憑依されて繁華街に消えた妻ー
妻を取り戻そうとする夫ー
母の帰りを待つ息子ー
家族の絆の行方は…?
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「--ふふふ…別に何もされてないわよ~?」
美香が甘い声を出しながら笑うー。
”ギャラクシーヘヴン”という名のバーでは
緊張感が高まっていたー
バーのマスターの坂倉が、
その様子を見つめている。
美香と夫の五郎―、
そして美香に憑依した新次郎の仲間、
賀助、ピアース山村、本田次郎三郎の6人が
店内にいる。
「--わたしは、自分の意思で
家族を捨てて、女として生きる道を選んだの!
うっふふふふふ♡」
美香の悪魔のような囁きに
五郎は叫ぶ。
「美香!正気を取り戻せ!
何をされた!?」
五郎は必死に美香に呼びかける。
美香が自分の意思でこんなことをするはずがないー。
付き合い始めて、プロポーズして結婚して
子供が出来てー…
美香は、こんな人間じゃないことは
よく知っている。
「だ~か~ら~!」
美香はイラついた様子で叫ぶ。
そして、自分の手で自分の胸を揉み始めると
クスクスと笑う。
「わたしは自分の意思でおっぱい揉んでるの~!
うふふふふふふっ♡」
美香の姿に、賀助たちがニヤニヤしながら
五郎に近寄って
五郎の肩をポンと叩いた。
「ま、そういうことだ。
美香は俺たちの女だ。
テメェは金を置いてとっとと帰りな」
そんな賀助の方を
五郎は睨み返す。
「-こんなことして楽しいか?」
「あ?」
賀助が表情を歪める。
「俺の妻に、こんなことさせて楽しいか?」
五郎が怒りの形相で大声で怒鳴った。
「だから!わたしは、自分の意思でやってるって
言ってるだろうが!」
美香が声を荒げた。
「--お前、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
トンガリ頭の本田次郎三郎が叫びながら
五郎の胸倉をつかむ。
だがー
五郎は、怒りの形相で、本田次郎三郎を掴むと、
そのまま投げ飛ばした。
吹き飛ばされた本田次郎三郎が、バーの奥にあった
ダーツの的に突き刺さる。
トンガリ頭が突き刺さって
ジタバタしている次郎三郎をよそに、
賀助が怒りの声をあげた。
「調子に乗るんじゃねぇ!」
とー。
五郎は向かってきた賀助の拳を
止めるとー
そのまま賀助を突き飛ばした。
「--テメェ…」
賀助は驚いた表情を浮かべるー
五郎はー
学生時代、格闘技をやっていた経験があるのだー
そこらのチンピラには、負けない。
「---ふざけやがって!」
賀助が顔を真っ赤にして襲い掛かってくる。
だがー
五郎は賀助を簡単に殴り倒すと、
賀助は床の上でそのまま気絶してしまった。
「--あひっ!?」
ピアスまみれのピアース山村が
怯えた表情で叫ぶ。
「--俺の妻に何をした?」
五郎がピアース山村の胸倉をつかむと、
ピアース山村は悲鳴をあげた。
「あ、、、あ、、、あ、、、やめてくれ…たすけてくれ…!」
ピアスまみれのいかつい外見とは裏腹に
ピアース山村は臆病だった。
妻を奪われた五郎の怒りの形相に怯える山村。
しかしー
「キエエええええっい!!」
背後から、本田次郎三郎が、襲い掛かってくる。
羽交い絞めにされてしまった五郎は、
身動きを封じられてしまう。
そんな五郎を見つめながら美香が近寄ってくるー
「美香…!目を覚ませ…!
こいつらに何をされたんだ!」
五郎はじたばたしながら叫ぶ。
「---だからぁ…!
わたしの意思だって言ってるだろうが!」
美香は乱暴に叫ぶと、五郎の頬に
思いっきりビンタを喰らわせた。
「---美香!頼む!目を覚ましてくれ!
