<憑依>憑依オフ会③~目覚め~(完)

自分以外の参加者が
憑依した身体でやってきていた
不思議なオフ会。

思わぬ騒動が起きてしまい…?

--------------------–

「--早く!早くUPさんに謝った方がいいよ!」

”べるちゃん”が可愛い声でそう言う。

「え…?」
”UP”が走り去ってしまった方向を見る亮磨。

自分以外のオフ会参加者は全員
”男が女性に憑依している”と思い込んでしまい、
亮磨は他の人に対するノリと同じノリで
本物の女性であるUPを襲ってしまった。

「前に、同じミスをした人が通報されて
 連行されたこともあるから!ほら、早く!」
”ヤリほし”が言う。

「--え、えええ…」
亮磨は慌ててUPが走り去って行った方向に向かう。

しかしー
もう手遅れだった。

警察官がオフ会会場に流れ込んでくる。

可愛らしい顔立ちの女性刑事だ。

「え?あ、、ち、違うんです!あの!」
亮磨は必死に弁明した。

「--話は署で聞く」
警察官はお決まりのセリフを言い放った。
可愛い声だが、迫力がある。

亮磨は逮捕されたくないあまり
必死に言い訳を考えた。
そして、叫ぶ。

「あ、あっちにいる人だちだって
 見ず知らずの女性に憑依して好き勝手やって…!」

咄嗟に口から出た言い訳がそれだった。

フォロワー達を道連れにして
自分の罪を軽くしようとでも
考えたのだろうか。

亮磨は言葉を口に出した後に後悔した。

「--いいから来い」
女性刑事に無理やり掴まれる亮磨。

「--あ、、あの人たちはいいんですか!」
亮磨が”銀龍”や”べるちゃん”を指さして叫ぶ。

「---憑依は、常識だろう?」
女性刑事が自分の胸を触りながら言った。

「え…!?えぇ…?」
亮磨は驚く。

いつの間に、この世界は憑依が
当たり前の世界になってしまったのだろうか。

「あ、いや、ちょっと待ってください!」
パトカーに乗せられそうになりながらもがく亮磨。

「ちょっと待ってくれーーー!」

こんなことで逮捕されるなんて
冗談じゃない。
これは、濡れ衣だ。

そんな風に思いながら
亮磨は大声で叫んだ。

「待ってくれーーーーーー!」

♪~~~~~

「---!?」
亮磨は、飛びあがった。

訳が分からず、周囲を見渡す亮磨。

「あ…あれ?」
そこは、自分の部屋だった。

「う、、うん?俺はTSF好きのオフ会に
 参加していたような…?」
ふと、時計を見る。

目覚まし時計がやかましい音を立てている。

時計のデジタル表示の日付を見る。

今日は、オフ会の日ー。

「な、、なんだぁ…夢か」
亮磨は溜息をついた。

そう言えばそうだ。
自分以外のフォロワーが
女性に憑依してオフ会に
やってくるなんてありえない。

普段から憑依だとか
そういう小説や漫画、イラスト
ばっかり見ていたから、
そんな夢を見てしまったのだろう。

オフ会に対する緊張もあったのかもしれない

「やれやれだぜ」
亮磨はそう呟きながら
ツイッターを開く。

フォロワーの”ふた左衛門”と
今日のオフ会について会話を交わす。

亮磨は思い切って聞いてみた。

”あの…
 みなさん、憑依した身体で
 会場に来たりしませんよね?”

とー。

”へ?”
ふた左衛門が、反応する。

”そんなわけないないwww”

とDMで返事が返ってきた。

「---ですよねー!」
亮磨はちょっと安心した様子で
一人そう呟くと、
オフ会の会場に向かう準備をした。

今度こそ、本当のオフ会だ。

着替えて、歯を磨き、
会場の位置を確認し、
スマートフォンの充電を確認した
亮磨は家からでた。

妙な夢を見たせいで
これからオフ会に行くのにも関わらず、
なんだか身体が疲れているような気分だ。

さっきまでのオフ会をリセットして
もう一度やるかのような不思議な気分。

「ふぇ~…なんだか疲れたな」

オフ会会場に向かいながらそう呟く亮磨。

ふと、前の方を歩く可愛らしい女子高生が目に入る。

”早いんだな”

