<入れ替わり>すれ違う想い③~愛~(完)

彼女を怒らせてしまった康彦。

彼女の妹と入れ替わってドッキリを
仕掛けたことで、思わぬ結末を迎えることに…

川辺でいつも、彼女と、その妹を見かけていたー。

”かわいいなぁ…”

自分にとっては、手の届かない存在ー。

もしも、
もしも、自分があの子になれたのであればー

そんなとき、

聞いたー

高校生たちが”入れ替わり薬”について
話しているのをー。

そしてー

--------------------—

どこから話せばいいかなー。

”彼女”は、
ゆっくりと語り始める。

あれは、高校の入学式の日だった。

高校の制服を着て、
高校に向かうー

これから3年間、
通うことになるであろう高校ー。

”これからどんな学校生活が
 始まるかな”

彼女は、そう期待に胸を
膨らませながら高校に向かって歩いていた。

けどー

「---…くふふふふふふふ…」

”それ”は現れたー。

”この川辺”でー。

高校生としての最初の登校ー。

その日ー
そいつは、姿を現した。

汚らしい身なりをしたおっさんが、
入学初日の女子高生に声をかけるー。

「--あ、、あの…」
声をかけられた女子高生は
怯えた様子で、その男に”何か御用ですか?”と
問いかけたー

その男はー
川辺に住むホームレスだった。

”きみ、かわいいね”

彼はそう呟いたー。

「---え…」
彼女は直感的に身の危険を感じた。

すぐに逃げようとするー

しかしー
汚らしい男に抱き着かれて、
男に無理やり、引っ張られて、
川辺の人目のつかない場所に
連れ込まれてしまうー。

「---…ふひっ…
 今日から俺はJKだ…!」

嫌がる女子高生に無理やりキスをする男。

「やめ…いやっ…助けて…!」

もがく女子高生ー
笑う男ー

やがて、二人は動かなくなったー

数分してー
女子高生が立ち上がるー。

悲鳴をあげていた女子高生は
不気味な笑みを浮かべてー

さっきまで笑っていたはずの
ホームレスの男は、泣きそうな
表情を浮かべているー

まるで、立場が”入れ替わった”かのようにー

そして女子高生が何かを耳打ちすると、
ホームレスの男は、真っ青に青ざめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕暮れ時の川辺ー

汚らしい身なりをしたおっさんに
声をかけられていた康彦は、
衝撃の話を聞かされた。

それはー
”入学式の日に、ホームレスに襲われた話”

「--し、信じろっていうのか?」
康彦が言うと、
ホームレスの男は頷いた。

「---…お願い…助けて…
 他に頼れる人がいないの」

ホームレスの男は
見かけとは全く異なる、女言葉を口にした。

「---いや、、でも、、そんな」
康彦は驚きを隠せない。

「--本当なの…」

ホームレスの男は目に涙を溜めながら
振り絞るようにして言ったー。

”わたしが、和菜なのー”

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

和菜とは、中学時代からの知り合いだった。

けど、
中学時代はほとんど接点がなかった。

和菜は、いつも教室の隅っこで、
本を読んでいるような子だったし
とても大人しかった。

いじめは受けてないように見えたけれど、
存在感は0-。

康彦にとっても、
特に視界に入る存在ではなかったー

だがー
高校に入学してから変わった。

和菜は、人が変わったかのように
明るくなったのだったー。

そしてー
康彦はそんな和菜に惹かれて言った。

”ギャップ萌え”とでも
言うのだろうか。

あれだけ大人しかった和菜が
”女子高生ライフ”をエンジョイしているかのようなー
本当に毎日楽しそうに過ごしているー

教室の片隅の女が、
教室の中心の女に、豹変したのだー。

康彦はそれを
”単に、高校生になって周囲のメンバーが変わったことで
 心機一転したもの”だと思っていた。

しかし
男の話が本当なら、豹変するのは、当たり前だ。

何故ならー
中学生までの和菜と
高校生の和菜はー

”中身が別人”なのだからー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「---君が…和菜、、
 いや、賀上さんだと言うなら…
 どうして、1年以上も黙ってたんだ?」

康彦が言う。

目の前のホームレス男は、
”自分が和菜だ”と主張しているー。

だがー
ホームレス男の語った話が本当ならー、
和菜は高校入学の日に、ホームレス男に
襲われて入れ替わられてしまい、
今までずっと、そのままでいたことになる。

「--脅されたの…」
ホームレス男が目から涙をこぼす。

「脅された?」
康彦は聞き返す。

ホームレス男は頷いた。

あの日ー。
身体を入れ替えられた直後ー

和菜になったホームレス男は呟いた。

”誰かにこのことを言ったらー
 お前の妹…八つ裂きにするからな”

