<憑依>輪廻転生②~気配~

何千年も憑依で生き続けている男ー

女子高生・茉穂として現代を生きている彼は
”不穏”な気配を感じ取るー。

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「---行ってらっしゃいませ」

江戸時代ー。
裕福ではなかったがー
ごく普通の農民の夫と
幸せに暮らしていたー。

お松という女性に憑依して
穏やかな日々を過ごしていたー。

だがー

ある日ー

「はぁ…はぁ…はぁ…」

お松は、襲われたー
近所の好青年だった男にー

「お前の顔はいつ見ても美しいぜ!へへっ!」
好青年はお松に暴行を加えたー

”こんなやつ…俺の手で”
お松に憑依している”彼”はそう思ったー

だがー
お松の身体ではそれはできなかったー。
お松の前の身体ならー
それができたのにー。

その前は”山賊の頭”だった。
屈曲な男だー。
たまには”レール”から外れて生きてみるのも
面白いー
そう思ったからだー。
最後には、部下に裏切られて刺されて死んでしまったが…。

抵抗することもできず、
大声で喘がされるお松ー。

そして、散々遊ばれた挙句、
好青年だった男に、喉を切られてー死んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

現代―

何故、過去のことが頭をよぎるのだろう。

そう思いながら、
教室の前で教室の中を伺っていると
「くくく…」と女子生徒が笑いながら
そのまま茉穂の弁当を閉じた。

そして、その女子生徒が
教室から出てくる。

咄嗟に身を隠した茉穂ー。

「--」
教室の影に隠れて後姿しか
見えなかったがー
クラスの女子であることには
間違いないー

「--」
茉穂はこっそりと教室に戻ると
自分の弁当を確認したー。

特に異変はないー

だが、”何か”を入れられていた気がするー。

茉穂は、不安に思いながらも
弁当を閉じて、体育の授業に向かった。

・・・・・・・・・・

昼休みー

いつものように快子・英香と教室で
昼食を食べ始める茉穂。

だがー
茉穂は、弁当に手をつけようとしなかった。

「---どうしたの?茉穂ちゃん?」
快子が不思議そうに尋ねてくる。

「--え…あ、うん、ちょっと食欲なくて」
茉穂は嘘をついた。

弁当を持ち帰って、調べるつもりだった。
何か”盛られた”気がするー。

「---え~?ダメだよ食べなきゃ~!」
快子が言う。

「-ほら!少しだけでも、食べようよ~!」
快子が茉穂の弁当箱を指さしながら言う。

「--快子…茉穂、困ってるし、
 やめなさい」
しっかり者の英香が言う、

「---え~」

ふとー
茉穂は思うー

そういえばー
さっき、茉穂の弁当に
何かを”盛っていた”女子はー
この2人の後姿によく似ていた気がするー。

でもー。
快子は、茉穂のことを”ずっと友達”と言っているほど
仲良しだし、
英香は、小学生時代からの幼馴染ー

そんなことをするはずはー

「どうしたの?」
英香が不思議そうに茉穂の方を見る。

「ん、、え…いや、なんでもない」
茉穂はそう呟くと、
不安そうに二人の方を見つめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

第2次世界大戦ー。

”彼”は、
上官と共に、ジャングルの中を
抜けていたー。

信頼する上官とふたりー。

彼は、この時は、日本ではなく
別の国の人間として生きていたー。

とある戦いで奇襲を
受けて、上官と共に逃げていたのだ。

信頼する上官は
身を挺して自分を守ってくれたー。

そしてー
足をやられた上官を
近くの木に寄り掛からせて
休ませる。

「先に、行け…」
上官は呟く。

「だ、だめです!自分ひとりで逃げるなんて!」
”彼”は言った。

なんども、
何度もー、
”大切な人”を失ってきたー

これまでに、数えきれないほどー。

何千年も生きるということは、
何千年分の別れを背負うことでもあるー。

「--」
ぴくっ、と上官が震えた。

そして、彼はもう一度呟いた。

「先に、行け」

とー。

「--ダメです!自分は…!」

そこまで言いかけて”彼”はハッとしたー。

上官が、自分に銃を向けている。

上官はニヤリと微笑んだ。

「先に、”逝け”」とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー
自宅に帰宅していた茉穂は、
ランニングシャツとパンツ姿で
部屋をうろついていたー。

元は男だし、
この方がラクだから
誰も見ていないところでは
茉穂として無理して振る舞う必要はない。

これまでの知識を元に
弁当を分析していく茉穂。
専用の道具もこっそり持っている。

そしてー

「---こ、、これは…」
茉穂は驚いたー。

弁当に一種の”毒”が盛られていたー。
それが、茉穂の身体に負担をかけているー。
茉穂の胸がずきずきと痛む原因は
恐らくこれだー。

そしてー
もう”手遅れ”かもしれない。

茉穂の身体はー

「--誰がこんなことを…」
茉穂は呟く。

”毒”を盛る女子高生ー。
なんて、いるのだろうかー。

茉穂は考える。

だがー
体育の授業前に、
”女子”が毒を盛っていたのは
間違いないー

いったい、どうしてー?

