元妻の恵を皮にしたー。
恵になった昇は、
娘の鈴奈と再会を果たすー
恵として、鈴奈と幸せな日々を送っていくー
…はずだった。
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「あ…あ…あ~」
恵が、トイレで鏡を見つめながら
自分の声の調節をしている。
そして、頬を引っ張ってみるー
今でもかわいい恵の顔が
本物の人間かのように、伸びていくー。
「---す、、すげぇ…」
綺麗な声でそう呟いた。
昇は、妻・恵を皮にしたー
その皮を素早く着込んで、
近くのトイレに駆け込んだのだー
「こ、、これなら…誰がどう見ても、
俺が恵だー」
恵になった昇は、嬉しそうにそう呟く。
「あは…ははははははは…
涼音…今日から俺が、お母さんになってやるからな」
ケラケラと笑いながら、
恵の皮を着こんだ昇は、自宅に向かうのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいま~!」
恵として、恵の家に帰宅するー
「お母さんおかえりなさい~!」
まだ小さい娘・鈴奈が嬉しそうに
抱き着いてくる。
「ふふふふ~ただいまぁ~」
鈴奈を抱きしめる恵。
中身はー父親である昇だ。
だが、当然、鈴奈はそんなことには
気が付かない。
「-鈴奈~…よかったぁ…」
ぎゅ~っと鈴奈を抱きしめる。
このまま一生、娘に会えないと思っていたー
けれどー
会社の後輩・彩夢がくれた
謎のスプレーによって
妻を皮にすることができたー
そして、妻の皮をこうして
着込んだことによってー
昇は、恵となり、
恵に奪われた親権を取り戻したのだー
「--お母さん~おなかすいた~!」
鈴奈が言う。
ごはんがまだだったようだ。
「よ~し!じゃあ、お父さんが作っちゃうぞ~」
恵の皮を着ていることを忘れて
ついそう呟いてしまう。
「・・・おとうさん?」
鈴奈が不思議そうに聞き返す。
「--え、、あ、、ち、ちがっ
え~っと、お母さんが作っちゃうぞ~!
う、、うふふふふふ」
ぎこちない言葉遣いでそう言うと
恵の姿をした昇は、キッチンに向かい、
料理を作り始めたー
昇は、簡単な料理を作ることぐらいならできるー。
いつものように手早く料理をすると、
娘の鈴奈と久しぶりの食事をしたー
「ねぇ…おかあさん」
鈴奈が口を開いた。
「--わたし、もう、おとうさんに会えないの?」
鈴奈がさみしそうに聞いてくる。
「---え?」
恵の表情が歪むー
まさか”お父さんはお母さんの中にいるよ”
などと、言うことはできない。
「---おとうさんにも、、会いたい…」
鈴奈が涙をこぼすー。
元妻の恵は、
”あんたのことなんて、もう忘れてるわ”と
いつも昇に言っていたー。
だが、実際はそうではなかったのかもしれないー
いつも、こんな風にさみしがっていたのかもしれないー。
「----ごめんな」
恵の口調を真似するのも忘れて、
恵の姿で、昇は鈴奈を抱きしめたー
本当は、自分だって鈴奈と一緒にいたいー。
だが、こうでもしなければー
元妻である恵の皮を被りでもしなければ
ここにこうして来ることはできなかったー。
翌日ー
恵の皮を着た状態で、鈴奈との幸せな日々が
いよいよ本格的にスタートした。
恵は、親からの支援と、パートで生計を
立てていた。
恵のパートは単純作業だったから、これは、なんとかなるだろう。
その他の人間関係は、恵のスマホを見て
徹底的に学習したー。
不自然な部分は出てきてしまうかもしれないが、
それでも、まさか皮にされているなんて
思う人間はいないだろうから、問題はないー
「---なんか、におうな…」
昇はふと、そう思ったー
恵の皮のにおいをかぐー。
なんだか、異臭がするー。
死臭…ではないが
変なにおいだー
皮にされたことで、恵の
身体に何か異変が
起きているのかもしれないー
昇は、恵の姿のまま、
後輩女性の彩夢に電話をかけた。
”どちら様ですか?”
