<憑依>消えた彼女②~真実~(完)

彼女が突然失踪してしまった。

あれから1年ー。

1年前、彼女の身に起こっていた
恐ろしい事態を、彼氏は知らないー。

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「----…」

枝美は違和感に気付く。

ある日の朝ー
自分の部屋が少し荒らされているような、
そんな感覚を覚えた。

確かにー
パッと見た感じでは普通だ。

けれどー
何かが違う。

少しだけー。

そう、誰かがいじって
”元通りに戻した”かのような
そんな感じがする。

そして、最近ー
寝てもあまり疲れが取れない気がする。

枝美は、そんな
”違和感”に悩まされていた。

ある日ー。
食堂でラーメンを食べている彼氏の介司と
楽しく話をしていた枝美は、
ふと最近のことを不安に思う。

時々、自分が無意識のうちに
悪い笑みを浮かべていたり、
意識が少し飛んだりしていることが
ある気がするー

そう、あれはー
告白された日からだ。
ちょっと怪しい雰囲気の男子学生・豪人に
告白されて無理やりキスをされる
夢を見た日から、
少しずつ、何かが狂ってきているような
そんな、気がする。

「そうだ…あのさ…」
枝美が真剣な表情になって言う。

「--…ん?」
介司が枝美の真剣な表情を読み取って
ニヤニヤするのをやめて
話を真剣に聞くポーズに入る。

「--わたし…わたしね…最近…」
枝美が、困り果てた様子で言う。

”おい”

ー!?

枝美が、介司に相談しようとしたその瞬間、
頭の中に”声”が聞こえた

枝美がぴくっと震える。

”余計なこと言うんじゃねぇよ”

「枝美…?」
介司に呼びかけられて
枝美は、枝美を浮かべた。

「あ、ごめんごめん
 やっぱりなんでもな~い!」

介司は気付いていないー
枝美が”中に潜む豪人”に支配されたことをー。

枝美は笑みを浮かべると
ラーメンの方を指さした。

「ほら!早く食べないと伸びちゃう!」

「あ、そうだ!いっけね!」

介司は、笑うと、
再びラーメンを口に運び出した。

”バカなやつ…”
枝美は笑みを浮かべた。

「この女は、もう俺のものだぜ」
枝美はラーメンを食べながら笑う介司の方を
見ながら小さく呟いた。

「え?」
介司が聞き取れなかった言葉を聞き返す。

「ううん!なんでもな~い!」
枝美は微笑みながら、そう返事を返した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夜。

「--!?うっ…」
自宅に帰宅した枝美がうめき声を上げる。

「わ…わたし…」
枝美は周囲をキョロキョロする。

介司とー
介司と食堂にいたはずー。

それで…

それから…?

「わ…わたし…一体…?」
枝美は、怯えきった表情で呟く。

その時だった

”よぉ…
 お前の身体、結構いい身体だよなぁ~
 お前みたいな彼女がいて、羨ましいぜ”

声が聞こえた。

「--!?誰!?」
枝美が振り返る。

しかし、
そこには、誰もいない。
部屋の中には自分ひとり。

”俺だよ。君に振られた豪人だ”

その言葉に、枝美は恐怖の表情を浮かべた。

「ど…ど、、どこにいるの!?
 人の家に勝手に入って来るなんて…
 警察呼ぶよ!」

枝美が叫ぶ。

しかしー

”へへ…
 ヒトの家に勝手に…ねぇ。
 ザンネンだけど俺が勝手に入ったのは
 君の家に…じゃない。

 君の身体だ…!”

「--君の身体だ…!」
豪人が興奮したことによって
枝美も同じ言葉を口にしてしまう。

「-え…ぅ…!?」
枝美が驚いて口を塞ぐ。

「鏡を、見てごらん…」
枝美の口が勝手に動く。

ーー!?!?

枝美はパニックになりそうな気持で
鏡を見たー

そこにはーー
枝美の背後に浮かび上がる
豪人の幽霊のようなものと、
豪人と同じ笑みを浮かべる
枝美の姿があった。

「ひっ…!?」
枝美は思わず尻もちをついてしまう。

”へへへへっ…!
 告白ってさぁ、相手のハートをゲットするもんだろ?”

「--な、何を言ってるの…?」
枝美は泣きそうだ。

”でも、ハートをゲットできなかったなら
 ボディごとゲットするしかねぇよな?ケケケ”

「---…ひ、、…
 や、、やめて!わたしから出て行って!?」

”そんな顔するなよ。
 俺だって鬼じゃない。
 君に”終活”の時間はちゃんとやる。

 これから毎日少しずつ君の時間を
 奪っていくから
 その間に、やり残したこと、
 ちゃんとしておけよ…
 へへへ…

 俺が君を完全に乗っ取ったら 
 あの彼氏とめっちゃくちゃセックスしてやるぜぇ
 へへへへ”

「--そ…そんな…」

”さぁ、今夜は君の自由時間だ
 好きにしなよ”

