<憑依>ハイウェイ・ポゼッション①~煽り運転~

煽り運転をしていた若いカップル…

が、彼らはとんでもない相手に
煽り運転をしていることを知らなかった。

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高速道路ー。

赤いスポーツカーに乗っている
若いカップルが、前を走る
軽自動車を煽っていた。

「なんだよ、おっせ~な~」
金髪の男・金崎 金太郎(かなざき きんたろう)が
イライラした様子で言う。

「--ねぇねぇ、やめなよ~!」
気の強そうな女・矢野 梨菜(やの りな)が笑う。

梨菜は、金太郎の彼女で、
芸能界から声をかけられたこともある美貌の持ち主だ。
ただ、とても気が強く、性格にはとげがある。

「---こいつうぜぇな~!」
金太郎が叫ぶ。

金太郎が苛立っているのはー
前の車に対してだ。

初心者マークがついている前の車を
執拗に煽りつづける金太郎。

なぜ、煽り始めたのかは
金太郎自身にもよく分かっていない。

ただ、なんとなく腹が立ったー

「もっとビビらせてやりなよ!」
笑いながら梨菜が言う。

「へへへ…」
彼女である梨菜にそう言われた
金太郎は、彼女にいいところを
見せてやろうと笑みを浮かべながら
白い軽自動車を煽り始めた。

クラクションを鳴らしたり、
後ろに密着して走ったりー

「へへ!びびってやがる!」
金太郎は勝ち誇った表情を浮かべる。

隣の車線が開いたタイミングで、
軽自動車の横に並び、併走し始める金太郎。

挑発的に軽自動車に幅寄せを仕掛けて行く。

「--おらおら!びびってんじゃねーよ!」

金太郎はー
相手が初心者マークをつけていることで
さらに調子に乗っていたー。

弱者の前では金太郎は
とても強気になるー。

白の軽自動車が迷惑そうに、速度を落したりして
煽ってくる金太郎の赤いスポーツカーをやり過ごそうとする。

だがー
金太郎も速度を落として併走を続ける。

幸い、今の時期・時間帯は高速道路の通行量は
少ないが、それでも事故が起きかねない危険行為だ。

「あははははは!あいつ、絶対びびってるよ!」
梨菜が笑いながら白の軽自動車を指さす。

「----へへへ!うらぁ!」
調子に乗った金太郎は、白の軽自動車の前に
車線変更をし、急ブレーキを踏んで見せた。

白の軽自動車も慌てて急ブレーキを踏んで
停車する。

ふたつの車は
高速道路の脇の方で停車したー。

「---ったく、ウゼー軽自動車だぜ」
そう言うと、金太郎はエンジンを止めて、
白い軽自動車の方に向かって
歩き出した。

中が見えないタイプのガラスー。

金太郎は車を叩く。

「おい!調子乗ってんじゃねーぞ!初心者」

梨菜も白い軽自動車のほうにやってきて、
言葉を投げかける。

「ねぇ、わたしの彼の邪魔、しないでほしいんだけど?」

スタイル抜群の梨菜は、
綺麗な生足を晒しながら、
白い軽自動車を睨みつけている。

「おら!なんとか言えよカス!」
金太郎が叫ぶ。

するとー

白い軽自動車の扉が開いた。

「-----おら!初心者のクセに
 高速なんて走って調子に乗ってんじゃね……!?」

威勢の良い金太郎が
言葉を途中で止めた。

「----何か、用かね?」
中から出てきたのは、身長2メートルにも
届きそうなほどの体格の良い
トレンチコートの大男だった。

サングラスをした、洋画にでてきそうな
いかつい風貌の男だー

「--は、、、、い?」
金太郎は真っ青になった。

初心者マークをつけていたから
若者か、年寄りか、
よわっちそうなやつかー
そんな勝手な偏見があったのだー

「----もう一度聞く。
 何か、用かね?」

低い、威圧するような声。

「え…あ、、、あの…」
金太郎はすっかり弱弱しくなって
そう呟く。

「----あ…あはははは…
 ご、、ごめんなさいね」
梨菜も愛想笑いを浮かべて、
そう言い放った。

「---し、失礼しま~す」
金太郎は慌てて自分の車に戻ろうとする。

しかしー

「--!?」
金太郎は、自分の身体が動かないことに
気付いた。

「---煽り運転なんてして、
 楽しいか?」

トレンチコートの男が金太郎の方に
近寄ってくる。

「あ…あれ…身体が…?動かない…?
 あ、、あひ…」

金太郎はびびりまくりながら
トレンチコートの男を見つめる。

「--あおり運転をして、楽しいか?」
同じ質問を繰り返す男。
まるで、ロボットかのようだ。

「---ひ、、す、、す、すみませんでした」
金太郎は謝罪の言葉を口にした。

こいつはやべぇやつだ。
本能がそう語っていた。

「--最近、この辺で、煽る赤いスポーツカーがいるって
 聞いてたが…貴様らか。」

トレンチコートの男の言葉に
金太郎はギクッとするー

彼女とのデートのたびに、
誰かしらを煽っていたー。
そんな噂になっていたとは。

「--そんなに危険な運転をして
 事故を起こしたいなら、
 一人で死ぬがよい。
 他人に迷惑をかけるな」

トレンチコートの男はそう言うと、
自分の車を指さした。

「私が初心者マークをつけているのはー
 貴様のようなハエに絡まれにくくするためだったがー…
 逆効果だったようだな」

そう呟くと、トレンチコートの男は
ため息をついた。

そして、梨菜の方に近づいて行くと、
梨菜の目を睨んだー

「---!あ…」
梨菜を睨んだ男の目が赤く光るー。

そしてートレンチコートの男は、
そのまま自分の車に戻って行った。

「---あ…?、、か、、身体が動く!」
金太郎は自分の身体が動くようになったことに気付き、
梨菜と共に慌てて赤いスポーツカーに乗り込むと、
そのまま逃げるようにして走り去ったー。