とー。

妹の亜季を
”人質”に取られた和菜は
何もすることができなかった。

和菜には、
信頼できる友達がいないー

信頼できるのは家族ー。

しかし、家族に”入れ替えられた”と助けを求めれば
亜季が殺されるかもしれないー。

かといって、ホームレスの姿で”入れ替えられた”と
周りに助けを求めても
変質者扱いされるだけー

だからー
何もすることができなかったー

「あなたになら、信じてもらえるかなって…」
ホームレス男は目から涙をこぼすー。

彼女は、偶然、康彦と亜季の会話を見ていた。

”入れ替わり薬でドッキリを仕掛ける”という会話をー。

実際に入れ替わり薬を手にした
康彦になら信じてもらえるかもしれないー
そう思って、彼女は行動を起こしたのだった。

「---じゃ…じゃあ、
 俺が付き合ってきた和菜は…?」

康彦が絶望の表情で呟く。

「--わたしが入れ替えられたのは、
 入学式の日だからー
 そ、、その…」

ホームレス男が言い難そうに言う。

入学式の日に
和菜とホームレス男が入れ替わっていたとなればー

康彦が付き合い続けてきたのはー…
”中身がおっさんの和菜”ということになるー

「----!!」

その時だったー
康彦のスマホに連絡が入ったー

”今夜、会える?”

和菜からだったー。

それを見たホームレス男が言うー。

「お願い…わたしを助けて」

康彦は思うー。
本当に目の前にいるホームレス男が
和菜なのだろうかー

と…

しかしー

さっき和菜に言われた言葉を思い返す。

「--ねぇ…?亜季と入れ替わってたでしょ?」

まるで、入れ替わりのことを最初から知っていたかのような口ぶりー。
人と人が入れ替われる、ということを始めて知った人間の
反応ではなかったー。

「嘘よ!女の子の身体になったら
 エッチなことするに決まってるでしょ!」

この言葉も気になるー。
まるで、決めつけるかのようなー…。

それはー。
”かつて自分もそうしたら”
言える言葉ー

康彦はー
まだ、”入れ替わり薬”を持っているー。
それを使えば、和菜を助けてあげられるかもしれないー。

康彦は、少し迷ったあとに呟いた。

「--分かった。いっしょにいこうー」
康彦は、ホームレス男の手を掴んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

和菜に呼び出された場所は
廃虚の工場だったー。

「どうして、こんな場所に…」
康彦は呟く。

カラカラ…

不気味な音が響き渡る。

和菜の姿はないー。

「---か、和菜…!?どこにいるんだ…!」
康彦は叫ぶ。

しかし、その声はむなしく夜の向上に
響き渡るだけー。

一緒に来ていたホームレスの男は、
震えながら康彦の方を見た。

”大丈夫だ。安心しろー”

康彦は鞄を工場の端っこに置くー。
その中には入れ替わり薬も入っているー。

「ここで待ってて」
中身が和菜のホームレス男をその場に
待機させると、
康彦は廃工場の奥に進んだ。

和菜の姿が見えないー

和菜から呼び出したはずなのにー。

「--和菜!どこだ~?」
康彦が叫ぶ。

しかしー
返事がない。

「-----…」
康彦は思うー

中身がホームレス男の和菜は、
何をするつもりなのだろうかー

ガラッ
ガラッ

不気味な音ー
廃虚の工場内の何かがきしむ音ー。

康彦は、周囲を警戒しながら
奥へと進んでいくー

和菜はきっと、どこかにいるー。

工場のさらに奥へと進む康彦ー

そしてー
高台のようになっている場所に辿り着いた康彦は、
そこで一息ついた。

”今、どこにいるんだ?”

LINEで和菜に連絡を入れる。

しかし、
既読はつくが、返事はない。

”見てるんだろ!?”

