<皮>親権は俺のモノ①~離婚~

離婚し、親権も失った元夫。

だが、彼は狂気に手を染めようとしていたー。

それは、元妻を皮にして、
自分が母親に成り代わることー。

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柿田 昇(かきた のぼる)は
離婚することになったー。

妻の恵(めぐみ)との間に
亀裂が生じたからだー

まだ5歳の一人娘・鈴奈(すずな)のことを
昇はとてもかわいがっていたー。

だが、親権も恵のほうに行くことになった。

昇だけが悪いわけではない。
言いたいことはたくさんあるー。
だが、それらは聞き入れられず
一方的に昇だけが悪いことになってしまい、
恵にすべてを奪われてしまった。

離婚は別に構わないー
だが、鈴奈のことはー。
鈴奈とは、まだ遊んでいたいし
その成長を見守りたいー

けれど、それは叶わなかった。

鈴奈と会うことも禁じられて、
そのまま離婚当日を迎えるのだったー

「くそっ!」
昇は自暴自棄な生活を送っていたー。

最愛の娘に、もう会うことはできないー
そう考えただけでも、
絶望してしまうー

あの可愛い鈴奈に、もう会うことはできないー。

鈴奈と元妻の恵は今頃
幸せに暮らしているのだろうかー。

そう思うだけで、元妻の恵に対して
憎悪が巻き起こってきたー。

・・・・・・・・・・・・・

ある日ー

会社でいつものように仕事をしていると
後輩の女性社員・彩夢(あやめ)がやってきたー。

「--先輩!だいじょうぶですか?」

この彩夢がー
”すれ違い”の原因のひとつでもある。

20代後半の昇は、
彩夢と年が近いこともあり、
2年前、入社してきたこの彩夢の指導を
任され、一緒に仕事をすることが多くなっていた。

そんな彩夢と一緒にいる時間が多いことで、
妻の恵が嫉妬してしまったことも
離婚にまで至る原因の”ひとつ”となってしまったのだ

「あんまり、大丈夫じゃないかな」
昇はそう呟いたー

彩夢のことは別に恨んでいないー
嫉妬される、されないはこっちの問題だし、
昇自身は彩夢に対してやましい気持ちは
持っていないー。
仕事以外の関係は一切持っていない。
それは、断言できる。

彩夢の側も先輩後輩としてのかかわりに
徹していて、昇に対して特別な感情を
抱いている様子は、おそらく、ない。

「--娘ともう会えないってのはつらいよ」
昇が自販機コーナーでコーヒーを
飲みながらそう呟くと、
「親権なら、取り戻せばいいじゃないですか」と
彩夢は呟いた。

「--は?」
昇が思わずそう聞き返したー

あぁ…彩夢はまだ若いし、
そういうことにあまり詳しくないんだろうな…
と、昇は心の中で思うー。

「ーー親権はさ、難しいんだよ、いろいろとな」
昇が諦めムードでそう言うと、
彩夢はほほ笑んだ。

「---奥さんになれば、
 親権は柿田先輩のものですよ?」

そう、言いながらー

「は…?」
昇はさらに困惑した。

”奥さんになれば?”
何を言っているんだ?
妻の恵になるなんて不可能だ。

昇はそう思いながら苦笑いした。

「--いや、さすがにそれはー」

「---できますよ」
彩夢がにっこりと笑う。

「---!?!?」
昇は驚くー

彩夢は、たまに不思議な行動をすることも多く、
時々男子トイレに間違えって入ったりするほどの天然だ。

だがー
天然とは言え、”できますよ”とはどういうことだー?

