<他者変身>見えない侵略者③~7日間~(完)

謎の宇宙人が、
麻奈美に成り変わろうとしているー。

7日間ー
タイムリミットまでに、
麻奈美の家族や友人は
”偽物”に気付いてくれるのか…?

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5日目ー

「なに…これ…?」
母親の良枝が唖然としている。

偽の麻奈美が大量に買い込んだ服…
しかも、どれも過激なもので、
中にはSMプレイの衣装も存在していたー。

「----」
偽の麻奈美が表情を歪める。

偽の麻奈美…
麻奈美に変身した宇宙人は、
人間よりも性欲が強かった。
7日間、我慢するつもりだったが、
ガマンできなくなってしまい、
昨日、ゾクゾクを感じることのできる衣装を
大量に買い込んで、今日、お楽しみを
する予定だったー。

だがー…
それが、見つかってしまった。

別の場所からモニターで
その様子を見せつけられている
本物の麻奈美は叫ぶ。

「お母さん!気付いて!お母さん!」

とー。

「----ねぇ、お母さん」
偽の麻奈美が口を開いた。

「--わたしといっしょに、どう?」
偽の麻奈美が笑みを浮かべる。

良枝は「え?」と答えるー。

良枝は、今でこそ老けてしまったが
昔は、おしゃれが大好きで
大学時代、コンテストか何かで優勝
したこともあるらしいー
麻奈美の記憶に、そういう話をした記憶があった。

「-ね、今日、みんな遅いみたいだし…
 わたしの部屋でちょっと、遊ぼうよ…?」
偽の麻奈美が甘えた声で言う。

母の良枝は、表情を歪めたー

しかしー

本物の麻奈美は、
頭を抱えていたー

「お母さん…」
唖然としているホンモノの麻奈美ー

部屋に置かれたモニターからは、
”偽の麻奈美と母の良枝が
 過激な衣装を着て喜んでいる”
映像が写っているー。

「--どう~?」
恥ずかしそうにしながら、
ナース衣装を着て微笑む
母の良枝。

「わ~!お母さん!似合ってるぅ~!」
偽の麻奈美は、アイドルのような
フリフリした格好をしている。

「--うっふふふふ~♡」
最初は恥ずかしそうにしていた
母の良枝だったが、
昔の血が騒いだのか
次第に積極的に色々な服を身に着けていくようになるー。

SMの衣装を着て
女王様のように高笑いする良枝。

偽の麻奈美は、ブルマ姿で
それを見ながら拍手しているー

「--もう!!」
本物の麻奈美は、その映像を見ながら叫ぶ。

「お母さんのばかー!」

とー。

ガチャー。

「--ただい…ま?」
弟の圭吾が帰宅した。

圭吾はーー
口を開いたまま
鞄を落としたー。

ゴスロリファッションの母親とー
女戦士の姿をした姉がー
嬉しそうにはしゃいでいる
光景が目に入ったからだー。

「--あ」
母の良枝が、顔を真っ赤にする。

「お、、、おかえりなさい…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6日目ー

なんだか、家族関係が
ギクシャクしている気がする

弟の圭吾は、
口を閉ざし、
父の大輔は、その様子を不思議に思っている。

昨日のコスプレごっこのせいかもしれない。

母の良枝は気まずい雰囲気を浮かべているー

「ねぇ…」
圭吾が口を開く。

「最近、姉さん、何かヘンな気がするんだけど…」
夕食の場で口を開く圭吾。

「----俺も、そう思う」
父の大輔も口を開く。

「----うん」
母の良枝は、昨日のことがあるのか
控えめにそう呟いた。

「----ヘンって?」
偽の麻奈美が表情を歪める。

”一方的な侵略”はしないー
侵略する時には、侵略される側にも
チャンスを与えなくてはならないー

それがー
麻奈美に変身しているー
いいや、既にあらゆる場所に潜んでいる
この宇宙人たちの”掟”

それを、破ることは許されないー

もしもー
もしも偽物と気付かれたその際には
本物の麻奈美は解放されー
麻奈美に変身している宇宙人は
”処分”されるー

これは、変身している側にとっても
”命がけ”なのだー。

「---麻奈美…」
父の大輔が口を開く。

「お前、本当に、麻奈美かー?」
父は、自然とその言葉が口から出た。

”おとうさん!”