康彦はさらにLINEを送るー

しかし、返事がないー。

「くそっ」
康彦は呟く。

だんだん怖くなってきた。

足ががくがく震えているー。

夜の廃工場という空間も不気味だがー
それ以上に、
彼女の和菜が何を考えているのか
分からないのが不気味だったー

しかもー
和菜は、1年以上前に、
とっくにホームレスの男と入れ替わっていて…

「わっ!!!!」
背後から、大声が聞こえて、
康彦は飛び上がるように悲鳴をあげた。

「---~~~~~」
心臓が止まりそうになりながら
康彦が振り返ると、
そこには、和菜がいたー

「どう?びっくりした?」
微笑む和菜。

「---び、、びっくりって…お、、お前…」
康彦は放心状態になりながら
和菜の方を見たー

和菜はミニスカート姿だ。

「---ふふふふふふ…」
不気味な笑みを浮かべる和菜。

「--お前…も、もう俺は騙されないぞ」
康彦は、和菜に向かってそう叫んだー。

今まで自分は、ずっと騙されていたー
康彦は、自分のうかつさを呪いながら、
和菜の方を睨んだー

「---騙されない…?」
和菜が不快そうな表情を浮かべる。

「あぁ…全部、話は聞いた!
 お前は入学式の日に、入れ替わり薬を使って!」

康彦が叫ぶと、
和菜が笑いだした。

「あはははははははははっ!
 何よそれ…!ばっかみたい!」

笑う和菜ー。

康彦は、和菜の方を睨みつける。

和菜がクスっと笑いながら呟いた。

「---どうして、そう思うの?」

とー。

その時だった。

「わたしの身体を、返して!」
背後から大声がした。

一緒に来たホームレスの男ー。
手には、康彦が廃工場の入り口に置いてきた
鞄の中に入れてあった入れ替わり薬が
握られている。

「---ちょっと!何そいつ!」
和菜が怒りの声をあげる。

「--返して!」
叫びながら突進してくるホームレスの男。

ホームレスの男と和菜はつかみあいになる。

「きゃ…ちょっと!康彦!」
和菜が叫ぶ。

康彦は「落ち着け!まずは話し合いを…!」と
叫んだが手遅れだったー

掴みあった状態の2人がー
廃工場の高台から転落してしまったー

「---!!」

数メートル先に落下したふたり。
慌てて康彦は二人に駆け寄り、
救急車を呼ぶのだったー

近くに落ちていた
入れ替わり薬を入れた容器は
空になっていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

救急搬送された2人ー

康彦は、二人の無事を願うー。
まずは、入れ替わりのことを
しっかりと話してもらわないといけないー

しかしー

その願いは叶わなかったー

ホームレスの男は、搬送後に死亡ー。
助かったのは、和菜だけー。

だがー…。

「---……ありがとう、、信じてくれて」
目を覚ました和菜はそう呟いた。

「和菜…なのか…?」
康彦がそう言うと
和菜は優しくうなずいたー。

転落する直前、入れ替わり薬を飲んでいた
ホームレスの男は、和菜の身体と、
無事に入れ替わることに成功していたのだったー

「---……あの人は、死んだのね…」
和菜はそう呟いた。

「あぁ…」

康彦は思うー。

高校入学後の和菜は確かにおかしかった。
急に別人のように明るくなったりー…

それに、遊園地デートで
自分と、和菜の妹の亜季が入れ替わっていることに
気付いておきながら、気づかないふりをしたり、
あっさり入れ替わりのことを信じたり、
妹による異常な愛着を示したりー

そしてー
和菜が、廃工場に自分を呼び出したことで
康彦は確信したー。

こいつは和菜じゃないー

と。

けれどー。

「--無事でよかった」
康彦は、そう呟いた。

カタチはどうあれ、
和菜を助けることができたー

康彦は、”これからどうすればいいんだろう”と
思いながら、安堵の溜息をつくのだったー。

それからー

和菜は学校に復帰した。
高校入学時から入れ替わられていたこともあり、
色々と不便していたが、
”だんだん空白の記憶が流れ込んできた”
などと和菜は言っており、
1か月もしたころには、すっかり高校に溶け込んでいたー。

康彦と和菜の付き合いはなかったことになり、
とりあえず彼氏・彼女の関係は解消されてしまったが、
康彦はそれでも後悔していなかった。

「…中身がおっさんの子と付き合っても
 しょうがないからな…」

ーー和菜との接点は
”恋人”から”クラスメイト”に戻ってしまったが、
仕方がないー。

康彦と和菜の妹・亜季が仕掛けたイタズラが
思わぬ結果を招いたー。
入れ替わり薬の話を亜季としていたことで、
川辺のホームレスになっていた和菜がその話を聞き、
康彦に相談する勇気を手に入れて
こうして元に戻ることができたのだー。

「--人生、何があるかわからないな…」
康彦は、そう呟いた。

彼女はいなくなってしまったけれどー…
これでよかったんだー。

康彦は、そう思い、今日も平和な1日を
過ごすのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”すれ違いー”