昇は、コーヒーを飲む手を止めながら呟く。

「--俺が、恵になれる。
 そう言いたいのか?」
昇が言うと、彩夢は「はい」と即答した。

「---」
「---」
困惑した表情の昇と
にこにこしている彩夢が見つめ合うー

そしてー

「あ、、わたし、部長に呼ばれてるんで、
 もう行きますね」

そう言うと、彩夢は立ち止って
いつもより低い声で静かに呟いたー

「土曜日ー
 良ければわたしの家に来てください。
 先輩に、”その方法”をお教えします」

それだけ言うと、
彩夢は立ち去ったー

「---ど、どういうことだー?」
昇はそう呟きながら、
ひとり、残ったコーヒーを飲みほしたー

・・・・・・・・・・・・・・

木曜日ー

金曜日ー

どんどん土曜日が近づいてくるー

昇は、悩んでいた
若い女性社員の戯言だとはわかっているー

だがー
どうしても気になってしまうー

もしも、
もしも本当に
娘の鈴奈の親権を取り戻すことが
できるのであれば、そうしたいー

とは言え、
後輩の若い女性社員の自宅に男が
一人で行く、というのもいろいろ問題が
ある気がする。

会社からの目もあるし
元妻である恵にもし知られたら
”やっぱり浮気じゃん”という
濡れ衣を着せられることになるー

彩夢は、あれ以降、
その件については何も話しかけてこないー

迷う昇ー。

だがー
娘・鈴奈の可愛い笑顔を思い出す。

「俺はー
 俺は、鈴奈と一緒にいたい」

そう呟くと、昇は彩夢に声をかけた。

「--この前の話だけど」
小声で呟く昇。

彩夢はにやりと笑った。

「--その気になりましたか?」

昇は頷く。

彩夢は「わたしの住所、あとでLINEで送りますから、
明日のお昼ごろにいらしてください」とだけ
小声で言うと、彩夢は仕事に戻っていった。

「お~い!柿田くん!」
部長のジャクソン北村に呼ばれた昇は
「あ、はい!」と部長のほうに向かうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

昇は、彩夢の家を訪れるー

彩夢は一人暮らしのようだ。

アパートの一室にやってきた昇ー

彩夢は、いつものようににこにこしながら
昇を出迎えたー。

「---あ…」
昇は少し顔を赤らめる。

彩夢がゴスロリ系ファッションを
身に着けていたからだー。

「…?」
彩夢が少しして、昇のそんな反応に気づく。

「あ、わたし、いつも家ではこういう格好なので」と
笑うと、お茶入れてきますね~と呟いて
そのままキッチンのほうに向かったー

昇は部屋を見渡すー

彩夢の雰囲気から、
部屋は女子女子って感じの部屋なのかと
勝手に想像していたが、全然違ったー

なんというか…こう、ロックな感じだ。

ギターが置かれていたり、
ロックバンドのCDが並んでいたり、
”彩夢”のイメージとはまるで違う雰囲気だったー

そしてー
なぜか、洗濯機や乾燥機が
2、3台部屋に置かれているのが、
少し気になったー
そのうちの1台は今も稼働しているー。
中身は見えないようになっていて、
昇が中身を確認することはできない。

「あ、お待たせしました~」
彩夢がほほ笑みながらお茶を持ってくる。

「--それで」
昇は本題を切り出した。

「---柿田先輩が、
 親権を取り戻す方法、ですね?」
彩夢がほほ笑むと、
彩夢は奥から何かを取り出したー

それはー
”謎のスプレー缶”だった。

「---それは?」
昇が言うと、
彩夢はにっこりとほほ笑んだー

「--人を皮にするためのものです」

とー。

「皮?」
昇は聞き返す。
何を言っているのか、まったくわからない。

「着ぐるみ…っていえばわかりやすいですか?」
彩夢が笑いながら言う。

「---柿田先輩の元奥さんを
 皮にして、そして、柿田先輩が着るんです。
 そうすれば柿田先輩がお母さんに
 なることができるんですよ!

 そうですれば、親権も先輩のものです」

昇は唖然としたー

”そんな方法があるのか”と
思ったのではないー。

彩夢が思った以上に
バカだったことに
唖然としたのだー

「--はは」
昇は笑った。

「俺を励ましてくれようと
 してるのかはわからないけど…
 そういうのはちょっと」

苦笑いしながら昇はお茶を口に運ぶ。

「---」
彩夢が昇のほうを無言で見つめている。

「---ま、とにかく、気持ちだけは
 ありがとう」
昇はそう言うと、
”やっぱり、どうにもならないよなぁ”と
苦笑いしながらお茶をもう一口、
口に運んだ。

「------…嘘じゃないですよ?」
彩夢はにっこりと笑った。

「--そんなことできるはずがない、
 そんな風に思ってますよね?」

彩夢が言う。

「--え」
昇が言うと、
彩夢は、立ち上がった。

ゴスロリな彩夢を目の前にして
昇は彩夢から違和感を感じるー

”この子、なんか変だー”

と、そう思いながらー

「---このスプレーを相手に
 吹きかけると、本当に相手を皮にできるんですよ?

