”1週間以内に家族が”偽物”だと気付かなければ
”ホンモノ”は必要ないー。
見えない侵略者は、潜んでいるー。
そう、すぐそばに…。
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ごく普通の家庭、藤田家は、
両親と姉と弟、そして、父親方の祖母の
5人で暮らしていた。
「も~!またそんなに慌てて」
しっかりものの姉・麻奈美(まなみ)が言うー。
「いいだろ!遅刻しなきゃ!」
弟で、中学生の圭吾(けいご)が
ご飯を口に詰めたまま学校へ向かう準備をしている。
いつものように寝坊した圭吾ー。
だが、いつもギリギリで学校に遅刻せずに
到着するため、
ある意味、計画性があるのかもしれないー
「--はは、俺はそろそろ行くかな」
父の大輔(だいすけ)が立ち上がるー
「いってらっしゃい」
母の良枝(よしえ)が微笑みながら
夫である大輔を見送ったー
祖母の富美子(ふみこ)は自室で寝ている。
最近は、少しボケも始まって来ていて、
前のような活力はなくなってしまっているー
そんな5人はー
なんだかんだで幸せな日々を送っていた。
そう、この日までー…
いやー
この日以降も
”幸せ”は続いているー。
”ひとり”を除いてはー
・・・・・・・・・・・・・
夕方ー
「はぁ~」
いつもハンカチを手放さない親友・笹子(ささこ)が
ため息をつく。
恋の悩みがあるのだとか。
笹子はハンカチで額のあたりを拭く。
汗をかきやすい体質で
ハンカチを常に数枚持ち歩いていることから、
笹子はいつしか、ハンカチ少女と呼ばれるようになっていたー。
笹子の恋愛相談に乗りながら歩く麻奈美。
二人の家は別方向。
分かれ道に辿り着いたところで、
二人は手を振りながら笑う。
「また明日~!」
「うん!」
麻奈美が、友達の笹子と別れて
帰路につく。
いつも通りの日常ー
高校生の麻奈美は、
難しい年頃ではあるものの、
家族とも良好な関係を築いていて、
学校でもプライベートでも
上手く行っていたー。
何気ない幸せな日々ー。
これからも、それが続く…
そう信じて疑わなかった。
だがー
「--!?」
背後に気配を感じたときには、
謎のニオイを嗅がされて、麻奈美は
眠らされてしまったー
ぐったりとした麻奈美を
そのまま連れ去る”なにか”
そしてー
「……うっ…」
麻奈美が目を覚ますと、
そこはー
何もない”正方形の部屋”だったー
「え…?わ、、わたし…?
ここはどこ…!?」
麻奈美が声をあげる。
”誘拐ー?”
麻奈美はそう思った。
そうだとしたら、早く逃げなくちゃ、と
麻奈美の中に焦る気持ちが出てくる。
しかしー
麻奈美は知らない。
誘拐は誘拐でも、
普通の誘拐などではないことをー。
ガチャー。
扉が開く。
麻奈美は、恐怖に表情を歪めたー。
そこから入ってきたのは
全身がドロドロとした、
”スライム人間”とでも称すれば良いのだろうかー
そんな、異形の存在だった。
ドロドロしたスライム人間が近づいてくる。
麻奈美は「きゃああああああっ!」と
悲鳴をあげた。
これは何ー?
夢?ドッキリ?
スライム状のドロドロした人間なんて
いるはずがない。
これは、誰かのイタズラ?
