姫がオークたちに皮にされて
着込まれてしまった。
そして、護衛たちにも
悲劇が訪れる…。
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「うっ…」
騎士長のメリアが目を覚ますと、
身体が動かせないように
拘束されていた。
「--ふふふふ…お目覚め?」
サラ姫が笑いながら、
メリアの方を見ている。
「--ひ、姫…!?」
姫の周囲には、護衛たちが
ニヤニヤしながら立っている。
「---お、、お前たち!
早く姫をお救いするんだ!」
メリアは叫んだ。
姫の周りには、オークの姿もある。
それなのになぜ、護衛たちは
ニヤニヤしているのか。
「---無駄よ」
サラ姫は笑いながら呟いた。
「は、、離して!」
女魔導士のマリーが、
オークたちに捕まっていた。
「マリー!」
叫ぶメリア。
「---ひっ…」
怯えるマリー。
「--見てなさい」
サラ姫がそう言うと、
オークの参謀が、近くに歩いてきた。
サラ姫も、
護衛たちも参謀に頭を下げる。
「--な…!
お、お前たち!どうしたんだ!」
メリアが叫ぶ。
オークに頭を下げているサラ姫を見て
メリアはさらに避けんだ。
「姫様!これは一体…?」
「いいから黙って見てろ…ククク」
サラ姫は不気味な笑みを浮かべた。
そして、引っ立てられたマリーの顎を
オークの参謀が掴むと、
参謀は笑みを浮かべた。
「--気に入ったゾ」
オークの参謀は、そう呟くと
背後の玉座にいるオークの王に向かって叫んだ。
「王。私も、この者の身体を着て
王宮に潜り込みます。
よろしいでしょうか?」
王の側近も務める参謀がそう聞くと王は
「構わん」と答えた。
参謀がニヤリと笑みを浮かべると、
マリーに手をかざす。
「いやああああああっ?」
悲鳴を上げるマリー
信じられないことに、女魔導士のマリーの身体は
空気が抜けたように
しぼんでいった。
まるで、着ぐるみのようにー
「な…!マ、マリー!」
女騎士長のメリアが叫ぶ。
マリーが、しわしわの皮のような
状態になってしまう。
マリーの表情はうつろだ。
「--美しイ」
オークの参謀は呟いた。
マリーは王宮でも一番の美女と
言われる女性で、
若いながらも、その高い魔力で
サラ姫を支えてきた。
サラ姫からの信頼も絶大で、
マリー自身もサラ姫に
絶対の忠誠を誓っている。
「---ふふふ」
オークの参謀が、皮になった
マリーを”着”ていく。
まるで、服を着るかのように。
「あ…あぁああ…」
メリアは、この世のものとは
思えぬような光景を見て
震えていた。
「---ふふふふ…」
マリーが笑みを浮かべる。
「マ…マリー?」
メリアは震えながら
マリーの名前を呼んだ。
さっきまで皮のように
しぼんでいたマリーが
笑みを浮かべて目の前に立っている。
「--ふふふふ…
これで、この人間は、わたしのもの」
マリーは自分の胸のあたりを触りながら微笑んだ。
「そ…そんな…」
メリアが姫の方を見る。
「ま、まさか、姫様にも!」
メリアが叫ぶと、
マリーは思いきり、メリアの頬をビンタした。
「--お前は、私たちのことを
野蛮だと言ったそうだな。
人間は、我々をずっと迫害してきた。
我々は、こうして、辺境の地の穴倉に
追いやられた。」
マリーが憎しみを込めてメリアを見つめる。
「--お前たち人間にこの場所を
知られたからには、
こうするしかないのダ」
マリーはそこまで言うと、
周囲に残っていた別のオークに向かって叫んだ。
「おい!」
オークが近寄ってくる。
「や、、やめて…」
普段は騎士として凛とした振る舞いをしているメリアが
か弱い乙女のような声を出して
命乞いをしている。
「--命は奪わん。
ただ、その身体を貰うだけだ」
マリーがそう言いながら
手をかざす。
自分の後頭部がぱっくり割れるような感じがして、
メリアは次第に意識が薄れて行くのを感じた。
「ひめ…さま…」
メリアの意識は永遠の闇に飲み込まれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「---さて、王宮に戻るか」
マリーがオークのような
粗雑な歩き方をしながら言う。
「戻らないと、人間たちが騒ぎだすからナ」
マリーを着込んだオークの参謀が、そう言うと、
オークの王に近寄っていき、頭を下げた。
「--王、我々は人間どもの王宮に向かいます」
マリーがそう言うと、
王は「わかった」と答えた。
人間たちが騒ぎ出さないためにも
乗っ取った身体で、王宮に戻り
姫や騎士長に成りすまさないといけない。
サラ姫、メリア、マリー、そして護衛たち。
全員がオークに皮として着込まれている。
「(…王宮をわが物にするのも、面白いな…)」
マリーは、笑みを浮かべる。
今までそんなことは考えなかったが
この能力を使えば、人間たちの王宮を
支配することも、可能なのではないか?と。
だが、それを見透かしたかのようにオークの王が
声をかけた。
「--よからぬことは考えるでないぞ?
