<憑依>社畜の反乱③~願い~(完)

友人から受け取った憑依薬で
部長に憑依して、復讐しようとしていた男ー

しかし、復讐は失敗し、
事態は思わぬ方向に…?

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「楽しそうだから、わたしも混ぜて~!」

笑いながら着席する
眼鏡の女子高生・恵理。

制服姿のままということは
下校直後なのだろうか。

「--え、恵理ちゃん?どうしてここに?」
亜津奈が言う。

亜津奈には、陽吉のオタク仲間である卓が
憑依しているが、当然、他の誰にも
そんなことは言っていない。

女子高生モードで
恵理という女子高生と会話している。

「---どうしてって?」
恵理がクスと笑った。

「そいつを、つけてきたの…」
恵理が、陽吉の方を指さした。

「え…」
陽吉が戸惑っていると、
恵理は座席から立ち上がって微笑んだ。

「くふふふふふふ…
 これで俺もJKだ~!
 あははははははは♡」

眼鏡をかけた大人しそうな少女が、
狂った笑みを浮かべて自分の
胸をわしづかみにした。

「--!!」
亜津奈が表情を歪める。

「--ま、まさか!」
陽吉は叫んだー。
”部長” とー。

「ふふふふ~♡
 お前から盗んだ憑依薬のおかげで
 こ~んな可愛いJKになれたぜ!
 うひひひひひひっ♡」

胸を揉み続けている恵理。

完全に正気ではない。

「--亜津奈ちゃん…
 いいえ?卓くんだったかな?

 いい薬を、ありがとう」

恵理はそう言うと、
にっこりとほほ笑んで、
唖然とする亜津奈を無視して、
席に座って、足を色っぽく組んで見せた。

「ーーさ、歌お?JK2人で?」
恵理が言う。

亜津奈は戸惑っている。

「--ど、、どうするつもりだ?」
亜津奈は、本性を隠そうともせずに
そう呟いた。

「--どうって?」
恵理は、カラオケで歌う曲を
選びながら笑っている。

「--ひ、憑依薬のこと…どうするつもりだ?」
亜津奈は言うー

亜津奈に憑依している卓は
せっかく手に入れたJKライフを
奪われることを恐れていた。

しかしー

恵理は立ち上がると、
亜津奈の方に近づいて行く。

「--んふふふふふ…
 どうもしないわよ…
 私は恵理として、
 あなたは亜津奈として
 生きて行くだけ」

恵理がにっこりとほほ笑む。

そして、亜津奈を壁際に追い込んで
亜津奈の胸を触ると、恵理は微笑んだ。

「--あなたのことは言ったりしない」

恵理はそう言いながら、亜津奈の
胸を触ったり、
スカートの中を触ったりしながら
イヤらしい笑い声をあげるー。

少しイヤそうな表情をしながら
亜津奈は、”こいつをどうにかしろ!”と
言いたげに陽吉の方を見た。

「ねぇ?一緒に楽しみましょうよ?」
恵理は笑いながら、今度は亜津奈の手を掴んで
自分の胸を触らせた。

ドキッとしてしまう亜津奈。

普段、大人しい恵理の
いつもと違う姿。
亜津奈はいつの間にか興奮していた。

「--ほら!JK同士いちゃいちゃしようよ!」

笑う恵理。

亜津奈もその気になったのか、
亜津奈と恵理はカラオケボックスの中で
抱き合ったりキスをしたり、
胸を触ったりしているー。

とてもイヤらしい光景がそこには
広がっていた。

唖然としている陽吉。

「お、おい…!卓!」

やっとの思いで声を振り絞る陽吉。

そんな陽吉の方を見て
亜津奈と抱き合っていた恵理ー。
部長が微笑んだ。

「---俺もさ、
 あの会社には不満があったんだよ。
 俺も所詮中間管理職だから
 サービス残業もさせられてたし
 上からしょっちゅうガミガミ言われてた」

恵理はそう言うと、
亜津奈から離れて、座席に足を組んで座り、
煙草を吸い始めた。

「あっ…!」
陽吉は女子高生の身体で煙草は…!と
止めようとしたが
「どうせ誰も見ちゃいねぇよ」と
恵理は乱暴に吐き捨て
煙草を味わい始めた。

「---俺も、お前も、社畜だ。
 お前の気持ちはよく分かる」

恵理は笑いながら言う。

”お前に、俺の気持ちなんて分かるものか”