時に、想いは
すれ違うー

その”すれ違い”が
重なり、悲劇を生むこともあるー

彼は、知らないー

その”すれ違い”をー。

康彦は知らない。
あの日の”和菜”の想いをー。

真実を知るには、
遊園地デートが終わった翌日まで
話を戻さなくてはならないー。

遊園地デートがおわったあとー。
和菜は、激怒していたー
妹の亜季と彼氏の康彦が
入れ替わったことには気付いていた。

なぜ、気づいたか。
仕草が明らかに違ったからだ。

そしてー
妹の亜季が、康彦とそういう会話をしていたのを
偶然聞いてしまっていたからだー

最初は、入れ替わり薬なんてありえない。
そう思っていたー

けれど、遊園地にやってきた康彦(亜季)の仕草を見て
すぐに入れ替わっていることに気付いたー。

その場ではなかなか言い出せず、
和菜は黙っていたー
亜季が入れ替わりに協力している以上、
亜季を問い詰めれば亜季を悲しませてしまうと思ったからー。

だから、翌日、
放課後に康彦を呼び出して、問い詰めた。

「--許せない!
 亜季をたぶらかしたのね?」

和恵が感情的になって
怒っている。

「遊園地にいる間、亜季が可愛そうだし、
 気づいたら何されるか分からないから
 ずっと気づかないふりしてたけど…

 最低!亜季の身体で何をしたの!?」

和菜がなおも叫ぶ。

「ご、ごめんってば…」
康彦は、普段穏やかな和菜が
ここまで怒るなんて思ってなかったために
驚いてしまっていた。

「---ねぇ、何をしたのよ?」
和菜が康彦を睨む。

「--な、何もしてないって…」
康彦が必死に言う。

「嘘よ!女の子の身体になったら
 エッチなことするに決まってるでしょ!」

和菜が叫ぶ。

「どうしてそう決めつけるんだよ!
 俺は何も…!」

康彦も少し感情的になって言う。

「決めつけじゃない!」
和菜はさらに声を荒げた。

和菜の妹・亜季は、小学生の頃に
暴漢に襲われているー。
そのため、人一倍、和菜は
敏感になっていたー。

だから、つい感情的になってしまったー

・・・・・・・・・・

夜ー

「--ただいま」

姉の和菜が帰ってきた。

「あ!お帰りお姉ちゃん!」
亜季が、元気よく姉を出迎えるー

和菜は、不機嫌そうな表情を
浮かべている。
亜季に怒っているのではない。
康彦に怒っている。

「--…あ、あのね、お姉ちゃん。
 康彦くんに無理やりやらされたわけじゃなくて…」

亜季は、入れ替わりの釈明をしようとしたー

しかしー

和菜が突然、亜季に抱き着いた。

「---わっ!?」
亜季は思わず驚いて声を上げる。

「--お、お姉ちゃん!?」
急に姉に抱き着かれて驚く亜季を見て
和菜はにっこりとほほ笑んだー。

「あなたはわたしのものなの…
 誰にも、渡さないから…」

和菜はそう言うと、
ふふふふふふ…と小さく、
不気味に笑い始めたー

和菜は小さい頃から亜季を溺愛している。
それは、今も昔も変わらないー

「--ねぇ…お姉ちゃん…ちゃんと聞いて」
亜季が言う。

康彦に悪気はなかったこと、
自分も同意の上であったこと、
康彦の和菜に対する愛情、
康彦に変なことはされていないことー

妹の口からその言葉を聞いた和菜は
ようやく自分が感情的になっていたことを反省したー

「--じゃあ…謝らなくちゃ」

”今夜、会える?”
和菜は康彦に連絡を入れた。

近場の廃工場で会えるかな?
とー。

なぜ廃工場を選んだのかー。

別に立ち入り禁止になっている場所ではないから
誰でも入れるし、
和菜にはある目的もあった。

それは、妹の身体を勝手に使った
康彦に対するささやかな仕返しー。
ちょっと、驚かせてやろう、と
いたずらっ子な一面も持つ和菜の
小さな仕返しだったー。

他に、理由はない。

ただ、それだけー。

和菜は、亜季に「行ってくるね!」と微笑みながら
出かけて行くー。

和菜はー
中学生のときまでは、
大人しい性格だった。
一人で読書しているようなー。

けれどー
和菜自身は、”友達に囲まれた学生生活”に
憧れていたー

だからー
同じ中学出身の子が3人しかいない
高校入学時がチャンスだと思ったー。

必死に自分のイメージを変えるために努力し、
入学式の日から、意識してキャラ変したー。

結果―
今では、明るい女子になることができたー。

廃工場に到着した和菜は、
隠れて康彦の様子を見つめる。

康彦はちょっとびびっている。

”ふふ…康彦ったらかわいい!”
和菜は微笑みながら康彦の様子を見つめる。

”今、どこにいるんだ?”
LINEが届いた。

和菜はあえて無視した。

”見てるんだろ!?”

