虐待していた猫と入れ替わってしまった友希恵は、
友希恵になった猫から、復讐されることに…!
友希恵の運命は…?
--------------------—-
「----今日から、よろしくね!」
中学生の頃ー
”みーちゃん”は、家にやってきた。
殺処分される直前だった猫を、
引き取ったのだー。
「にゃあ♡」
みーちゃんは、とても可愛かった。
こんな子が、殺処分されてしまうなんてー
信じられなかった。
猫や犬は、毎年のように
必ず、殺処分が行われているー。
この、みーちゃんもそうなるはずだった。
もちろん、
みーちゃんを助けたところで、
殺処分される犬や猫がいることは
変わらないー。
けれどー
1匹でも、命を助けることができるのならー。
友希恵は、友達が猫を飼っている影響で、
猫を飼いたい!と常々両親にお願いしていた。
そんな娘の願いとー
母親の親戚から、殺処分直前の
みーちゃんを紹介されたタイミングが重なり、
両親は、友希恵のために
みーちゃんを引き取ったのだった。
みーちゃんの頭を撫でる友希恵。
「あ、名前つけてあげなくちゃ~
う~ん…」
友希恵が微笑む。
頭の中でパッと思いついた
候補の中から、友希恵は
最初に思いついたものを口にした
「みーちゃん!」
微笑む友希恵。
「--にゃ?」
ーー友希恵から貰った大切な名前ー。
友希恵の無邪気な笑みー
みーちゃんは幸せだった。
しかしー
いつしかそれは…
”壊れて行くー”
”あんたさ…いつ死ぬの?”
ショックだったー
大好きな友希恵から、
そんな風に言われるのはー。
みーちゃんにも分かっていたー
友希恵ちゃんは疲れているのだと。
けどー
虐待を受け続けるうちにー
みーちゃんの中でも、変化があった。
友希恵に対する憎悪が巻き上がってきたー。
暴力ー
エサをわざと抜くー
言葉の暴力ー
いやがらせー
みーちゃんはずっとそれに耐えてきた。
友希恵に対する
恨みを膨れ上がらせながらー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---にゃあ…」
夢を、見ていたー
猫も夢を見るんだー
そう思いながら
猫になった友希恵は身体を起こすー
起きたら自分の身体に戻ってるといいなー…
そんな風に思いながら友希恵は
鏡を見るー
けど、
自分は猫のままー
「にゃああ…」
涙をこぼすみーちゃん。
(お願い…助けて…ごめんってば…)
誰もいない部屋で、
鳴き声をあげるみーちゃん。
そこにー
友希恵が入ってきた。
友希恵になったみーちゃんは、
優しく微笑んで、檻を開いてくれた。
「---にゃ…?」
みーちゃんになった友希恵が、
友希恵の方を見つめると、
友希恵は微笑んだ。
「--もう、満足したにゃ」
友希恵が微笑む。
「--にゃ…?」
(えっ…?)
友希恵の優しい笑み。
友希恵は、キャットフードを手にすると、
それをお皿に入れて、
みーちゃんの方に差し出した。
空腹に苦しんでいたみーちゃんは、
もの凄い勢いで
キャットフードを食べ始めた。
猫の餌なんて食べたことがないけれどー
今は猫の身体だし、
なりふり構っていられなかった。
無我夢中で、キャットフードを
食べるみーちゃん。
そんなみーちゃんを
見つめながら、友希恵は微笑んだ。
「--昔は、友希恵ちゃんも
こうやって、ご飯、くれたよね?」
友希恵になってから数日ー
みーちゃんは大分、人間の喋り方に
慣れてきたようだ。
(うん…うん)
キャットフードを食べながら
返事をするみーちゃん。
自分は、みーちゃんに酷いことを
してしまった。
元に戻ったらー
今までのことはちゃんと謝って
また、昔のようにやり直そうー
みーちゃんになった友希恵は
そう決意していた。
「----酷いことして、
ごめんにゃ」
友希恵がお詫びの言葉を口にした。
「---にゃあ…」
(わたしこそごめん…)」
みーちゃんになった友希恵は
心の底から反省して、
そう呟いた。
「----」
友希恵が少し考えたあとに口を開く。
「元に、戻ろう…にゃ」
その言葉に、
みーちゃんになった友希恵は、
泣きながら飛び跳ねた。
そんな様子を見て、友希恵も微笑むー
友希恵がみーちゃんを抱き上げる。
「--元に戻してもらうための
場所にいっしょにいこっか」
友希恵が微笑む。
「にゃああ?」
(元に戻るための場所?)
抱きかかえられたみーちゃんになった友希恵は
”そもそもどうやって元に戻るんだろう?”
