<憑依>憑依犯罪②~残酷~

次々と女性の身体を使い捨てにしていく
憑依能力を持つ凶悪犯罪者”シーフ”

追跡を続ける警察官を嘲笑うようにして
シーフは憑依を続けていくー…

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「くくくくくく…」

血濡れたセーラー服を着た少女が
血のついた指を舐めながら微笑む。

「憑依能力ってすごいよなぁ…」
セーラー服の少女が足を組みながら
近くに転がっている人間を見つめるー

「こんな真面目で優しい女の子を
 一瞬にして凶悪犯罪者に
 変えちゃうことができるんだから…

 くふふふふふ♡」

セーラー服の少女の足元には、
母親と父親、妹が横たわっていたー

少女の手には包丁が握られている。

「---くくくく…
 俺がこの女を乗っ取って
 やらせてるんだ!
 犯罪行為を…
 くくく…あぁ…興奮するぜ、
 ゾクゾクするぜ」

セーラー服の少女は狂ったように笑いながら
興奮した様子で呟く。

やがて、我慢できなくなったのか
机の角に身体を押し付けて
角オナを始めてしまうー

親と妹を手にかけた少女が、
大声で喘ぎ始めるのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--その子はどうしたんだ?」

報告を受けた柳沢警視正が言う。

「はっ…
 本人は錯乱していて、
 記憶にないを繰り返しています」

警察の特殊対策チームの一人、
新次郎が、昨夜の事件の報告を行った。

「---そうか」
柳沢警視正が冷たい目で頷いた。

”シーフ”による犯罪がまた起きてしまった。
柳沢警視正は
”凄腕”と呼ばれる刑事で、
これまで、数々の表ざたに出来ない事件を
時に強引な手法を使い、闇に葬ってきた。

だがー
そんな柳沢警視正であっても、
今回の”シーフ”には手を焼いている。

それだけ、シーフが厄介な存在なのだー。

「---っかし、どんな奴なんですかねぇ」

休憩室にやってきていた新次郎が
ペットボトルのお茶を飲みながら言う。

「さぁな…ロクな奴じゃないのは確かだろう」
林吾が呟く。

林吾は怒りに震えていたー
こんなこと、許されるはずがない。

「--とは言え、このままじゃ、埒があかないですよ」
仲間の一人、啓太が言う。

他にもメンバーはいるのだが、
機密性の高い捜査をしているために
大体、組む相手が決まっていて、
林吾はいつも、啓太、新次郎の二人と組むことが多い。

「--そうだな。今のところ、やつの一人勝ちだ」
林吾は持っていた缶を握りしめる。

憑依された女性が現れてから
それを追ったのでは意味がないー。
最後には、憑依された人間が捨てられて
やつは逃げるだけだー。

林吾は思うー

”シーフを捕まえるためには
 本体を見つけ出さなくてはならないー”

とー。

だがー
そもそも”人に憑依する”なんてこと、
どのようにして行っているのかー。

それが、分からない。

もしも、”シーフ”が人間ではなかったらー?
もしも超能力の類だったらー?

あるいは、何らかの薬や武器を使っているのかもしれないー

「くそっ」
林吾が吐き捨てるようにして言うと、
啓太と新次郎も心配そうに林吾の方を見つめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「えぇ…分かっております。えぇ…」
柳沢警視正が誰かと電話をしていたー。

「……気づかれたら報告します。
 問題はありません。

 えぇ、憑依薬の秘密は誰にも。」

ーーーー!!!

たまたま忘れ物を取りに戻って来ていた
林吾の仲間・新次郎が偶然、その会話を聞いてしまった。

「—”憑依薬の秘密?”--?」

新次郎は、柳沢警視正の電話に不穏な
気配を感じて、そのまま忘れ物を取るのを
諦めて、気づかれないように立ち去った。

「--なんだったんだ…?」
新次郎は冷や汗をかいていたー。

”憑依薬”とは何だー?

