お金持ちのお嬢様と
貧乏なフリーター。
二人が入れ替わってしまい…!?
-------------------------–
「くっそ~!」
井山 潤一(いやま じゅんいち)は
叫んでいた。
今日も、バイト先の店長から
散々に怒鳴られた挙句、
サービス残業をさせられてしまった。
正直、もう辞めたいー。
だが、生きて行くためには
こんな屈辱にも耐えなくてはいけなかった。
30歳後半独身の潤一の人生は暗かった。
その日暮らしの生活ー
会社は数年前にリストラされてしまい、
特にスキルのない潤一が、この年齢で
再就職するのは、とても難易度の高いことだった。
なんとかコンビニのバイトを始めたものの
日々酷使されて疲れ果てている。
家に帰っては寝る。
そんな生活の繰り返し。
「はぁ~…
俺、何のために生きてるんだ…」
潤一は、いつしか、
それが口癖になりつつあった。
こんなに辛い思いをするのなら、
いっそのこと…
そんな風に思ってしまう日も
日に日に多くなっているー。
「……」
友達もいない
お金もない
趣味もない
こんな人生が
これからもずっと続くのだろうかー。
潤一は”増税”のニュースを見て呟く。
「いよいよ俺に死ねってか」
そう呟いた潤一は
何だか、このまま生きているのも
バカらしくなってしまった。
稼いでも、稼いでもお金は消えて行くー
そもそも残業をしても
なかったことにされるし、
稼いだお金も税金だの年金だの、健康保険で
消えて行くー
それでいて、将来年金がもらえるかもわからない
「つまんない世の中だぜ」
潤一は、そう呟くと
外出する準備を始めた。
なんだかもう、いやになってしまった。
近所にある裏山にふらふらと
出かけて行く潤一。
最近は、この裏山に行くことが
多くなっている。
”死にたい”と思っているからだ。
いつも結局、死ぬことができずに
帰宅する、を繰り返しているのだが、
潤一はとにかく死にたい、と
そう思っていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神楽 紗智(かぐら さち)
高校2年生ー。
父親はとある企業の社長で
超がつくほどの大金持ち。
欲しいものは何でも買ってもらえて
何でも我儘を聞いてもらえた。
筋金入りのお嬢様ー
それが、紗智だ。
「---紗智お嬢様、お食事の用意ができております」
執事の男が言うと、
紗智は微笑んだ。
「うん。ありがと」
紗智は、”表面上”
おしとやかでおだやかなお嬢様だ。
清楚な姿で可愛らしい彼女ー。
だが、裏の顔は
”わがままで傲慢”
自分が何でも1番でないと気が済まない。
「--美空、すご~い!」
ある日ー
学校のテストで、クラスメイトが100点を取った。
紗智が絶対の自信を持っている数学のテスト。
”同じ100点”なら問題はないー
それ以上の点数は取れないからだ。
だがー
この日、紗智のテストは98点だった。
紗智は歯を食いしばる。
テストの答案用紙をぐちゃぐちゃに握りつぶす。
「---あ、紗智ちゃんは何点だったの?」
100点を取った美空が言うー。
天然な一面を持つ彼女に悪気はない。
「--え、、あ、、うふふふふふふ…
わたしは美空ちゃんより下だから」
紗智は作り笑いを浮かべたが、
内心ははらわたが煮えくり返っていたー
放課後ー。
紗智は美空の机の中から
数学の教科書を取り出した。
「--」
紗智は、陰険な一面も持っていた。
美空が自分よりも高い点数を取ったことに
腹を立てていたのだ。
”き~!くやしい!”とでも
言いだしそうな表情を浮かべて
紗智は数学の教科書を手にすると、
そのまま学校の外に出た。
「--お嬢様、お迎えに上がりました」
学校のすぐ近くで待機していた執事。
「--いい!」
不機嫌な紗智は執事の男にそれだけ言うと、
そのまますたすたと歩いて行ってしまった。
「--やれやれ」
執事は苦笑いしながら
歩いていく紗智の後姿を見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
紗智が学校の近くにある裏山へと
やってきていた。
美空の数学の教科書をこの山の中に
埋めてやる、
そう思って、わざわざこの山まで
入ってきたのだった。
「ここでいいかしら」
紗智は山のある程度奥の方まで
やってくると、美空の数学の教科書を取り出した。
「これであんたは勉強できない…!