本物の麻奈美は
その様子をモニターで見つめながら叫んだー

やっとー
やっと気付いてくれたー

そいつはわたしじゃないー!
お願いー
早く、早く気付いてー

「---……お父さん、わたしは、わたしだよ?」
偽の麻奈美はクスクス言いながら呟く。

「わたしは、わ・た・し♡」
甘い声を出して囁く麻奈美。

「----お前は…」
父の大輔が、偽の麻奈美を睨むー

そんなことあるはずがないー
この麻奈美が、麻奈美じゃないなんてー

父の大輔はそう思いながらも
最近、感じている違和感を払しょくできずにいたー

そしてー

「お前は誰d…

ガシャン!!
がシャああ!

突然、激しい物音がしたー

父の大輔も、
母の良枝も、
弟の圭吾も
音のした方向を見つめるー

祖母・富美子の部屋だ。

「--母さん!」
父・大輔の母である富美子の部屋からした物音。
父の大輔が一目散に走り出した。

そしてー
部屋では、祖母の富美子が血を吐いて
激しく痙攣を起こしていた。

「--お、おばあちゃん!」
弟の圭吾がパニック気味になりながら叫ぶー

”おばあちゃん!”
本物の麻奈美もモニター越しに
その様子を見ながら叫んだ。

”おばあちゃん!おばあちゃん!”

本物の麻奈美が叫ぶー。

祖母の富美子は、すぐに
病院に搬送されたー

そしてー…
なんとか、一命を取り留めたのだった。

”よかった…”
本物の麻奈美は
その様子を見つめながら一安心するー

けどー…
偽物の麻奈美に対する話は、
それで曖昧になってしまった。

父の大輔は、富美子のことで
頭がいっぱいになってしまい、
麻奈美の様子がおかしい云々のことは
後回しになってしまったー。

その日はー
そのまま終わってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

7日目ー

正方形の部屋に置かれたタイマーが
残り24時間を切ったことを知らせるー。

「-----」
本物の麻奈美は、恐怖に震えていたー

このままじゃー
このままじゃー

「--あんた、偽物でしょ?」
モニターから、そんな声が聞こえてきたー

え?

本物の麻奈美はモニターの方を見る。

すると、
そこにはー

偽の麻奈美と、
親友の笹子の姿があった。

「----えっ…」
偽の麻奈美が驚くー

”やった!”
希望を失いかけていたホンモノの麻奈美が叫ぶー。

親友の笹子が
気付いてくれたー

これでわたしは…

「--わたしには分かるよ!
 あんた、麻奈美じゃないでしょ!?」
笹子が偽物の麻奈美に詰め寄る。

偽物の麻奈美が
「え…ち、違う…ちがうよ!」
と、明らかに動揺している。

「わたし、いつも麻奈美といっしょにいたから分かるの!
 あんたは麻奈美じゃない!」
笹子が叫ぶー

「---……ばれた」
偽の麻奈美は、絶望して膝をつくー

”ありがとう…笹子”
モニター越しにその様子を見ながら
本物の麻奈美は涙を流したー

笹子が友達でよかったー

「クク…うふふふふふふ」
笹子が笑いだす。

「あはははははははは…」
偽物の麻奈美も笑いだす。

「な~んちゃって~!」
2人揃ってカメラ目線で満面の笑みを浮かべたー

!?

