<憑依>憧れのシスター①~憧れ~

ある所に、
教会のシスターに憧れる青年がいた。

彼は、なんとか彼女にその想いを
届けようとするー。

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町はずれに存在している教会ー。

その教会が存在している小さな村の
村人たちにとっては
教会は、心のあり処でもあったー。

貧しく、決して豊かではない生活ー

けれどー
神は、きっと我々を見守って下さるー。
村人たちは、そう信じていた。

村の青年の一人・シンジは、
今日の教会に通っていたー

教会で祈りをささげているシンジ。

シンジはー
”神”というものを信じていない。
この村で、そんなことを口にすれば
”異端”として扱われてしまうため
シンジは絶対にそんなことを口にしなかった。

”神”に用のないシンジが
この教会にやってきているのには理由があった。

それは、この教会のシスター・リナのことが
好きだったからー。

シンジは、今日も、
神への祈りをささげるリナの方を
見つめながら微笑んだ。

リナにこの想いを伝えたいー
そう思ったこともあったー

だがー
シンジは、それをあきらめた。

ただの貧しい村人であり、
物語で言えば、モブに位置するような自分が、
神に仕えるシスターであるリナが
相手をしてもらえるとは思えないー

だからー
見つめているだけでよかった。

やがて、神父が出てきて、
村人たちに神の言葉を告げる。

シンジ以外の村人たちは、
嬉しそうにその言葉に耳を傾けている。

シンジは”くだらない”と思う。
神なんていない。
神がいるなら、人間は、みんな
幸せになっているはずだー

だが、現実はそうではないー

シンジの住んでいる村
”モーガン村”は
王国の中心部から外れた辺境の地にある村だ。

昔は、王国の支援もあり、豊かな生活を
送ることができていたが、
50年前に現れた魔王の軍団の対応に追われて
辺境の村まで手が回らなくなってしまったのだー

そしてー
5年前。
国王が毒殺されて、国王の娘であった、ユアナが
女王の座についた。
心優しかったユアナは女王になって豹変し
暴政を振るい始め、
村はさらに苦しい生活を強いられるように
なったのだった。

村人たちが、そんな状況で
神に救いを求めることは仕方のないことなのかもしれないー。

実際にー
何故だかこのモーガン村には魔物が入り込んでこないー。

シンジは、それを単なる偶然だと考えていたが
村人たちは”神の奇跡だ”と言って聞かなかった。

「---あなたは…」
教会を立ち去ろうとしていたシンジに
慈愛に満ちた表情の女性…
シスターであるリナが声をかけた。

「--え…?お、俺ですか?」
シンジは驚いて振り返る。

リナに声をかけてもらえるなんて。

「--いつも、お祈りを捧げに来て下さって
 ありがとうございます」

リナが微笑みながら頭を下げた。

「俺はー」

シンジは”俺は神には興味がない”と
言おうとした。

しかしー

「--ーーー」
ドキドキして思うように言葉が出ず、
リナに会釈をして、
そのまま顔を真っ赤にして立ち去ってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

その様子を見ていた神父は
何かを呟いた。

そしてー
謎の結界のようなものの上に立つと
何かを唱え始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「そろそろ寝るかな…」