薬か…?それとも脅されているのか!?」
五郎が叫ぶー。
美香は「うるせぇ!」と叫びながら
五郎に2回、3回とビンタを喰らわせていくー。
美香はー
暴力なんて振るわないー
五郎は思うー。
こんなこと、するはずがないんだー
とー
美香は、チャイナドレス姿のまま、
五郎の水落を蹴り飛ばす。
倒れた五郎を足で踏みにじる美香。
「---うっふふふふ…
これが本当のわたし…
どう?失望したでしょ?」
美香が倒された五郎を、
まるで女王様のように
見下しながら言う。
「美香…頼む…元に戻ってくれ」
五郎は苦しみながら叫ぶー
しかしー
美香は、そんな五郎に唾を吐き捨てた。
美香が、気絶しているリーダー格の賀助を
見つめる。
(だらしないアニキだぜ)
美香に憑依している新次郎はそう思った。
「おい!そいつをつまみ出せ!」
美香が叫ぶ。
「え…!?で、、でも」
ピアース山村が戸惑いながら言う。
「いいから、つまみ出せ!」
美香の怒鳴り声に
ピアース山村はビクッとして、
言われるがままに
本田次郎三郎と協力して
賀助をバーの外に放り出した。
「----ねぇ、五郎?
わたしはね…
夜の街に生きる女になったの…
うっふふふふ」
美香が五郎の手を踏みにじりながら言うー。
五郎は苦痛に耐えながら叫ぶ。
「美香…!何があった・・・!?
なぁ、頼む!教えてくれ!」
「--べ~つ~に~な~に~も~~~?」
美香はイライラしながらそう言うと、
五郎を蹴り飛ばす。
悲鳴をあげる五郎。
美香はバーの店主の坂倉から酒を貰うと
それを飲みながら叫んだ。
「この身体はエロいよなぁ~!
もっともっと、エロいことしてぇんだよわたしはぁ!」
美香が顔を赤くしながら叫ぶ。
五郎は、そんな様子を見ながら
”こんなの美香じゃない”と
そう思ったー
そして、何も考えずに
口から言葉が出たー
「お前は…誰だ!?」
とー。
そうだー
美香であるはずがない。
あの美香がこんなことするはずがー
「---はぁ~?」
美香が笑いながら言う。
「---お前…本当に美香なのか!?
お前は…誰なんだ!?」
五郎が叫ぶと、
美香がクスクスと笑うー
次の瞬間ー
美香の首筋のあたりから
ドロドロとしたスライムのようなものが
ボコボコと出現してー
それが、人の顔になった。
「---!!!」
五郎は目を見開く。
美香の首筋にスライムのようなー
不気味な人の顔が出現した。
「--へっへへへへへ…
しつこいおっさんだなぁ…
教えてやるよ」
虚ろな目になった美香と
首筋からドロドロした状態で出現した新次郎が
同じ言葉を口にするー
美香の声と新次郎の声が二重に響き渡る。
「俺が、お前の妻を、
乗っ取ってやったんだよ!」
新次郎の顔が笑う。
美香が虚ろな目のまま笑う。
「な、、なんだと!」
五郎が叫ぶー。
美香の目は生気を失っているー
代わりに美香の首筋に生えるようにして出現した
五郎の顔が笑う。
「---俺が、美香になったんだ!
美香は俺のものだ!」
2人分の大声がバーに響き渡る。
そして、新次郎の顔が再びボコボコと泡立つように
美香の中に消えていくー。
「お前の妻は、俺のものだ!」
目に輝きを取り戻した美香が
大声で叫んだ。
「…ふ、、ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるな!」
五郎は大声で叫ぶ。
妻が憑依されていたなんてー
乗っ取られていたなんてー
そんなことが現実にー
「美香から出て行け!」
大声で叫ぶ五郎。
さっきまで受けた暴行の痛みも忘れて
勢いよく立ち上がると、
五郎は、美香の方を睨んだ。
「おいおいおいおい!おっさん!そろそろいい加減に!」
トンガリ頭の本田次郎三郎が近づいてきたー
「どけ!」
五郎はそう叫ぶと、本田次郎三郎を蹴り飛ばす。
カウンターに激突して、
本田次郎三郎が、その場でもがき苦しむー。
ピアース山村もなぎ倒し、
美香に近寄る五郎。
「--よるな!」
美香が叫ぶ。
美香の手にはナイフー。
美香は、それを自分の顔に向けた。
「いっひひひひひ!