茉穂は、翌日の時間割を考える。
もしも、もしも
毒を盛るとすれば、どのタイミングだろうかー。

昼休みの前に、毎回体育の授業が
あるわけではないー。
茉穂が教室を離れるタイミングがあるが、
他の生徒もたくさんいる中、
茉穂の弁当を勝手に取り出して
何かをいれれば確実にばれるし、
そんなことをしてたら、誰かが茉穂に
〇〇が茉穂ちゃんの弁当に何かしてたよ~!と
教えてくるはず。

それがないと言うことはー。
誰も見てない時にやっているはずだー。

毎日”毒を盛ってる”わけじゃないのかもしれないー

だがー。

ーーー”1、2時間目の美術ー”

茉穂は、そう呟いた。

あぐらをかきながらイライラした様子で
頭をかきむしると、茉穂は、
”美術の時間は美術室に移動するから、
 教室ががら空きだ”

と、考えたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おらぁ!」
昭和時代後期ー。

たまには好き放題やってみたいー、
と、極悪非道の男になって、
好き放題やっていたこともあるー。

「--ははははははははっ!」
裏世界で、名を馳せていたー。

しかし、ある日ー
彼は、一人の婦警に声をかけられたー。

「あん?」

発砲音が響き渡る。

”いい顔ね…”

婦警が、突然、発砲して
彼を撃ったのだー

日本で、そんなことが許されるはずがー。

驚きながら彼は倒れる。

そして、婦警は狂ったように笑いながら
何度も何度も彼に向かって
発砲したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

美術の時間が始まるー

教室の移動前に
様子をうかがっていたが、
特に怪しい人物はいなかった―。

「---授業後かな…」
茉穂は呟く。

美術の授業終了後に
足早に教室に戻ってくれば
教室には誰もいない状態だー

そこで、悪さをするのかもしれないー。

美術の授業中ー

快子が「先生、お手洗いいいですか~?」と
先生に許可を取ってそのまま外に出て行く。

「---」
茉穂は、特に何も考えずに
美術の授業を受けていたが
ハッとしたー

まさか、快子が弁当に毒をー?

「--せ、先生!わたしもちょっと、いいですか?」
茉穂はそう呟くと、
頭を下げて、美術室から外に出たー。

快子が廊下を歩いていくー

その背後を尾行する茉穂ー

快子はーー
”一番近く”のトイレには寄らなかったー。

茉穂は、
「快子…?」と呟きながら
快子を尾行するー。

快子は、明らかに教室の方に向かっているー

”弁当に毒を盛るつもりだー”
茉穂はそう思った。

理由を聞かなくてはいけないー
茉穂を殺そうとしている彼女にー
理由を…。

茉穂の弁当に盛られた毒は、
少しずつ人を弱めるタイプのものー。

「っ…」
茉穂はずきっと痛みを感じながら
快子が教室に入って行くのを確認したー。

間違いないー
快子がわたしを殺そうとしているー。

そう感じた茉穂は教室の中に飛び込んだ。

「---快子!」
いつもは見せない、茉穂の慌てたような様子に
快子はドキッとする。

「ま…茉穂ちゃん?」
快子が振り返る。

「---わたしの弁当に何をするつもり?」
茉穂が言うと
快子は困惑した様子で返事をした。

「弁当ー?」
快子の様子がおかしいー

”ばれた”という反応ではなく、
”本当に困っている”
そんな、反応だー。

「---ま、茉穂ちゃんの弁当がどうかしたの…?」
快子の言葉に、茉穂は困惑するー

「---え…」

快子は、教室にあった自分の水筒を手にすると
それを飲むー。

そして呟いた。

「教室に寄ったのは、水筒のお茶のみに来ただけだよ…?
 このあとトイレに行くし…」

快子が言うー

嘘をついているのかー?
それとも…

茉穂が次の言葉に迷っていると
快子が教室から外に出ようと
出口の方に向かう。

誰かが弁当に毒を
盛り込んでいるー
少しずつ、茉穂の身体を蝕む毒をー。

それは間違いないー

「---快…」
茉穂がそう言いかけたその時だったー

快子が開こうとした教室の扉が
勢いよく開いたー。

別の生徒が入ってきたのだ。

驚く快子。

「あ~あ」
教室に入ってきたのはー
茉穂、快子のもう一人の友人で、
茉穂の幼馴染でもある英香だった。

「---!?」
茉穂が驚いて英香の方を見る。

英香はポケットナイフを取り出して
快子の首筋に突きつけた。

「ひっ!??」
快子が驚いて声を上げる。

「---も~ちょっと、この生活を
 楽しみたかったけど仕方ないかぁ。
 毒に気付かれちゃったみたいだし、
 お前は勘がイイから、
 時期にわたしに辿り着くだろぉ?へへへ」
英香が普段見せないような表情を
浮かべているー。

