<憑依>かくれン墓②~悲鳴~

夜の廃虚でのかくれんぼを楽しむ5人の女子大生ー。

その最中に、そのうちの一人が
憑依されてしまうー。

”恐怖のかくれんぼ”は続く…。

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「---梅子(うめこ)!お前が鬼な!」

「私たち4人、隠れるから~!」

「100秒数えたらスタートな!」

ーー数十年前ー。
当時、大規模な神社がここにはあったー。

そこで、かくれんぼを楽しむ小学生5人ー。

鬼となった少女は、
白い服を着た穏やかそうな少女だったー

100秒数え終わった少女は、
隠れた友達を探し始めるー

しかしー
彼女は天然な性格、
他の4人の友達は”あるイタズラ”を
仕掛けていたー。

悪気はなかった。
小学生の何気ない、イタズラだった。

他の4人は、隠れるふりをして
そのまま家に帰宅したのだー。

そのことを知らない梅子は、
他の4人を探し続ける。

「いない…」

日が暮れても、梅子は、
他の4人を探し続けたー。

やがて、夜になるー

他の4人の友達は、
梅子の親から、梅子が帰っていないことを
知らされたー

さすがに梅子も、ある程度
探した時点で諦めて帰るだろうと
そう考えていたが、
そうではなかったー

4人の友達と、その両親は
必死になって神社を探したー

しかし、梅子は見つからなかったー

やがてー
月日が流れー
神社は廃虚となりー

「~~~~みんな~~~どこ~~~?」

白い少女に憑依された蘭が笑いながら
他の隠れている友達を探している。

「ど~~~~こ~~~?」
蘭はよたよた歩きながら笑う。

「うふふ…うふふふふふふふふ…
 うふふふふふふふふ♡」

立ち止まって笑いはじめる蘭。

「---わたしを置いて帰るなんて
 許せない…
 みつけたら、み~んな、お仕置き…
 むふふ…うくくくくく」

蘭は笑い終えると、
再び歩き出した。

尻もちをついた際に汚れた足を
気にもせずに歩き続ける蘭。

隠れている”友達”を
見つけ出して、お仕置きしなくてはいけないー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「-----…」
インテリ女子大生の潤子は、
表情を歪めていたー

