夜の廃虚でのかくれんぼを楽しむ5人の女子大生ー。
その最中に、そのうちの一人が
憑依されてしまうー。
”恐怖のかくれんぼ”は続く…。
-------------------------
「---梅子(うめこ)!お前が鬼な!」
「私たち4人、隠れるから~!」
「100秒数えたらスタートな!」
ーー数十年前ー。
当時、大規模な神社がここにはあったー。
そこで、かくれんぼを楽しむ小学生5人ー。
鬼となった少女は、
白い服を着た穏やかそうな少女だったー
100秒数え終わった少女は、
隠れた友達を探し始めるー
しかしー
彼女は天然な性格、
他の4人の友達は”あるイタズラ”を
仕掛けていたー。
悪気はなかった。
小学生の何気ない、イタズラだった。
他の4人は、隠れるふりをして
そのまま家に帰宅したのだー。
そのことを知らない梅子は、
他の4人を探し続ける。
「いない…」
日が暮れても、梅子は、
他の4人を探し続けたー。
やがて、夜になるー
他の4人の友達は、
梅子の親から、梅子が帰っていないことを
知らされたー
さすがに梅子も、ある程度
探した時点で諦めて帰るだろうと
そう考えていたが、
そうではなかったー
4人の友達と、その両親は
必死になって神社を探したー
しかし、梅子は見つからなかったー
やがてー
月日が流れー
神社は廃虚となりー
「~~~~みんな~~~どこ~~~?」
白い少女に憑依された蘭が笑いながら
他の隠れている友達を探している。
「ど~~~~こ~~~?」
蘭はよたよた歩きながら笑う。
「うふふ…うふふふふふふふふ…
うふふふふふふふふ♡」
立ち止まって笑いはじめる蘭。
「---わたしを置いて帰るなんて
許せない…
みつけたら、み~んな、お仕置き…
むふふ…うくくくくく」
蘭は笑い終えると、
再び歩き出した。
尻もちをついた際に汚れた足を
気にもせずに歩き続ける蘭。
隠れている”友達”を
見つけ出して、お仕置きしなくてはいけないー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----…」
インテリ女子大生の潤子は、
表情を歪めていたー
最初に聞こえた悲鳴ー
そしてー
2番目に聞こえた悲鳴ー。
2番目に聞こえた悲鳴はー
さらに不気味な悲鳴だったー。
悲鳴のあとに、
”何かが爆発するような音”が聞こえたー。
そしてー
そのあとに、不気味な笑い声ー。
萌美の笑い声だったのだろうかー。
潤子は、冷静に分析するー。
「--」
恐らくは、
かくれんぼの鬼になったことで、
夜の廃虚を一人で歩かされてしまうことになった
萌美は、パニックを起こした。
それが、最初の悲鳴。
そして、2番目の悲鳴は、
萌美が”誰かを見つけた”ときに、
おばけと勘違いしてあげた悲鳴。
謎の爆発音は、
蘭か、あるいは美月あたりが
萌美を驚かすため、何かしたのだろう。
蘭か美月なら、風船を隠し持っていて
破裂させるぐらいのことはするかもしれない
そのあとの笑い声は、
驚いた萌美を見た蘭、あるいは美月の笑い声だと思うー。
「---我ながら名推理です」
自分で呟く潤子。
潤子は、”私が負けるはずありませんね”と
心の中で思いながら、身をひそめたー
一方―、
美月は震えていた。
”かくれんぼ”を言いだした美月は、
”見て”しまったー
奈江が、蘭を見つけて、
奈江から飛び出した白い少女が、蘭に入っていき、
風船のように膨らんで奈江が”破裂”する瞬間をー
そして、笑いながら立ち去って行く蘭をー。
「---う…嘘…」
美月はー
偶然、蘭が隠れていた場所が見える位置に
隠れていたのだった。
廃虚の中に、3階建てだったと思われる
建物らしき跡地が残っていて、
その3階部分の影になる部分に
隠れていた美月。
美月のいる位置は、ある程度見晴らしがよく、
広い敷地内の一部を見渡すことができたー
その結果ー
見てしまった。
奈江と蘭をー。
「---綺麗な脚~ふふふふふふ」
蘭が笑っている。
女子大生の生足ー。
蘭に憑依している
白い少女ー
数十年前にかくれんぼの鬼として
仲間を探したまま
