次々と女性の身体を使い捨てにしていく
憑依能力を持つ凶悪犯罪者”シーフ”
追跡を続ける警察官を嘲笑うようにして
シーフは憑依を続けていくー…
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「くくくくくく…」
血濡れたセーラー服を着た少女が
血のついた指を舐めながら微笑む。
「憑依能力ってすごいよなぁ…」
セーラー服の少女が足を組みながら
近くに転がっている人間を見つめるー
「こんな真面目で優しい女の子を
一瞬にして凶悪犯罪者に
変えちゃうことができるんだから…
くふふふふふ♡」
セーラー服の少女の足元には、
母親と父親、妹が横たわっていたー
少女の手には包丁が握られている。
「---くくくく…
俺がこの女を乗っ取って
やらせてるんだ!
犯罪行為を…
くくく…あぁ…興奮するぜ、
ゾクゾクするぜ」
セーラー服の少女は狂ったように笑いながら
興奮した様子で呟く。
やがて、我慢できなくなったのか
机の角に身体を押し付けて
角オナを始めてしまうー
親と妹を手にかけた少女が、
大声で喘ぎ始めるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--その子はどうしたんだ?」
報告を受けた柳沢警視正が言う。
「はっ…
本人は錯乱していて、
記憶にないを繰り返しています」
警察の特殊対策チームの一人、
新次郎が、昨夜の事件の報告を行った。
「---そうか」
柳沢警視正が冷たい目で頷いた。
”シーフ”による犯罪がまた起きてしまった。
柳沢警視正は
”凄腕”と呼ばれる刑事で、
これまで、数々の表ざたに出来ない事件を
時に強引な手法を使い、闇に葬ってきた。
だがー
そんな柳沢警視正であっても、
今回の”シーフ”には手を焼いている。
それだけ、シーフが厄介な存在なのだー。
「---っかし、どんな奴なんですかねぇ」
休憩室にやってきていた新次郎が
ペットボトルのお茶を飲みながら言う。
「さぁな…ロクな奴じゃないのは確かだろう」
林吾が呟く。
林吾は怒りに震えていたー
こんなこと、許されるはずがない。
「--とは言え、このままじゃ、埒があかないですよ」
仲間の一人、啓太が言う。
他にもメンバーはいるのだが、
機密性の高い捜査をしているために
大体、組む相手が決まっていて、
林吾はいつも、啓太、新次郎の二人と組むことが多い。
「--そうだな。今のところ、やつの一人勝ちだ」
林吾は持っていた缶を握りしめる。
憑依された女性が現れてから
それを追ったのでは意味がないー。
最後には、憑依された人間が捨てられて
やつは逃げるだけだー。
林吾は思うー
”シーフを捕まえるためには
本体を見つけ出さなくてはならないー”
とー。
だがー
そもそも”人に憑依する”なんてこと、
どのようにして行っているのかー。
それが、分からない。
もしも、”シーフ”が人間ではなかったらー?
もしも超能力の類だったらー?
あるいは、何らかの薬や武器を使っているのかもしれないー
「くそっ」
林吾が吐き捨てるようにして言うと、
啓太と新次郎も心配そうに林吾の方を見つめたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
「えぇ…分かっております。えぇ…」
柳沢警視正が誰かと電話をしていたー。
「……気づかれたら報告します。
問題はありません。
えぇ、憑依薬の秘密は誰にも。」
ーーーー!!!
たまたま忘れ物を取りに戻って来ていた
林吾の仲間・新次郎が偶然、その会話を聞いてしまった。
「—”憑依薬の秘密?”--?」
新次郎は、柳沢警視正の電話に不穏な
気配を感じて、そのまま忘れ物を取るのを
諦めて、気づかれないように立ち去った。
「--なんだったんだ…?」
新次郎は冷や汗をかいていたー。
”憑依薬”とは何だー?
