<憑依>彼女いない歴=年齢②~復讐~

憑依薬を手に入れた4人の男たちは、
それぞれ、憑依薬を使って
欲望を満たし始めるー。

4人の童貞の、4つの復讐ー。

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俺はー、
何か悪い事をしたかー?

30代前半のオタクー
龍太は、いつも疑問に思っていた。

確かに部屋はアニメグッズだらけだし
アニメシャツでも外出している。

だが、決して誰にも迷惑をかけていない。
バイトに行くときは、普通の格好をしているし、
プライベートではアニメキャラのシャツを着ているが、
誰かに迷惑をかけているわけでもないし、
ましてや露出して法を犯しているわけでもない。

それなのにー

「--キモいんですけど…」

住んでいるアパートの隣人・
女子大生で一人暮らしの由愛(ゆめ)は
いつもいつも、龍太を
ゴミを見る目で見つめていた。

とても可愛らしい女子大生なのだが
性格は最悪だ。

ある日、龍太がアニメグッズを買い込んで
帰宅した日には、
たまたま部屋の前で鉢合わせした
由愛が失笑したー。

「今にも犯罪起こしそうですよね。
 わたしのこと、襲わないでよね?」

由愛はそう言った。
100パーセント偏見だ。

アニメグッズを抱えて帰ってきたら犯罪者なのか?
そういう法律があるのか?
あ?やるのか?お?

龍太はそう思った。

だが、堪えた。

こういうやつに、何を言っても無駄だ。

龍太はシカトして、部屋に入り込む。

背後から部屋を覗きこむようにして
見ていた由愛は言う。

「わぁぁ…きっも~!」

龍太は由愛を殴ってやろうかと思った。
部屋の中を勝手に覗かれて
しかも”きもい”の一言。
お前には関係ねーだろ!

