<憑依>繁華街に消えたお母さん③~絆~(完)

憑依されて繁華街に消えた妻ー

妻を取り戻そうとする夫ー

母の帰りを待つ息子ー

家族の絆の行方は…?

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「--ふふふ…別に何もされてないわよ~?」
美香が甘い声を出しながら笑うー。

”ギャラクシーヘヴン”という名のバーでは
緊張感が高まっていたー

バーのマスターの坂倉が、
その様子を見つめている。

美香と夫の五郎―、
そして美香に憑依した新次郎の仲間、
賀助、ピアース山村、本田次郎三郎の6人が
店内にいる。

「--わたしは、自分の意思で
 家族を捨てて、女として生きる道を選んだの!
 うっふふふふふ♡」

美香の悪魔のような囁きに
五郎は叫ぶ。

「美香!正気を取り戻せ!
 何をされた!?」
五郎は必死に美香に呼びかける。

美香が自分の意思でこんなことをするはずがないー。
付き合い始めて、プロポーズして結婚して
子供が出来てー…
美香は、こんな人間じゃないことは
よく知っている。

「だ~か~ら~!」
美香はイラついた様子で叫ぶ。

そして、自分の手で自分の胸を揉み始めると
クスクスと笑う。

「わたしは自分の意思でおっぱい揉んでるの~!
 うふふふふふふっ♡」

美香の姿に、賀助たちがニヤニヤしながら
五郎に近寄って
五郎の肩をポンと叩いた。

「ま、そういうことだ。
 美香は俺たちの女だ。
 テメェは金を置いてとっとと帰りな」

そんな賀助の方を
五郎は睨み返す。

「-こんなことして楽しいか?」

「あ?」

賀助が表情を歪める。

「俺の妻に、こんなことさせて楽しいか?」
五郎が怒りの形相で大声で怒鳴った。

「だから!わたしは、自分の意思でやってるって
 言ってるだろうが!」

美香が声を荒げた。

「--お前、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
トンガリ頭の本田次郎三郎が叫びながら
五郎の胸倉をつかむ。

