大事な親友が人質に取られれしまったー
数千年の間、ずっと憑依で生きながらえてきた男は、
今の身体である茉穂の親友を人質に
取られて困惑するー
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血を吐いて床にうつ伏せになって苦しむ茉穂ー。
もうー
限界ー…
それでも茉穂は、立ちあがるー
友人の快子を助けるためにー
「---んふふふふふふふ
ごめんねぇ…快子?」
英香が人質にとった快子の頬を
舐めながら笑う。
快子は怯えて、震えている。
「わたしね~英香だけど
英香じゃないの~くくくく」
英香はー
茉穂に憑依している男の
”敵対部族の男”に、憑依されていたー。
敵対部族の男も、茉穂に憑依している男と
同じように、原始時代から
あらゆる身体を渡り歩き、生きながらえてきた。
茉穂に憑依している男に強い恨みを持つ彼は、
何度も何度も、あらゆる時代で、彼を殺してきたー
そして、今回も…
「--わ、、、わ、、わたしを…騙してたの…?」
快子が悲しそうに呟く。
快子は、何も知らないー
純粋な女子高生だ。
友達である茉穂と英香のひみつを知って、
震えていたー
「--んんふふふふふ~
まぁ、快子と知り合ったときには、わたしもアイツも、
もう乗っ取られてたから、
だましたっていうか、ねぇ?」
英香が、茉穂の方を見て笑う。
「やめなさい…快子を離しなさい!」
茉穂が叫ぶ。
「--へへへへ…
こんな女に情でも移ったのか~?
どうせ俺達はこの身体が死ねば
また次の身体に憑依して生き続ける。
別に快子一人ごとき死んだって
関係ないでしょぉ~?あははははは!」
英香がゲラゲラと笑うー。
「--ふ、、ふざけないで!
快子は、わたしの…わたしたちの大切な友達でしょ!」
茉穂は、茉穂として叫んだー
例え、身体を乗り換え続けて何千年
生きていてもー
今の自分は茉穂だし、
快子は茉穂の友達だー
「--友達ねぇ…」
英香は笑うと、
快子の頬をナイフで傷つけはじめた。
「んふふふふふふっ!
俺はさ、選ばれた人間だ!
だってそうだろ?
何回死んでも、霊体になって
他のやつに憑依できる!
こいつら人間は、俺達の
入れものだよ!
ははははは!」
英香が笑うー
その表情は、普段の優しくて
しっかりものな英香の表情では
なくなっていたー
「--入れものぶっ壊そうが、自由だろうが!」
英香がスカートをひらひらさせながら
快子を蹴り飛ばす。
快子が悲鳴をあげて吹き飛ばされる。
「--今、快子を八つ裂きにしたって
捕まる前に自殺してしまえば
また次の身体に行けるんだぜ~?へへ!
罪も何もかも、チャラだ!」
英香はナイフを舐めながら言う。
泣きじゃくる快子を見て、
英香はニヤリと笑みを浮かべた。
「そういえば快子ぉ~?
トイレ行きたいって言ってたよねぇ?」
英香はそう言うと、
快子の髪を引っ張って
無理矢理起こす。
「--へへへ…そろそろ我慢の限界だろ?」
英香が笑うー。
「---や、、やめて…」
掴まれた快子は震えている。
「ほら、ここで漏らせよー
友達のわたしが見ててやるから」
英香がニヤニヤしながら、
快子のスカートのあたりを
ツンツンとつついているー
「や…やめなさい!
何のためにこんなことを…!
快子は無関係でしょ!?」
茉穂として叫ぶー。
自分に恨みがあるのは分かったー
これまでー
あらゆる時代で自分を殺してきたのも分かったー
だがー
快子は、無関係のはずー。
「--違うね…
俺はお前が苦しむ顔がみたいんだー…
それにー
こうして好き放題するのって、楽しいだろぉ?
優しい好青年を豹変させたりー
忠実な家臣に突然謀反を起こさせたりー
優秀な軍人になって敵に情報を流したりー
へへへへへっ
たまんねぇぜぇぇぇ!」
英香が叫ぶー
そして、茉穂から視線を逸らすと叫んだ。
「おら!漏らせ!漏らせよ!」
快子の頭を乱暴につかむと
泣きじゃくる快子に向かって英香は叫ぶー
「漏らせ!失禁しろ!