快子は「え、英香!?どうしたの!?」と
ナイフを突きつけられて驚いている。

「--ちょ、、え、、英香!?」
茉穂も、驚いていたー。

英香が毒を入れた本人であることもそうだし、
英香が快子にナイフを突きつけている
この状況が、理解できなかったー

「---敵は本能寺にあり…」
英香がクスクス笑いながら言う。

「楽しかったなぁ…姫?」
英香が鋭い目つきで茉穂を見る。

「な…何を…」
茉穂は困惑するー

戦国時代ー
自分は、本能寺で命を落とした。
あの時の明智光秀は信長ではなく
彼女に恨みがあるかのように向かってきた。

「--な、何なの!?」
快子が必死にもがいている。

そんな快子に目もくれず、
英香は笑う。

「お前の顔はいつ見ても美しいぜ!へへっ!」
英香が続けてそう言い放ったー

「---!!」
江戸時代ー
”お松”という町娘に憑依して生きていた時ー
豹変して自分を襲った青年が言った言葉ー

「先に、逝けー」
英香がニヤニヤしながら言うー

戦時中ー。
裏切った上官が、自分を撃つ前に言い放った台詞ー

「---お、、お前は何だ!?」
茉穂として振る舞うことも忘れて
茉穂は叫んだー

「--お前と同じだよ…」
英香がクスクスと笑う。

「--わたしも、いいや、俺も
 憑依を繰り返して、数年間生きてきた!」

英香が大声で叫ぶー

快子は、ナイフを突きつけられながら
英香と茉穂の方を戸惑いながら見つめるー

「---!?」

茉穂は、快子の方を見るー

”ずっと友達ー”
そんな快子を巻き込むわけにはいかないー

「----か、快子を離して!」
茉穂として叫ぶー

自分と同じように、
憑依で生き続けてきた人間がいたなんてー…

そう思いながらー。

「---くくく…覚えてないか?
 俺のこと…?」

英香は、そう言うと、
服をはだけさせて、
胸の上のあたりを晒したー。

そこにはー
”奇妙な文様”が刻まれていたー

「---!!!!」
茉穂は、その文様に見覚えがあったー

自分が最初に生きていた
原始時代ー。

あの時ー
自分は”敵対部族の男”と相打ちに
なって、死んだー

その敵対部族が、身体に刻んでいた文様だー。

「--お前…まさか!」
茉穂が叫ぶ。

すると英香は綺麗な肌に刻まれた文様を
見せながら笑ったー

「---くくく…そう俺だ!
 あの時、お前に殺された俺は
 お前と同じように、憑依の力を手に入れて
 それからずっと生きてきた!

 そしてー
 何度も何度もお前を殺してきた!
 くくく…
 苦しむお前の顔は最高だ!」

可愛い声を震わせながら英香は叫ぶー。

「--平安時代のときも
 戦国時代のときも
 江戸時代のときもー
 お前が憑依した人間の身近な人間に
 憑依して、お前を殺したんだ!
 ひひひひ…

 ある時は明智光秀ー
 ある時は、近所の青年
 ある時は、お前の上官ー
 そして、今が、この女だ!」

英香は自分の顔を触りながら笑った。

「お前がその女に憑依したあと、
 俺は同級生で幼馴染だった
 この女に憑依して
 それからずっとお前と友情ごっこ
 してきたんだ!ケケケ…
 毒でじっくり弱って行くお前を見ながら…な」

快子が困惑する中、
英香はお構いなしに叫んだ。

「---…その子を離…」

無関係の快子は助けなくてはならないー
自分たちはーー
この身体が死んでもまた”次”に行くだけー

でも、快子はー

「---ぐっ!?」
茉穂は突然胸の激痛を覚えて、
その場で吐血したー

「きゃああああっ!?」
快子が叫ぶ。

そしてー
吐血した茉穂を見ながら
満足そうに、英香は微笑んだー。

③へ続く

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コメント

教室移動するとき
教室の鍵は閉めている気がしますが
そこはスルーしていただけると嬉しいデス~(汗

明日が最終回になります!

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憑依<輪廻転生>

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