食材の調達を終えたシンジは、
そろそろ寝ようかと、村のはずれにある
自分の家に入ろうとしたー

その時だった。

「--ちょっといいかな?」

声をかけられたシンジは
驚いて、声のした方向を見る。

するとそこにはー
ローブを被り、顔を隠した謎の人物が立っていた。

「--な、なんだお前は?」
シンジが呟くと、ローブの人物は少し笑った。

「---あのシスターのこと、
 好きなのかい?」

ローブの人物はー
老婆のようだった。

「--な、な、、なぜそれを…」
シンジが言うと、
老婆の口元が笑みを浮かべたー。

「--あの子に、想いを伝えたくはないかい?」
老婆がそう言うと、
何か、光る球体を差し出した。

「--あんたに、その力をやろうと思ってね…」
老婆は光る球体を示しながら笑う。

「ど…どういうことだ!?」
シンジがうろたえていると、老婆は続けた。

「これは”憑依の力” 
 ヒトの身体を自由に操ることのできる力だ。
 あんたに、これを授けてやるよ」

老婆が魔女のような笑い声を出しながら
シンジの方を見る。

「な…な……
 い、、いや、俺は…」

シンジは首を振る。

別にリナの身体を乗っ取って
自分がリナになりたいわけでは…

「--身体は、正直だね」
老婆が、シンジの股間を指さしながら笑う。

「--ち、違う!」
シンジは顔を赤くして否定した。

「--ひとつ、教えてやろうか。
 この村に、魔物が来ない理由ー」

老婆が怪しく微笑む。

確かに、シンジもそれは疑問に思っていた。
周辺の村は壊滅しているのにも関わらず、
どうしてこの村には魔物が来ないのかー と。

老婆は、そんなシンジの反応を見て、続けた。

「-教会の神父ー」

老婆の声が鋭さを増す。

「あれは、魔物の一味だー。
 人間に化けているんだよ。
 だから、この村には魔物が来ないー

 ”神への祈り”
 笑わせるんじゃないよ。

 あの神父は、村人の祈りを
 エネルギーに変えて、
 それを魔王の元に転送しているのさ。
 魔王の魔力をより強大なものにするためにね」

老婆の説明を聞いて
シンジは唖然とする。

「な…なんだって…」

「---あのリナという娘は、そうとも知らずに
 利用されているー」

老婆がニヤリと笑みを浮かべた。

「そ…そんな…なら…」
シンジは夜遅いのにも関わらず
教会の方に向かおうとする。

「やめな!」
老婆がそれを制した。

「--だ、、だが」
シンジが言うと、老婆は続ける。

「あのリナという娘は、神を心から信じている。
 あんたの言葉を信じることはないー

 そしてー
 あんたが、あの娘に、そのことを言えば、
 あの娘は、神父に殺されるだろうさ」

老婆のことばは最もだった。

「た…確かに…
 じゃ、じゃあどうすれば」

シンジの言葉に、
老婆は今一度、光る玉を差し出した。

「憑依の力で、リナに憑依するのさ」
老婆は、表情を歪めたシンジを見て、
補足するー。

「神父は魔力を持っているー。
 その神父を普通の人間、
 そう、あんたたちに倒すことはできない

 けどね、
 あのシスター…リナなら倒せる。
 彼女は生まれつき、聖なる魔法の
 力を持っているからね」

老婆の言葉を聞いて
シンジは言うー

「つまり、俺がリナに憑依して
 リナの力で神父を倒せと…?」

老婆は頷いた。

「それしか、方法はないー」

シンジは、リナを救うためにも
神父を倒す決意をする。

しかしー

「リナに憑依したあと…
 リナから抜け出すことはできるのか?」
シンジは言った。

リナの人生を乗っ取ることはできないー。
リナに憑依したあと、
リナから抜け出すことができないのであればー

それは、アウトだ。

「--安心しな。
 憑依の力は、いつでも抜け出すことができる」

力強い老婆の言葉ー。
シンジは頷き、意を決したように、
老婆から”憑依の力”を受け取ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

教会ー

シスターであるリナは、
寝る前の祈りを神に捧げていたー。

そこにー
”力”を手に入れたシンジがやってきた。

「……」
リナは祈りをささげ終えると、
振り返った。

いつも通り、自愛に満ちた表情ー。

「あら…?あなたは…?」
リナが首をかしげる。

「---あの…」
シンジは口を開いた。

「--この教会の神父は、
 魔物の一味です」

シンジはひと思いにそう口にした。

老婆は、リナに憑依しろと言っていたが、
憑依せずに、リナが信じてくれれば
それが一番だ。

「---い、いきなりどういうことですか…?」
リナが怯えた表情で言う。

シンジは、老婆から聞いた話を
リナにするー。

しかし、リナは信じてくれなかった。

「そ、そんなはずはありません…」

リナが少しだけ声を大きくした。

”どうかしたのか?”
奥から神父の声が聞こえる。

シンジはドキッとした。

「神父は魔力を持っているー。
 その神父を普通の人間、
 そう、あんたたちに倒すことはできない」

老婆の言葉を思い出すシンジ。

”誰かいるのか?”
神父の声ー

間もなくこっちに来るー

魔物の一味である神父に見つかったら
シンジの命はー

いや、リナもろとも、殺されるかもしれない。

「--ごめんなさい!」
シンジはそう叫んで”力”を使った。

ガスのようになり、
リナの身体に突撃していくシンジ。

「きゃっ…!?」
リナが軽く悲鳴を上げる。

「あっ…う…うぁっ…!」
リナが身体を震わせながらピクピクしている。

「---あぁ…あああああっ…!」

シンジは、リナの苦しそうな声を聞きながら
少しゾクゾクしてしまった。

そしてー

「--ひぅっ!?」
リナが激しく震える。

”ごめんなさい…少しだけ…
 これはあなたのためなんだ”