麻奈美はそんな風に思った。
だがー
この世界には、
”この生き物”が多数存在している。
知らないうちに
地球は侵略されているー。
ズル…
スライム状の不気味な生き物が
麻奈美にさらに近づいてくる。
そして、手のような部分を
ペタリと麻奈美に乗せると、
スライム状の生き物がドロドロドロドロと
変化をし始めた。
「--ひっ!?」
麻奈美の眼前に信じられない光景が
広がっているー
スライム状の生き物がボコボコと
カタチを変えていく。
時々、喘ぐような、不気味な音が聞こえてー
やがて、その生き物はー
”麻奈美”に姿を変えた。
「--えっ!?」
麻奈美は驚く。
目の前にいるちょっと、ドロドロとした麻奈美―
だが、その姿は本物の麻奈美
そっくりだった。
「-ーククク、これが人間か」
ドロドロした麻奈美はぎこちなく、笑うー。
「--え?」
何を言っているのか分からず、麻奈美は
首をかしげる。
「ーーーふふ…ふふふふふふふ」
ドロドロした麻奈美が不気味に笑うと、
本物の麻奈美の方を見て微笑んだ。
「ふ~ん、ふんふん…
なるほどねぇ~
これがこの女の記憶…
ふ~ん
よし!わかった!」
ドロドロした麻奈美はピクピクしながら
そう呟くと、
本物の麻奈美の方を見た。
「--はじめまして。」
ドロドロした麻奈美が笑うー。
ー!?
麻奈美は驚く。
この人は一体…?
「---今日から、わたしが藤田 麻奈美になるの」
ドロドロした麻奈美は微笑んだ。
意味が分からない。
「へ?な、、何を言ってるの?
わ、わたしをここから出して!」
麻奈美がドロドロとした麻奈美の方を見て叫ぶ。
しかしー
ドロドロした麻奈美は笑う。
次第に、ドロドロとした雰囲気が
無くなっていき、ホンモノの麻奈美と
同じような状態になっていくー
「--私たちはねぇ…
あなたにも分かるように言うと…
う~ん、そうね…
”優しい宇宙人”なの」
偽物の麻奈美が笑う。
「う、、宇宙…人?」
「そう。あなたたちの地球を
ちょーっとずつ侵略してるの。
でもね、わたしたちは鬼じゃない。
何でも平和的に解決したいし、
できるだけ悲しむ人を減らしたい。
だからー…
少しずつこうして、
ホンモノの人間に成り代わって
侵略してるの」
偽物の麻奈美は、
自分の身体を触りながら
クスクスと笑ったー
「--ど、、どういうこと…?」
「これから、わたしはあなたになる。
藤田 麻奈美として生きていくの。
そしてー
わたしたちのDNAを持った子供を産むー
そうして、どんどん地球人を
侵略していくのよー。
最後にはー
この星の人間は消えて、
全部、わたしたちになるー」
偽物の麻奈美は笑った。
「---…ちょ、、な、、何…?
宇宙人なんて、いるわけないでしょ?」
麻奈美が言う。
宇宙人なんているわけがないー、と。
だがー
麻奈美は、
いや、人類は気付いていないだけだー。
人間は、少しずつ”入れ替えられている”ことにー
これから、麻奈美が味わう恐怖によってー…
「---じゃ、そろそろ帰らないと
お父さんとかお母さんが心配するから」
偽物の麻奈美は、ホンモノの麻奈美が着ていた制服を
着こみ、鞄や持ち物も全て
本物が持っていたものを掴む。
「---!」
本物の麻奈美はいつの間にか自分が
原始人のような、薄い布きれしか
着ていないことに気付くー
寝ている間に服を脱がされたのかもしれないー
「--何をするつもり…!」
麻奈美が叫ぶ。
偽物の麻奈美は笑う。
「だから言ったでしょ。
わたしが藤田麻奈美になるの。
だからー、家に帰らなくちゃ」
微笑みながら、正方形の部屋から
出て行こうとする偽物。
「--み、みんな、すぐに気づくから!」
麻奈美が叫ぶ。
だが、偽物は笑うー
「--もしも、もしも気づかなかったら?」
低い声で不気味に呟く。
「-お父さんもお母さんも、弟の圭吾も
おばあちゃんも…
わたしが”偽物”だって、気づかなかったら?
そしたらー
ホンモノは必要ないよね?
誰も気づかないなら、
誰も悲しむこともないもんね?