豪人の声が聞こえなくなる。

「え…ちょっと!そんな!ふざけないで!」
彼女は叫ぶ。

けれどー
豪人はもう反応してくれなかった

・・・・・・・・・・・・・・・・・

枝美は、
日に日に自分が
乗っ取られていくことを感じ、
激しく落ち込んでいた。

”周囲に俺のことは言うんじゃねぇぞ”
と脅されていた枝美は、
相談することもできず、
元気だけを失っていった。

そんな枝美の様子を見かねた彼氏の
介司が心配そうに声をかけてきた

「-…悩みがあるなら、
 俺が力になるから」

介司の言葉に
枝美は”たすけて”と叫ぼうとした。

しかしー

「彼氏、殺しちゃおうか?」
枝美の口から小声でそう言葉が出た。

「--…や、、、やめて…」
枝美も小声でつぶやき返す

「へへ、なら余計なことはするな」
枝美の口が勝手に動いて
小声でそう呟く

そして、枝美は優しく笑みを浮かべた。

「ごめん…
 なんでもないよ…
 ちょっと、疲れてるだけだから」

その言葉に、介司は
少し悲しそうな目をした。

”ブツブツ枝美が呟いていた”
その姿を目撃した介司は
さらに不安を募らせていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ふふふんふんふ~ん♪
 あんなクソ店長のいるバイト、辞めてやったぜ!
 ひはははははははっ!」

枝美が自宅でご機嫌そうに笑っている。

枝美が大学に入ってから続けていたバイトを
豪人は勝手に辞めてしまったのだ。
最後には店長に唾を吐き捨ててー

”お、、お願い…もうやめて!”

今や、立場は逆転していた。
1日のほとんどを豪人が枝美の身体を
使って活動している。

枝美はただ、心の中で悲鳴をあげるだけ。

「--わたし、メイドさんになるの!
 んふふふふふふ~

 あ~エロゲーのキャラそっくりだぜ~
 えへへへへへ」

枝美がエッチな表情を浮かべて笑う。

”お願い!やめてよ!”

しかしー
その言葉は無視される

「おっはよ~!」
大学でも、枝美は乗っ取られた状態が続いていた

「あ、おはよう」
元気になった枝美に介司も微笑み返す。

「ふふふ~か~いじ!」
介司の腕に抱き着く枝美。

”ねぇ…介司!気付いて!!”
心の中で本当の枝美は叫ぶ

「お、おい~みんな見てるぞ~」
介司が苦笑いしながら言う。

むぎゅう…と甘えるようにして
くっついてくる枝美。

枝美はわざと、介司に甘えて見せた。
”この身体も、彼氏も俺のものだ”と
本当の枝美に見せつけるため。

枝美は笑う。
「いいじゃない~!もっとラブラブになろうよ~!」
と。

「-なんだなんだ?今日は妙にハイテンションだな~」

そう言って微笑む介司。

彼氏の介司に
夢を与えた後ー
こっぴどく振って
絶望を与えるー

介司から悪女として
罵られるー
そんな未来を想像しながら
枝美を乗っ取った豪人は
興奮していたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

12月ー

”明日で、最後だ”
豪人はそう告げた。

「さ…最後って…」
枝美は泣きながらそう呟いた

”君の身体を完全に貰う。
 もう、この状態にも飽きた!
 へへへ…
 ごちそうさましようと思ってねぇ…”

枝美はその言葉に
涙を流して「たすけて…」と呟く。

だがー

”ククク
 やだね…。
 お腹が空いているとき
 目の前に美味しそうなケーキがある。
 それを食べることができるのに
 そのまま食べずに帰るやつがいるか?

 いいや、いないね。
 俺は全て食い尽くしてやる。
 枝美ちゃんという存在をな!ケケケ”

「---…」
枝美はその場に蹲って
泣きじゃくった。

”彼氏も、家族も、全部滅茶苦茶にしてやるぜ!
 明日の…そうだな、正午。
 それまでにやりたいことは全部やっておくんだな”

「……」
枝美の身体の自由が戻ってくる。

恐らく豪人は本気だー。
もう、どうすることもできない。

そんな気がした。

「-----介司…」
部屋に飾ってある介司の写真の方を見る枝美。

「………」
枝美は部屋にあった紙を取り出すと、
涙を流しながらそこに
一言だけ書き添えた。

”ごめんね”

とー。

”ははは、何だよそれ”
豪人が枝美に語りかける。

「--…」
枝美はその手紙を机に置くと立ち上がった。

そして、スマホを手に取り、
介司に連絡を入れる。

”今日、話があるの”

