<憑依>寄生生物ぴんく①~異変~

ピンク色の小さな生命体ー。

人々は知らなかったー

それに”支配されたら”おわりー

と、いうことを…。

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「---ねぇねぇ、あれ何?」

デート中の女子大生が、
あるものを指さしながら言う。

「-え?」
彼氏のほうが、彼女が指をさした方向を見るとー
そこには、ピンク色の小さな生き物がいた。

虫のように見えるー。

「--うぇぇ…きもちわりぃ」
男のほうが言う。
彼は、虫が大の苦手だったー。

「え~?そう?なんか可愛いくない?」
彼女のほうが、そう言いながら
ピンク色の生き物のほうに近づいていくー

小さい虫だ。
動きは、それほど早くはないー

小さい生き物が好きな彼女は
そのピンク色の虫のほうに近づいていくー

「--わ!なんかこっち見てる感じ!」
彼女が笑うー。

ピンク色の生き物が、
彼女のほうを見ているかのようにー
立ち止り、見上げるような仕草をしているー

目がどこにあるのかは分からないが、
彼女のほうを見ている気がするー

「---ねぇねぇ、こっちに来…」

その時だったー

ピンク色の生き物が、突然、飛び跳ねたー

彼氏を呼んでいた彼女の口をめがけてー。

「---!?」
口にピンク色の生き物が飛び込むー

「--…」
彼女は、ビクンと震えたあとに
笑みを浮かべたー

「---?どうかしたか?」
彼氏のほうが、
言葉を途中で止めた彼女に違和感を感じて
声をかける。

「--ううん、なんでもない」
彼女はにっこりと笑うと、
彼氏の手にしがみつくようにして、
そのまま歩きだしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今日も、いつものような平穏な時間が
流れているー。

そう、何もかもいつも通りー、
…の、はずだったー。

これから、直面することになる、
今日も知らずにー。

「--くそぅ!また遅刻だ!」
男子高校生の神山 俊治(こうやま しゅんじ)が、
慌てて学校に向かう準備をしているー

”昨晩、通行人を次々と襲った
 女性(28)が逮捕された事件で、
 女性は意味の分からない供述を繰り返しておりー”

テレビが、ニュースを伝えているー
いつの時代にも、一般人から見たら
おかしなことをする人間はいるものだー

”続けてー、
 人気アイドルグループの里琴さんが、
 ライブ中に突然、不謹慎な行動をして、
 所属事務所がー”

「--ちょっとー!俊治!
 ドタバタうるさい~!」

姉で、高校3年生の夏帆(かほ)が言う。

「--仕方ないだろ!遅刻するわけにはいかないんだ!」
俊治が叫ぶ。

「--も~!だったらもっと早く起きなさいよね!」

姉にあきれられて、
俊治が言い返すー。

いつも通りの光景。

母と父も苦笑いしている。

そんな日々が、ずっと続くと思っていた。

ずっとー。
この日を境に、あんなことになるなんて、思わなかったー。

この幸せが
いつまでも、続くとー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--どうした?」
男が言う。

「--ちょっと、2年前のことを思い出していて」
俊治が言う。

あれから2年ー。
世界は変わってしまったー。

「--2年前?へへへ…
 過去のことを思い出したって、仕方ないんだぜ」

男にそう言われた俊治は、
自分たちのいる建物から窓の外を見つめるー

そこにはー
”ピンク色の世界”が広がっていたー

まるで、ファンシーな夢の世界に
迷い込んだかのような世界が、外には広がっているー

どうしてー
どうして、こんなことになったのか。

俊治は、
何の変哲もない3色ボールペンを見つめるー

”わたしのことー
 忘れないでね…”

俊治は、そんな言葉を思い出して、
ボールペンを握りしめる。

「…そういやお前、いつもソレ持ってるよな?
 そんな薄汚れたペン、さっさと捨てちまえよ」
一緒にいた男が笑う。

その男に対して、
俊治は、自虐的に笑うと、
”あの日のこと”を考えたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

2年前ー

俊治は、姉の夏帆から
憎まれ口を叩かれながら、家の外に飛び出した。

「おはよ~!」
幼馴染の永田 純恋(ながた すみれ)に
背後から声をかけられる。

「あ、永田さん、おはよう」
俊治は、振り返りながらそう声をかけた。

「--最近、なんだか、他人行儀じゃない?」
純恋が笑いながら言う。

純恋とは小学生のころからの付き合いだ。
高校も同じで、今もこうして
積極的に話しかけてきてくれる。

けれどー
俊治は、少し純恋のことを避けていたー

嫌いになったわけではないー

どちらかと言うと、地味なタイプだった純恋が
急に可愛くなったのだー。

そういう年ごろだからだろうかー。

「---た、他人行儀なんかじゃないよ!」
俊治が言う。

「ほんと~かな~?」
純恋が笑いながら俊治を覗き込む。

「ほ、本当だって!」
俊治は顔を赤らめた。

幼馴染が可愛くなりすぎてー
直視できないー!

