成人式目前ー
毎年のように、彼女に住んでいる地域では
まるで、野生動物かのように、騒ぎ散らす迷惑な
若者が現れてニュースになっている。
彼女は思うー
「なんて恥ずかしい人たちなの?」ーと。
しかし、彼女は知らないこの地域の成人式に
隠された事実をー。
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「姉さん、明日は成人式か~」
弟の和義(かずよし)が言う
ちょうど明日、成人式を迎える
姉の梨咲(りさ)は「うん~そのあとは
友達と集まってごはん食べてくるから遅くなるかも!」とほほ笑んだー。
梨咲はまじめな性格で
明るく、友達も多い。
容姿にも恵まれていて、
男女問わず、頼られるタイプの人間だった。
ちょうどリビングで流れていた
テレビでは”明日は成人式”というニュースが
流れていたー
”今年の成人式は?”というテロップと共に
去年の成人式の映像が流れるー
そこには、
まるでサルのように暴れまわる新成人や、
市長の話に乱入して、大声でロックを熱唱して
連れ出された女性などが映し出されていたー
「--姉さんは、こんな風になっちゃだめだからな~?」
弟の和義が笑いながら言う。
「なるわけないでしょ!」
梨咲が苦笑いしながら言う。
真面目な梨咲からすれば
成人式の場でこんなことをする人たちが
本当に信じられない。
きれいごとを言うつもりはないけれど
”同じ新成人として恥ずかしい”とすら思う。
だがー
梨咲の地域の成人式は特に乱れていて
毎年のようにおかしな新成人が現れる。
地方のため、あまりニュースにも
ならないものの、
昨年は成人式の最中に着物を引きちぎって
喘ぎ始めた女性がいたほか、
突然市長に向かって「おら!やるぞ!」と叫びはじめた
眼鏡女子もいたー。
おととしも、その前にも、
そういう人がいたー
「---いったい、何考えてるんだろう」
梨咲は呟くー
成人式の場でおかしな行動をする
若者はいったい何を考えているんだろうー。
その人たちがその後どうなったのかは
知らないけれど、
噂によれば就職もできずに
荒れ果てた生活を送っているのだとかー
「ま…そういう人たちには
関わらないようにしよっと」
梨咲はそう心に決めるのだった。
他人の行動までどうこうすることはできないし、
もしそういう人がいたら、
何を言っても無駄だろう。
関わらないほうが、いい。
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成人式当日ー
高校時代の親友・栄恵(さかえ)と共に
成人式の会場へと向かう。
「みんなどうしてるかな~!」
栄恵が笑う。
中学、高校、大学ー
小さい頃の友達はみんな離れ離れになった。
成人式が、久しぶりの再会の
タイミングでもある。
梨咲も、栄恵も、久しぶりの再会を
楽しみにしていたー。
成人式が始まるー。
この地域では、
毎年この、地域住民のために建設された
センターに存在するホールで、成人式が行われている。
施設の管理者である鳴宮(なるみや)が、
市長を案内する。
そしてー
市長の小峯(こみね)が壇上に上がる。
まるでテンプレートのような
新成人に対するメッセージを告げる
小峯市長。
退屈そうにあくびをしている友人の栄恵をよそに、
梨咲は、眠そうにもせず、その話を聞いていたー
もちろん、梨咲も別に面白がって市長の話を
聞いているわけではない。
けどー、それでも”ちゃんと聞いている風”は
装っているー
「----あぅっ!?」
近くで変な声が聞こえた。
「---?」
梨咲と栄恵がその声のした方向を見ると、
一人の着物姿の女性が立ち上がっていた。
眼鏡をかけたおとなしそうな女性だ。
「---くひひひ…」
その女性はニヤニヤと笑いながら歩くと、
市長の方を見て叫んだ。
「つまんねー演説だぜぇ!」
とー。
「--!?!?!?」
ざわめく会場。
市長も困り果てた表情を浮かべている。
「わたしが面白い成人式にしてやるよ」
眼鏡の女性が大声でゲラゲラ笑いながら
その場に唾を吐き捨てると周囲の静止を
振り切って、壇上に向かう。
「--ちょっと!やめなよ!どうしちゃったの!?」
友達と思われる女性が叫ぶ。
「うっせ~な!黙ってみてろ!」
可愛らしい声で叫ぶ眼鏡の女性。
「な、なにあれ…?」
友人の栄恵が戸惑った様子で言う。
「さぁ…」
梨咲が呟く。
「今年もああいう子、いるんだね」
梨咲があきれ果てた様子で言う。
市長の小峯が席に戻るように促す。
だがー、眼鏡の女性は
市長からマイクを取り上げると叫んだ。
「--ねぇみんな?