本物の麻奈美が驚くー

「--わたし…2年前にすでに…
 ”ホンモノ”は処分されちゃってるの~!
 あっははははは~」

笹子が笑うー
顔の一部が、スライムのように歪むー

「---ひっ!?」
モニター越しにホンモノの麻奈美は腰を抜かす。

笹子はー
麻奈美よりずっと前にー
麻奈美と同じ目に遭い、
そして”7日間”誰にも気付いてもらえずにー
本物は”処分”されているー

笹子が
よく汗をぬぐっているのはー
”地球人よりも暑がりな宇宙人”に成り代わっていたためー。

麻奈美が笹子だと思って接してきた笹子は、
”偽物”だったー

笹子のことは小学生時代から知っていた
でもー
麻奈美は”気付く”ことができなかったー
笹子が偽物とすり替わったことに。

「ホンモノのわたし、泣いてたよ~?
 ”麻奈美!わたしはここにいるのに…
 お願い!助けて!”って…うふふ」
モニター越しに笹子が笑うー

偽物の麻奈美も笑うー

「--もうすぐ、笹子と同じ場所に
 逝かせてあげるー」

クスクスと笑う偽物の麻奈美ー

そんな…笹子…

本物の麻奈美は唖然として
その場に座り込んでしまったー

夜ー

偽物の麻奈美は家族と楽しそうに
団らんしていた。

偽の麻奈美のことを疑っていた父の大輔も、
祖父が倒れた1件で、偽の麻奈美が
一生懸命、家族のサポートをした姿を見たことで、
”変なことを言ってすまなかった
 麻奈美は麻奈美だな”と
考えを変えてしまいー
誰も、麻奈美が偽物であると、気付いてくれなかったー

