お嬢様としての人生を手に入れた貧乏な男性。
貧乏な男性になってしまったお嬢様ー
ふたりは、手に入れた人生をどのように
使っていくのかー。
元に、戻ることはできるのかー。
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♪~
紗智の家のインターホンがなる。
応対したのは執事。
”どちら様でございましょうか”
執事の言葉に
潤一になってしまった紗智は、
怒りをメラメラさせながら呟く。
「--紗智さんの、
スマホをお届けにきました」
落し物を拾った風を装う。
執事は少し考えたあとに
”どうぞ”と返事をした。
住み慣れた豪邸の敷地内に入る
潤一(紗智)
中に入ると
執事がやってきた。
すかさず、潤一(紗智)は言葉をかける。
「ねぇ、落ち着いて聞いて。
わたし、紗智なの」
その言葉に、執事は再び失笑する。
「お嬢様は先ほどお帰りになられてますよ」
執事はそう答えた。
だが、そのリアクションは想定済みだ。
「生年月日はー」
潤一(紗智)は自分の個人情報を完璧に
語り始めた。
「--…!」
執事は驚いた表情を浮かべるー。
「あなたの本名は飯本 健次郎」
最後に、執事の本名を言う潤一(紗智)。
そしてー
つけ加えた。
「さっき帰ってきた、わたしの身体を奪った
あいつに聞いてみて。
答えられないはずだから」
潤一(紗智)が腕を組みながら言う。
そうー
答えられるはずがないー
生徒手帳とかで、一部の個人情報は
知っていても、
好きな食べ物だとか、執事の本名だとか
そんなことは、分かるはずもないー
だがー
「---警察をお呼びしましょうか?」
執事の返事は予想外のものだった。
「---は?」
潤一(紗智)は思わずそう口にした。
「な、何を言ってるの?
わたしが紗智よ!
今のでわかったでしょ!?」
ヒステリックに喚き散らす潤一(紗智)
しかし、執事は言った。
「--お嬢様のストーカーとなれば
私どもも、お嬢様をお守りするため、
強硬手段に出なくてはなりません」
返してもらった紗智のスマホを手に、
「110」に通報しようとする執事。
「ちょ、待ちなさい!」
潤一(紗智)は叫ぶ。
「あんた!わたしが分からないの!?
何年の付き合いよ!?
お父様に言って首にしてもらうわよ!」
大声で叫ぶ
潤一(紗智)。
「---お父様…ねぇ」
執事は呆れた様子で呟いた。
そして、ゆっくりと潤一(紗智)の方に
近づいてくると耳元でささやいた。
「---いい加減にしろ」
ーーと。
紗智が普段聞いたことのない
執事の荒々しい口調。
潤一(紗智)は気圧されてしまった。
「--これ以上、お嬢様に付き纏わないことですな」
執事はいつもの口調に戻ると、
そのまま屋敷の中へと戻って行った。
「--…わ、、わたしが紗智よ!」
大声で叫んだー
けれどー
もう、相手にしてもらえなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
紗智(潤一)は
その様子を窓から見つめていたー
「--ほっ…」
ほっと一安心する紗智(潤一)。
執事がバカでよかった。
「--ふふふ…
これで、わたしがおじょうさま~!」
鏡の方を見て
くるりと回転してみせる紗智(潤一)
髪の毛やスカートもそれに合わせて
ふわっ、とする。
「--んふふふふふふ♡」
それだけで幸せな気持ちになって
紗智(潤一)は嬉しそうに足を
ばたつかせた。
「--はぁぁ…綺麗な手~…」
自分の手を見つめる紗智(潤一)。
どうして、こんなに色白で
汚れひとつない手で居られるのだろうかー
「はぁぁ…思わず舐めたくなっちゃう」
紗智(潤一)ははぁはぁ言いながら
自分の手をペロペロと舐める。
最高だー!