彩夢が言うー。
「--?」
昇は一瞬首を傾げたが、
恵の皮を着こんでいる今、
口から出てくるのは恵の声だ。
電話じゃ顔が見えないから
彩夢がそう聞くのは当然だった。
「--あ、悪い悪い、俺だよ、昇だよ」
女の声で言う。
”あ、やっぱりそうだったんですね~
違ったらどうしようと思って…
すみません~”
笑いながら言う彩夢。
「この前はありがとう
声聞けばわかると思うケド、
この通り、無事に恵を皮にして
恵になることができたよ」
昇が恵の声でそう伝えると、
”おめでとうございます”
と、彩夢は嬉しそうに言ってくれたー。
「--それでさ」
恵の声で電話していることに
違和感を感じながらも
昇は聞きたいことを聞く。
「なんか、恵の皮、におって来たんだけど
これ、どうすれば?」
昇が言うー
なんだか、恵の皮から
変なにおいがするのだー
自分だけが気になるレベルかもしれないがー
他の人からも分かってしまう可能性もある。
”あぁ…それは…
洗濯してください”
彩夢が言った。
「洗濯ー?」
昇はそう言って言葉を止める。
そういえば、彩夢の家には
やけに洗濯機が置かれていた。
あれは、もしかしてー
”わたしにも具体的なところまでは
分からないんですけど、皮にされた人間から
異臭がすることがあるので、
定期的に洗濯しないとだめなんです…
で、他の洋服と一緒に洗濯すると
皮がダメになっちゃうことがあるので、
皮だけで洗濯するようにしてくださいね”
彩夢はそう説明したー
「---そ、そうか…洗濯か」
昇は恵の皮を触りながら思うー
洗濯が必要だということは、
少なくともその間は、自分の姿に
戻らないといけない、ということだー。
だがー
これも娘の鈴奈と一緒にいるためー
「わかったー…
定期的に洗濯するよ」
恵の声でそう答えると、
昇は、やはりどうしても気になって
口を開いた。
「--…君も…”中に誰かいるのか?”-」
とー。
”ふふ”
彩夢は笑ったー
”わたしはわたしですよ”
とー。
答えはこの前と同じだったー。
彩夢が”人を皮にするスプレー”をくれたということは
彩夢もそれを使っている可能性は高いー
洗濯機が複数あったことからもー
あの時、彩夢は”別の皮”を洗濯していたのかもしれないー
まぁ、そんなことを考えても仕方がない。
昇は電話を切り、
恵の皮を言われたとおりに脱ぐ。
後頭部のあたりに手を触れて、
そこに出現したチャックのようなものを引くー
恵の皮が脱げていくー
そしてー
中からは、昇自身が姿を現したー
「--皮…」
昇は皮になった恵を見つめる。
恵の表情は。そのまま硬直していて、
動かないー。
恵はどうなってしまったのだろうかー
昇はふとそんなことを考える。
今も、心の中で助けを求めたり
しているのだろうかー。
それともー
もう、恵の意識は
この世にはいないのだろうかー。
そんな風に考えながら
恵の皮を洗濯機に放り込んだ…
・・・・・・・
それからも、
幸せな日々は続いたー
鈴奈と一緒にいられることが
こんなに幸せなことなんてー
そしてー
「んっ…♡ あっ…♡ あぁ♡」
恵の身体で楽しむエッチもー
素晴らしいものだった…
「女って…すごいなぁ…♡」
ありがちなセリフを
自分が口にするなんて…
そんな風に思いながら
恵として顔を真っ赤にして笑みを浮かべるー
”皮”とは言え、
着込んでいると、
その感触は、人間そのものと言えた。
女の快感もしっかりと感じることができるし、
自分自身が昇であることを忘れてしまいそうになる。
恵としての振る舞いにもだんだんと慣れてきて、
心身ともに恵になりそうになりながらもー
「ん…」
皮になった恵の身体から異臭がしてきて、
現実に引き戻されるー
「はぁ…これさえなければな」
娘の鈴奈が幼稚園に行っている間に、
恵の皮を洗濯する昇。
恵が休みの日には、早朝にこっそりと
洗濯をしているー。
恵を皮にした今、
もう、鈴奈がどうこう言う人は
いないが、昇として姿を現すことで
ややこしいことにもなりかねないから、
それは控えていたー。
「万が一、ということもあるからなー」
恵の皮の洗濯を終えて、
再び恵の皮を身に着ける。
恵本人の意識はどうなっているのだろうかー
既に、消えてしまったのだろうかー。
ふいに、そんなことが気になったが、
まぁ、今さら考えても仕方がない。
最近は、外出する際に
おしゃれも楽しんでいる。
まだ20代後半の恵の身体は、
美貌を保っていたー。
今日は、ネットで購入したミニスカートを
試してみている。