 そして、その皮を着ればその人に
 なりきることができるんです。」

彩夢が言う。

嘘を言っている目ではないー

「---1回分」
彩夢はそう言うと、スプレーの容器を
昇に差し出した。

「信じるか、信じないかは
 柿田先輩次第です。

 けどー
 それを、元奥さんに吹きかければー
 先輩は元奥さんになれるー
 鈴奈ちゃんのお母さんになることが
 できるんですよ?」

彩夢がクスクスと笑うー

「---…」
昇はゴクリと唾を飲み込みながら
その容器を見つめるー

”そんなこと、本当にあるわけがー”

「ーーー”誰も信じない”からこそ、
 皮にしても、誰にも疑われないし
 問題にもならないんですよ」
クスクス笑いながら言う彩夢。

「--騙されたと思って、
 わたしを信じてください」

にっこり微笑む彩夢ー

「---………」
昇はスプレー缶をぐっと握りしめた。

そして、彩夢のほうを見て
昇はあることを思いついたー

”まさかー”

「-----……
 きみは……もしかして、、」

彩夢の話がもしも本当ならー
彩夢はーーー

「--わたしは、わたしですよ」
彩夢はクスリと笑ったー

「-----」
昇は、受け取ったスプレー缶を
握りしめる。

やるしかないー
彼はそう思ったー。

鈴奈ともう一度会うためには、
やるしかないー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

仕事終わりに、昇は
元妻の恵を呼び出した。

恵も同年代の20代後半で、
今でもであった頃のような
美貌を保っている。

「---なに?」
恵がうんざりした様子で
待ち合わせの場所にやってくるー

「----ちょっと話があるんだ」
昇は真剣な表情で恵を見つめた。

「…どうせまた、鈴奈のことでしょ?」
恵がうんざりしているのを
隠そうともせずに、そう呟いた。

「あぁ」
昇は頷く。

「頼むー。
 たまにでもいいんだ。俺を恵に
 会わせてくれー。
 お前があいつの母親であるように
 俺だって、あいつの父親なんだ」

土下座をしながらそう言い放つ昇。

だがー恵は、相手にしなかったー

「---…」
昇は静かに立ち上がるー

話し合いで解決できるのであれば
それが一番良かったー

だから”最後に”チャンスをあげたのにー。

「恵…どうしてもだめか?」
昇が静かに、そして怒りに震えながら言う。

「--何度言われても変わらないから!
 いい加減しつこい!」

恵が叫ぶー

シュッ!

「--!?」
恵が驚くー

昇がポケットから容器を取り出して
スプレーを恵に吹きかけたからだー

「--え…ちょっと?何、今の?」
恵が言うー

「---…」
昇は恵の様子を確認するー

だが、恵の様子に変わったところはない。

”ほら、やっぱりな”
内心で昇はそう思ったー

やっぱり彩夢の戯言だった。
人を皮にできるはずなんて、あるわけが…

「---今のはいったいなんぁひゅうう…」

「--!?」

恵の声が、
途中から空気が抜けるような音に変わったー

「----!?!?!?!?」
恵が恐怖を顔に浮かべるー
口をぱくぱくさせているが、
そこからは空気のような音しか、出ていない。

「---恵!?」
昇も驚いて思わず叫んでしまったー

あっという間に恵の身体は
着ぐるみのようにー垂れ下がり、
そのまま”皮”となって地面に横たわった。

「ま…マジかよ…」
昇は思わずそう呟いたー

後輩・彩夢からもらったスプレーは
本当に、元妻を皮にしてしまったー

そしてー
「----」
昇は笑みを浮かべた。

「親権は、俺のモノだぜ」

とー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

今日は皮になるまでのお話でした~!
明日からは本番ですネ~!

そういえば、今年の皮モノは
これが初めてになります~☆
今年も去年と同じぐらいのペースで
皮も書いていくのでよろしくお願いします~

皮<親権は俺のモノ>
憑依空間NEO

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