うふふふふふ」
紗智が数学の教科書を埋めようとした
その時だった。
ガサッ!
と、近くで音がした。
紗智はドキッとして振り返る。
そこにはーー
木にロープをくくりつけて
自殺しようとしている男がいた。
「--は!?」
紗智は思わず驚く。
”え?何この展開?
このおじさん、自殺しようとしてるの??”
紗智は数学の教科書を放り投げて
その男の方に向かうー
その男は、
自分の人生に絶望して、
今日、この瞬間、自殺しようとしていたー
「--ちょ、、ちょっと!」
紗智が叫ぶ。
声をかけられた男ー、潤一は、
慌てて自分の首にロープをかける。
「あ!ちょ!お待ちなさい!」
紗智が思わず変な口調で叫んでしまう。
「--嫌だ!俺は!俺は!もう死ぬんだ!
こんな世の中!もう嫌だ!」
潤一は叫んだ。
「--と、止めないけど、
今、わたしの目の前で死ぬのはやめてくれる?」
紗智が言う。
知らない男が自殺するのは勝手だ。
だが、目の前で死なれては後味が悪い。
「い…いやだ!」
潤一は叫ぶ。
次第に潤一が苦しそうな顔になっていく。
紗智は慌てて潤一の方に駆け寄る。
「--ちょ!やめなさい!」
しかしー
その時だったー
木の枝にひっかけたロープ。
その重みに耐えられずー
木の枝が折れて―
下にやってきた紗智のところに
潤一が落下していくー
「うわああああああああああ!」
「きゃああああああああああああ!」
二人は、そのまま激突したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらくの間、
沈黙していたその場所で、
声が聞こえた。
「う…」
ぶつかり合って
気を失っていた2人ー
そのうちの一人、
潤一が目を覚ましたのだった。
「--あ、、あれ…」
朦朧とした意識の中、周囲を見渡す潤一。
意識がはっきりとしないー。
潤一は、周りを見渡しながら思い出す。
”あ、そうか、わたしは
美空の数学の教科書を埋めに来てー
それから、自殺しようとしているおじさんを
見つけてー”
ふと、近くに落ちているピンク色のスマホが、
音を立てているのに気付く。
慌てて画面を見ると
そこには”執事”と表示されていたー
18:15-。
やばっ!そろそろ心配される時間だ!
そんな風に思いながら
電話に出たー
「-ごめん!もう帰るから!」
電話に出るなりそう言い放ってーーー
目を見開いた。
自分の口から
”男の声”が出ているー?
「--!?!?!?!?」
潤一は驚いて自分の身体を見つめたー
”失礼ですが…
どちら様でございますか?”
執事の困惑した声が電話から
聞えてきたー
「え…あ…えぇ?」
胸が、、ない!?!?
自慢の髪がない…!?!?!?
え…え!?
潤一の中には、
お嬢様の紗智がいた。
潤一(紗智)は混乱して、
周囲を見渡す
”どちら様ですか?
お嬢様はどこに?”
執事が少し口調を変える。
まずい。
お嬢様の電話にかけたら男が出たー。
この状況は
誘拐だと思われかねない。
「---ち、違うわ!
わ、わたしが紗智よ!」
潤一(紗智)はとっさに叫んだ。
”これはこれは…”
執事が失笑する。
失笑されても仕方がない。
男が”わたしは紗智よ”なんて
言っても信じないのがふつうだろう。
”お嬢様とはどういうご関係で?
お嬢様と代わっていただけますか?”
執事の口調に敵意が混じっている。
「---あ、、え、、あ、はい」
潤一(紗智)はそう言って
電話から一度手を離す。
自分がこの身体になったということは、
自分の身体が近くにあるはずだー。
「----どこ?どこなの!?」
潤一(紗智)は狂ったように
周囲を見渡す。
どうして自分がこの身体になってしまったのかー。
まさか、入れ替わった後に、
あの男…自殺したんじゃ?と潤一(紗智)は
不安になる。
しかしー
”ただいまー”
電話の向こうから”わたし”の声が聞こえてきて
潤一(紗智)は唖然とした。
「--!?!!?!?!?」
ま、まさか…!
