ごく普通の女子高生が、
ゲームのキャラクターに憑依されてしまう…!?
憑依された彼女の運命は…?
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女子高生の功野 美奈津(いさの みなつ)は、
彼氏の幸崎 良一郎(こうざき りょういちろう)と、
ゲームで遊んでいた。
…と、言っても対戦プレイをしているわけではない。
良一郎が遊んでいるRPGゲームを
隣で美奈津が見つめているー。
という状況だ。
”お願い…助けて”
ゲームの中のヒロインが、涙を流しながら言う。
RPGゲーム
ダークネスファンタジー。
昔から続いている人気シリーズで、
その最新作がつい最近発売されたのだ。
DFと略されることの多いそのゲームは
ファンも多く、彼氏の良一郎もその一人だった。
「--う~ん、こういう子って、好きになれないなぁ~」
ゲームのヒロインである姫を指さして言う。
「--え?どうして?可愛いじゃん」
良一郎がコントローラーを持ちながらそう言うと、
美奈津は少し不貞腐れたように言う。
「だって、なんかぶりっ子みたいに見えるし
涙を流せば可哀想~!みたいな感じで
ちょっとイラっとしない?」
美奈津が言うと、
良一郎は笑った
「ははは、女子から見るとそう見えるのかな~」
良一郎は、そう言いながら、
ゲームを進めて行く。
”あはははは…
よくここまでこれたねぇ…!”
ゲーム中の悪の女性幹部が高らかに笑う。
「わぁ、悪そうなお姉さん!」
美奈津がテレビの画面を見ながら言う。
「--ちょっとエロいよな~!へへ」
彼氏の良一郎がニヤニヤしながら言う。
「も~!」
美奈津が苦笑いしながら
ゲーム画面を見つめた。
悪の女性幹部が、
チェーンソーを持った、狂人のような部下を
主人公に向かって放つ。
そのチェーンソーの怪物との戦闘が始まるー
・・・・・・・・・・
「ふ~遊んだ遊んだ」
良一郎が言う。
「結局、ずっとゲームしてただけじゃん~」
美奈津は少し不貞腐れた様子で言った。
美奈津も、良一郎のプレイしている
ゲームを見るのは好きだが
ずっとゲームだと、さすがに拗ねる。
「--悪い悪い」
今日は、彼氏の良一郎が美奈津の家に
ゲーム機を持って遊びに来ていたー
互いの両親も面識があって
二人が付き合っていることは公認だ。
「--じゃ、今日はそろそろ帰るよ」
良一郎が言うと、美奈津は「うん」と
少しさびしそうに答えた。
「----あ」
良一郎が窓の外を見つめながら
ため息をついた。
さっきまで晴れていたのに
いつの間にか雨が降り出している。
「あ~…これじゃ、ゲーム機
持って帰るのはきついなぁ~
濡れたらやばいし」
良一郎が言う。
「確かにそうだね~…
あ、じゃあ、ここに置いていけば?
明日、学校の帰りに寄って
回収していけばいいでしょ?」
美奈津の提案に、
良一郎も確かにそうだな、と答える。
「--じゃ、悪いな!また!」
そう言って、良一郎は、
美奈津の母親にも挨拶すると、
そのまま、雨の中ダッシュで
飛び出して言った。
「--ふ~」
良一郎が帰ったあとー。
美奈津は、ふとゲーム機のほうをみた。
「ちょっとだけ~」
美奈津はニコニコしながら
なんとなくゲームを起動する。
美奈津もゲーム機は持っているのだが
外に持ち運ぶタイプで、
テレビにつなぐゲーム機は持ってなかった。
だから、なんとなくそれが家にあるというのは
新鮮だったー。
外では、弱い雷が鳴り始めていた。
ゲームを起動する美奈津。
先ほど、彼氏の良一郎がプレイしていた
ダークネスファンタジーのゲームを
起動する。
♪~
ゲームが始まった。
”イベントシーン鑑賞”のモードを開くと、
美奈津は過去のイベントを再生し始めた。
「う~ん、主人公はイケメン~!