陽吉は、そう言いたくなったが
言葉を飲み込んで、恵理の話の
続きを聞こうとする。

「--俺も、
 上のやつらに、
 いつまでも黙ってヘコヘコしてると思うなよって
 ずっと思ってた」

陽吉も内心思っていたことを
恵理は言う。

そして、恵理は煙草の火を消すと
可愛らしい鞄の中にそれを入れて
静かに微笑んだ。

「--お前の復讐、俺が手伝ってやるよ」

恵理はそう言って微笑むと、
再び亜津奈の方に向かって行くー

「亜津奈ちゃんー」
恵理が耳打ちをする。

亜津奈はー少し困った表情をしていたー。

「どうする?
 ふふふ…♡」

イヤらしい笑みを浮かべる恵理。

陽吉は二人が何を話していたのか分からず、
困惑する。

亜津奈は陽吉の方を一目見ると、
悲しそうな表情で、
恵理の方を見た。

「---うん!そうしよう!」

亜津奈はそう言った。

「え…?」
戸惑う陽吉。

恵理は勝ち誇った表情で
陽吉の方に近づいてくると
微笑んだー。

「亜津奈ちゃんとわたし、
 女子高生として生きて行くことに決めたわ」

恵理が言う。

「は?ど、どういうことだ…?」
陽吉が卓が憑依している亜津奈の方を見る。

「---このままわたしと一緒に
 女子高生ライフを楽しもうよ、ってわたしが提案したのー」

恵理が微笑む。

このまま憑依のことをお互いに黙っているなら
邪魔はしないー。
その変わり、陽吉のことは諦めろー、
と、恵理が亜津奈に提案したのだった。

「--悪いな…陽吉。
 この部長さんが、俺が騒がなきゃ、
 憑依のこともずっと黙っててくれるって
 言ってくれたからさ」

亜津奈が言う。

「俺は亜津奈としてー
 部長さんは、恵理ちゃんとして、
 生きて行くことに決めたよ」

亜津奈が言い終えると
恵理は「ふふふ、そういうこと♪」と微笑んだ。

陽吉を置いてカラオケボックスから
手をつなぎながら出て行こうとする2人。

「す、卓!裏切り者!」
陽吉は叫ぶー

しかしー
亜津奈は冷たい表情で呟いた。

「憑依薬なんて大事なモノ…
 盗まれたお前が悪いんだろ」

ーと。

そして、
恵理は微笑んだ。
「--復讐には、力を貸してあげるー
 お前の願いを、かなえてあげるー。」

とー。

そのまま二人の女子高生は
仲良く手を繋ぎながら、
カラオケボックスから出て行ってしまったー。

一人残された陽吉は
茫然とすることしかできなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

家に戻った陽吉。

オタクグッズに囲まれながら
絶望の表情を浮かべるー。

憑依薬を部長に盗まれたりしなければー
今頃自分は会社への復讐を果たし、
女子高生として、
卓が憑依した亜津奈と一緒に
JKライフを味わえていたはずなのに…

それどころかー
復讐には失敗し、卓という友人にも
見切りをつけられてしまった。

「くそっ…」
陽吉は悔しそうに表情を歪める。

「ん…?」
ふと、陽吉は思う。

「--復讐には、力を貸してあげるー」

部長に憑依された恵理はそう言っていた。

力を貸す、とはどういうことだ?