ふふふ…
わたしたちは、”優しい”から、
人を傷つけることはしたくないの。」
偽物は笑うー
我々の技術力を持ってすれば
人類を制圧することはたやすい。
だがー
それでは、多くの血が流れる。
だからこうして、
少しずつ”人間が一番傷つかない方法”で
侵略していくのだ。
人間に成り代わり、
いずれ、完全に支配するー
「--わたしたちはね、
一方的な侵略はしないの」
そう言うと、偽物はタイマーを置く。
そこには1週間分の時間が
刻まれているー。
そして、正方形の部屋に唯一置かれたテレビの
電源を入れる。
テレビには、偽物の麻奈美の姿が
映し出された。
「これで、わたしの様子をあなたは見ることができる…。」
偽物はそう呟くと微笑んだ。
「あなたにも、ちゃんとチャンスをあげる」
偽物の言葉にホンモノの麻奈美は
首をかしげるー。
「--1週間以内に、家族が、”わたしは偽物”だって
気づいたら、ちゃんとあなたのこと解放してあげる」
偽物はそう呟いた。
”一方的な侵略”はしないー
侵略する時には、侵略される側にも
チャンスを与えなくてはならないー
これが、そのチャンスだ。
麻奈美は、”みんなすぐに気付いてくれる”と
思いながら、偽物に向かって呟くー
「も…もしも、1週間以内にみんなが
気付いてくれなかったら…?」
その言葉に、偽物は微笑んだー
「1週間以内に、家族が”偽物”だと気付かなければ
”ホンモノ”は必要ないー…」
とー。
「--そ、そんな…」
麻奈美が唖然としながら言うと、
偽物の麻奈美は、自分の顔を
つんつんつつきながら呟いた。
「くく…どこからどう見ても、
わたしは藤田 麻奈美でしょ?
くくくくく…
低い声で笑う。
そして、偽物の麻奈美は
本物の麻奈美に顔を近づけながら
”ばいばい”と囁いたー。
「待って!」
本物の麻奈美は、部屋から出ていく
偽物の麻奈美にすがりつこうとしたー
だが、偽物は正方形の部屋から出て行ってしまうー。
扉は固く閉ざされ、脱出することはできないー
「大丈夫…だいじょうぶ…」
麻奈美は呟くー
どんなに同じ姿をしていたって、
みんな、きっと気付いてくれるー。
すぐには気付いてくれなくても、
きっと、気付いてくれる。
麻奈美は
”こういうときにパニックになってしまってはいけない”と
理解していたー
深呼吸をして、
平静さを取り戻すと、用意されていたイスに
座って、テレビを見つめた。
そのテレビには
”偽物の麻奈美”の様子が写っている。
誰かが撮影しているとは思えない。
これも、宇宙人の技術なのだろうかー。
・・・・・・・・・・・・・
偽物の麻奈美は、
藤田家の前までやってきて、
クスクスと笑うー
そして、髪をペロリと舐めた。
「んふふふふ…いい、身体♡」
欲情した感じの声で呟くと
偽物の麻奈美は笑みを浮かべた。
「ただいま~!」
偽物は、いつものように
明るく声を出した。
「あ、おかえり姉さん」
弟の圭吾が言う。
「おかえり!」
母親の良枝も笑みを浮かべた。
父の大輔はまだ帰宅していない。
「姉さん、今日はちょっと
遅かったな」
弟の圭吾が言う。
拉致、そして偽物…
いつもより帰宅が遅くなるのは
当たり前だ
「-うん!ちょっと、学校で残ってたから」
偽物の麻奈美がそう言うと、
”そっか”と弟の圭吾が呟いたー
「----」
笑みを浮かべながら部屋に戻る偽物の麻奈美。
そしてー
部屋に戻った偽物の麻奈美は
呟いた。
「ねぇ?見てる?
誰も、わたしが”偽物”だって
気づかない…」
語りかけた先には、何もないー
だがー
本物の麻奈美は、その映像を、
正方形の部屋からちゃんと見ていたー
”--んっふふふふふふ…”
偽物の麻奈美は、顔を近づけて微笑んだ
”ホンモノは、もう必要ないー”
とー。
「---お願い…早く気付いて…」
本物の麻奈美は、祈るようにして
偽物の麻奈美の映像が映し出された
テレビを見つめることしかできなかったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今回は他者変身モノです~!
他者変身はあまり執筆経験がないので
試行錯誤しながら…(汗
今日のお話は導入部分で
終わっちゃいました!
続きは明日デス!
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