と、心の中で叫んだ。

だが、ここで挑発に乗れば
”可哀想な女子大生”と
”攻撃的なオタク”というレッテルを世間は
貼るに違いないー

だからー
龍太はいままで我慢してきた。
この無礼な女子大生のこともー

しかし…

「きゃはははははははは!
 わたし、オタクになっちゃいました~♡」

アニメグッズだらけの部屋で
美少女フィギュアにキスをしている可愛らしい女性ー。

女子大生の由愛だー。

「--あぁぁあ…さくらちゃん大好きぃ~」
アニメキャラのフィギュアにキスをしながら
はぁはぁ言っている由愛。

由愛はー
憑依されていた。

カラオケボックスで蘭という女子高生から
憑依薬を受け取った龍太は
それを早速使い、
自分のことを見下していた隣人の女子大生・由愛に
憑依したのだった。

「いひひひひひひひ~
 どうだ~!
 自分が見下していたオタクになった気分は~!」

由愛はアニメキャラの抱き枕を
抱きしめながら「ふふふふふふふふふ♡」と
狂ったように笑い始めた。

由愛の部屋から持ってきた姿見を見ながら
由愛は微笑む。

「わたし、キモオタになっちゃった♡ うふふふ」

とー。

憑依している龍太は興奮したー

あのクソ生意気な女子大生を
完全に支配したー
屈服させたー。
今じゃ、俺の意のままに動く操り人形だ。

「--ふふふふふ…
 どう?今のきぶんは?
 うふふ…どう?聞かせてよ…くふふふふふふ!」

鏡の自分に向かって言い放つ由愛。

その表情は、歪んでいる。

面白くてたまらないという顔だ。

「--くくくく…
 お前はこれからオタクとして
 生きて行くんだよ!」

由愛はクスクスと笑う。

龍太としての人生なんて
もうどうでもいい。
これからはこの女の人生を乗っ取って生きて行く。

自分の部屋のものを由愛の部屋に移動しようと思ったが
それは、やめた。

ずっと由愛に憑依するつもりだから、
”龍太”は世間的には行方不明になるー

そんなとき、自分の私物が由愛の部屋に
あったら疑われるかもしれない。

だからー
本当に大事なモノだけを
由愛の部屋に持ち込んだ。

「--つまんね~部屋!」
由愛は大きなゴミ袋を手に、
自分の部屋にあった
可愛らしい小物や、アイドルのポスターなどを
乱暴に捨て始めた。

「ふふふふふ♡
 これからわたしはオタクになるの!
 うふふふふふふ!」

由愛にそう言わせて
興奮するー

この女は、俺のものだー。

ほどなくして由愛はー
大学を辞めた。
彼氏を振ったー。
友達と絶縁したー。

そして、メイドカフェでバイトを始めて、
人が変わったかのように
アニメグッズを集め始めてー
さらには、コスプレを楽しむようになった。

やがて、イベントに過激なコスプレで
参加するようになり、
オタク界の”姫”として
扱われるようになったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

会社で、僕は腫物扱いだー。

イケメン風の男・南海夫はいつも思うー

会社での視線が冷たい。
痛車に乗って通勤しているからか?
それとも自分がオタクだからか?

上司は
”早く結婚しろ”と急かす。

親もだ。

だが、30代になった南海夫は思う。

”じゃあ、お前たちは僕と結婚してくれるのか?”
とー。

以前、”結婚しないんですかぁ~?”と
からかってきた女子社員にそう言ったことがある。

南海夫は、セクハラで厳重注意された。

理不尽極まりない。
結婚しないのか?と聞かれたから
そう聞き返しただけなのに、
セクハラ扱いされるなんて。

プライベートで、南海夫は
オタクの友達がたくさんいる。

だが、その中で結婚できている人間は
ごくわずかであった。

そもそも結婚に興味のない人間もいるし、
それはそれで構わない。

だが、南海夫も含めて
結婚したいけれど相手がいない、という
人間もいるのだー

憑依薬を手に入れた南海夫は
決意していたー

「--憑依薬を手に入れた僕の使命」
南海夫は笑みを浮かべる。

「それは、恋のキューピッドになることだー」

・・・・・・・・・・・・・

南海夫は、とあるアニメのイベントに
やってきていた。

オタク仲間の一人・五郎と談笑していた
南海夫はふと、口にした。

「--なぁ、君は結婚したいかい?」

とー。

五郎は口を開く。

「え?あ、うん、
 で、でも、40歳恋愛経験なしで
 フリーター、しかもハゲててデブの俺なんて」

五郎が言うと
南海夫は手で、言葉を遮った。

「みなまで言うな。
 どうだろう?僕が君の相手を探してあげてもいいんだぞ?」

南海夫が言う。

「は?」
オタク仲間の五郎は首をかしげた。

「僕は恋のキューピッドになることにしたんだ」

南海夫の言っていることの意味が分からない。
五郎はそう思いながらも
南海夫の話の続きを聞いた。

「どんな子と結婚したいんだ?」
南海夫が言う。

五郎は遠慮がちに
「誰でも…
 こんな俺を好きになってくれるなら」

と答える。

南海夫はそんな五郎を見て続けた。

「正直に言うんだ」
とー。

すると、五郎は叫んだ

「可愛い巨乳の若い子と結婚したい!」

とー。

南海夫は笑う。

「その願い、かなえてあげよう」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後ー。

五郎は、南海夫から呼び出された。

指定されたカラオケボックスに向かう五郎。

南海夫からの連絡は
”お前の結婚相手を見つけた”
だったー

五郎は”はぁ?”と思った。
一度も会っていない自分と
結婚してくれるやつなどいるわけがないし、
いたらそれは、何かの罠だ。
壺を売りつけられたり
宗教に勧誘されたりするに違いない。