ひひ!ひひひひひひ!ひひひひひ!
友達の前で、見せろよぉ~!
無様な姿を!
えへへへへへ!」
笑いまくる英香ー
やがてー
快子がうめき声をあげながらー
我慢の限界に達してー
その場で漏らしてしまったー。
快子は、その場に座り込んで
しくしくと泣いている。
「ひゃはははははははは!
快子のおもらしだぁ~~~!!!」
英香が大声で笑う。
「---貴様~~~!」
茉穂は、茉穂として振る舞うことを
やめて、英香の方に突進した。
「ひひひひひひ!」
狂ったように笑う英香。
ナイフを茉穂の方に
突き立てようとするー
可愛らしい女子高生二人の激しい喧嘩ー
外からはそう見えるかもしれないー
だが、実際にはー
「--ひひひひひひひ!
お前を殺すのは、これで何回目かなぁ!?」
髪を振り乱し、
凶悪な表情を浮かべている英香はー
まるで別人のようだった。
「---ふ、、ふざけるな…!
ヒトをおもちゃのように扱って…!」
茉穂が叫ぶ。
だが、英香は笑ったー
「お前だって同じだろぉ!?
憑依を繰り返して何人もの
人生を奪ってきた!
お前と俺は同類だぁ!」
英香に言われて、
茉穂は自虐的に笑うー
「あぁ…そうだな……
お前の言うとおりだー」
欲しくて、この力を手に入れたんじゃないー
でもー
”憑依”の力を手に入れて
永遠に生き続けることになればー
誰だってー…
茉穂に憑依している男も、
悪人として暴れてみたこともあるー
けどー
それでも今、この瞬間、自分は茉穂だー。
そしてー
快子を助けなくてはならないー
「-----うあああああああああああ!」
茉穂は鬼のような形相で叫ぶと、
英香からナイフを取り上げてー
それを、英香の首筋に突き立てた。
「あ……」
英香が驚いた表情を浮かべているー
こうするしかなかったー
学校は大騒ぎになるー
茉穂ももう終わりだー
茉穂の両親も悲しむー
けどー
快子を助けるためには…
英香がその場に倒れて動かなくなる。
「---はぁ…はぁ…」
茉穂もその場に座り込むー。
そして、涙を流すー
快子を巻き込んでしまったー。
この人生も終わりだー。
また、別の身体にー
そう思っていた直後、
茉穂は物凄い衝撃を感じて
思わず悲鳴を上げたー
「---!?」
頭を思いっきり殴られたー
茉穂はそう感じながら
振り返るー
するとそこにはー
漏らしてスカートを濡らしたままの快子が
ニヤニヤしながら立っていたー
「ひひひひひひ…」
涙を浮かべながら笑っている快子ー
「---…!?」
茉穂は驚く。
そして、すぐに状況を理解したー
「お…お前…こ、今度は快子に…!?」
茉穂が叫ぶ。
快子の目からは、
さっき流していた涙がまだ流れているー
「ひっひひひひひ!
使えねー入れものが壊れたからさぁ」
快子が倒れている英香の方に向かって行くー
そして英香を蹴り飛ばすと、
快子は笑いながら茉穂の方を見た
「--新しい入れものをゲットしたんだよぉ!
あははははははは!」
狂ったように笑う快子ー
快子がー
”敵対部族の男”に憑依されてしまったー
自分と、奴の憑依はー
”一度憑依したら自分の意思では抜け出せない”
つまりー
憑依された時点で
その人間は、
快子はーー”死んだも”同然ー
「ねぇ、茉穂ちゃん…
わたしたち、ずっと友達だよね?」
快子の言葉を思い出すー
これまでにも、
友達は何人もいたし、
愛し合った相手もいたし、
忠誠を誓った相手もいたー
これからも、大勢そういう人間はいるだろうー
でもー
今はー
今は茉穂だー
今、大事な親友は
快子だー
「快子を解放しなさい!!」
茉穂として叫ぶ。
「無理だって知ってんだろうがよぉ~!」
快子はそう言いながら自分の下着を
触ってニオイを嗅いでいる。
「んんんんん~くっせぇ~!
いひひひひぁぁああははははは!」
漏らした自分のニオイを嗅いで笑う快子。
「---快子を返せ!」
茉穂が叫ぶー
”もう無駄”
そんなことは分かっている。
それでもー
「ねぇ、茉穂ちゃん…
わたしたち、ずっと友達だよねぇ~~~?