白い軽自動車は追ってこないー
脇に停車したままだー

「な、、なんだよアイツはクソッ!」
金太郎が走りながらハンドルを叩く。

「---あ~!イライラするぜ!
 梨菜!たばこ!」

助手席に置いてある煙草を取るように
彼女の梨菜に指示をする金太郎。

しかしー

「--おい!梨菜!聞いてるのか!?」

声を荒げた金太郎に
梨菜は声をかけた。

「ーーー貴様の彼女の身体は頂いた…」
梨菜が低い声で呟く。

「あん?」
金太郎が横を見ると、
そこにはー

赤く目を光らせた梨菜がいたー

「---!?り、、梨菜!?」
金太郎が驚くー。

「--ー他人に憑依する力…
 それを使って、この女の身体をもらった」

梨菜の目が元の色に戻るー。
だが、梨菜は鋭い目つきで
金太郎を睨んだ。

「--じ、冗談はよせ!梨菜…!
 お、、俺は今、そんな気分じゃねぇぞ!」

金太郎が少しビビりながら
そう言うと、梨菜は金太郎をグーで殴りつけた。

「いてっ!あ、、、あぶねぇだろ!」
金太郎が必死に叫ぶ。

梨菜はそんな金太郎に言い放った。

「--あおり運転される側の恐怖を
 貴様にじっくり教えてやろう…」

梨菜は、ロボットのような口調で
そう言い放った。
さっきのトレンチコートの男と同じだ。

「お、、おい…マジか…?
 り、梨菜!目を覚ませって」

「---黙れ」
梨菜は鋭い口調でそう言うと、
金太郎は震えあがった。

「く…くそっ!一旦パーキングに入って…」
ちょうど目に入ったサービスエリアに入って、
今の状況をどうにかしようと考えた金太郎ー

しかしー

「--!?」
身体が動かなかったー

金太郎の身体はサービスエリアに入ることを拒み、
そのまま高速を走り続けた。

「--走れ。止まることは許さぬ」
梨菜が威圧するようにして呟いた。

先ほどまでの笑顔はないー。

「---ひ、、な、、何が目的だ!?か、金か…?
 それとも…あ、謝ればいいのか?」
金太郎が運転を続けながら叫ぶ。

「--金も謝罪もいらぬ。
 運転しろー。」

明らかに正気を失っている梨菜に
睨まれて金太郎は震えあがる。

「---ま、待ってくれ、お、、俺はー」

「--ーーー運転しろ」

金太郎の言葉を遮る梨菜。

金太郎は「は、、はひっ!」と返事をして
そのまま運転を続ける羽目になったー

「---お…お、、お、、
 お前は何が目的だ…?」

金太郎は青ざめながら叫んだ。

彼女の梨菜は完全に乗っ取られている。

一体、どういうことだ?

「--ー怖いか?」
梨菜が鋭い目つきで金太郎を睨む。

「---こ、、こ、怖くなんか…!」
金太郎は意地を張って叫ぶ。

しかし、身体はがくがくと震えていた。
強引に危険運転をさせられているという
今、この状況が怖かったし、
梨菜が憑依されているという状況も
怖かった。

「---身体が、震えているな?」
憑依された梨菜が口元を三日月に