おっさんの話なんて聞いててもつまらないでしょ~?
わたしがエッチな話をしてあ・げ・る♡」
甘い声を出しながら笑う眼鏡の女性。
成人式に参加しているチャラそうな若者たちが
ヒューヒューとヤジを入れる。
「こら!君!」
小峯市長がマイクを取り戻そうとすると、
眼鏡の女性は叫んだ。
「邪魔すんじゃねーよ!」
ーと。
可愛らしい声だがー
そのトーンは恐ろしいものだった。
小峯市長は思わず震えあがってしまうー。
眼鏡の女性がニヤニヤしながら
エッチなことを語りだす。
会場に集まっていた新成人からは
次第にブーイングの声も強まり始めていた。
「---あの子、何考えてるんだろう?」
梨咲があきれ果てて言う。
「--だよね~…
あんなことしたら、就職にも影響出るだろうし
学校だって…」
栄恵もあきれ果てた様子で言う。
眼鏡の女性は、嬉しそうに
自分のオナニー体験談を話している。
地域ホールの管理人・鳴宮が、スタッフに
対処するように指示をしているのを見ながら、
梨咲はため息をついた。
その時だったー
”次は、お前の番だ”
「--!?」
男の声が聞こえて、梨咲が振り返る。
だがー
そこには誰もいない。
「どうしたの?」
栄恵が不思議そうに尋ねてくる。
「--え?あ、い、今誰かがわたしを…」
梨咲が言うと、
栄恵は「え~、誰も呼んでないと思うケド?」と笑うー。
”前菜は、まもなく退場するー
次はお前が性人になるんだ”
そう声が響いた。
「-!?」
梨咲は小声で”誰?”と呟く。
「あっはははははははぁ~♡」
着物を乱しながら、エッチなことをしている
眼鏡の女性ー
やがて、スタッフによって、その女性は
会場の外につまみ出されたー。
「---おかしな子が増えたね~」
栄恵が苦笑いしているー
”立て”
「---!?」
梨咲はその声に従ってー
立ち上がった。
「どうしたの?」
栄恵が心配そうに梨咲の方を見つめる。
(え…??え…??)
梨咲はパニックになっていた。
身体の自由が利かない。
小峯市長が演説を再開しているー
一見すると、普通の光景ー。
だがー
梨咲は恐怖を感じていたー
「ちょっと…トイレ」
梨咲は、そう呟いて、会場から外に出ていく。
”え…!?ど、どういうこと!?”
梨咲は驚くー
身体が勝手に動いているー
”ククク”
さっきの男の声が再び聞こえてきた。
”さっき、言っただろ?
次はお前が性人になるんだって”
「--ど、、どういう…こと?」
梨咲は、言葉を発することができるように
なっていたものの
身体は勝手にトイレに向かっていた。
”成人式で、新成人が暴れたりするのを見て
お前、”どうしてあんなことするんだろう?”って
思ってるタイプだろ?”
男の声が笑うー
「--…だ、だって、おかしいじゃない!」
梨咲が言うと、
男は笑った。
”へへ…だったらその答えを教えてやるよ”
男の声ー
梨咲は廊下にあらかじめ置かれていた紙袋を手にするー
「---!?」
そのままトイレに入る梨咲。
紙袋の中にはー
ピンク色のエッチな雰囲気の
ナース服が入っていた。
「---え?ちょ…な、、なにこれ!?」
梨咲が叫ぶー
だがー梨咲の身体は勝手に動きー
自分の服を乱暴にぬいでー
ナース服に着替え始める。
「え…えっ…えっ!?!?」
震える梨咲ー。
何が起きているのかさっぱりわからないー。
”お前はこれから、成人式で
乱れるんだ”
頭の中に声が響くー
「---ど、どういう…ちょ、、ど、、どうして…?」
梨咲は慌てる。
ナース服に着替え終わった梨咲は
鏡を見つめてにやりと笑った。
Hな雰囲気のナース服。
それを着て、自分が鏡に向かってほほ笑んでいるー
「ちょ、、ちょっと…どういうこと!?」
梨咲は焦りの表情を浮かべたー
身体の自由が利かないー
”さっき、眼鏡の女が成人式の最中に
おかしな行動をしたよな?”