あははははははははっ」
快子が髪の毛をボサボサにしながら笑う。
「か、、快子…」
茉穂は、乗っ取られてしまった快子の方を見る。
憑依されたら快子は、もうー
「おらぁ!」
快子が、茉穂を殴りつけた。
茉穂は悲鳴を上げて吹き飛ばされる。
快子が茉穂の上に
馬乗りになって、茉穂に
暴行を加えて行く。
「ひひひひひひひっ!
いひひひひひひひひひっ!」
狂ったように笑い続ける快子。
茉穂は、悲鳴を上げながら
苦しそうな表情を浮かべた。
「---そう!そう!そう!!!!
いいよ!!いいよぉ!
その顔!!!
あぁぁぁ…興奮するううぅぅ!」
茉穂をグーで殴りながら笑う快子。
「俺はさぁ、お前のその苦しむ顔を
見るために、この数千年間、
何度も何度も何度もお前を
殺してきたんだぁ!
いひ、ひひひひっ、、あぁ、、この身体も
興奮して、、濡れてきやがったぁぁ…
あっはははは♡」
快子の手に血が付着するー
快子は嬉しそうにそれを舐めると、
ボロボロになった茉穂の方を見つめたー
「お前が悪いんだー
あの時、お前が無駄な抵抗をするからー」
快子が手を舐めながら笑うー
”無駄な抵抗”
原始時代のことを言っているのだろうー
敵対部族の男に撃たれて
倒れていた自分が最後の力を
振り絞って、
敵対部族の男に攻撃を仕掛けて
”道連れ”にしたー。
あの時のことを、こいつは、言っているのだろうー。
「--今までも、
そして、これからも、俺は、お前を、
殺し続ける!」
快子が大声で笑ったー。
ガラッ!
教室の扉が開くー
「きゃああああああああああ!」
他の生徒が帰ってきたー
争っている間に、
抜け出した美術の授業が
終わってしまったのだー
血を流して、
倒れている英香ー
ボロボロになっている茉穂ー
そして、ケラケラと笑っている快子ー。
「ひひひひひ!やぁみんなぁ!」
快子が狂ったように笑いながら
クラスメイトの方を見る。
そして、何かをしようとしたー
”これ以上ー”
茉穂に憑依している男は
どうするべきか分からずー
とにかくー
行動を起こしたー
茉穂が突然快子に抱き着く。
「--!?なっ!?」
快子がもがくー
もがく快子を無視して
茉穂は、呟いたー
”自分たちが憑依すればー
身体が死ぬまで抜け出すことはできないー”
でもー
もしも、
もしも奇跡が起きてくれればー
クラスメイトたちが悲鳴を上げる中、
茉穂は呟いた。
「わたしたち、ずっと友達だよー
快子ー」
とー。
毒の影響と暴行の影響で
茉穂は既に限界だったー
意識は薄れてー
そしてー
気付いたときには”霊体”になっていたー。
茉穂が、死んだのだろうー
霊体になった男は、
上空で涙を流していたー
快子はどうなったのだろうー。
男は、確認しようと思ったー
だがー
それは、しなかった。
自分はもう、茉穂じゃないー
茉穂としての自分は死んだー
”ありがとうー
わたしたち、ずっと、友達だよー”
快子の声が聞こえた気がしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数週間後ー
男は上空を漂っていたー
”敵対部族の男”との
戦いは永遠に終わらないのだろうー
また誰かに憑依すれば、
あいつが、現れるかもしれないー
「---もう、お前に俺は殺させないー」
男は呟いたー
もう、憑依はやめたー。
永遠に生きるのに疲れたー
もちろんー
憑依を止めても、自分は
消えることはできないー
もしかしたらまた、誰かに憑依したくなって
しまうかもしれないー
また、誰かの人生を奪って、
誰かを巻き込むかもしれないー
でもー
それでもー
今はもう、休みたかったー。
男は、静かに微笑むと、
そのまま、いずこかへと姿を消した―
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
死ぬ度に
憑依を繰り返して
何千年も…なお話でした!
とにかく破壊を繰り返している案と
今回書いた案があったのですが、
今回は破壊はやめておきました(笑)
お読み下さりありがとうございます~!
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