今、この女は俺の思いのままだ!
自分の顔を傷だらけにすることだって
できるんだぜぇ!」
美香のおだやかな声を
最大限、狂った口調で発する、新次郎ー。
美香はゲラゲラ笑いながら
自分の顔にナイフを向けている。
「美香ー…俺と一緒に帰ろう」
五郎が手を差し伸べる。
「--うるせぇ!この女の顔、滅茶苦茶にしてやるぞ!」
美香が大声で叫ぶ。
「--お前こそうるせぇ!」
五郎は大声で叫んだ。
「俺はお前などに話しかけていない!黙ってろ!」
五郎のーー
鬼のような形相。
それを見て、美香は”ひっ!?”と叫んだ。
そしてー
五郎は、美香を壁ドンするような形で
睨みつけたー
「俺の妻から、出て行け」
鬼のような口調ー
「---こ、、、この女の顔をーーー」
「--で・て・い・け」
五郎は、脅す口調で、呟いた。
その目はー
怒りに支配されて
今にも人を殺しそうなほどの目つきだったー
「ひぇっ…」
美香は思わず怯えた。
「--美香!目を覚ませ!俺と一緒に帰るんだ!」
五郎が、美香に語りかける時だけ
本来の優しい表情に戻って叫ぶ。
「伸介が、待ってるんだ!」
五郎が叫ぶ。
美香の瞳が震えるー
美香に言葉が届いているのかー
それともー
単に美香に憑依している新次郎が
怯えているのかは分からない。
それでも、五郎は力の限り叫んだ。
そしてー
美香を抱きしめて、美香にキスをする五郎。
美香がじたばたと、もがくー
「俺も、伸介も、美香のことが大好きだから」
五郎は、顔を少し赤らめながらそう言うと、
美香の心に響けーと、願いながら
もう一度優しく美香を抱きしめてキスをしたー。
人前でこんなことをするのは
恥ずかしいー
けれど、もしも、もしも美香に
響く可能性が0.1パーセントでも
あるのであれば、五郎はなんだってするー
五郎と美香がしばらくキスを続ける…
そしてー
「あれ…わ、、、わたし…?」
美香が、険しい表情ではなく
優しい表情を浮かべて、周囲を見渡した。
「---…美香」
五郎は穏やかに呟いた。
「わたしは…?」
美香が周囲を見渡しながら怯えた表情で言う。
「こ、、この人たちに…
拉致されて、それで…それで…」
パニックになりかける美香を、
優しく抱きしめると、五郎は
”もう終わったんだ、大丈夫だから”と
呟いて、そのまま美香を連れ出した。
・・・・・・・・・・・・・
「おとうさん!おかあさん!」
家では、
両親の帰りを待ちわびていた
長男の伸介が大声で叫んだ。
伸介は嬉しそうに、美香と五郎の方に
走ってくる。
美香は、「ごめんね…」と泣きながら
伸介を抱きしめたのだったー
五郎も、ほっとしたような、そんな笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
五郎と、美香は
久しぶりに夜の時間を過ごしていたー。
伸介が寝静まったあと、
大人の時間を過ごすふたり。
美香も、五郎も、お互いを
たっぷり堪能し、充実した夜を過ごした
「--おやすみ」
美香も寝静まったのを見て、
五郎が微笑むー。
「昼間、酒をスーパーに買いにいったんだけどさ、
超綺麗な女でさ~!
いやぁ…あの女とヤリてぇなぁ~」
・・・当初の目的は果たされたー。
そう、最初からこうすれば良かったんだー
五郎は、自分の手を
見つめながら不気味な笑みを浮かべたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依されたお母さんも取り戻して
はっぴーえんど!ですネ~
え、最後が不穏…?
お読み下さりありがとうございました~☆!

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