男の声が頭の中に響いてくるー
”あれは…俺がやらせたんだ。
お前と同じように、身体を乗っ取ってな”
笑いながら言う男。
「え…ど、、どういう意味…?」
梨咲は震える。
「--んふふふ…こういう…意味よ♡」
梨咲の口から
自分の意図していない言葉が出るー
そして、梨咲はトイレの鏡に向かってキスを
して、甘い息を吐きだした。
「---!?」
梨咲が驚く。
”お前の身体はもう、俺のものなんだ。
今は一部を自由にさせてやってるけど、
俺がその気になればお前の意識を
全部奪って好き放題することだってできるんだ”
男が言った。
「ひっ…や、、やめて…」
梨咲が恐怖の表情を浮かべながら呟く。
”くくく…お前も成人式で暴れる若者になるんだよ”
その時だったー
お手洗いに友人の栄恵がやってくる。
「え…」
お手洗いに入ってきた栄恵が驚く。
ナース服を着た梨咲がそこにいたからだ。
「梨咲…?」
栄恵がびっくりしている。
「さ、、栄恵…!?こ、、これは…」
梨咲は顔を真っ赤にしながら言う。
生足を大胆にさらしたナース服姿を
魅せつけるようにして立っている梨咲。
「な、、な、、何やってるの?」
栄恵が驚きながら言う。
着物は、トイレの個室の中に
まるでごみを捨てるように
放り投げられているー。
「--さ、、栄恵…」
梨咲はどうしていいかわからず言葉に詰まってしまう。
”へへ…見られる喜びをお前も感じろよ
俺はゾクゾクしてるぜ”
男の声が響く。
「う、、、うるさい!もう黙って!」
梨咲が叫んだ。
梨咲に憑依している男の声は
梨咲以外には聞こえないー
突然”黙って”と言われた栄恵は
戸惑ってしまうー。
”くく…さぁ、会場に戻ろうか。
お前のエッチなナース姿を
みんなに見せてやれ”
「ひっ…」
梨咲が青ざめる。
そしてー
梨咲はふと思い立った。
栄恵に助けを求めることをー
「さ、、、栄恵…お願い…たす…」
梨咲がその瞬間、ビクンと震えた。
「り、、梨咲…?」
栄恵は不気味なものを見る目で
梨咲の方を見ている。
「んっふふふふ~♡
これから楽しいことが始まるのに
邪魔しないでほしいなぁ~」
梨咲はそう言うと、ナース服の上から
胸を揉み始めた。
「な、、なにしてるの…?」
栄恵は、完全に困り果てている。
「べつに~? じゃ、わたし、もどるから」
梨咲は笑いながらトイレの外に
向かおうとする。
「ちょ…!?そんな格好で、どうする気なの!?」
栄恵がトイレから出ていこうとした梨咲の
手を掴む。
「んふふふふ…性人式をしようと思って…
性欲まみれの式を…ネ…んふふふふふふっ♡」
梨咲は興奮した様子で言う。
「--!?」
驚く栄恵。
「--な、何考えてるの!
早く元の服に着替えなさいよ!」
栄恵は、梨咲にそう言い放ったー
「邪魔すんなよ!どけ!」
梨咲は乱暴な口調で栄恵を突き飛ばして
そのままトイレから外に出た。
周囲の視線が集まる。
梨咲は腰に手を当てて、
見られていることにゾクゾクしながら
モデルのように廊下を歩いた。
「くく♡」
”や、、、やめて…!?ねぇ、、ちょっと!!”
意識以外を完全に乗っ取られた梨咲が
叫ぶー
だがー
梨咲を乗っ取った男は止まらないー
「ふふふ…
み~んなに、わたしのこと見てもらお~っと!」
そう言うと、梨咲は成人式が行われている最中の会場の
扉を開けるのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
成人式を題材にした憑依モノを書いてみました~☆!
私は、
こんなことしてないですからネ?笑
明日もお楽しみに~!
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