偽の麻奈美が、
本物の麻奈美が見ているであろう方向を見て、
笑みを浮かべるー

本物の麻奈美は、正方形の部屋に
幽閉されたまま
悲鳴をあげていた。

「ねぇ!みんな!気付いてよ!
 そいつはわたしじゃない!そいつはわたしじゃない!」

本物の麻奈美が叫ぶー

「お父さん!お母さん!圭吾!
 そいつはわたしじゃない!!」
狂ったように叫ぶ麻奈美。

麻奈美は、パニックを起こしていたー

もう、あと2時間もないー
その間に、家族の誰かが気付いてくれなければ
わたしは、処分されるー。
麻奈美が、理性を保つのはもう無理だった。

映像の中の偽の麻奈美が自分の部屋に戻る。

そしてー
偽の麻奈美は、映像越しに顔を近づけて微笑んだ。

「--みんな、幸せそうでしょ?
 あなたがいなくても、もう大丈夫ー。
 ふふ…これから、約束通り、処分しにいくね?」

偽の麻奈美はそう言うと、部屋の窓から外に出て、
そのまま歩き始めた。

「---そんな…嫌だ…嫌だ!」
本物の麻奈美は、正方形の部屋の出口を
叩きはじめる。

扉は開かないー
これまでにも何度も試した

無駄だと分かっているー

でも、そうせずにはいられなかったー
早くー
早く、ここから出ないと、
自分はこのままー

「うあああああああああああああ!」
発狂したかのような叫び声をあげながら
麻奈美は正方形の部屋の扉の出口を叩くー

そしてー

ガチャー

扉が開いたー

「--!!」
本物の麻奈美は希望に満ちた表情で扉の外に出ようとするー

しかしー
扉の外から、偽物の麻奈美が入ってきた。

「きゃあああああああああああああああ!」
本物の麻奈美は悲鳴を挙げて部屋の
中へと戻るー

部屋の壁際に追い込まれたホンモノの麻奈美は
大声で助けて!と叫ぶー

偽物の麻奈美は笑うー

「ちゃんと、チャンスはあげたでしょ?
 でも、誰もあんたの家族は気づかなかったー。
 ふふふふ…
 あんたは、必要ない」

偽の麻奈美が目を赤く光らせて
本物の麻奈美に襲い掛かる。

必死にもがき、悲鳴をあげるホンモノの麻奈美。

偽物の麻奈美の口から、
触手のようなものが飛び出す。

それが、ホンモノの麻奈美の首筋に刺さるー。

「あ…あ…あああああ…」
本物の麻奈美がじたばたともがくー。

何かが吸い取られているような感触ー

身体中の栄養が、、大事なモノが
抜けていくような感覚

「いやだ…いやだ…・!!!」
本物の麻奈美が悲鳴をあげる。

自分は、このままーーー

「---やめろ!」

部屋の入口の方から声がしたー

「--!!」
本物の麻奈美が、薄れゆく意識の中で
部屋の入口の方を見るー。

そこにはー
弟の圭吾の姿があった。

「けい…ご?」

「---姉さんから離れろ!」
圭吾が叫び声をあげる。

「--夜中に姉さんが外に出て行ったから
 おかしいと思ってついてきたんだ!」

圭吾の言葉ー

本物の麻奈美は涙をこぼしたー。

「最近、ちょっと変だと思ってたら…
 お前はいったい誰だ…!?」

圭吾が叫びながら近づいてくる。

偽物の麻奈美は、唖然としているー

「わ、、わたしは…」

圭吾が鬼のような形相で近づいてきてー

そしてー
”倒れている本物の麻奈美”の
胸倉をつかんだ。

「お前!姉さんに何をしてたんだ!!」
圭吾が怒りの声をあげるー

「え???」
本物の麻奈美は唖然とする。

いやー
偽物の麻奈美も唖然としているー

そしてー
圭吾の行動の意味を
偽物の麻奈美が先に理解したー。

「--…け、、圭吾…たすけて…!
 その人が、その化け物が、わたしを脅すの…!」

偽物の麻奈美が叫ぶ。
わざとらしくー。

「---ち、、ちが…けいご…」

本物の麻奈美は声を出して唖然とするー
声がかすんでいるー
肌が老人のようにしおれているー

「--姉さんに、何をしようとしていた!?」
圭吾が大声で叫ぶー。

本物の麻奈美は、
自分の身体が、老婆のように
しおれていることに気付くー

もう、手遅れー
宇宙人に養分を吸収され尽くしてしまったー

偽物の麻奈美が夜に出かけていくのを
偶然目撃した圭吾は、
偽物の麻奈美を尾行したー。

そしてー
”ホンモノと偽物”の会話を部屋の外から
聞いていたー

助けに入った時にはー
”本物”は既に養分を吸収されて
麻奈美の姿とはかけ離れた姿に
なってしまっていたー

そのため
圭吾は、ホンモノのほうを偽物だと思ってしまったー

もう少し早くー
あと数十秒でも早く、
部屋の中に踏み込んでいればー
本物の姉を救えたかもしれないのにー

「姉さん…帰ろう」
圭吾が言うと、偽物の麻奈美は
にっこりとほほ笑んだ。

「あ…ま、、って…」
本物の麻奈美は倒れたまま
かすれた声を出すー。

「--圭吾…助けに来てくれてありがとう」

「いいんだよ、姉さん」

圭吾と偽物の麻奈美が外に出ていくー

本物の麻奈美は、
目から涙をこぼしながらー
そのまま、溶けるようにしてーー
消えてしまったー…
この世から…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2年後ー

「---♪~」
弟の圭吾が嬉しそうに鼻歌を歌っているー。

「--ん?圭吾、最近ゴキゲンだな」
父親の大輔が言うと、
圭吾は「まぁね」と答えた。

そう答える圭吾の額が、一瞬ドロリと歪んだー

彼らの侵略は続いているー
麻奈美のときと同じようにー

少しずつー

今度は、圭吾が侵略される番だー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依空間では珍しい変身モノでした~
なかなか書くことがないので
出来栄えはまだまだ練習中(?)デスー!

今後も機会があれば
書いて行きたいと思います!
お読み下さりありがとうございました~!

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