人間との間に、余計な争いは増やしたくない」
王の言葉に、
マリーは「御意」とだけ答えた。
そして、マリーは
サラ姫やメリアの方を見て叫んだ。
「よし、帰還するぞ」
とー。
「はっ」
サラ姫とメリア、他の護衛たちは頭を下げた。
本来、サラ姫がトップに君臨していて
メリアがNo2の位置づけだが
サラ姫とメリアを着たオークは一般的な立場のオーク。
対して、女魔導士のマリーを着込んだオークは
王の側近でもあり、参謀を務めるNo2のオーク。
外見と、中身の立場が逆転していたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
王宮では、
民衆たちに手を振るサラ姫の姿があった。
民衆たちに穏やかな笑顔を振りまきながら
サラ姫は少し興奮していた。
(すげぇ…こんなにたくさん…)
サラ姫を着こんでいるオークは
人間で言う”平社員”的な立ち位置だったため
こんな風に大勢の人間から
拍手喝さいを浴びるのは
初めてのことだった。
脇には、メリアとマリーが控えている。
民衆への顔出しを終えると、
メリアとマリーに指示を出して
サラ姫は次の公務を行い始めた。
夕方ー。
王宮内の会議のようなものが
行われていた。
「--最近、このあたりで
オークの目撃談が増えております」
メリアとは別の、騎士団長・バロンが言う。
バロンは、壮年の男性騎士だ。
「---オークの?」
マリーが言う。
「--あぁ。今朝も、城下町で
オークの姿が目撃された」
バロンが答える。
バロンと女騎士長のメリアは
対等な立場にある。
女魔導士のマリーよりも立場的には上にあたる。
「--そうですか…姫様、どうなさいますか?」
マリーが言う。
”中身”はマリーのほうが立場が上だが
表向きはサラ姫に仕えるマリーを
演じなくてはならない。
「---その件は、こちらで対処するわ」
サラ姫がそう言って
メリアの方を見る。
「はっ」
メリアは頭を下げた。
「……」
騎士団長のバロンは、少し不満そうだった。
「私では、不足と申しますか?」
バロンが言う。
バロンは元々”女”騎士長であるメリアのことを
ライバル視していて、
自分の方が優れている、とそう思っていた。
オークの調査はメリアではなく
自分に、とそうバロンは言う。
「--控えなさい」
メリアが言う。
バロンは不満そうに机を叩いたー。
ー夜。
「--ふふふ…目障りな男だ。
あやつも、着る必要があるな」
マリーが、太ももを晒しながら
妖艶に微笑んだ。
「はいー。仰せのままに」
サラ姫がマリーの前で膝をついている。
マリーの中にはオークのNo2である参謀、
サラ姫の中には平のオーク。
誰も見ていない箇所では表とは
立場が逆転する。
マリーは足を組みながら、
まるで自分が女王かのように
サラ姫に命令するー。
「--ジャマなやつは、全員、
皮にして、我々のものにするのだ。
騎士長のバロンもそうだが
他にも我々にはむかう者がいれば、
すぐに報告しろ」
「はい…。」
頭を下げたサラ姫を見ながら
マリーは微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
騎士長のバロンは、サラ姫から
呼び出されて、
王宮の一室にやってきていた。
「-姫、お呼びでしょうか?」
バロンが部屋に入ってくる。
「えぇ…」
サラ姫のとなりには
女魔導士のマリーがいる。
最近、姫はマリーとばかりいっしょにいる。
バロンは、少しそのことに違和感を感じていた。
そしてー
”まるで、マリーが姫をそそのかしているように”も
見えていたー。
「---今日は、あなたにとっても大事な
お話があるの」
サラ姫は、少し甘い声を出しながら微笑む。
「だ、大事な話…
それは一体、何でございましょうか?」
バロンが頭を下げながら言うと、
サラ姫はにっこりと笑った。
「わたしたちの”仲間”になってほしいのー」
サラ姫がそう言うと、
ぱっくりとサラ姫の頭が割れて、
まるで着ぐるみのようにサラ姫の身体が
垂れさがり、地面へと落ちる。
脱皮して脱ぎ捨てられた皮のようにー。
中からは、オークが出てきた。
「ーーーなっ!?ひ、姫様!?」
姫の身体が突然割れて、中から
オークが出てきた。
しかも、姫の身体は皮のように
垂れさがっている。
「---マ、マリー!?これは」
バロンが、女魔導士のマリーの方を見て叫ぶ。
「---ふふふふふ…
お前たちの姫は、すでにわれわれのものだ」
マリーが、普段の口調とはまったく違う
口調で話し始めた。
「ケケケケ…」
姫の中から出てきたオークが笑う。
「--ま、まさか貴様ら!