薗部部長も
会社には不満を持っていたと言っていた。
恐らく、あの横暴な態度は、
上からの不満を自分よりも弱い人間たちに
ぶつけていたことによるもの…
つまりは、八つ当たりだろう。

「協力ってなんだ…?」
憑依薬を失った陽吉に
もう、会社に復讐する力は残されていない。

会社に復讐しようものなら
簡単に叩き潰されるだろうし、
強引な手段を使えば
会社が悪者どころか、
陽吉が犯罪者になってしまうー。

「---いったい…」

その時だったー。

陽吉は急にふわりとするような
不気味な感触を覚えてー

そのまま意識を失ってしまったー…。

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

サイレンの音が聞こえる。

一体、何だろうか。

陽吉はわけも分からず、目を開ける。

いつの間に自分は寝ていたのだろうー。
と、いうよりもここはどこだー?

混乱しながら目を開ける陽吉。

そこにはー
滅茶苦茶になった自分の勤務先の
光景が広がっていたー

「え…」
陽吉は困惑する。

周囲には人間が倒れているー

先日、部長に憑依されて
滅茶苦茶にされた晴美も、だ。

「--何が、起きているー?」
陽吉は慌てて、
周囲を見渡す。

自分の身を守らなくてはいけない。

そう、思ったからだ。

だが、しかしー

「---高倉 陽吉!」
警察官が陽吉の周囲を取り囲む。

「えっ?俺?」
陽吉は、事態を理解できずに居たー。

しかしー
ようやく理解する。

”憑依薬”

まさかー

「ま…待て!ち、、違います、違います!」
陽吉は身体中から冷や汗を
流しながら叫んだ。

きっと自分は、薗部部長か
卓に憑依されて、いいように
されていたんだ…!

復讐のために身体を使われていたんだ。

「ち、違います!
 お、俺は憑依されて、身体を…!」

陽吉が自分を取り囲んだ警官隊に
向かって叫ぶ。

しかしー
そんな言葉、聞き入れる人はいない。

「--ふざけたことを言うな!」
警官が叫ぶ。

陽吉は涙目になって叫んだ。

「お、俺は無実です!冤罪です!
 俺は憑依されて…!」

叫ぶ陽吉。

警官の一人が”狂ってる”と小さな声で呟いた。

違うんだ!
陽吉は大声で叫ぶー

しかし、
そんな陽吉の言葉を信じる人間はいなかった。

陽吉は連行されてー
そのまま”犯罪者”の烙印を押されることに
なってしまったのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--今日もかわいい~♡」

亜津奈が拍手しながら微笑む。

恵理の家の両親は
いつも帰りが遅い。

チャイナドレス姿の恵理が、
足を組みながら煙草を口にして微笑む。

「でしょ~?」

大人しい眼鏡女子の恵理が
チャイナドレスを着て、大胆に足を
見せつけながら煙草を口にしている。

恵理の外見と
憑依されていることによる、中身のギャップ―

この上なくたまらない光景だった。

陽吉の友人である卓が憑依している
亜津奈も網タイツ姿で笑う。

「ふふふふ!わたしも恵理ちゃんも
 こんなに可愛いのに、
 それを利用しないんて
 宝の持ち腐れだよね!」

ツインテールを触りながら亜津奈が言うと、
「ほんとうにネ!」
と恵理は微笑んだ。

「わたしなんて、地味なズボンとか
 ロングスカートしか持ってなかったのよ!
 マジあり得ない~!」

恵理がそう言いながら
自分の部屋の棚の中を見せる。

今では可愛らしいスカートや
派手な服装がずらりと並んでいた。

「あはははは!すっご~い!」
亜津奈が笑いながら言う。

「あ、そうそう、わたし、メイドカフェで
 バイト始めたの~!

 男の人を誘惑するのって楽しい~!」

亜津奈が言うと、
恵理も「えぇ~!いいな~!」と目を輝かせながら言うー。

女子トークに花を咲かせると、
やがて二人は甘い表情で近づいて、
お互いに抱き合った。

「じゃあ…今日も楽しもっか…亜津奈ちゃん?」
恵理が甘い声で囁くと、
亜津奈は嬉しそうに「うん…♡」と答えた。

おわり

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コメント

会社への復讐モノは
これまでにもいくつかあったので
今回はちょっと違うタイプの作品にしてみました!

これから楽しい学性…学生生活が待っていそうですネ!

お読み下さりありがとうございました~!

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憑依<社畜の反乱>

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