柳沢警視正が、”自分たちの知らない何か”を
知っているような気がしてならないー
新次郎は不安を感じながら、
とりあえず林吾に報告しようと決意するー
「-----…」
そんな新次郎の様子を
警察署内の窓から
柳沢警視正は冷たい目で覗いていた…。
・・・・・・・・・・・・・・・
「んー…?」
林吾に連絡をしようとした新次郎の元に
現在付き合っている彼女から連絡が入った。
”今すぐ、会えるかな?”
とー。
新次郎は”急にどうしたんだ?”と返事を送る。
”とにかく会いたいの。
だいじな話”
彼女の返事を見て、
新次郎は”最近忙しくて会えてなかったしな”と
呟きながら、彼女に指定された
場所に向かうのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--ますます、疲れたカオしてるな」
高校時代からの友人、勇夫が笑う。
「まぁ…いろいろあってな」
林吾はから揚げを食べながら言う。
本当は、早く家に帰るべきなのかもしれないが
最近は娘からも妻からも怪訝な表情を
されていて、家庭での居場所を無くしつつある。
”シーフ”ばかりを見ていて
”家族”を見ていないからかもしれないー。
今日も癖のある箸の持ち方をしながら
勇夫は笑う。
「ーーそんなに悩んでいると、
精神的に参っちまうぞー」
その時だったー。
仲間の新次郎から連絡が入ったー。
「--もしもし?」
林吾が電話に出ると
”先輩!俺の彼女が…ぎぃあああああっ!?”
と言う声が聞こえてきたー
「--!?」
林吾は立ち上がる。
「--どうした?」
勇夫が呟く。
林吾は「悪い、急用だ」と呟いて
5000円札をカウンターに置くと、
勇夫を残してそのまま居酒屋から飛び出した。
「新次郎ー…!」
林吾は走ったー。
ついに、仲間が狙われてしまったー。
”シーフ”にとって、
自分を追う警察官を
殺すことなどたやすいことー。
そうー
自分たちは、ヤツの手のひらの上で
弄ばれているのかもしれないー
やっとの思いで現場に辿り着いたとき、
新次郎は既にー。
新次郎の上に覆いかぶさっている女性の
手は真っ赤に染まっていた。
「うふふふふふ…♡」
笑う女性は、
新次郎の彼女ー。
彼女は、”シーフ”に憑依されてしまっていた。
「--貴様ぁ!」
林吾が叫ぶ。
周囲には、一般人がまだいたー。
野次馬もいれば
パニックを起こす人間もいるー。
「--遅かったなぁ…!」
新次郎の彼女が笑いながら林吾の方を見つめる。
「お前に、俺を止めることはできないよ…
くくくくく…」
そう言って笑うと、新次郎の彼女はそのまま
突然気を失った。
「---お前が関われば関わるほど…」
ーー!?
林吾の背後から声がする。
別の女性だー。
さっきまで彼氏と一緒に事件現場を撮影していた
野次馬の女ー
「犠牲者は増えて行くー」
野次馬の女が笑う。
再び倒れる女ー
今度は、倒れた新次郎の救命活動をしていた女性が笑いだした。
「---ひははははは!
俺は乗り換えし放題なんだぜ!
どいつだって、俺の入れものにできる」
救命活動をしていた女性が、新次郎を蹴り飛ばして笑う。
林吾は叫ぶ。
「やめろ!ふざけるな!
貴様…一体何が目的なんだ!」
林吾が叫ぶと、
救命活動をしていた女性は笑ったー。
”目的ー?
俺はただ楽しんでいるだけさ”
そう言うと、救命活動をしていた女性は
その場に倒れたー
林吾は叫ぶ。
「くそっ!」
そして、新次郎に駆け寄るー。
しかしー仲間の新次郎は
既に死んでいたー。
最愛の彼女に、命を奪われてしまったー。
「--し、新次郎!?」
正気を取り戻した彼女が駆け寄ってくる。
「いやあああああああ!」
悲鳴を上げる彼女。
「ーーーく、くそっ!」
林吾は、どうしていいか分からず、
困惑するー。
何て言葉をかけたら良いのかー
そんな林吾の元にLINEが届いた。
”お父さん”
娘の里恵菜からだった。
こんなときに珍しいな…と思いながら
里恵菜からのLINEに目を通したー
そしてーー
「----う、、、嘘だろ…!」
林吾は叫んだ。
慌てて走り出す林吾ー。
娘・里津奈からのLINEー
送られてきた写真はー
ハサミを持って、不気味に微笑む里津奈の姿だったー
”この意味、わかるぅ~?”