シンジはそう呟いた。

「ふーー…ほ、、、本当に…憑依…」
リナに憑依したシンジはそこまで
呟いて、口に手を当てた。

「--こ、、声が……」

自分の口から出る声がリナのものに
なっているー

それだけでもシンジは興奮してしまったー

近くの鏡を見る。

シスターであるリナに、
自分など、本来であれば全く相手に
されないだろうー。

けれども今ー
シンジはリナになっている。

思わず、汚らしい笑みを浮かべてしまう。

「--っと、いけないいけない」
リナはすぐに表情を戻した。

「リナさんにこんな顔をさせるわけにはいかない」

そう呟くと、
神父の声がした方向を見つめるリナ。

ほどなくして、神父がやってきた。

「--リナ!どうかしたのか…?
 さっき声が…」

戸惑う神父。

リナは呟いた。

「お前たちの好きにはさせない」

とー。

「--!?」
神父が驚いて目を見開く。

神父を倒せと言われても
リナの力をどうやって使えばいいのか。
シンジには分からない。

その時だったー

”祈るんだよ”

という声が聞こえたー

”早くしないと神父に殺される”
そう感じたリナは、慌てて祈りをささげる。

するとー
信じられないことに、
今まで感じたことのないような力を感じー
聖なる光が神父を包み込んだ。

”祈れ…
 その邪悪な神父を倒すイメージをしながら!”

老婆の声が聞こえるー

「---うおおおおおおおおおお!」
シスターであるリナが出さないような
雄叫びを上げながら全力で祈るシンジー

「--な、、り、、リナ…!?いったい…!?
 ら、、乱心したか!?」

神父が叫ぶ。

白い光に包まれた神父は、
苦しそうにしながら悲鳴を上げている。

”もっと強く祈れ”
老婆の声ー

「---この村は、お前たちの好きにはさせない!」
リナが穏やかな声質でそう叫ぶと、
神父は悲鳴を上げながらー
消滅したー

「---ご苦労様」

老婆が背後からやってきた。

「はぁ…はぁ…」
初めて魔力を使ったリナに憑依しているシンジは、
息をあげていたー。

「--さて…」
老婆が、奥の部屋へと向かう。

そしてー
奥にあった”結界”のようなものがある部屋に
やってくると笑みを浮かべたー

「---どうだい?
 これからの”仕事”には、
 あんたの…いいや、そのシスターの力が必要だ」

老婆が言う。

「--ど、どういうことだ?」
リナは、男っぽい歩き方で、
老婆の方に近づく。

「---くくく…
 あんた、闇のシスターに成る気はないかい?」

老婆はそう呟くー

「な…なんだって…?」
戸惑うリナ。

老婆はニヤリと笑みを浮かべた。

「--この村に魔物が来なかったのは
 神父が作り出していたこの結界のおかげさ。
 これをこれから破壊する」

「---!?」

リナは表情を歪める。

「これからはこの結界の代わりに
 ここに魔物を呼び込む結界を作るー。」

老婆の笑みー

リナに憑依しているシンジは直感したー

”騙されたー”

と。

魔物の仲間は神父ではなくー
この老婆だったのだー

「---安心しなよ。
 あんたには、この村の結界を維持してもらうために
 闇のシスターになってもらう

 どうだい?そのリナという小娘の身体で
 永遠に生きて行くことができるんだよ…?」

その言葉に、リナは戸惑うー。

”俺が…リナさんに?”

シンジは迷っていた。

「そうさ。あんたは、我々の仲間になるのさ。
 このモーガン村と、その娘の身体はあんたのもの。
 
 悪い話じゃないだろう?」

老婆の言葉に、リナは首を振った。

”自分は、リナを助けようと思って
 憑依した。奪うためじゃない。
 それにー
 魔物たちの好きにさせてたまるか”

リナは叫ぶ。

「---ふざけるな!俺はお前を倒して
 この村を救うー」

とー。

だがー

老婆から、謎の触手のようなものが
飛び出した。

あっという間に触手に縛られてしまうリナ。

「--くくくく…
 女の快感を知った後でも、
 そう言えるかな?」

そう呟くと、
触手に拘束されたリナを見つめながら
老婆は不気味な笑みを浮かべたー

②へ続く

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コメント

リクエストを題材としたお話デス!

リクエストの原文は

”12/25
> 考えるとシスターの話を見てなかった気がします。
それでシスターをネタとした小説ぞお願いしたいです。内容は、>
> 若いシスターのことが好きだけど神に仕える身であるシスターに
その想いは届かず一人で悩んでる青年が偶然見つけた特殊な薬で
彼女の体を手に入れる、みたいな感じでいいと思います。>
> 憑依でも入れ替わりでも構わないです。ではよろしくお願いしますね!”

というものでした!

ファンタジー世界を舞台に↑を元に
考えてみました!

明日も続きがあるのでお楽しみに~

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憑依<憧れのシスター>

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