死んでしまった梅子ー。
小学生のまま命を落とした彼女の亡霊は、
何十年経っても、心は小学生のままだったー。
そんな梅子にとって
蘭の生足は
大人の女性の生足ー
とても、新鮮だった。
「~~きれい~!きれい~!きゃはははははは!」
飛び跳ねながら笑う蘭。
自分の足を嬉しそうに
ペタペタと触っている。
「----蘭じゃない…」
美月は、物陰からその様子を見つめながら戸惑う。
蘭があんなことするはずがないー
やっぱり、さっき破裂した奈江から飛び出した
白い少女が、蘭を乗っ取っているー
美月は、そう直感した。
高台の部分から、蘭の様子を見つめる美月。
蘭は、少し離れた場所を探している。
かくれんぼ開始から”15分”
あと15分で制限時間切れー。
けれどー。
もう、終わりだ。
「--わたしは、オバケに殺されるなんてごめんよ」
美月は呟く。
美月は、心霊モノが好きな一面もあった。
元々廃虚探検を言いだしたのも美月だ。
だから、よく分かる。
こういう場合、
”パニックを起こした人間”は死ぬのだと。
心霊モノに置いて生き残るのは
冷静な人間だと。
「--ど~こかな~!」
蘭が笑いながら廃虚を探す。
美月は
”蘭の姿がここから見えなくなったら”
廃虚から逃げ出すつもりでいたー。
この神社跡地の廃虚は広いー。
蘭が、ここから離れてくれれば
蘭に見つからずに逃げることができるだろう。
「--見つけたらお仕置きよ~」
「ーーえへへへへへへ♡」
「おねーちゃんのあしー!」
一人で呟く蘭。
美月は、スマホを手にする。
他の3人は無事だろうかー。
奈江は、破裂して、(たぶん)死んだー
蘭は(たぶん)オバケに憑りつかれているー
だとすれば、無事な可能性があるのは
インテリの潤子と、元々鬼だったはずの萌美だー。
だがー
萌美は、鬼だから隠れていないー。
もう鉢合わせして殺されたかもしれないし
まだ生きていたとしても、萌美と蘭が鉢合わせ
する可能性は高い。
だったらー
「---」
潤子に連絡しようー
美月はそう考えた。
蘭の姿はいつの間にか見えなくなっている。
潤子がどこに隠れているかは知らないが、
今がチャンスだ。
潤子と連絡を取って一緒に逃げようー
美月は、そう思い、スマホの画面を開いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----」
潤子は、身をひそめていたー
”人の気配”が
したからだー。
「--ど~こかな!」
やっぱり人だー。
潤子は、萌美が近づいてきたことを悟る。
しかしー
「--?」
潤子は違和感に気付いた。
萌美の声じゃないー?
とー。
潤子が隠れていたのは、
廃虚の壁の脆くなった部分の中ー
壁がめくれかけていたのをめくり、
その中の空洞部分に隠れている。
だがー
覗いてしまって、見つかってしまったら
元もこうもない。
「ーーえへへへへへへっ♡
大人のお姉さんの身体っていいなぁ~♡」
蘭が自分の身体を触りながら笑っているー。
「---蘭?」
隠れながら潤子は表情を歪める。
口調がいつもと全然違うから
気付かなかったが、
蘭の声のような気がするー。
潤子は疑問に思う。
鬼は、萌美だったはずー。
なぜ、蘭がみんなを探しているのかー。
「--ふふふふふ~♡
身体が膨らんでるって面白いなぁ~
うへ♡ えへぇ♡」
軽く興奮したような声を出している蘭。
ボーイッシュでサバサバした感じの蘭とは
思えない甘い声が響き渡る。
「んあぁぁ♡ なんかきもちいい~♡
はぁ♡ はぁぁぁぁ♡」
喘ぐような声。
「--な、何してるの?」
潤子は息をひそめた。
壁の奥に隠れているために
覗けば見つかる。
蘭が何をしているのか分からないが、
覗くわけにはいかないー
潤子は考えた。
蘭は既に萌美に見つかっていて、
萌美を手伝うために
おかしな発言をして、
残りの隠れている人間を
見つけようとしているー。
そうに違いない。
”その手には、乗りませんよ?”
潤子はクスリと笑う。
潤子は計算高い。
どんな小細工も無駄なのだ。
「きゃはははははは!
ど~こかな!