という文章が添えられてー
林吾は瞬時に意味を理解したー。
”シーフ”だー。
シーフのやつが、
自分の家族をー。
反抗期の娘の顔を思い出すー
最近は、冷たい妻の顔を思い出すー
たとえ、反抗期でも、
冷たくても、林吾にとっては大切な家族ー。
こんなに一生懸命走ったのは初めてだ。
林吾は自虐的に笑いながら、
なんとか自分の家に辿り着いた。
自宅は、静まりかえっている。
インターホンを鳴らす。
だが、返事はない。
今の時間帯なら娘の里恵菜も
妻の由希子も絶対に家にいるはずなのだー。
「--くそっ!」
林吾は家の中に飛び込んだー。
「--里恵菜!由希子!」
銃を手にしながら、家の奥へと向かう。
家族で食事をする場所だけー
電気がついているー
そこにはーー
”何かを食べる
里恵菜の姿があったー。
「---うふふふふふ…♡
おかえりなさ~い」
箸で何かを食べている里恵菜。
「-----!」
林吾ははっとする。
そしてー
里恵菜の足もとには、
林吾の妻・由希子がボロボロになった状態で倒れていた。
「んふふふふ~
お母さんのこと、殺しちゃった♡」
笑いながら言う里恵菜。
「う、、、嘘だろ… お、、、おい…嘘だろ!」
林吾は信じられずに叫んだ。
「嘘じゃないよ。ほら、今、わたしが
食べているもの、わかる~?」
里恵菜はケラケラ笑いながら言うー。
里恵菜の口元や手は
血に染まっていたー
「--わたし、お母さんを食べてるの…
ぐふふふふふ」
里恵菜が食べているのはー
「--おえっ…」
林吾は思わず吐き気を催したー。
今までにも、林吾は数々の凶悪犯罪を
見てきているー
だがー
”人間”を食べているヤツを見るのは
初めてだったー
娘の里恵菜が、
自ら命を奪った母親の一部を、
ステーキを食べるかのようにして食べているー。
「ん~、まっずい~!
喰うもんじゃねぇな」
里恵菜はミニスカートをいじりながら笑う。
「身体も壊しそうだし…
ま、俺には関係ないけどな!あはは!」
里恵菜は笑うー。
そうー
”シーフ”にとって
乗っ取った身体はおもちゃでしかないー
里恵菜もー
赤く染まったドロドロの何かを
独特の箸使いで食べる里恵菜。
「ふざけるな…!り、里恵菜を解放しろ!」
林吾が娘の里恵菜に銃を向ける。
「--ひひひひひひ…」
笑いながら立ち上がる里恵菜。
林吾は、里恵菜に向けた銃を撃てずにいた。
「--り、里恵菜…頼む!動くな!目を覚ましてくれ!」
林吾は手を震わせながら叫ぶー
今までにも
憑依された女性をやむを得ず”射殺”してきたー。
だが-自分の娘となると…。
「---く、、くそっ!」
林吾は撃てなかったー。
わかっているー
”シーフ”は里恵菜を解放する気はない。
このままにしておけば、どんどんどんどん里恵菜が
弄ばれるだけー。
引き金を引くのがー
一番なんだー。
でもー、
それでも。
「ばーか!」
里恵菜はそう言うと、林吾から銃を奪った。
「--!!」
林吾はハッとした。
銃を奪われるのはまずい。
「--きゃはははははは!」
里恵菜は笑いながら玄関の方に走り出した。
家の外に血まみれのまま
飛び出す里恵菜。
「--待て!」
林吾が叫ぶ。
外からは銃声が聞こえる。
慌てて家から外に飛び出すと、
里恵菜は大通りの方に走って行きながら
銃を放っていた。
罪もない通行人が倒れて行く。
狂ったように大笑いする里恵菜。
そして、里恵菜は叫んだ。
「わたしは警察官、山岡 林吾の娘よ!