紗智になった潤一は、
紗智より先に目を覚ましていた。
そして、自分が女子高生の身体になっているのに気付き、
紗智になった潤一は、
その場で胸を触ったり、
髪のニオイを嗅いだり、
意識を失ったままの自分の身体に覆いかぶさってキスをしたー
一通り済んだあとに、
紗智(潤一)は、まだ意識を失ったままの潤一(紗智)を
放置して、そのまま立ち去ったのだった。
鞄に入っていた生徒手帳を頼りに
紗智自身の家を目指してー。
スマホは、枝が折れて落下した潤一と紗智が
ぶつかったときに、
飛んでしまっていたのだが
それに気づかず、そのままにしてしまったー
「--ま、、待って!」
潤一(紗智)は叫んだ。
”どうして、お嬢様のスマホを
お持ちになられているのですかな?”
執事が言う。
その会話に気付いたのか、
紗智(潤一)がスマホを手にした。
”あらあら?わたしのスマホを
拾ってくれたのですか?
ありがとうございます”
電話の向こうから聞こえてくる自分の声。
潤一(紗智)は叫ぶ。
「ちょっとあんた!
それはわたしの身体でしょ!
どういうことよ!」
大声で叫ぶ潤一(紗智)。
周囲から見れば、男が
女言葉で話しているようにしか見えないー。
もっとも、山奥だからそんな心配は
ないのだけれども…。
”うふふふふ…
何を言ってるのかしら~?”
ぎこちない女言葉で
笑う紗智(潤一)
「--か、、返して!わたしのからだ!」
潤一(紗智)は叫ぶ。
しかしー
”何を言ってるのかわからないわ。
このからだは、わ・た・しのもの♡
うふふふふ”
プチっ
電話が切れたー
「--ちょ、、、ちょっと…嘘でしょ…?」
山奥で
へなへなと座り込む潤一(紗智)
あり得ない…
紗智はそう思った。
お嬢様育ちのわたしが、
こんな男の身体になってしまうなんて、
あり得ない…。
潤一(紗智)はすぐに立ち上がった。
「ふざけないで…!」
潤一(紗智)は走り出したー。
自分の家に向かってー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お嬢様、お食事の用意ができております」
執事が言う。
「ありがとうございます」
思わず敬語で返事してしまう紗智(潤一)
執事が立ち去ったのを見て、
紗智(潤一)は笑う。
「--まさか、、お嬢様だったなんて…
俺が…お嬢様…」
紗智(潤一)は鏡を見つめた。
可愛らしいブラウス姿に着替えていた紗智(潤一)は、
自分の姿を見て、興奮を隠せない。
「--ぶふっ!」
鼻血が垂れてきたー
やばい…
慌てて鼻血の処理をすると、ティッシュを詰め込んだまま
紗智(潤一)は食堂に向かった。
「---うわあああああ!
うまそ~~~~!」
机に並ぶ豪華な食事を見て紗智(潤一)は
思わず叫んでしまう。
「はは…今日はなんだか元気だな」
先にテーブルのついていた父親が言う。
「--いっただっきま~す!」
紗智(潤一)は嬉しそうに食事を食べ始めたー。
テーブルマナーは最悪だ。
口に食べ物を含んだまま笑い、
口から食べ物が溢れだしているー。
思わず父親は、口をぽかんと開けたまま固まっている。
「ごっちそうさま~!」
紗智(潤一)はそんな父の様子にも気づかず、廊下に
飛び出した。
「やっほ~!」
あまりの嬉しさに廊下で
一人ジャンプする紗智(潤一)。
紗智になった潤一は、
”正反対の人生”を手にした喜びで
舞いあがっていた。
「わたしはお嬢様よ~!
うふふふふふふふっ♡」
嬉しそうに部屋に戻った紗智(潤一)は
満面の笑みを浮かべていたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
入れ替わってしまったふたり…!
一体どうなってしまうのでしょうか~?
続きは明日デス!
コメント