「--うへへへ…よくこんな格好で外を
歩けるよなぁ・・・
なんか、スースーしすぎて
何も履いてないような感じになるけどなぁ」
恵の皮を身に着けた昇は呟くー
鈴奈が幼稚園に行っている間に
買い物を済ませておこう、と
スーパーに向かう。
昇は当然、外出するときは
いつもズボンだった。
だがー、
今は恵の姿。
人生で初めてのミニスカートでの外出は
落ち着かなかった。
「---やばいな…結構いいぞこれ」
今まで味わってこなかった感覚に
ゾクゾクしながら
わざと見せてるような背徳感を感じる昇。
その時だったー
「---ーちょっと、よろしいですか?」
ニヤニヤしながら、粘りつくような視線を
送ってくる、独特のいやらしい雰囲気の男に
声をかけられた。
「え…?あ、はい?なんでしょう?」
恵として受け答えをする昇。
「----皮」
男はボソッと呟いた。
「--皮?」
恵の表情がひきつる。
男はニヤニヤとしながら
鞄からあるものを取り出したー
それはー
「---!!」
恵の皮を着こんだ昇は、目を疑うー。
自分が、恵を皮にしたときの写真が
そこにはあったー
”しまったー”
昇は思う。
人の気配のほとんどない場所で
恵を皮にしたから、誰にも見られていないと油断していたー
「--この写真は?」
恵として、昇はとぼける。
「へへへっ…とぼけなさんな」
男はにやりと笑った。
そして、ビデオカメラを取り出すと
映像を再生して見せたー
「…どうせまた、鈴奈のことでしょ?」
「頼むー。
たまにでもいいんだ。俺を恵に
会わせてくれー。
お前があいつの母親であるように
俺だって、あいつの父親なんだ」
「恵…どうしてもだめか?」
「--何度言われても変わらないから!
いい加減しつこい!」
シュッ!
「--!?」
「--え…ちょっと?何、今の?」
「---…」
「---今のはいったいなんぁひゅうう…」
恵を皮にしたときの
映像がしっかりと収められているー。
凍り付く恵ー
男は笑った。
「これって、殺人じゃないですか?へへ…」
とー
「--ち、、違う!」
恵は声を荒げた。
”この人、痴漢です”とでも、叫んでやろうか?
そう思ったー
だがー
この映像はさすがにまずい。
人を皮にする、なんて前例はないし、
今、自分は恵の姿だからなんとか言い訳を
することはできるかもしれないー
がー
それでも、
もしばれたらー
やはり、逮捕に至る可能性は高いー
「---……いやいや、
そんなに警戒しなくてもいいんですよ」
男はそう言いながら、名刺を差し出した。
”崎谷 慎一(さきや しんいち)”
「週刊深淵」という名の、
”決して光の当たらない、世の中の闇の部分”を
中心に暴く週刊誌だ。
有名ではないが、そこそこの売上がある。
「---…何が目的だ?」
恵は低い声で慎一を睨んだ。
「---…口止め料」
慎一はにやりと笑みを浮かべながら言ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅した恵ー
もうすぐ幼稚園バスに乗って
鈴奈が帰ってくる。
「くそっ!」
恵は綺麗な顔を歪めて、椅子を蹴り飛ばした。
「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!」
スカートを乱しながら
何度も何度も椅子を蹴り飛ばすー。
せっかく、せっかく
親権をー
娘を取り戻したのにー
どうしてこんな…
「くそっ!全部この女のせいだ!」
恵に対して憎悪を向けながら
爆発した感情を発散するために
恵は、狂ったように机の角で
角オナを始めてしまうー
喘ぎまくる恵ー
現実逃避をするためー
それともー?
「わたしが恵だ!そうだよ!
わたしが恵なんだよ!
誰にも邪魔させない!誰にも邪魔させねぇ!」
恵が怒りの形相で叫ぶー
1週間後ー
週刊誌記者の慎一にお金を払うことになっているー
要求してきたのはー
口止め料500万円ー。
昇の貯金や、恵のお金、
その他もろもろを集めれば
なんとかなるお金ではあるー。
しかしー
「---くそっ!俺は…俺が
鈴奈の親なんだ!」
恵は怒りの形相で乱れた格好のまま、
何度も何度も”自分が鈴奈の親だ”と
叫び続けたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
第2話でした~!
明日が最終回ですネ~
今日もありがとうございました~!
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