ふふふふふふ!
お父さんの育て方が悪いから
わたし、人殺ししちゃうの!」
狂ったように笑いながら通行人を
ひとり、ふたりと撃って行く里恵菜。
すぐに大通りはパニックを起こしたー。
林吾は叫ぶ。
「やめろーーーー!」
やがて、銃の弾が無くなり、
里恵菜は笑いながらそれを放り投げた。
「お前はもう終わりだ!林吾!」
笑う里恵菜。
「--犯罪者の父親が、
今の世の中でどうなるかは知ってるよな?
お前の人生は、もうおしまいだ!」
里津奈が憎しみに満ちた目で
林吾を睨む。
「--く…」
林吾は、思うー。
確かに奴の言うとおりー。
実の娘がこんな事態を起こしたとなればー
世間は、父である林吾を叩くー。
”娘は憑依されていた”などと言っても、
誰も信じてはー
「--きゃはははははははは!
まだまだお前を苦しめてやるよ!」
里恵菜は可愛い声でそう叫ぶと、
服を引き千切り始めた。
「どうだ!?公衆の面前で
裸を晒す娘!
変態だろ?たまんねぇだろ?」
スカートを脱ぎ、服を千切りー
大通りで裸になろうとしている里恵菜ー
「やめろ!!やめろーー!!」
何も出来ず林吾は叫んだー
その時だったー。
銃声が響き、里恵菜は驚いた表情を
浮かべて、そのまま倒れるー
「--り、、里恵菜!!」
林吾は泣き叫ぶようにして倒れた里恵菜に近づく。
だがー
里恵菜はもう死んでいた。
泣き叫ぶ林吾。
そこに、林吾の仲間の刑事のひとり、啓太がやってきた。
彼らは”憑依された人間”の射殺許可を受けている。
もちろん、そんなこと、公にはできないが。
「---先輩…」
里恵菜を射殺したのは、駆け付けた啓太だった。
申し訳なさそうに言う啓太。
林吾にも分かっている。
”シーフ”に憑依された以上、
こうするしかできなかったことはー。
林吾は、啓太を恨まなかったー
啓太のしたことは、正しいー
だがー、
”シーフ”への怒りは爆発寸前だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「ご苦労だったね」
柳沢警視正が冷徹にそう呟いた。
「昨日の事件は、被疑者である山岡 里恵菜が
凶悪事件を起こした末に自殺した、ということで
処理をした」
あくまで冷徹に言う柳沢警視正。
「---…きみは、しばらく謹慎だ。
憑依されていたとは言え、娘の里恵菜が
あんなことを起こしたのでは、
世間は許さないだろう。
それにー、
憑依のことは世間には公表できないー」
林吾は、その言葉を聞き、
柳沢警視正に頭を下げて
部屋を後にした。
「---先輩」
廊下では、仲間の刑事・啓太が待っていた。
「--しばらくは、俺に任せて下さい」
そう呟く啓太。
「---あぁ…すまない」
林吾はそれだけ答えると、
警察署を後にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
謹慎処分になった林吾は、
”ある男”を近くのビルの屋上に
呼び出していたー
”シーフ”が誰なのかー
それが分かった気がした。
林吾の推理が当たっていれば
シーフの正体は…
林吾は、”その男”が現れるのを
屋上で待ったー。
謹慎なんて、関係ないー。
”シーフ”は俺が捕まえる。
屋上から、輝く夜景を見つめながら林吾は
悲しそうに呟くー。
「--こんなに辛いんだなー」
”憑依されて奪われること”
それが、こんなに辛いだなんて、
思ってもみなかったー。
林吾は、
娘と妻を失った悲しみに暮れていたー
ザッ
背後から足音がした。
”ヤツ”が来たー。
林吾の推理が正しければー
”シーフ”が来たー。
林吾が振り返ると、
そこには、よく知っているカオがあったー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依を繰り返す犯罪者ー
その正体は…?
続きは明日デス~
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