でも、こんな人、なかなかいないよね」
イベントを見ながら
美奈津が何やら呟いている。
「やっぱこのヒロイン、キライだなぁ~」
「--この人が最後に戦う敵かな~?」
「あ、この子かわいい~!」
「あー!もうあの人死んじゃった~!」
かれこれ30分以上イベントを
見ていただろうか。
その時だったー。
大きな雷が、落ちた。
ゲーム機が、雷の影響を受けて
一瞬、変な色のランプが点灯するー。
「きゃああっ!?」
美奈津は思わず驚いて声をあげた。
だがー
すぐに雷の音は止んだ。
「は~!びっくりした」
美奈津はそう言いながら
”雷も酷くなってきたし
ゲーム機壊れちゃうと大変だから”と
ゲーム機の電源を切ろうとした。
しかしー
「--あれ?」
ゲーム機の電源が切れない。
そして、
電源ランプの部分が、不気味な強い紫色の光を発していた。
「---ふぁっ?な、何これ?もしかして
壊れちゃったの?」
モソモソと小さな音が聞こえる。
何の音だか、分からない。
「え、なになに?」
美奈津は混乱しながら
テレビのボリュームを上げたが、
モソモソ音が聞き取れなかった。
雨がうるさいからかー。
美奈津は自分の机にあった
イヤホンをゲーム機につないで
モソモソ音を聞きとろうとした。
するとー
モソモソした声が聞こえてきた
”あれ…この光は?”
という声。
”なんだよこれ”
”不思議な穴ね”
色々な人の声が聞こえる。
まるで、ゲームのキャラが意思を持つかのように
会話している。
「--!?」
美奈津は、”?”と首をかしげる。
テレビの画面は、モードセレクト画面のままだ。
「--な、何この会話?」
美奈津が首をかしげる。
モードセレクト画面で
キャラクターたちが会話する仕様なのだろうか。
いや、それにしてもー
”わたし、ちょっと飛び込んでみる”
そんな声が聞こえたー
次の瞬間ー
「ひぅっ!?」
美奈津は大声を出して
ビクンと身体を震わせた。
「あ……」
思わず、握っていたコントローラーを落とす美奈津。
「---あ…あ…」
美奈津は口を開いたまま
放心状態だ。
そしてー
しばらくすると、
美奈津は周囲を見渡した。
「こ、、ここは…?
…え……あ…あれれ?」
美奈津は周囲を見渡したり
自分の身体を見つめたりする。
「--アレン?リチャード?」
美奈津がキョロキョロと周囲を見渡す。
やがて、耳につけている何かから声が聞こえてきた。
”姫!姫!?”
「---ア、アレン!?
な、なんだか、わたし、見知らぬ場所に」
美奈津がイヤホンを通じて
”ゲーム内のキャラ”と会話している。
”姫様!?ご無事ですか”
「--あ、うん、だ、大丈夫…
でも、ダークネスの地にこんな場所が
あるだなんて…」
美奈津は窓の外を見渡しながら呟いた。
「なんか、水が空から落ちてきてますわ」
美奈津が不思議そうに呟く。
”ひ、姫様…
い、一体、そこは、どこなんです?”
イヤホンの中から声が聞こえる。
「わ、、分からないわ…」
それだけ言うと、美奈津はイヤホンを外して
立ち上がったー
「---ここは、、どこ…?」
美奈津は、不思議そうに首をかしげた。
美奈津はー
ゲームのキャラに憑依されてしまった。
美奈津が嫌っていた、ゲームのヒロインに…。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
彼氏の良一郎は
首をかしげていた。
美奈津が学校を無断欠席したのだ。
「美奈津が学校を休みなんて珍しいなぁ…
連絡もないみたいだし」
良一郎は少し心配になりながら
放課後、ゲームを回収するついでに
美奈津の様子を見に行くか、と
心に決めていた。
一応、LINEを送ってみたものの、
美奈津からは返事がない。
既読は昼ごろについたのだが、
反応がないのだ。
「--やっぱ、何かヘンだな…」
不安になりながらも、
ようやくその日の下校時間を迎えた
良一郎は、美奈津の家へと向かった。
「--あ、幸崎です」
玄関先でインターホンに出た母親に告げる。
母親が家から出てくると
少し困ったような表情を浮かべていた。
「…何か、あったんですか?」
良一郎が不安そうに尋ねると
「美奈津、昨日からちょっと変で…」
と、母親は答えた。
「変…?」
良一郎は、さらに不安になりながら
”少し、話をしてみます”と告げて
美奈津のいる部屋へと向かった。
「美奈津~?いるんだろ~?