またLINEが届く。
でも、和菜は無視した。

「怖がってる~!」
和菜はニコニコしながら康彦の様子を物陰から見つめる。

亜季の身体を勝手に使った仕返しね!
とイタズラっぽく微笑む和菜。

「くそっ」
康彦は呟く。

”そろそろいいかな”

和菜は背後から康彦に近づきー

「わっ!!!!」
と大声を出した。
康彦は飛び上がるように悲鳴をあげた。

「---~~~~~」
心臓が止まりそうになりながら
康彦が振り返ると、
そこには、和菜がいたー

「どう?びっくりした?」
微笑む和菜。

「---び、、びっくりって…お、、お前…」
康彦は放心状態になりながら
和菜の方を見たー

和菜はミニスカート姿だ。

服装も、高校生になったころから
明るい自分を演出するために
色々買い替えた。

「---ふふふふふふ…」
不気味な笑みを浮かべる和菜。

ドッキリには悪い笑みが必要だ。

「--お前…も、もう俺は騙されないぞ」
康彦は、和菜に向かってそう叫んだー。

「---騙されない…?」
和菜は思うー
”なんのこと?”とー。

「あぁ…全部、話は聞いた!
 お前は入学式の日に、入れ替わり薬を使って!」

康彦が叫ぶと、
和菜が笑いだした。

「あはははははははははっ!
 何よそれ…!ばっかみたい!」

笑う和菜ー。

何を言ってるのかまったく分からないー。
でも、たまにわけのわからないことを言うのも
康彦の面白いところー。

康彦は、和菜の方を睨みつける。
和菜がクスっと笑いながら呟いた。

「---どうして、そう思うの?」

とー。

その時だった。

「わたしの身体を、返して!」
背後から大声がした。

一緒に来たホームレスの男ー。
手には、康彦が廃工場の入り口に置いてきた
鞄の中に入れてあった入れ替わり薬が
握られている。

「---ちょっと!何そいつ!」
和菜が怒りの声をあげる。

不審者ー?

「--返して!」
叫びながら突進してくるホームレスの男。

ホームレスの男と和菜はつかみあいになる

「きゃ…ちょっと!康彦!」
返してってなに?
和菜はそう思いながら叫ぶ。

康彦は「落ち着け!まずは話し合いを…!」と
叫んだが手遅れだったー

掴みあった状態の2人がー
廃工場の高台から転落してしまったー

「---!!」

数メートル先に落下したふたり。
慌てて康彦は二人に駆け寄り、
救急車を呼ぶのだったー

近くに落ちていた
入れ替わり薬を入れた容器は
空になっていたー

・・・・・・・・・・・・・・・

ホームレス男の話は”全部、嘘”だー。

川辺に住むホームレスは
和菜と亜季の姉妹を見つけて
その身体を奪いたいと思ったー
毎日のように通学でその道を通るふたりー。
次第に、ホームレス男は和菜と亜季、
どちらかに”なりたい”と思いはじめていたー

そんなとき偶然、康彦と亜季が
入れ替わり薬について話しているのを
見かけてー
チャンスだと思った。

ばれたらばれたでしょうがない。

そう思いながら、
ホームレスは作り話をしたー。

だがー
康彦はバカみたいにホイホイ信じたー。

康彦が仕掛けた遊園地でのちょっとしたイタズラー
和菜が仕掛けたちょっとした仕返しー。

小さなすれ違いが重なって
やがて、大きなすれ違いとなるー

結果ー
康彦は、嘘の話をホイホイ信じてしまいー

”悲劇”が生まれたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自宅で、和菜は、自分の身体を見つめながら微笑んでいた。

その表情は
汚らしい獣のような表情だったー

「ぐへへ…
 この身体は、俺のものだー
 もう俺は、汚いおっさんじゃないのよ!うふふふふふ」

ホームレス男と入れ替わってしまった和菜は、
イヤらしい笑みを浮かべて
自分の足を指でイヤらしく触り始めたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

入れ替わりモノの作品でした~

入れ替わりは定期的に
今後も書いていきます~!

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    前回で和菜も入れ替えられてたのかと思いきや、とんでもないどんでん返しが待ってましたね〜。ハッピーエンドから視点を変えると一転してバッドエンドというのが面白かったです!

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 前回で和菜も入れ替えられてたのかと思いきや、とんでもないどんでん返しが待ってましたね〜。ハッピーエンドから視点を変えると一転してバッドエンドというのが面白かったです!

    ありがとうございます~!
    すれ違いの結果ですネ~☆笑

    でも、彼は気づかないでしょうし、
    幸せなのカモ…?