくなった二人を指さしながら
「--何もできまい!」と叫ぶー

”できるぜ”
石沼は笑うー

「うっ!」
神原所長がうめき声をあげたー

そしてー
笑いながら自分に銃を向ける。

「こんなこともなぁ!」
憑依された神原所長は笑いながら
自分を撃ちぬいたー

そのまま崩れ落ちる神原所長ー

そして、石沼は-
近くにいた猫に憑依するー

猫の身体を乗っ取った石沼は
そのまま研究所内の敷地から
飛び出して、嬉しそうに外の世界へと飛び出したー

・・・・・・・・・・・・

それから1週間ー

石沼の行方は今でも分かっていないー

事件のあった研究所では、
何事もなかったかのように
神原所長の後任である、梅津田所長が、
憑依薬の研究を続けていたー

その結果、欠点が判明したー。

”短時間で憑依を繰り返す”と、
霊体に戻れなくなり、その身体から抜け出せなくなることが
判明したのだー

「---まだまだ改良の余地がありそうだな」
梅津田所長は、静かに呟くと
憑依薬の研究を続けるのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

リクエストによる作品でした!

少し前の「治験」と似たような舞台に
なってしまいましたが
まったく別物デスー!

リクエストの原文は

”> 実験体の暴走
> とある研究所で憑依の実験体となってた男が隙を見て脱走。その際、
一時的に研究員へ乗り移るのもあり
> そいつは液体・気体化の憑依能力を使い、可愛い娘に憑依しながら追っ手をかわしていく。
> しかしその力は不完全であったがために最終的には・・・
> 特に結末の要望はしないけど、憑依した娘のカラダから
抜け出せなくなる、つまり憑依能力が無くなる?みたいな
> あまり低年齢はダメみたいだが小1くらいなら抜け出せなく
なっても長く楽しめそうだから良いかな、と思ってます。”

というものでした!

2話や3話にすればもうちょっと
色々な身体に乗り換えて追撃を
逃れることもできましたが
今回は1話にしたので、
こんな感じになりました!!

少しでもお楽しみ頂けていれば何よりデス!
今日もありがとうございました!!

PR
小説

コメント

  1. より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    あえて石沼のその後は想像に任せる…そう来たか
    猫から抜け出せなくなったら大失敗かも一番あり得そう
    さらに語られて無いから推測だけど抜け出せなくなって長時間いるとその憑依対象の記憶に飲まれる感じだったりしたら…
    とりあえず自分は石沼猫だろうと推測してます^^
    後15日からの久々3話分は自分のリクエストって事ですかね?調子に乗り過ぎて色々要望しちゃいましたが本当にお疲れさまでした。
    色々思う所はあったけど創意工夫とか凄いなあと感じたりしました。
    と言う事で前日はアレ何で待ってますね・・・こうやって!
    女子小学生?「ひっ」「フフこの身体ならいくらチョコ食べまくっても問題無いね。アタシ良い娘にして待ってるー」

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    無様>
    石沼さんのその後は…
    想像が膨らみますネ~笑

    15日からのは、
    久々の3話ものデス~!
    楽しみにしていてください~☆