俊治はそんな風に思って
なんとなく純恋を避けていたー

「---そういえばさ~
 もうすぐ冬休みだよねー」
純恋が俊治のほうを見つめながら言う。

「ん?あぁ、そうだな」
俊治が返事をする。

「俊治って、クリぼっちってやつ?」
純恋がにこにこしながら言う。

からかわれていると思った俊治は
「うるせー!俺には家族がいるからぼっちじゃねー!」
と、クリぼっちを否定した。

「--そっか~」
純恋はどこか満足そうだった。

ちらっと俊治のほうを見る。

俊治は、「だいたいクリスマスはな~」
と何かぶつぶつ言っている。

”鈍感なんだから…”
純恋は心の中でそう思いながら、
俊治のほうを見つめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある研究所ー

”BOL”と書かれた部屋に
研究員がノックして入室していくー

「ボル博士」

その部屋では、
ピンク色の小さな生き物が大量にカプセルに入っていたー。

ボル博士はりんごを素手で握りつぶすようにして
食べながら研究員からの報告を受ける。

「--3日前、研究所から逃亡した
 実験体による被害と繁殖が、外部で報告されております」

研究員が頭を下げながら報告する。

研究者のボル博士は、
とある新種の寄生生物を作り出し、
それを人間に寄生させることで、
人為的に人間の欲を作り出し、
それによって人間をコントロールすることを研究していた。

例えば、食欲を失った人間の食欲を
引き出すことができれば、何らかのプラスがあるかもしれないし、
性欲を失った人間の性欲を引き出すことができれば、
何か悩んでいる人の力になれるかもしれないー

けれどー
その欲を引き出すための研究の過程で
”ぴんく”のコードネームを持つ生物が逃げ出して
外に出てしまったー。

このままではパンデミックが起きるー

ボル博士はりんごをかじりながら、
モニターを見つめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・

学校に到着するー。

「--なぁなぁ、さっき服脱いで走ってる女みたぜ」
「はぁ?んな痴女いるわけねぇだろ」
「-そういや、今日妹の様子がさ~」

教室はいつものようにざわついている。

チャイムが鳴るー。

だが、担任の先生が教室にやってこない。

「--そういや、担任遅くね?」
「いいじゃんいいじゃん、授業潰れるし」

笑いながら話すクラスメイトたち。
このあたりも、いつもの感じだー。

「……ん?あれなんだ?」
教室の扉のほうを
クラスメイトの一人・小泉(こいずみ)が指さす。

「--?」
俊治が、退屈そうに教室の扉のほうを見ると、
ガラスになっている部分に
ピンク色の小さな生き物が、2、3匹付着していた。

「--わっ!?気持ちわるぅ~」
廊下側にいた、おしゃれ好きの女子が言う。

「--……ってか、あれなんだよ!」
教室の窓の外を指さす男子生徒。

「--なんだなんだ?」
周囲の生徒が窓の外を見ると、
校庭では、女子数名が、抱き合ってキスをしていたー

「--うわっ!乱れてるぅ!」
笑う男子生徒ー

ざわつく教室ー
俊治は、”いつも騒がしいな”と思いながら、
先生の到着を待つー

まだ、何が起きようとしているのか、
俊治は理解していなかったー

しかしー

「--きゃあああああ!?」
廊下側にいたおしゃれ好きの女子が叫ぶー

「--!?」
俊治が教室の扉の窓を見ると
そこには、さっきのピンク色の生物が、10匹以上…いや、もっと…
たくさんいることに気づいた。

「何あれ…!?気持ちわるい…」
純恋が言う。

「--蜘蛛かな…?」
俊治が言うと、
「ピンクの蜘蛛なんていたっけ…?」
と純恋が言う。

確かに世界中を探せばピンクの蜘蛛はいるかもしれない
けれど、日常生活でピンク色の蜘蛛を見かけることはないー

「---な、何の生き物か分からないから
 窓から離れたほうがいい!」
男子生徒の一人が言う。

ピンク色の生物が数10匹、教室の扉に
へばりついている。

そしてー

「--ひっ!?!?」
教室の扉の隙間から、教室の中に
ピンク色の生物が入り込んできた。

「---きゃああああ!」
廊下側にいたおしゃれ好きの女子に
ピンク色の小さな生命体が集まっていくー

「--ちょっと…!どうなってるの!?」
純恋が叫ぶー

「--あ…あぁ…あ」
おしゃれ好きの生徒の口の中に
ピンク色の生物が入り込んでいくー

人間の体内に入り込みー
憑依する生き物ー

ボル博士の研究所から逃げ出した
人工的に作り出されたこの生き物はー、
制御不能に陥っていたー

人間に入り込み、
人間の性欲を極限まで引き出し、
支配するー

「んふふふふふふ♡」
おしゃれ好きの女子は、瞬く間に乗っ取られた。

突然、ニヤニヤしながら自分の胸を触りだす。

そしてー
口から、ピンク色の生物を吐き出すー。

人間の体内であっという間に繁殖するこの生物はー
研究所から逃げ出したたった1匹をきっかけに
爆発的に繁殖していたー

「--えへへ…♡ えへ…」
おしゃれ好きの女子が嬉しそうにピンク色の生物を
口から吐き出しているー

唖然とする周囲の生徒たちー

「みんなもいっしょに…ゾクゾクしよ…?」
おしゃれ好きの生徒が笑うー。

完全に乗っ取られた彼女はー
近くにいた他の女子に抱き着いて
キスをしたー

口から直接、ピンク色の生物をその女子に流し込んでいくー

抱き着かれた女子はぴくぴく震えながら、
やがてー顔を赤くしてほほ笑み始めたー

パニックになる教室ー

教室の窓から飛び出して逃げる生徒もいるー

「--ど、、ど、どうなってるの…?」
純恋がおびえた様子で叫ぶ。

「--な、永田さん!こっち!」
俊治が、純恋の手を引いて、教室の前のほうの扉から外に飛び出すー

既にほかの教室からも喘ぐ声や
悲鳴が聞こえてきているー

「-いったい、これは…?」
俊治は戸惑いながらも、
”安全な場所に避難しないと”と呟くのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

すべては、2年前の出来事ー。

俊治は、あの時のことを思い出しながらー
少しだけ悲しそうに微笑んだー

②へ続く

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コメント

寄生要素の強いお話ですネ~!
意外な結末をお楽しみに~☆!

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憑依<寄生生物ぴんく>

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