紗智(潤一)はあまりの嬉しさに
その場でぴょんぴょん飛び跳ねた。
「--って、そういえば、なんだか
トイレに行きたくなってきた…」
紗智(潤一)はそう思いながら、トイレを目指した。
「……」
紗智(潤一)はトイレに向かいながら
表情を曇らせて行くー。
「そういえば…
女の子ってどうやってトイレするんだ?」
潤一は、ほとんどそういう知識がない。
座ってする、ぐらいしか知らない。
「---ま、、ま、、まぁ、なんとかなるさ!」
そう呟きながら紗智(潤一)はトイレに向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---はぁ…こら!この!なによこれ!」
仕方がなく、
身分証明書を頼りに
ぼろアパートに帰宅した潤一(紗智)は
トイレで苦戦していた。
まるで生きているかのように
アレが大きくなってしまい、
トイレに狙いが定まらない。
「ど、どうしたらいいの!
こら!静まりなさい!」
どすいて大きくなってしまうのかー
潤一(紗智)は、
それに怒りすら感じた。
無意識のうちに男の身体に
紗智の意識が興奮しているのが
原因なのだが、
紗智にはそんなこと、分からない。
「---あっ!」
そうこうしているうちに尿が
変な方向に飛んでしまう。
「--も~~~~~!」
潤一(紗智)が叫ぶ。
結果は惨敗ー
トイレを汚してしまった。
これも全て、
暴れまわる息子のせいだ。
潤一(紗智)は溜息をつきながら
トイレをふき取る。
「--…ってか、トイレ汚いわよ!
ちゃんと掃除しなさいよ!」
自分の家にある
ぴかぴかのトイレと比べて潤一(紗智)は
あまりにも汚い潤一宅のトイレを見て
そう叫んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--くそっ…的が定まらなかった…」
紗智(潤一)も
トイレで惨敗していた。
なんとも言えない感覚ー
男だったときとは、まるで違う。
上手く言葉に言い表すことができないが
コントロールが出来ない。
紗智になって、
息子の偉大さを知るのだった。
しかし…
「トイレ…綺麗だったなぁ、さすがお嬢様」
紗智(潤一)はそんなことを呟きながら
廊下を歩く。
それにしてもすさまじい豪邸だ。
こんなところで、こんなに可愛い身体で
生活しているなんて、
もはや、罪と言ってもいいだろうー。
「…そういえば、
よく考えたら、俺、女の子のこと
何も知らないな」
紗智(潤一)は思うー
トイレもそうだが、
メイクも、髪のお手入れも、
服の着こなし方も、学校生活も、
生理云々も、何も知らないー
「---…大丈夫か、俺?」
そんなことを心配しながら
紗智(潤一)は自分の部屋へと向かい、
また、自分の身体をなんとなく愛ではじめるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
”おい!井山”
スマホに電話がかかってきたー。
相手のあまりにも失礼な態度に
潤一(紗智)は腹を立てていた。
潤一のバイト先である
コンビニの店長だ。
”こっちはお願いしてるんだぞ!?”
店長が怒りの声をあげる。
今日は、潤一のバイトは休みだったが
欠員が出たとかで、
潤一に出てくるように店長が言っているのだ。
「--あら?お願いする態度かしら?」
潤一(紗智)は腹を立ててそう言った。
ついお嬢様口調になってしまう。
”なんだその態度は!”
店長が叫ぶ。
「---それはこっちの台詞よ!」
潤一(紗智)は言いかえした。
感情的になって、
もう身体が男であることも忘れてしまっている。
”おい!なんで女みたいな口調なんだ!?
井山!キモいぞ!”
店長が叫ぶ。
「--あなたには関係ないでしょ!
わたしだって好きでこうしてるんじゃないの!」
潤一(紗智)は
どうにでもなれ!と思いながら
大声で怒鳴った。
”な、なんだその言い方は…!”
店長は怒りをあらわにしていた。
しかしー
やがて、頭が冷えたのか、
店長は口調を落ち着かせてこういった。
”確かに頼み方がわるかった…
ダメならダメで、仕方ない”
その言葉に潤一(紗智)は
少しイライラしながら答えた。
「あ~もう!いいわよ!行くから!