柳沢警視正が、”自分たちの知らない何か”を
知っているような気がしてならないー

新次郎は不安を感じながら、
とりあえず林吾に報告しようと決意するー

「-----…」

そんな新次郎の様子を
警察署内の窓から
柳沢警視正は冷たい目で覗いていた…。

・・・・・・・・・・・・・・・

「んー…?」
林吾に連絡をしようとした新次郎の元に
現在付き合っている彼女から連絡が入った。

”今すぐ、会えるかな?”

とー。

新次郎は”急にどうしたんだ?”と返事を送る。

”とにかく会いたいの。
 だいじな話”

彼女の返事を見て、
新次郎は”最近忙しくて会えてなかったしな”と
呟きながら、彼女に指定された
場所に向かうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--ますます、疲れたカオしてるな」
高校時代からの友人、勇夫が笑う。

「まぁ…いろいろあってな」
林吾はから揚げを食べながら言う。

本当は、早く家に帰るべきなのかもしれないが
最近は娘からも妻からも怪訝な表情を
されていて、家庭での居場所を無くしつつある。

”シーフ”ばかりを見ていて
”家族”を見ていないからかもしれないー。

今日も癖のある箸の持ち方をしながら
勇夫は笑う。

「ーーそんなに悩んでいると、
 精神的に参っちまうぞー」

その時だったー。

仲間の新次郎から連絡が入ったー。

「--もしもし?」
林吾が電話に出ると
”先輩!俺の彼女が…ぎぃあああああっ!?”

と言う声が聞こえてきたー

「--!?」
林吾は立ち上がる。

「--どうした?」
勇夫が呟く。

林吾は「悪い、急用だ」と呟いて
5000円札をカウンターに置くと、
勇夫を残してそのまま居酒屋から飛び出した。

「新次郎ー…!」

林吾は走ったー。

ついに、仲間が狙われてしまったー。

”シーフ”にとって、
自分を追う警察官を
殺すことなどたやすいことー。

そうー
自分たちは、ヤツの手のひらの上で
弄ばれているのかもしれないー

やっとの思いで現場に辿り着いたとき、
新次郎は既にー。

新次郎の上に覆いかぶさっている女性の
手は真っ赤に染まっていた。

「うふふふふふ…♡」
笑う女性は、
新次郎の彼女ー。

彼女は、”シーフ”に憑依されてしまっていた。

「--貴様ぁ!」
林吾が叫ぶ。

周囲には、一般人がまだいたー。

野次馬もいれば
パニックを起こす人間もいるー。

「--遅かったなぁ…!」
新次郎の彼女が笑いながら林吾の方を見つめる。

「お前に、俺を止めることはできないよ…
 くくくくく…」

そう言って笑うと、新次郎の彼女はそのまま
突然気を失った。

「---お前が関われば関わるほど…」

ーー!?

林吾の背後から声がする。

別の女性だー。
さっきまで彼氏と一緒に事件現場を撮影していた
野次馬の女ー

「犠牲者は増えて行くー」
野次馬の女が笑う。

再び倒れる女ー

今度は、倒れた新次郎の救命活動をしていた女性が笑いだした。

「---ひははははは! 
 俺は乗り換えし放題なんだぜ!
 どいつだって、俺の入れものにできる」

救命活動をしていた女性が、新次郎を蹴り飛ばして笑う。

林吾は叫ぶ。

「やめろ!ふざけるな!
 貴様…一体何が目的なんだ!」

林吾が叫ぶと、
救命活動をしていた女性は笑ったー。

”目的ー?
 俺はただ楽しんでいるだけさ”

そう言うと、救命活動をしていた女性は
その場に倒れたー

林吾は叫ぶ。

「くそっ!」

そして、新次郎に駆け寄るー。

しかしー仲間の新次郎は
既に死んでいたー。
最愛の彼女に、命を奪われてしまったー。

「--し、新次郎!?」
正気を取り戻した彼女が駆け寄ってくる。

「いやあああああああ!」
悲鳴を上げる彼女。

「ーーーく、くそっ!」
林吾は、どうしていいか分からず、
困惑するー。

何て言葉をかけたら良いのかー

そんな林吾の元にLINEが届いた。

”お父さん”
娘の里恵菜からだった。

こんなときに珍しいな…と思いながら
里恵菜からのLINEに目を通したー

そしてーー

「----う、、、嘘だろ…!」
林吾は叫んだ。

慌てて走り出す林吾ー。

娘・里津奈からのLINEー
送られてきた写真はー
ハサミを持って、不気味に微笑む里津奈の姿だったー

”この意味、わかるぅ~?”