最初に聞こえた悲鳴ー

そしてー
2番目に聞こえた悲鳴ー。

2番目に聞こえた悲鳴はー
さらに不気味な悲鳴だったー。

悲鳴のあとに、
”何かが爆発するような音”が聞こえたー。

そしてー

そのあとに、不気味な笑い声ー。

萌美の笑い声だったのだろうかー。

潤子は、冷静に分析するー。
「--」

恐らくは、
かくれんぼの鬼になったことで、
夜の廃虚を一人で歩かされてしまうことになった
萌美は、パニックを起こした。
それが、最初の悲鳴。

そして、2番目の悲鳴は、
萌美が”誰かを見つけた”ときに、
おばけと勘違いしてあげた悲鳴。

謎の爆発音は、
蘭か、あるいは美月あたりが
萌美を驚かすため、何かしたのだろう。
蘭か美月なら、風船を隠し持っていて
破裂させるぐらいのことはするかもしれない

そのあとの笑い声は、
驚いた萌美を見た蘭、あるいは美月の笑い声だと思うー。

「---我ながら名推理です」
自分で呟く潤子。

潤子は、”私が負けるはずありませんね”と
心の中で思いながら、身をひそめたー

一方―、
美月は震えていた。

”かくれんぼ”を言いだした美月は、
”見て”しまったー

奈江が、蘭を見つけて、
奈江から飛び出した白い少女が、蘭に入っていき、
風船のように膨らんで奈江が”破裂”する瞬間をー

そして、笑いながら立ち去って行く蘭をー。

「---う…嘘…」
美月はー
偶然、蘭が隠れていた場所が見える位置に
隠れていたのだった。

廃虚の中に、3階建てだったと思われる
建物らしき跡地が残っていて、
その3階部分の影になる部分に
隠れていた美月。

美月のいる位置は、ある程度見晴らしがよく、
広い敷地内の一部を見渡すことができたー

その結果ー
見てしまった。

奈江と蘭をー。

「---綺麗な脚~ふふふふふふ」
蘭が笑っている。

女子大生の生足ー。

蘭に憑依している
白い少女ー
数十年前にかくれんぼの鬼として
仲間を探したまま
死んでしまった梅子ー。

小学生のまま命を落とした彼女の亡霊は、
何十年経っても、心は小学生のままだったー。

そんな梅子にとって
蘭の生足は
大人の女性の生足ー
とても、新鮮だった。

「~~きれい~!きれい~!きゃはははははは!」
飛び跳ねながら笑う蘭。

自分の足を嬉しそうに
ペタペタと触っている。

「----蘭じゃない…」
美月は、物陰からその様子を見つめながら戸惑う。

蘭があんなことするはずがないー
やっぱり、さっき破裂した奈江から飛び出した
白い少女が、蘭を乗っ取っているー

美月は、そう直感した。

高台の部分から、蘭の様子を見つめる美月。

蘭は、少し離れた場所を探している。

かくれんぼ開始から”15分”
あと15分で制限時間切れー。

けれどー。
もう、終わりだ。

「--わたしは、オバケに殺されるなんてごめんよ」
美月は呟く。

美月は、心霊モノが好きな一面もあった。
元々廃虚探検を言いだしたのも美月だ。
だから、よく分かる。

こういう場合、
”パニックを起こした人間”は死ぬのだと。
心霊モノに置いて生き残るのは
冷静な人間だと。

「--ど~こかな~!」
蘭が笑いながら廃虚を探す。

美月は
”蘭の姿がここから見えなくなったら”
廃虚から逃げ出すつもりでいたー。

この神社跡地の廃虚は広いー。
蘭が、ここから離れてくれれば
蘭に見つからずに逃げることができるだろう。

「--見つけたらお仕置きよ~」

「ーーえへへへへへへ♡」

「おねーちゃんのあしー!」

一人で呟く蘭。

美月は、スマホを手にする。

他の3人は無事だろうかー。
奈江は、破裂して、(たぶん)死んだー
蘭は(たぶん)オバケに憑りつかれているー

だとすれば、無事な可能性があるのは
インテリの潤子と、元々鬼だったはずの萌美だー。

だがー
萌美は、鬼だから隠れていないー。
もう鉢合わせして殺されたかもしれないし
まだ生きていたとしても、萌美と蘭が鉢合わせ
する可能性は高い。

だったらー

「---」
潤子に連絡しようー

美月はそう考えた。

蘭の姿はいつの間にか見えなくなっている。
潤子がどこに隠れているかは知らないが、
今がチャンスだ。
潤子と連絡を取って一緒に逃げようー

美月は、そう思い、スマホの画面を開いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----」
潤子は、身をひそめていたー

”人の気配”が
したからだー。

「--ど~こかな!」

やっぱり人だー。
潤子は、萌美が近づいてきたことを悟る。

しかしー

「--?」
潤子は違和感に気付いた。

萌美の声じゃないー?

とー。

潤子が隠れていたのは、
廃虚の壁の脆くなった部分の中ー

壁がめくれかけていたのをめくり、
その中の空洞部分に隠れている。

だがー
覗いてしまって、見つかってしまったら
元もこうもない。

「ーーえへへへへへへっ♡
 大人のお姉さんの身体っていいなぁ~♡」

蘭が自分の身体を触りながら笑っているー。

「---蘭?」
隠れながら潤子は表情を歪める。

口調がいつもと全然違うから
気付かなかったが、
蘭の声のような気がするー。

潤子は疑問に思う。

鬼は、萌美だったはずー。
なぜ、蘭がみんなを探しているのかー。

「--ふふふふふ~♡
 身体が膨らんでるって面白いなぁ~
 うへ♡ えへぇ♡」

軽く興奮したような声を出している蘭。

ボーイッシュでサバサバした感じの蘭とは
思えない甘い声が響き渡る。

「んあぁぁ♡ なんかきもちいい~♡
 はぁ♡ はぁぁぁぁ♡」

喘ぐような声。

「--な、何してるの?」
潤子は息をひそめた。

壁の奥に隠れているために
覗けば見つかる。

蘭が何をしているのか分からないが、
覗くわけにはいかないー

潤子は考えた。

蘭は既に萌美に見つかっていて、
萌美を手伝うために
おかしな発言をして、
残りの隠れている人間を
見つけようとしているー。

そうに違いない。

”その手には、乗りませんよ?”
潤子はクスリと笑う。

潤子は計算高い。
どんな小細工も無駄なのだ。

「きゃはははははは!
 ど~こかな!
 隠れたままわたしを置いて帰るなんて
 おしおきしちゃうよ~!うふふふ♡」

蘭が叫ぶ。

まるで別人のような口調。

そしてー
蘭は言った。

「--この身体も、次の身体を見つけたら
 もういらな~い!
 きゃははははははははっ!」

大声で笑う蘭。

”この身体”

