<憑依>憑依犯罪①~シーフ~

憑依能力を持つ犯罪者ー。

その犯罪者は、
女性の身体を狙い、奪い、そして
悪事を行わせるー。

”憑依犯罪”を止める手立てはあるのか…

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「--ここだ」
警察の特殊部隊に所属する山岡 林吾(やまおか りんご)は、
とある廃工場にやってきていたー。

”表ざたに出来ない事件を処理する特殊部隊”で
世間にその存在は認知されていないー。

林吾と、その仲間は、
この廃工場に潜む”凶悪犯罪者”を追い詰めるべく、
この廃工場にやってきていたのだー。

やってきたのは、林吾を含めて3人ー。
凶悪犯罪者に対処するにしては少人数なのには、理由があるー。

「---くくくく…ご苦労さん」
廃工場の奥から声が響き渡る。

凶悪犯罪者の声だー。

その声はー
女性のものだった。

林吾たちをからかうかのように
奥から姿を現した女性はー
おしゃれなショートパンツ姿の女性だった。

「---動くな!」
林吾が銃を構えるー。

一見すると犯罪に縁が無さそうな
おしゃれな女性ー。

彼女が、凶悪犯罪者なのだろうかー。

「--た、助けてくれ…!」
女性の近くには散々痛めつけられた男性がいる。

「--その人を解放しろ!」
林吾が叫ぶ。
他の仲間の2人の隊員も銃を構える。

だがー
ショートパンツ姿の女性は余裕だった。

「ーーひひひひひひひ!
 撃つ?撃っちゃう?
 わたし、死んじゃうよ?あははははははっ♡」

挑発的に笑う女性。

「--美菜!どうしたんだ!おい!」
近くにいた人質の男性が叫ぶ。

「美菜~?くへへ…
 この入れ物の名前か~?」
美菜と呼ばれた女性が笑う。

「--い、、入れ物…?」
人質の男性が困惑した表情を浮かべた。

「そうさ!女どもは全員、俺の入れものだ!」
美菜が嬉しそうに自分を指さしながら叫んだ。

「--ーーその人たちを解放しなさい!」
林吾が叫ぶー。

”その人たちー”

人質にされているのは美菜の彼氏である
男性ひとりー

本来であれば、
”その人たち”という表現はおかしいー

だがー
美菜という女性も、被害者だー。

彼女はー
”憑依”されているー

”シーフ”と呼ばれる凶悪犯罪者にー。

シーフ。
その素性は不明。
1年前から”女性”の身体を乗っ取り、
身も心も操って犯罪行為を繰り返している人間だー。
いつしか、警察組織内では
”盗人”を意味する”シーフ”のコードネームで
呼ばれるようになっていた。

憑依している人間が”誰”なのかは
未だに分かっていないー。
だが、彼に憑依された女性たちはみんな、
完全に意識を乗っ取られて思うが儘に
犯罪行為に手を染めさせられてしまうー。

しかもー
逮捕することもできないー

何故なら、乗っ取らている女性を逮捕したところで
”シーフ”は身体を移動するだけだからだー。

「--解放~?」
美菜が笑いながら陸斗の方に近づいてくる。

そして、美菜は陸斗に唾を吐きかけた。

「い・や・だ」
美菜はそう言うと、陸斗を蹴りつけた。

陸斗も必死に応戦する。

喧嘩などしたこともないであろう
女子大生の美菜が、警察官に向かって
殴る・蹴るの暴行を加える。

綺麗な生足から繰り出される蹴りを
なんとか抑えた陸斗は、
美菜を投げ飛ばした。

「ぐぇぇっ!?」
美菜が声を上げる。

「け…刑事さん!美菜はいったい…!」
人質にされていた彼氏が叫ぶ。

美菜は苦しそうに立ち上がると、
今度はナイフを取り出した。

ナイフを綺麗な舌でペロリと舐める美菜。

「--くひひひひひひひひ!」
美菜は笑いながら、彼氏の方に向かって
走り出した。

「とまれ!」
林吾が叫ぶ。

他の2人の仲間も美菜に銃を構える。

「--わたしを止めないと、
 この女の彼氏、死んじゃうよ~?