という文章が添えられてー

林吾は瞬時に意味を理解したー。
”シーフ”だー。

シーフのやつが、
自分の家族をー。

反抗期の娘の顔を思い出すー
最近は、冷たい妻の顔を思い出すー

たとえ、反抗期でも、
冷たくても、林吾にとっては大切な家族ー。

こんなに一生懸命走ったのは初めてだ。
林吾は自虐的に笑いながら、
なんとか自分の家に辿り着いた。

自宅は、静まりかえっている。

インターホンを鳴らす。

だが、返事はない。
今の時間帯なら娘の里恵菜も
妻の由希子も絶対に家にいるはずなのだー。

「--くそっ!」
林吾は家の中に飛び込んだー。

「--里恵菜!由希子!」
銃を手にしながら、家の奥へと向かう。

家族で食事をする場所だけー
電気がついているー

そこにはーー

”何かを食べる
里恵菜の姿があったー。

「---うふふふふふ…♡
 おかえりなさ~い」

箸で何かを食べている里恵菜。

「-----!」
林吾ははっとする。

そしてー

里恵菜の足もとには、
林吾の妻・由希子がボロボロになった状態で倒れていた。

「んふふふふ~
 お母さんのこと、殺しちゃった♡」

笑いながら言う里恵菜。

「う、、、嘘だろ… お、、、おい…嘘だろ!」
林吾は信じられずに叫んだ。

「嘘じゃないよ。ほら、今、わたしが
 食べているもの、わかる~?」

里恵菜はケラケラ笑いながら言うー。

里恵菜の口元や手は
血に染まっていたー

「--わたし、お母さんを食べてるの…
 ぐふふふふふ」

里恵菜が食べているのはー

「--おえっ…」
林吾は思わず吐き気を催したー。

今までにも、林吾は数々の凶悪犯罪を
見てきているー

だがー
”人間”を食べているヤツを見るのは
初めてだったー

娘の里恵菜が、
自ら命を奪った母親の一部を、
ステーキを食べるかのようにして食べているー。

「ん~、まっずい~!
 喰うもんじゃねぇな」
里恵菜はミニスカートをいじりながら笑う。

「身体も壊しそうだし…
 ま、俺には関係ないけどな!あはは!」

里恵菜は笑うー。

そうー
”シーフ”にとって
乗っ取った身体はおもちゃでしかないー

里恵菜もー

赤く染まったドロドロの何かを
独特の箸使いで食べる里恵菜。

「ふざけるな…!り、里恵菜を解放しろ!」
林吾が娘の里恵菜に銃を向ける。

「--ひひひひひひ…」
笑いながら立ち上がる里恵菜。

林吾は、里恵菜に向けた銃を撃てずにいた。

「--り、里恵菜…頼む!動くな!目を覚ましてくれ!」
林吾は手を震わせながら叫ぶー

今までにも
憑依された女性をやむを得ず”射殺”してきたー。

だが-自分の娘となると…。

「---く、、くそっ!」
林吾は撃てなかったー。

わかっているー
”シーフ”は里恵菜を解放する気はない。
このままにしておけば、どんどんどんどん里恵菜が
弄ばれるだけー。

引き金を引くのがー
一番なんだー。

でもー、
それでも。

「ばーか!」
里恵菜はそう言うと、林吾から銃を奪った。

「--!!」
林吾はハッとした。

銃を奪われるのはまずい。

「--きゃはははははは!」
里恵菜は笑いながら玄関の方に走り出した。

家の外に血まみれのまま
飛び出す里恵菜。

「--待て!」
林吾が叫ぶ。

外からは銃声が聞こえる。

慌てて家から外に飛び出すと、
里恵菜は大通りの方に走って行きながら
銃を放っていた。

罪もない通行人が倒れて行く。

狂ったように大笑いする里恵菜。

そして、里恵菜は叫んだ。
「わたしは警察官、山岡 林吾の娘よ!
 ふふふふふふ!
 お父さんの育て方が悪いから
 わたし、人殺ししちゃうの!」

狂ったように笑いながら通行人を
ひとり、ふたりと撃って行く里恵菜。

すぐに大通りはパニックを起こしたー。

林吾は叫ぶ。
「やめろーーーー!」

やがて、銃の弾が無くなり、