だがー
五郎は、怒りの形相で、本田次郎三郎を掴むと、
そのまま投げ飛ばした。

吹き飛ばされた本田次郎三郎が、バーの奥にあった
ダーツの的に突き刺さる。

トンガリ頭が突き刺さって
ジタバタしている次郎三郎をよそに、
賀助が怒りの声をあげた。

「調子に乗るんじゃねぇ!」

とー。

五郎は向かってきた賀助の拳を
止めるとー
そのまま賀助を突き飛ばした。

「--テメェ…」
賀助は驚いた表情を浮かべるー

五郎はー
学生時代、格闘技をやっていた経験があるのだー

そこらのチンピラには、負けない。

「---ふざけやがって!」
賀助が顔を真っ赤にして襲い掛かってくる。

だがー
五郎は賀助を簡単に殴り倒すと、
賀助は床の上でそのまま気絶してしまった。

「--あひっ!?」
ピアスまみれのピアース山村が
怯えた表情で叫ぶ。

「--俺の妻に何をした?」
五郎がピアース山村の胸倉をつかむと、
ピアース山村は悲鳴をあげた。

「あ、、、あ、、、あ、、、やめてくれ…たすけてくれ…!」
ピアスまみれのいかつい外見とは裏腹に
ピアース山村は臆病だった。

妻を奪われた五郎の怒りの形相に怯える山村。

しかしー

「キエエええええっい!!」
背後から、本田次郎三郎が、襲い掛かってくる。

羽交い絞めにされてしまった五郎は、
身動きを封じられてしまう。

そんな五郎を見つめながら美香が近寄ってくるー

「美香…!目を覚ませ…!
 こいつらに何をされたんだ!」
五郎はじたばたしながら叫ぶ。

「---だからぁ…!
 わたしの意思だって言ってるだろうが!」
美香は乱暴に叫ぶと、五郎の頬に
思いっきりビンタを喰らわせた。

「---美香!頼む!目を覚ましてくれ!
 薬か…?それとも脅されているのか!?」
五郎が叫ぶー。

美香は「うるせぇ!」と叫びながら
五郎に2回、3回とビンタを喰らわせていくー。

美香はー
暴力なんて振るわないー
五郎は思うー。

こんなこと、するはずがないんだー

とー

美香は、チャイナドレス姿のまま、
五郎の水落を蹴り飛ばす。

倒れた五郎を足で踏みにじる美香。

「---うっふふふふ…
 これが本当のわたし…

 どう?失望したでしょ?」

美香が倒された五郎を、
まるで女王様のように
見下しながら言う。

「美香…頼む…元に戻ってくれ」
五郎は苦しみながら叫ぶー

しかしー
美香は、そんな五郎に唾を吐き捨てた。

美香が、気絶しているリーダー格の賀助を
見つめる。

(だらしないアニキだぜ)