亮磨は心の中でそう思った。

まだ、昼前だ。
そういえば、このぐらいの時期は中間テストや
期末テストがあったはずだ。

それで、早いのだろう。
テストの日は、昼前に下校に
なることも多かった気がする。

「----」
そんなことを考えながら
何気なく歩いていた亮磨は、
”あること”を思い出したー

それはー

夢の内容ー

”憑依したい相手の女性を見つめながら
 大声で”憑依したいもん!”と3回叫ぶんです”

夢の中でフォロワーの
”ぷぜりあ”から言われた言葉。

「---」
亮磨はニヤニヤしながら
前の女子高生を無意識のうちに
眺めていた。

が、すぐに正気を取り戻す。
「いやいやいやいや、ありえない」

そう、憑依はあくまでも
創作の中でのお話だ。
現実に憑依が出来るなんて
あり得ないし、そんなことを
してしまったら、今度こそ
リアル犯罪者になってしまう
可能性もある。

だがー

「ゴクリ」
夢の中での憑依された女性たちの
誘惑するような笑みが
忘れられない。

亮磨は、唾を飲みこむと、
女子高生の方を見つめたー

”言葉を叫ぶだけなら
 逮捕まではされないだろう”

とー。

夢の中で”ぷぜりあ”は言っていた。
少しでも違っていると憑依できない、と。

憑依する条件は、
憑依したい対象をじっと見つめながら
大声で”憑依したいもん!”と3回叫ぶこと。

「---」
亮磨は深呼吸をすると
前を歩く女子高生を見つめた。

「---憑依したいもん!」
大声で叫ぶ亮磨。

前の女子高生は特に反応せずに歩いている。

自分に対する言葉だとは思っていないのだろう。

あるいはー、
振り返らないようにしているのかもしれない。

亮磨はもう一度叫ぶ。

「憑依したいもん!」
かなりの大声だ。

さすがに前を歩く女子高生も
気味わるく思ったのか、
振り返った。

亮磨は、
女子高生が振り返ると同時に
3度目の叫び声をあげた。

「--憑依したいも…!!!」

そこまで叫びかけて、亮磨は
目を見開いたー

「---ん!!!!」

叫び終えたー
いや、叫び終えてしまった亮磨はー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

オフ会会場。

TSFというジャンルが
好きな人間が
そこには集まっていた。

一部に女性の姿を
見受けられるものの、
大半は男性だった。

”メーフィ”と”ちゃいろしょう”が
何やら談笑している。

数少ない女性のTSF好きは、
一か所に集まって
何やら楽しそうに談笑していた。
アイドルのような容姿の”モアたん”も
とても楽しそうだ。

「あれ?そういえば」
”ふた左衛門”が、
”ポゼマン”こと、亮磨が
まだ到着していないことに気付く。

「はじめてのオフ会だから
 緊張してるんじゃないですか?」
”はんぺん太郎”が、そう言うと、
「迷ってるのかもしれませんねー」
と、”満月ははは”が
呟いた。

亮磨が到着しないまま、
オフ会の開始時間になり、
幹事の”メーフィ”が挨拶を行う。

”MD”や”どこどこ”が冷やかすような
言葉をかけているー

始まるオフ会ー

亮磨が見た夢とは違い、
当然、参加者は自分の身体で
オフ会にやってきている。

男性は男性ー
女性は女性だー。

料理を食べたりしながら、カラオケが始まるー

”モアたん”が
フリフリのアイドル衣装姿で
歌を歌っているー。

モアたんは、亮磨が夢で見たのと
同じように、可愛らしい美少女だった。
TSF界ではアイドル的存在として
仲の良いフォロワーも多い。

盛り上がって行くオフ会ー。

亮磨が見た夢とは違い、
そこに集まっているのは
ごく一部の参加者を除き、
男性たち。

夢のように美少女に憑依する力なんて
当然ないし、
みんな、自分の身体のまま
オフ会にやってきていた。

”モアたん”が歌い終えて
盛り上がるオフ会会場。

そこにー
”ポゼマン”こと亮磨がやってきた。