 あ、でも、撃ったらわたしが死んじゃうかも!?
 どうする!?どうする!?!?」

美菜が彼氏にナイフを突きつけながら言うー。

パァン!
銃声が響いたー

「あ……」
足を撃たれた美菜が
その場に蹲る。

「み、美菜!」
彼氏が叫ぶ。

だが、美菜は痛みも忘れたかのように
立ち上がると、再び彼氏を襲おうとしたー

「……くそっ」
林吾は歯を食いしばるとー
美菜に狙いを定めてー
美菜を撃ち抜いたー

「あ……」
美菜が驚いた表情を浮かべてー
その場に倒れる。

「くひ…ひひひひひ…ひひひひひひひひ」
倒れた美菜は笑い始めた。

林吾と、仲間の2人が美菜に近づく。
彼氏は悲痛な叫びをあげている。

”射殺許可”
林吾たち特殊部隊にはそれが出ていた。

”シーフ”に憑依された女性の射殺ー。

もちろん、
憑依された人間は被害者だー

だがー
こうするしかないー。

”シーフ”は
憑依した女性の身体で好き放題をするー。
過去には、女子高生の身体で30人以上の
命を奪ったこともあるー。
乗っ取られた身体を止めるしか、方法はないのだ。

逮捕する方法もあるー。
だが、”シーフ”は逮捕されそうになると、
憑依している女性を自ら傷つけて
わざと致命傷を負わせてから憑依から抜け出し、
憑依された人間を苦しませて殺すという
極めて残虐な行為に走るのだったー

だからー
こうするしかなかったー

「----また、ひとり、、、こ~ろした…んふっ♡」
美菜はそう呟くと、
狂気的な笑みを浮かべたまま、
その場で息絶えてしまったー

「美菜…!どうして…どうして…!」
彼氏が叫ぶ。

「それに、憑依っていったい…!」
彼氏の叫び声。

林吾は答えないー

そのままー
特殊部隊の3人は、
現場から引き揚げていくー

引き揚げながら、林吾は思うー

”今回の件も、奴にとっては何も痛くないー”

とー。

そうー
憑依犯罪者”シーフ”にとっては
”入れ物”が壊れただけー。
何の罪もない美菜という女子大生が弄ばれて
美菜が命を落したー。

”シーフ”は何のダメージも受けてはいないー

「くそっ!」
林吾は舌打ちする。

この戦いはいつまで続くのだろうかー。
林吾はそんな風に思いながら、
苦悩していたー。

”シーフ”の正体はいまだに不明ー。
憑依された女性が現れる度に、
これ以上の被害が出ないように対処するー
それしか、できないー

「--先輩。少し休んでください」
一緒に行動していた特殊部隊の仲間のうちの一人、
啓太(けいた)がそう呟く。

「---あぁ」
林吾はやっとの思いでそう返事をした。

一緒に行動していた2人、啓太と新次郎(しんじろう)も
想いは同じー。
なんとかして”シーフ”を捕まえたいー

だがー。
果たして、人の身体をおもちゃのように使うシーフを
捕まえることは、できるのだろうかー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---ご苦労だったね」

鋭い眼光の男が、林吾たちに向かってそう呟いた。

林吾、啓太、新次郎の3人が、
今回の件の報告を終えた。

”シーフ”を追う特殊捜査班を指示する
柳沢(やなぎさわ)警視正が
「今日はもう休みなさい」と呟いた。

林吾、啓太、新次郎の3人は
頭を下げて、特殊班の部屋から出て行くー

特殊班に所属するのは男性のみー。

理由は簡単だったー
以前は、チームに女性も所属していたのだが、
特殊班に所属した女性は、全員、”シーフ”に憑依されて
悪事に手を染めさせられた挙句、命を奪われた。

だからー、今はこのチームには
男性しかいない。

”シーフ”が
「女性にしか憑依できないのか」
それとも「女性にしか憑依しないのか」
どちらなのかはまだ分からないー

けれど、
憑依されるリスクがある以上は、
女性を配属するべきではないのは
明白だったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---に、しても、最近元気ないなぁ?
 どんな事件を追ってるんだ?」

林吾は、仕事帰りに
高校時代の同級生、長野 勇夫(ちょうの いさお)と
居酒屋で飲んでいた。

勇夫は、今はフリーランスで仕事をしていて、
警察とは何の関係もないが
こうして今でもよく一緒に飲みに来たりしている
かけがえのない存在だ。

「いや…」
林吾はそう答えた。
”憑依犯罪者・シーフ”の存在は
警察によって世間には隠されている。

”身体を乗っ取られるかもしれない”なんてことが
世間に知られれば大パニックになってしまう。

「---ま、言えないこともあるよな」
おつまみのからあげを食べながら笑う勇夫。

「---」
勇夫の方を見ながら
”相変わらず変な箸の持ち方だな”と苦笑いすると
林吾はふと、居酒屋でかかっているテレビの方を見た。

”心優しい 二児の母が豹変”

そう報道されているー

「--か~!女ってやっぱ怖いねぇ~」
勇夫がニヤニヤしながら呟いた。

「--何考えてるか、分かりやしねぇ」
勇夫はビールを飲み干しながら笑う。

勇夫は女性が苦手だ。
学生時代、陰険な女子たちのいじめの対象に
されたこともあったし、
大学時代は酷い振られ方をして
それ以降は女性不信にも陥っている。

「---

林吾は口を閉ざした。

”最近の事件は憑依によるもの”とは、
口が裂けても言えない。
絶対にー。
それが世間に広まれば、
世間は大混乱することになるー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーただいま~」
林吾が帰宅すると、
妻の由希子(ゆきこ)が出迎えてくれた。