美香に憑依している新次郎はそう思った。

「おい!そいつをつまみ出せ!」
美香が叫ぶ。

「え…!?で、、でも」
ピアース山村が戸惑いながら言う。

「いいから、つまみ出せ!」
美香の怒鳴り声に
ピアース山村はビクッとして、
言われるがままに
本田次郎三郎と協力して
賀助をバーの外に放り出した。

「----ねぇ、五郎?
 わたしはね…
 夜の街に生きる女になったの…

 うっふふふふ」

美香が五郎の手を踏みにじりながら言うー。
五郎は苦痛に耐えながら叫ぶ。

「美香…!何があった・・・!?
 なぁ、頼む!教えてくれ!」

「--べ~つ~に~な~に~も~~~?」
美香はイライラしながらそう言うと、
五郎を蹴り飛ばす。

悲鳴をあげる五郎。

美香はバーの店主の坂倉から酒を貰うと
それを飲みながら叫んだ。

「この身体はエロいよなぁ~!
 もっともっと、エロいことしてぇんだよわたしはぁ!」

美香が顔を赤くしながら叫ぶ。

五郎は、そんな様子を見ながら
”こんなの美香じゃない”と
そう思ったー

そして、何も考えずに
口から言葉が出たー

「お前は…誰だ!?」

とー。

そうだー
美香であるはずがない。
あの美香がこんなことするはずがー

「---はぁ~?」
美香が笑いながら言う。

「---お前…本当に美香なのか!?
 お前は…誰なんだ!?」
五郎が叫ぶと、
美香がクスクスと笑うー

次の瞬間ー
美香の首筋のあたりから
ドロドロとしたスライムのようなものが
ボコボコと出現してー
それが、人の顔になった。

「---!!!」
五郎は目を見開く。

美香の首筋にスライムのようなー
不気味な人の顔が出現した。

「--へっへへへへへ…
 しつこいおっさんだなぁ…
 教えてやるよ」

虚ろな目になった美香と
首筋からドロドロした状態で出現した新次郎が
同じ言葉を口にするー

美香の声と新次郎の声が二重に響き渡る。

「俺が、お前の妻を、
 乗っ取ってやったんだよ!」

新次郎の顔が笑う。
美香が虚ろな目のまま笑う。

「な、、なんだと!」
五郎が叫ぶー。

美香の目は生気を失っているー
代わりに美香の首筋に生えるようにして出現した
五郎の顔が笑う。

「---俺が、美香になったんだ!
 美香は俺のものだ!」
2人分の大声がバーに響き渡る。

そして、新次郎の顔が再びボコボコと泡立つように
美香の中に消えていくー。

「お前の妻は、俺のものだ!」
目に輝きを取り戻した美香が
大声で叫んだ。

「…ふ、、ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるな!」
五郎は大声で叫ぶ。

妻が憑依されていたなんてー
乗っ取られていたなんてー
そんなことが現実にー

「美香から出て行け!」
大声で叫ぶ五郎。

さっきまで受けた暴行の痛みも忘れて
勢いよく立ち上がると、
五郎は、美香の方を睨んだ。

「おいおいおいおい!おっさん!そろそろいい加減に!」
トンガリ頭の本田次郎三郎が近づいてきたー

「どけ!」
五郎はそう叫ぶと、本田次郎三郎を蹴り飛ばす。
カウンターに激突して、
本田次郎三郎が、その場でもがき苦しむー。

ピアース山村もなぎ倒し、
美香に近寄る五郎。

「--よるな!」
美香が叫ぶ。

美香の手にはナイフー。
美香は、それを自分の顔に向けた。

「いっひひひひひ!
 今、この女は俺の思いのままだ!
 自分の顔を傷だらけにすることだって
 できるんだぜぇ!」

美香のおだやかな声を
最大限、狂った口調で発する、新次郎ー。

美香はゲラゲラ笑いながら
自分の顔にナイフを向けている。

「美香ー…俺と一緒に帰ろう」
五郎が手を差し伸べる。

「--うるせぇ!この女の顔、滅茶苦茶にしてやるぞ!」
美香が大声で叫ぶ。

「--お前こそうるせぇ!」
五郎は大声で叫んだ。

「俺はお前などに話しかけていない!黙ってろ!」
五郎のーー
鬼のような形相。

それを見て、美香は”ひっ!?”と叫んだ。

そしてー
五郎は、美香を壁ドンするような形で
睨みつけたー

「俺の妻から、出て行け」
鬼のような口調ー

「---こ、、、この女の顔をーーー」

「--で・て・い・け」
五郎は、脅す口調で、呟いた。

その目はー
怒りに支配されて
今にも人を殺しそうなほどの目つきだったー

「ひぇっ…」
美香は思わず怯えた。

「--美香!目を覚ませ!俺と一緒に帰るんだ!」
五郎が、美香に語りかける時だけ
本来の優しい表情に戻って叫ぶ。

「伸介が、待ってるんだ!」
五郎が叫ぶ。

美香の瞳が震えるー
美香に言葉が届いているのかー
それともー
単に美香に憑依している新次郎が
怯えているのかは分からない。

それでも、五郎は力の限り叫んだ。

そしてー
美香を抱きしめて、美香にキスをする五郎。

美香がじたばたと、もがくー

「俺も、伸介も、美香のことが大好きだから」
五郎は、顔を少し赤らめながらそう言うと、
美香の心に響けーと、願いながら
もう一度優しく美香を抱きしめてキスをしたー。

人前でこんなことをするのは
恥ずかしいー
けれど、もしも、もしも美香に
響く可能性が0.1パーセントでも
あるのであれば、五郎はなんだってするー

五郎と美香がしばらくキスを続ける…

そしてー

「あれ…わ、、、わたし…?」
美香が、険しい表情ではなく
優しい表情を浮かべて、周囲を見渡した。

「---…美香」
五郎は穏やかに呟いた。

「わたしは…?」
美香が周囲を見渡しながら怯えた表情で言う。

「こ、、この人たちに…
 拉致されて、それで…それで…」
パニックになりかける美香を、
優しく抱きしめると、五郎は
”もう終わったんだ、大丈夫だから”と
呟いて、そのまま美香を連れ出した。

・・・・・・・・・・・・・

「おとうさん!おかあさん!」

家では、
両親の帰りを待ちわびていた
長男の伸介が大声で叫んだ。

伸介は嬉しそうに、美香と五郎の方に
走ってくる。

美香は、「ごめんね…」と泣きながら
伸介を抱きしめたのだったー

五郎も、ほっとしたような、そんな笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

五郎と、美香は
久しぶりに夜の時間を過ごしていたー。

伸介が寝静まったあと、
大人の時間を過ごすふたり。

美香も、五郎も、お互いを
たっぷり堪能し、充実した夜を過ごした

「--おやすみ」

美香も寝静まったのを見て、
五郎が微笑むー。

「昼間、酒をスーパーに買いにいったんだけどさ、
 超綺麗な女でさ~!
 いやぁ…あの女とヤリてぇなぁ~」

・・・当初の目的は果たされたー。
そう、最初からこうすれば良かったんだー

五郎は、自分の手を
見つめながら不気味な笑みを浮かべたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依されたお母さんも取り戻して
はっぴーえんど!ですネ~

え、最後が不穏…?

お読み下さりありがとうございました~☆!

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