潤子は、隠れながらだんだんと恐怖を感じてきた。

「--さっきの子みたいに、お仕置きして
 処分しちゃう!きゃははははははは~♡」

蘭が、いつもの蘭とは違う
可愛らしい口調…いや、無邪気な口調で笑う。

”さっきの子ー”
”処分”
”この身体も”

潤子は、困惑していたー

何が、起きているー?
外にいるのは、蘭じゃないの?

「---」
潤子は恐怖を感じていた。

何かが起きているー
そう感じた。

”さっきの子は処分したー”?

蘭の言葉を、真に受けるなら、
鬼だった萌美か、
他の場所で隠れているはずの美月か奈江が、
”処分”されたことになる。

「ど~こかな?」
蘭の声がさらに近くなる。

潤子は息を押し殺した。
絶対に見つかるわけにはいかない。

「--う~ん」
蘭は、壁のすぐ向こうにいる。

この傷んだ壁が剥がせることを知られたら、
自分は見つかる。

ドキー

ドキー

心臓の音が、やけに大きく聞こえる。

「う~ん、ここにはいないか~!
 えへへ♡」

蘭は無邪気に笑いながら
立ち去って行こうとしたー

その時だったー

♪~~~

「----!!」
潤子は表情を歪める。

「---あれぇ~?」
蘭が首をかしげながら笑う。

潤子のスマホが鳴っていたー

”美月”だったー。
潤子と連絡をとって一緒に逃げようと
考えていた美月の連絡がー
最悪のタイミングで来てしまった。

「---み~つけた!」

「ひっ!?」

蘭が壁を剥がして美月の方を見て
微笑んだ。

「--ら、、ら、、蘭!?」
潤子は慌てた様子で蘭の方を見る。

「--ど、どうしてあなたがわたしを探してるのですか…?」
潤子は冷静を装って言う。

するとー
蘭は唇を三日月に歪めたー

唇が避けて、
血が流れるほどにー

「--ひっ!?」
潤子は思わず悲鳴を漏らす。

「--次は、あんたが鬼~!」
蘭がぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。

「---ひっ…」

潤子は蘭の異様な行動を見て思う。
これはーー蘭じゃない?

とー。

「---ぐふっ…」
蘭が突然、胃液のようなものを口から吐き出す。

「--ら、蘭!?」
潤子が慌てて蘭の方に駆け寄る。

蘭が吐きだしたのはー
白い液体のようなものー。
それがカタチとなっていきー
やがて、白い少女が現れたー

「み~つけた…!」
少女は、光の触手状のものを
潤子に向けて放つ。

その触手が、潤子の口から
無理やり内部に侵入していく。

「--きゃぁ、、ぎ…ぐぶっぼっぁぁああっ!!」

口から無理やり侵入された潤子は
その場にあおむけで倒れて
激しく苦しみ出した。

もがく潤子。

「--あ…あ…」
正気を取り戻した蘭は、起き上がろうとする。

けれどー
身体に力が入らない。

もがき続ける潤子ー
やがて、潤子がピクピクと痙攣して
もがくことをやめてしまった。

「--じ…」
蘭は、さらに激しい吐き気を覚えて
水のようなものを口から吐き出した。

”おまえは、もういらない”

ーー蘭は、はっとして、目の前を見る。

そこにはー
目から涙を流したまま
笑みを浮かべた潤子の姿があった。

「---あ…じ、、じゅん…」

吐き気が止まらないー
水のようなものを吐きだし続ける蘭。

「--ばいばい♪」
笑う潤子。

白い少女の怨念の力でー
蘭は、体内中の水分が逆流しー
口から濁流のように、水を垂れ流したー

やがてー
蘭は干し物のように干からびて
動かなくなったー

「うふ♡」
潤子は笑うー。

ロングスカートを邪魔そうに手で触ると、
そのまま歩き出すー

「--あとひと~り…!
 うふふふふふ♡」

潤子は静かに、夜の廃虚を歩き始めたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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次回が最終回デス!
続きはまた明日~!

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憑依<かくれン墓>

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