隠れたままわたしを置いて帰るなんて
おしおきしちゃうよ~!うふふふ♡」
蘭が叫ぶ。
まるで別人のような口調。
そしてー
蘭は言った。
「--この身体も、次の身体を見つけたら
もういらな~い!
きゃははははははははっ!」
大声で笑う蘭。
”この身体”
潤子は、隠れながらだんだんと恐怖を感じてきた。
「--さっきの子みたいに、お仕置きして
処分しちゃう!きゃははははははは~♡」
蘭が、いつもの蘭とは違う
可愛らしい口調…いや、無邪気な口調で笑う。
”さっきの子ー”
”処分”
”この身体も”
潤子は、困惑していたー
何が、起きているー?
外にいるのは、蘭じゃないの?
「---」
潤子は恐怖を感じていた。
何かが起きているー
そう感じた。
”さっきの子は処分したー”?
蘭の言葉を、真に受けるなら、
鬼だった萌美か、
他の場所で隠れているはずの美月か奈江が、
”処分”されたことになる。
「ど~こかな?」
蘭の声がさらに近くなる。
潤子は息を押し殺した。
絶対に見つかるわけにはいかない。
「--う~ん」
蘭は、壁のすぐ向こうにいる。
この傷んだ壁が剥がせることを知られたら、
自分は見つかる。
ドキー
ドキー
心臓の音が、やけに大きく聞こえる。
「う~ん、ここにはいないか~!
えへへ♡」
蘭は無邪気に笑いながら
立ち去って行こうとしたー
その時だったー
♪~~~
「----!!」
潤子は表情を歪める。
「---あれぇ~?」
蘭が首をかしげながら笑う。
潤子のスマホが鳴っていたー
”美月”だったー。
潤子と連絡をとって一緒に逃げようと
考えていた美月の連絡がー
最悪のタイミングで来てしまった。
「---み~つけた!」
「ひっ!?」
蘭が壁を剥がして美月の方を見て
微笑んだ。
「--ら、、ら、、蘭!?」
潤子は慌てた様子で蘭の方を見る。
「--ど、どうしてあなたがわたしを探してるのですか…?」
潤子は冷静を装って言う。
するとー
蘭は唇を三日月に歪めたー
唇が避けて、
血が流れるほどにー
「--ひっ!?」
潤子は思わず悲鳴を漏らす。
「--次は、あんたが鬼~!」
蘭がぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。
「---ひっ…」
潤子は蘭の異様な行動を見て思う。
これはーー蘭じゃない?
とー。
「---ぐふっ…」
蘭が突然、胃液のようなものを口から吐き出す。
「--ら、蘭!?」
潤子が慌てて蘭の方に駆け寄る。
蘭が吐きだしたのはー
白い液体のようなものー。
それがカタチとなっていきー
やがて、白い少女が現れたー
「み~つけた…!」
少女は、光の触手状のものを
潤子に向けて放つ。
その触手が、潤子の口から
無理やり内部に侵入していく。
「--きゃぁ、、ぎ…ぐぶっぼっぁぁああっ!!」
口から無理やり侵入された潤子は
その場にあおむけで倒れて
激しく苦しみ出した。
もがく潤子。
「--あ…あ…」
正気を取り戻した蘭は、起き上がろうとする。
けれどー
身体に力が入らない。
もがき続ける潤子ー
やがて、潤子がピクピクと痙攣して
もがくことをやめてしまった。
「--じ…」
蘭は、さらに激しい吐き気を覚えて
水のようなものを口から吐き出した。
”おまえは、もういらない”
ーー蘭は、はっとして、目の前を見る。
そこにはー
目から涙を流したまま
笑みを浮かべた潤子の姿があった。
「---あ…じ、、じゅん…」
吐き気が止まらないー
水のようなものを吐きだし続ける蘭。
「--ばいばい♪」
笑う潤子。
白い少女の怨念の力でー
蘭は、体内中の水分が逆流しー
口から濁流のように、水を垂れ流したー
やがてー
蘭は干し物のように干からびて
動かなくなったー
「うふ♡」
潤子は笑うー。
ロングスカートを邪魔そうに手で触ると、
そのまま歩き出すー
「--あとひと~り…!
うふふふふふ♡」
潤子は静かに、夜の廃虚を歩き始めたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回が最終回デス!
続きはまた明日~!
コメント