しかし、そこには

20代前半の巨乳の美人女性がいた。

「はじめまして~」
嬉しそうに手を振る女性。

五郎は戸惑う。

「あ…え…あ、、、あ…」
女性慣れしていない五郎は
その場で足を震わせた。

言葉が出ない。

ただ、挙動不審な態度を
することしかできなくなってしまった
五郎は、震えながらようやく口を開こうとする。

しかしー

「--わたし、五郎さんのこと、大好きなの!」
巨乳の美人女性は
甘い声でそう囁いた。

「--は、、は、、はぁ…」
五郎は震える。

ドキドキが止まらない。

だが、これはは絶対に罠だ。
初対面の女性がいきなり
五郎のことを好きになって…

なんてことは絶対にありえない。

これはハニートラップに違いない。

「し、失礼します」
五郎は震えながら立ち上がる。

南海夫のやつはいったい何を考えているんだー

と、そう思いながら。

「--ちょっと待ちなよ」
背後にいた女性が口を開いた。

「--!?」
五郎が振り返ると、
美人女性が自分の大きな胸を
触りながら足を組んで微笑んでいた。

「---…あ…」
五郎は、誘惑されていると感じるー

これ以上、このわけのわからない女に
関わるのは絶対に危険だ。

そう思いながら五郎は
カラオケボックスから飛び出そうとする。

がー、

「待てって!」
美人女性が胸を押し付けながら
五郎を取り押さえた。

「僕だよ、南海夫だよ」
美人女性が囁く。

「え…」
五郎は泣きそうになりながら振り返った。

そこには、イヤらしい笑みを浮かべた女がいたー

「--僕さ、人に憑依する力を手に入れたんだよ。
 信じられないと思うけどさ」

美人女性が笑いながら言う。

そして、女性は保険証を取り出した。

”彩恵さんだな”

彩恵は、自分のことを他人のように言うとニヤニヤ笑いながら
「それにしてもでっけぇなぁ~」と呟く。

南海夫は、憑依薬の変わった使い方を見つけ出していた。

”憑依している最中は、乗っ取っている身体の脳を使って
 思考しているはずだ”

有名大学出身の南海夫は、頭が良い。

そう考えた南海夫は、
最初に乗っ取った女性でテストした。

他人の脳を使っている状態ー
うまく利用すれば、その本人の思考を
書き換えることができるのではないかー、と。

結果―
成功した。

憑依している間に、強く念じ続けることで、
乗っ取っている身体の思考を書き換えることができるー

そのことに南海夫は気づいた。

「--この女、23の人妻なんだけどさ、
 お前のこと大好きに、脳を染め上げておいたからさ」

彩恵がニヤニヤしながら笑う。

「安心しろよ。この女に、今の夫への憎しみを
 植え付けておいたから、すぐ離婚するさ」

彩恵はケラケラ笑いながら言うと、
茶化すような仕草で
五郎の方を見た。

「ご結婚おめでとうございま~す」

とー。

南海夫は、そこまで言うと
彩恵の身体から抜け出した。

憑依から解放された彩恵ー

しかし、
植え付けられた五郎への好意が
消えることはなかった。

「--わたしと…結婚して…」
彩恵は、目を輝かせながら
戸惑う五郎に、プロポーズした…。

彼女は南海夫に書き換えられた通り
夫を憎み、その後、離婚、
五郎と再婚し、五郎のことを
愛し続けたー

南海夫はその後憑依薬を使って
オタク仲間たちを次々と結婚に
導いた。

いつしか、南海夫の存在はオタクたちの間で
伝説となり始めていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----」

龍太・南海夫・武三…

そして、勇太。

オタク4人組のリーダー格でもあり
女性を最も憎んでいる勇太は、
憑依薬で”恐ろしいこと”を計画していた。

「ククク…
 俺を汚物扱いした女たちへの復讐だ!」

勇太の目は、正気を失っていたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

復帰2日目~!
やっぱり好きな執筆ができるっていうのは、
素敵なことですネ~!

明日もお楽しみに~!

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