里恵菜は笑いながらそれを放り投げた。

「お前はもう終わりだ!林吾!」
笑う里恵菜。

「--犯罪者の父親が、
 今の世の中でどうなるかは知ってるよな?
 お前の人生は、もうおしまいだ!」

里津奈が憎しみに満ちた目で
林吾を睨む。

「--く…」
林吾は、思うー。
確かに奴の言うとおりー。
実の娘がこんな事態を起こしたとなればー
世間は、父である林吾を叩くー。

”娘は憑依されていた”などと言っても、
誰も信じてはー

「--きゃはははははははは!
 まだまだお前を苦しめてやるよ!」
里恵菜は可愛い声でそう叫ぶと、
服を引き千切り始めた。

「どうだ!?公衆の面前で
 裸を晒す娘!
 変態だろ?たまんねぇだろ?」

スカートを脱ぎ、服を千切りー
大通りで裸になろうとしている里恵菜ー

「やめろ!!やめろーー!!」
何も出来ず林吾は叫んだー

その時だったー。
銃声が響き、里恵菜は驚いた表情を
浮かべて、そのまま倒れるー

「--り、、里恵菜!!」
林吾は泣き叫ぶようにして倒れた里恵菜に近づく。

だがー
里恵菜はもう死んでいた。

泣き叫ぶ林吾。

そこに、林吾の仲間の刑事のひとり、啓太がやってきた。

彼らは”憑依された人間”の射殺許可を受けている。
もちろん、そんなこと、公にはできないが。

「---先輩…」
里恵菜を射殺したのは、駆け付けた啓太だった。

申し訳なさそうに言う啓太。
林吾にも分かっている。
”シーフ”に憑依された以上、
こうするしかできなかったことはー。

林吾は、啓太を恨まなかったー
啓太のしたことは、正しいー

だがー、
”シーフ”への怒りは爆発寸前だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ご苦労だったね」
柳沢警視正が冷徹にそう呟いた。

「昨日の事件は、被疑者である山岡 里恵菜が
 凶悪事件を起こした末に自殺した、ということで
 処理をした」

あくまで冷徹に言う柳沢警視正。

「---…きみは、しばらく謹慎だ。
 憑依されていたとは言え、娘の里恵菜が
 あんなことを起こしたのでは、
 世間は許さないだろう。

 それにー、
 憑依のことは世間には公表できないー」

林吾は、その言葉を聞き、
柳沢警視正に頭を下げて
部屋を後にした。

「---先輩」
廊下では、仲間の刑事・啓太が待っていた。

「--しばらくは、俺に任せて下さい」
そう呟く啓太。

「---あぁ…すまない」
林吾はそれだけ答えると、
警察署を後にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

謹慎処分になった林吾は、
”ある男”を近くのビルの屋上に
呼び出していたー

”シーフ”が誰なのかー
それが分かった気がした。

林吾の推理が当たっていれば
シーフの正体は…

林吾は、”その男”が現れるのを
屋上で待ったー。

謹慎なんて、関係ないー。
”シーフ”は俺が捕まえる。

屋上から、輝く夜景を見つめながら林吾は
悲しそうに呟くー。

「--こんなに辛いんだなー」

”憑依されて奪われること”

それが、こんなに辛いだなんて、
思ってもみなかったー。

林吾は、
娘と妻を失った悲しみに暮れていたー

ザッ

背後から足音がした。

”ヤツ”が来たー。

林吾の推理が正しければー
”シーフ”が来たー。

林吾が振り返ると、
そこには、よく知っているカオがあったー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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憑依を繰り返す犯罪者ー
その正体は…?

続きは明日デス~

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