とー。

介司から返事が来て
夜に話が出来ることになった
枝美は決意する。

”自分が姿を消す”
ことをー。

こいつがこのまま自分を乗っ取れば、
介司も、家族も何をされるか分からない。
だったらー、
何かをされる前に…

・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

イルミネーションが輝く中、
枝美は介司と合流した。

”たすけて”
そう叫びたくなった。

けれどー。

「--…枝美…
 話って?」

介司の言葉に
枝美は無理して微笑んで見せた。

けどー。
いざ、介司を目の前にしてみると、
枝美は決心が鈍りそうだった。

助けてと叫びたいー
本当のことを全て打ち明けたい。

けれどー
それをすれば、
豪人が、わたしの身体を使って
介司を滅茶苦茶に壊すだろう…。
豪人の性格を考えれば
そのことは簡単に予想できた。

だからー

大切な人を守るために、
枝美が出来ることは、ひとつー。

家族の前からもー
豪人の前からも、
姿を、消すことー。

「………」
枝美は、泣きそうな目で介司の方を見ている。

「--枝美?」
介司が不安になりながら言う。

「ケケケ…笑わせてくれる」
枝美の口を使って豪人が勝手に喋る。
「……あんたの好きにはさせないからー」
枝美はそう呟いた。

小声だから、介司にはよく聞こえなかった
その内容…。」

少しすると、枝美は少しだけ首を振った。

「--枝美…」
介司は”言えない何か”に悩んでいるのだと
考えて、静かに枝美を抱きしめた。

抱きしめられた枝美が
枝美に憑依している豪人に影響されて
悪い笑みを浮かべていた。

しばらく抱き合う2人ー

やがてー
枝美は、無理して微笑んで
介司に告げた。

「--ありがとう」

とー。

介司は、それを
”今日の出来事”に対するありがとうだと
解釈した。

だけどー
枝美のありがとうは、
”今までありがとう”

そういう意味だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

介司と別れた枝美は、
電車に乗ると、田舎の方まで移動する。
夜も寝ることなく移動を続けた
枝美は、やがて山奥に入って行く。

”おいおい、どうするつもりだよ”

「--あんたなんかに、この身体は渡さないから!」
枝美が叫ぶ。

”こいつ、まさか”
豪人は思うー

自殺して、俺もろとも…?

枝美は可愛らしい腕時計を見つめた。
11:55-。
正午になったら完全に体を奪うと
豪人は言った。

だったらー

家族にもー
介司にも、
手出しはさせない。

”遺言”は残してきたー

みんながトラブルに巻き込まれないように
豪人に憑依されたことは
一切書かなかったから
ただの自殺だと思われちゃうかもしれない。

けどー。
それでいい。
介司や家族を巻き込むことはできない

「さよならー」
枝美は、そう呟いて、
崖から身を投げたー。

身体が落っこちて行くー

激しい衝撃を感じるー

”ごめんね”

そう呟いて、彼女の意識は
闇の中に消えたー

”11:58”

「ばーか!」

枝美は崖の上に立っていた。

「正午になったら身体を奪うって言ったけどよ…
 約束、守ると思ったのかぁ~?
 あははははははっ」
枝美は狂ったように笑う。

最後に、夢を見せてやった。
枝美の意識を完全に封じる直前、
枝美のやつには、飛び降りて死ぬー…
イメージを見せてやった。

枝美は、満足しているだろう。

「さぁて…
 女体で遊びつくすかぁ…
 あはははははは♡」
枝美は両手を広げて笑いながら、
山道を降りて、下山したー。

下山してすぐ、枝美は
自分が消息不明になっていることを知る。
家族が捜索願を出したようだ。

”面倒くせぇ”

そう思った枝美は、
家族や介司のところには帰らなかった。

髪型を変えて、
メイクを変えて、
雰囲気をガラリと変えてー、
名前も偽ってー
彼女はいつしか夜の街で
働くようになったー。
己の欲望を、果たすためにー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3年後ー

「--あ、先輩!待ってください!」

介司は就職して、順調に働いていた。
枝美は消息不明のままー
3年も経過すれば、
どうしても、その記憶も薄れて行くー。

介司は、新しい彼女が出来て、
仕事も順調な毎日を送っていた。

出張中ー
立ち寄った繁華街で
先輩に連れられて
キャバクラのようなお店に入る。

「--俺、彼女いるんですけどー!」
介司がそう言うと、
先輩は「まぁまぁ…ここのメイちゃんカワイイからさ」

そう言われて、断りきれずに
お店に入る介司。

メイと呼ばれるキャバ嬢が呼ばれてやってくる。

先輩によれば、
”男が喜びそうなことを何でも知ってる女”なのだと言う。

「-----…!!」
”メイ”の姿を見た介司は
驚いて目を見開いたー

雰囲気は全然違うー

けれど、介司には分かるー

「---…え、、、えみ…??」

介司は、そう呟いたー

もうー
彼女は、介司の知る枝美ではないー。

他人に乗っ取られて
この3年で、まるで別人のように変わってしまった。

メイと名乗っていた枝美は、
介司に気付いて、ニヤリと微笑んだー

(ククク…これから楽しくなりそうだぜ…)

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

再会してしまったことで…
何だか不幸になってしまいそうな感じですネ…!

お読み下さりありがとうございました~☆!

憑依<消えた彼女>
憑依空間NEO

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