歪めた。

悪魔のような笑みだ。

「--う、、う、、うるせぇ…!」
金太郎はそう叫ぶ。

しかしー
額からは汗が流れ出ている。

「スピードを緩めるな。走れ。」
梨菜が可愛い声で
脅すように言う。

「---そ、、そ、、そんなことしたら、危ねぇだろ!!」
金太郎が必死に叫んだ。

「--もっと早く走れ!!!!」
梨菜が大声で怒鳴った。

金太郎はビクッとしたー

高速道路の法定速度をはるかに超えた
速度で走る羽目になった金太郎。

普段から危険運転をしてる金太郎でさえ、
こんな速度は出したことがない。

「お、、お、、おい!他のやつを巻き込んだらどうするんだ!?」
金太郎が運転しながら叫ぶ。

だが、梨菜は無表情で答えた。

「--普段、お前はそういう運転をしているだろう?
 煽っている相手を巻き込んだらどうする?
 煽られた相手が事故を起こしたらどうする?」

梨菜の言葉に、
金太郎は叫ぶ。

「う…うるせぇ!」

こんな奴の言いなりになってたまるか。
金太郎は速度を落として、
次のサービスエリアに入ろうとした。

しかしー

ガチャー。

梨菜が突然、助手席の扉を開けた。

「言う通りに走れ。
 でないと、この女は、助手席から
 飛び降りるぞ」

梨菜が笑みを浮かべながら言う。

「テ…テメェ…!
 や、、、やめろ!」

金太郎が怒りを込めて叫ぶ。

「--人の命を、何だと思ってやがる!」
金太郎の叫びー

だが、梨菜はその言葉を
鼻で笑った。

「貴様こそ、人の命を何だと思っている?」

梨菜に言われて
金太郎は言葉に詰まってしまう。

「お、、俺は煽ってただけで…
 命を奪う気なんて…」

「---ふざけるなクソ野郎が!」
梨菜が鬼のような形相で叫んだ。

「--ひっ!?」
あまりの大声に金太郎はビクッとしてしまう。

「--煽りは人の命を奪う行為と知れ」
梨菜は再び無表情になると、
そう呟いて、助手席の扉を閉めて
足を組んで、前を見つめた。

梨菜の綺麗な生足が目に入り、
スケベな金太郎は一瞬、ドキッとしたが
今はそんな場合ではなかった。

「走れー」
梨菜が感情のない声で言った。

「---くっ…」
金太郎は、憑依された梨菜に
逆らうことができずにアクセルを踏む。

「”くそっ…この野郎…舐めてんじゃねぇぞ…”」
心の中でそう思いながら、
なんとか梨菜を乗っ取った男への反撃方法はないかと
金太郎は、頭をフル回転させるのだったー。

そしてー。

金太郎は、ニヤリと笑みを浮かべたー。

②へ続く

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乗っ取られたカップルはこのあと
どうなってしまうのでしょうか~!
続きは明日デス。

煽り運転はダメですよ~!

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