入るぞ~?」
部屋の中に入ると、
美奈津が「ひっ!?」と怯えた様子で部屋の
隅っこの方に丸まっていた。
「ど、どうしたんだよ?美奈津?」
良一郎が言うと、
美奈津は良一郎の方をじっと見たまま答えた。
「こ…皇帝軍の者ではないのですか?」
とー。
「は?皇帝軍?」
良一郎は首をかしげる。
よく見たら、
昨日置いて行った
”ダークネスファンタジー”のゲームが
起動されたままで
モードセレクト画面のまま放置されている。
昨日、電源を切って帰ったはずだが…。
「--!」
良一郎は、”皇帝軍”という単語を思い出した。
そうだ。
皇帝軍とは
ダークネスファンタジーに登場する敵で、
ファイーナ姫の身体を狙う、
悪党たちだ。
「--あ、、あははははははは!
美奈津~、何言ってんだよ」
良一郎は美奈津が、ダークネスファンタジーネタを
使って、ドッキリを仕掛けているのだと思った。
学校を休んだ理由はおそらく
ダークネスファンタジーのゲームに
夢中になってしまった、といったところだろう。
良一郎が手を差し伸べる。
「--ち、近寄らないで!」
美奈津が叫んだ。
「--お、おい…ど、どうしたんだよ?」
良一郎は美奈津が演技ではなく
本気で怯えているように感じて、
戸惑いを隠せない。
「こ…ここはどこなのです?」
美奈津が口を開いた。
「は…はぁ?お前の家だろ?」
良一郎が答える。
「わ…私は、昨日まで
アレンとリチャードと一緒に
”封魔の森”にいたはずなのですが…」
美奈津が困り果てた様子で言う。
「--封魔の森?」
良一郎は首をかしげた。
ダークネスファンタジーの序盤に立ち寄る森の名前だ。
「おいおい、いくらなんでも
ゲームにのめり込みすぎだろ?
お母さんも心配してたぞ」
良一郎が美奈津にさらに近づくと、
美奈津が咄嗟に良一郎の手を
振り払った。
「触らないで!
私を連れ去ろうというのなら、
このファイーナ、全力で戦います」
美奈津がそう叫ぶ。
ファイーナとは、作中のヒロインの名前だ。
「お、、おい、、美奈津…?」
良一郎はさらに戸惑った。
待てー。
美奈津がこんな冗談を言う子じゃない。
まさかとは思うが、
本当にファイーナ姫が…?
いやいや、ありえない。
だが、そうとしか思えないー
「あ…あの…ファイーナ姫…なのか?」
良一郎が、恐る恐る尋ねると、
美奈津は、表情を少しだけゆるめて
頷いた。
「あ、、、あの…?あなたは…?」
美奈津の反応に、
”おいおい、どうなってるんだ?と
思いながら、まずはおかしくなった美奈津を
安心させるために、良一郎は
丁寧に自己紹介するのだった。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ゲーム内のヒロインに
憑依されてしまった彼女…!
以前一度没にしたネタだったのですが、
今回、やっと書いてみることにしました~
毎日書いているので、たまには
変わった憑依(?)も書いてみようかな~
という感じですネ…!
コメント
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面白いねぇ
普通の女の子に入ってしまったヒロインがすごく好きだなぁ
慣れないこの世界をどんどん体験する様子とか期待してます
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> 面白いねぇ
> 普通の女の子に入ってしまったヒロインがすごく好きだなぁ
> 慣れないこの世界をどんどん体験する様子とか期待してます
コメントありがとうございます~☆
次回もきっと楽しんで頂けると思います☆