「おかえりなさい」

林吾は疲れ果てた様子で、
リビングの方に向かう。

現在高校2年生の娘・里恵菜(りえな)が
スマホをいじりながらのんびりしていた。

最近は、難しい年頃であまり口を聞いてもくれない。

特に、この半年間は
憑依犯罪を繰り返す”シーフ”を追っていて
家族との時間もまともに取ることができていないー。

このままでは、家庭も崩壊してしまうー
早く、”シーフ”を追い詰めて捕まえなくてはならないー。

林吾は、強くそう感じていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

林吾は、パトカーで暴走車を追っていたー。

中学に通う女子生徒が突然、
路上に止めてあった車で暴走し始めたのだと言う―。

”シーフ”の仕業だー。

「くそっ!奴め!」
林吾がパトカーで暴走車を追跡しながら叫ぶ。

このところ、シーフが起こす事件は増えつつあるー。
マスコミは女性による凶悪犯罪の多発を伝えているー。
そろそろ”憑依”を隠すのも難しくなりつつある。

だがー
”憑依”なんて存在がしれれば、
世界は大混乱に陥るー。

「----ひははははははは!
 捕まえてみろよ~!」
車から顔を出しながら
可愛らしいツインテールの少女が叫ぶ。

「舐めやがって…!」
林吾はアクセルを踏んだ。

”俺は回り込みます”
林吾の仲間の一人、啓太が無線で連絡をしてきた。

別のパトカーで追跡している
啓太が、迂回して、暴走車を抑えようとする-。

「--ば~~~か!あはははははは!」
窓から顔を出しながら、ツインテールの少女は
追跡を続ける林吾のパトカーに向かって
唾を吐き捨てた。

しかしー

「---!!!!」

直後、激しい音が響き渡る。

前方を見ていなかったツインテールの少女の車は、
前を走っていたトラックに激突したー。

「---!!」

林吾が慌ててパトカーを停車させる。

暴走車の運転席を覗く林吾ー。
しかしー
ツインテールの少女は
狂気的な笑みを浮かべたまま死んでいたー。

「くそっ!」
林吾が叫ぶ。

人の身体をおもちゃのように
使いやがってー。

「--くくく…」
背後から不気味な笑い声が聞こえた。

振り返ると、そこには、子連れの母親がいた。

子供が驚いた表情をしている。

「---お母さん!ねぇ、お母さん?」

林吾がその母親を睨むー
この人も、”シーフ”に憑依されているー。

シーフは、まるでおもちゃのように
人の身体を使い捨てにして、乗り換えて行くー。

「--くくく…
 あんたもしつこいな…」

母親は笑った。

「お、、お母さん!ねぇ!」
一緒にいた小さい男の子が、
母親の豹変に驚いている。

母親は子供の叫びを無視して林吾を見つめる。

「くくくく…
 俺を捕まえることなんて、できねぇよ…
 いくらでも、身体はあるんだからよ!」

母親が自分を触りながら言う。

林吾は、
歯ぎしりしながら叫んだ。

「--クズ野郎が…!
 必ず俺はお前を捕まえて見せる…!」

林吾は怒りの形相で憑依されている女性を睨む。

「---ー」
母親は笑いながら林吾の方に近づいた。

そしてー
林吾に唾を吐き捨てると、笑いながら呟いた。

「無理に決まってんだろ。ばーか!」

そう言うと、母親は笑いながら林吾に背を向けて
泣き叫ぶ子供を無視してふらふらとどこかへと
歩いて行ったー

「くそっ…!ふざけやがって!」
林吾は必ず”シーフ”を捕まえてやると、
改めて決意するのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

パァン!

廃工場に銃声が響き渡るー。

先日、彼女の美菜が憑依されて、
美菜を失った男子大学生が、
苦しそうな声をあげて倒れる。

「---悪いね」

動かなくなった男子大学生を見て
男は微笑んだー。

「--憑依が世間に知れたら、
 世間は大パニックになるー

 だからー
 ”不都合な事実”を知ってしまったきみには
 消えてもらうよ」

柳沢警視正は
”彼女は誰かに操られていました”と叫ぶ
彼氏を呼び出したー。

そしてー”始末”した。

林吾の上司である
柳沢警視正は笑みを浮かべて
その場から立ち去ったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依能力を、息を吐くように悪用する
恐怖の犯罪者…

捕まえることはできるのでしょうか…!

続きは明日デス~

憑依<憑依犯罪>
憑依空間NEO

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