どこのコンビニ!?」
潤一(紗智)の言葉に
店長は首をかしげながら、
コンビニの場所を伝えたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
紗智になった潤一は高校に登校していた。
お嬢様が揃う名門女子高。
「--ひ…ひぇぇ…」
紗智(潤一)は青ざめていた。
元々、女子がそれほど得意ではない
潤一にとって、ここは異世界でしかなかった。
「おっはよ~!」
突然背後から女子に声をかけられる紗智(潤一)。
「お、おは…」
振り返るなり紗智(潤一)は
その女子に抱き着かれた。
その子の胸や髪があたるー
「むぎゅっ!?」
思わず変な声を出してしまう紗智(潤一)
「紗智ったら今日もやわらか~い♪」
笑いながら言う女友達。
「---ひ、、ひぇ、、ひぇぇぇぇ…!?」
紗智(潤一)は
”いつもこんなことしてるのか~?”と
思いながら、なんだか気持ちイイ~と思いはじめていた。
教室に辿り着くと、
女子だらけの世界がそこには広がっていた。
やばいー
誰の名前も分からないー。
胡坐をかいている女子もいるし、
スカートの中が丸見えの女子もいる。
まるでおっさんのような言葉を吐く女子もいれば、
平気で耳をほじる女子もいるー
潤一が頭の中で考えている
”女子の姿”とは違っていたー
「--こ、こんなものなのか…?」
紗智(潤一)は戸惑いながら
自分の座席を探す。
しかし、分かるはずもなかった。
仕方がなく、大人しそうな眼鏡の女子に
「わ、わたしの座席、どこだっけ…?」と聞くと
眼鏡の女子は「へ…?」と不審そうな表情を
浮かべながら座席を教えてくれた。
「やばくね…?俺…?」
こんなんで、学校生活
乗り越えることができるのだろうか…。
そう思いながら紗智(潤一)は
おどおどしていたー。
しかしー
不思議なことに、
”なんとかなった”のだー。
周囲がやけに親切にしてくれて、
1日を乗り切ることができた。
下校するころには、
紗智(潤一)は、
”このまま俺は、いや、わたしは紗智になれる!”
と、謎の確信までしてしまっていた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
入れ替わってから1週間ー。
元に戻る方法を探しながら
独身フリーターとしての生活を送る紗智。
入れ替わったことに満足しながら
お嬢様としての生活を送る潤一。
ふたりは、対照的だったー。
「---♪~!」
”欲しいもの”は父親におねだりすれば
何でも買ってもらうことができるー
そんな夢のような生活
紗智(潤一)は、
可愛らしい洋服を着てご機嫌だった。
そこに、執事がやってくる。
「---今日もご機嫌でございますな」
執事が笑う。
「あら、もちろんよ。
毎日が楽しくって」
紗智(潤一)はそう答えた。
毎日が本当に楽しい。
幸い、潤一の身体になってしまった紗智は
何もしてこない。
ピーピーわめいてくるかと思ったが
そうではなかったー
おかげで楽しいお嬢様ライフを
送ることができている。
執事は、そんな楽しそうなお嬢様を見つめると、
少し微笑んで、そのまま立ち去ったー
・・・・・・・・・・・・・・
一方の潤一(紗智)は
早くも心が折れかかっていた。
「わたしが…どうしてこんな…?」
元に戻る方法を模索しつつ
コンビニバイトをする日々。
潤一(紗智)はいつものような
わがままが通用しないことに
苦しんでいたー
執事を顎で使い、
父親に何でも頼み、
屋敷のメイドたちに身の回りの世話をしてもらうー。
それが、できないー
なんて不便なのだろうー
と。
「--あぁぁぁ…
このおっさん、むかつく!」
洗面台の鏡に映った潤一の顔を
殴りつける潤一(紗智)
自分をこんな目に遭わせたこの男を
許さないー。
そう思いながら、潤一(紗智)は
コンビニバイトの時間が近づいていることに
気付き、今日もバイトに向かうのだったー。
③へ続くー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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正反対の人生を送るふたりー。
最後はどうなってしまうのでしょうか。
続きは明日デス~
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