「---あ、あれ?もしかして」
”ちゃいろしょう”が入ってきたポゼマンに
対して驚きの表情を浮かべる。

「おぉぉ!?」
オフ会幹事の”メーフィ”も驚いている。

そこにやってきたのはー、
なんと、JKだったのだ。

「---は、、は、、はじめ…まして」
オフ会会場にやってきた
JKは戸惑った様子で
恥ずかしそうにスカートを抑えていた。

亮磨はー

”憑依”してしまったー

自分でも信じられないことだが、
夢で”ぷぜりあ”から教わった通りに、
3回ほど”憑依したいもん”と叫んだところ、
本当に憑依できてしまったのだった。

これには、驚きだった。

けれど、ちょっと困ったことにも
なっていた。

それはー

女子高生になってしまった亮磨は
目を瞑ってさっき、この子に
憑依した時のことを思い出す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--憑依したいもーーー」

”憑依したいもん”と
3回叫ぶ。

それが夢で”ぷぜりあ”から
教わった憑依の条件。

前を歩く可愛らしい女子高生に
ターゲットを定めた亮磨は
3回ほどそう叫んだ。

ーーが。

最後、言葉を言う直前に
”うしろで変なことを叫んでいる人がいる”と
感じた女子高生は振り返った。

目が合う亮磨と女子高生。

「---!!」

亮磨は驚いて、
”憑依したいもん”の言葉を
止めようとした。

こんな子に憑依なんて、
冗談じゃない!

とー。

何故ならー
前を歩いていた可愛らしい女子高生は、
雰囲気と後姿が可愛かっただけでー
顔は、亮磨からすればとんでもない顔だった。

シミだらけで、お化け屋敷で出て来そうな
老婆みたいな顔ー

それが、亮磨から見たその子の印象だった。

「---ん!」

だがー
咄嗟に言葉を止めることはできなかった。

”憑依したいもー”まで
言いかけていた亮磨は
女子高生の顔を見た瞬間に
言葉を止めることはできなかったのだ。

”まぁ、どうせ、夢の話だから”

亮磨はそんな風に思っていたー。

が、言葉を言い終えた次の瞬間、
亮磨の身体を霊体のようになり、
その女子高生に吸い込まれてしまったのだ。

「エ…
 おおぉぉぉぉぉぉい!?」

女子高生になった亮磨は
可愛らしい声でそう叫んだ。

顔はお世辞にも良いとは言えないし、
悪い部類に入るだろう。

「マジかよ…
 どうせ憑依するなら可愛い子がよかったー!」

亮磨はそう叫んだ。

しかも、この子の身体から
抜け出す方法が分からない。
夢で”ぷぜりあ”に聞いておけばよかった。

亮磨はそんな風に思いながら
オフ会会場に向かうのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いやぁ、まさかポゼマンさんが
 女性だったなんて」

「しかも、女子高生なんて…」
「びっくりだよー!」

オフ会参加者が口々に言う。

女性が集まっている席に
案内されると、
そこにいた”UP”や”モアたん”、ほか数名が
挨拶をしてきた

”--え、、えっと…ま、、まぁいいか”

亮磨はそう思いながら、
落ち着かない様子でオフ会の会場の中に
着席した。

そしてー
”ぷぜりあ”を見つめると、
亮磨は、ぷぜりあの方に近づいて行った。

「あの…元に戻る方法、知りませんか?」

しかしー、
現実世界のぷぜりあが、それを知るはずはなかった。

彼はー
オフ会終了後も、
学校で”ブス”といじめられている女子高生の
身体で生きて行くことになったのだという。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

夢が、現実に…?
なってしまいましたネ笑

憑依オフ会…
VRが発達すれば
そういうこともできるのかもしれませんネー!

お読み下さりありがとうございました☆

PR
憑依<憑依オフ会>

コメント