姫様に何をした!?」
バロンが剣を抜く。
「何を?
ふふふふ…
我々オークを最初に弾圧したのは
貴様らだろう?」
マリーが腕を組みながら
バロンを見下すようにして見つめる。
「--マ、マリー!貴様は、
オークの手のものだったのか!」
バロンは勘違いして叫ぶ。
実際にはマリーも、姫と同じように
皮にされて着込まれているのだが、
バロンは勘違いしていたー
「--ふふふ、そうだと言ったら?」
マリーが人を小馬鹿にしたような
表情を浮かべて笑う。
「貴様!」
バロンは剣でマリーの方に襲い掛かる。
マリーは「あはははは」と笑いながら
それを回避した。
背後から姫の皮を着こんでいたオークが
襲い掛かる。
しかしー
バロンは反射的に剣を振り、
そのオークを斬り捨てた。
「うぎゃああああああ」
オークが断末魔をあげて倒れる。
「あ~らあら、姫役がいなくなっちゃったじゃない」
マリーが笑う。
「おのれ!」
バロンがマリーに斬りかかる。
しかしー
マリーが手をかざすと、
バロンの動きが止まった。
「ふふふ…」
マリーがバロンの背後に回る。
「くっ…な、何をした…?」
剣を振ろうとしたポーズのまま
固まっているバロン。
マリーは甘い声で「バカね」と
囁きながらバロンの後頭部に出来た
チャックのようなものをひと思いに引っ張った。
「きゃあああああああ!」
ー!
マリーは、表情を歪める。
王宮のメイドが、たまたまやってきて、
バロンが皮にされる場面を見てしまった。
「あ~らら」
マリーは笑いながら、そのメイドも皮にしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
1週間後ー
王宮では、
少しでも疑った者ー
秘密を知ってしまった者ー
それら全てが皮にされて
オークに着込まれていた。
今や、王宮にいる半分以上の人間が、
オークに着込まれている。
玉座に座っているサラ姫は呟く。
中身のオークがバロンに斬り捨てられたあと、
また別のオークが、サラ姫を演じている。
「--王が、これ以上オークの派遣はできないと…
そうおっしゃってます」
サラ姫が言うと、
隣にいたマリーが言う。
「---そう…」
オークの隠れ家にいるオークの王が、
オークをこれ以上、王宮に送りこむことを
拒んでいた。
王は、”なるべく人間とは関わりたくない”
保身主義の持ち主。
今、マリーの皮を着て王宮にいるオークたちを
束ねているオークの参謀とは、
根本的に考え方が違うのだ。
「--ここは任せる」
マリーがそう呟くと、
サラ姫は「はっ」と頭を下げたー。
「--ふふふ」
マリーは、不気味な笑みを浮かべながら
王にお願いするため、
オークの隠れ家であるダンジョンへと久々に
足を踏み入れるのだった。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
どんどんオークたちに皮にされて
支配されていく王宮。
果たして、どうなってしまうのでしょうか~?
コメント
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すこ……すこ……(語彙力)
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> すこ……すこ……(語彙力)
ふふふ…
ありがとうございます~♪