と思いながら
友希恵に身を任せたー
・・・・・・・・・・・・・・
「本当にいいのか?」
「うんー」
車に乗り込んだ父と友希恵が
会話をしているー
猫になった友希恵は思うー
”お父さんも、入れ替わりのこと、
知っていたのかなー”
とー。
「--ふふ」
友希恵は笑うー。
友希恵になったみーちゃん。
けれどー
入れ替わったのは、偶然だ。
意図的に入れ替わったわけではないー
強い恨みが、奇跡を起こしたのだー
だからー
元に戻る方法は、みーちゃんも知らない。
これから行こうとしている場所はー
”元に戻る場所”
などではないー
「ついたよ~!」
車から降りる友希恵とみーちゃん。
「にゃにゃ~!」
みーちゃんになった友希恵は
”もうすぐ元に戻れる”とご機嫌だった。
友希恵はそんなみーちゃんに告げる。
「--元に戻るまで
ちょっと時間がかかるから、我慢してね」
とー
”うん…”
「にゃあ…」
少し不安になりながらも、
みーちゃんになった友希恵は頷く。
友希恵と父親ー
施設の職員が何やら話しているー
内容は聞き取れなかった。
やがてー
話が終わると、
友希恵がの手から職員に
みーちゃんが引き渡された。
「--にゃ…」
不安そうにしているみーちゃんを見て
友希恵は微笑む。
「--ふふ」
友希恵は何も言わずに
みーちゃんの頭を撫でると、
小声で何かを呟いたー
立ち去る友希恵―
「---にゃあ…」
(やっと、元に戻れる…)
みーちゃんになった友希恵は
この施設が、
入れ替わった身体を元に戻せる施設だと
信じてやまなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
みーちゃんは、
他の猫がいる広い檻の中に
入れられていた。
”ここにいる他の猫たちも
入れ替わっちゃった猫たちなのかな…?”
そんな風に思いながら、
友希恵は元に戻れる瞬間を待つー。
色々な事が頭に浮かぶー。
みーちゃんとの出会い
みーちゃんを可愛がった日々
みーちゃんをいじめ始めた時期ー
みーちゃんに酷いことをした日々ー
そしてー
「----酷いことして、
ごめんにゃ」
ーーー!?!?
友希恵は、ハッとしたー
あのセリフはー
前に、自分がみーちゃんに言った台詞ー
「----酷いことして、
ごめん」
友希恵はー
前に、みーちゃんにそう言ったことがあるー
けれどー
反省していたわけではないー
”1日だけ優しくしてあげて、
翌日にまたいじめたら
みーちゃんはどんな反応をするのだろう”
そう思って、
みーちゃんの反応を見て楽しんでいただけだー。
一日だけ優しくされて、
翌日、殴りつけてやったときの
みーちゃんの顔は、今でも忘れられないー
「----酷いことして、
ごめんにゃ」
ーーーー!!
友希恵は、背筋が凍る思いをしたー
もしもー
もしも、友希恵になったみーちゃんの
あの言葉が
”あの時の仕返し”だったとしたらー?
だとしたらー
この施設は…?
ブー、というアラーム音が鳴る。
「---!?」
みーちゃんになった友希恵は、辺りを見回す。
天井からー
ガスのようなものが流れてきているー
「---!!」
友希恵は、ハッとしたー
”---猫の殺処分ー”
次の瞬間、友希恵は、部屋の出口に向かって突進していた。
(いやだ!助けて!死にたくない!助けて!)
「にゃああ!にゃああ!にゃああああああ!」
みーちゃんになったまま死ぬなんて、
嫌だ!嫌だ!嫌だ!
何度も叫ぶ友希恵。
しかしー
その言葉は、もう誰にも届かないー
ガスが部屋中に充満していくー
助けて!助けて!助けて!
逃げ場のない空間ー
ガスが、どんどん広がって行くー
他の猫たちも苦しんでいる。
他の猫たちを邪魔者のようにのけて、
部屋の出口の扉に突進する友希恵。
しかしー
猫の身体では、びくともしないー
「にゃ…あ…」
身体から力が抜けて行くー
(ごめ…ん…ってば…)
扉につけた手が
スルスルと下に落ちて行く。
やがて、みーちゃんになった友希恵は
動けなくなった。
友希恵は、夢を見たー
はじめて、みーちゃんと出会ったあの日ー。
あの時は、楽しかった。
いつからだろうー?
次第にみーちゃんの顔を見ると
憎たらしくて
仕方がなくなったー
自分が学校でいじめを受けていたからー?
本当は、キライなんかじゃなかったのにー
けどー
「----にゃ…」
友希恵は、身体から力が抜けて行くのを感じるー
”本当は好きだったのにー”
そんなこと、思っていても、
相手には、伝わらないー
自分のしたことが、全てー
そうだー
自分はみーちゃんに酷い事をしたー
取り返しのつかない、酷い事をー
「-------に…」
目から涙をこぼしながら
みーちゃんになった友希恵は、
その場で、動かなくなってしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「にゃにゃにゃ~♪」
友希恵になったみーちゃんは
今日もご機嫌そうに
キャットフードを食べていた。
だんだんと人間の生活にも慣れていた
友希恵は、ちゃんとお風呂にも
入るようになったし、
人間らしい生活が出来るようになったー
高校では、醜態を晒したけれど、
なんとかなるだろうー
「---にゃ?」
みーちゃんと友希恵が写っている写真を見つめる。
「--ーーー」
友希恵は、今頃ー
そう思ったら、笑いが込み上げてきた。
自分を散々虐待した友希恵がー
自分が見下していた猫と入れ替わって
殺処分されることになるなんて
夢にも思わなかっただろう。
「にゃはははは…」
友希恵はおかしくなって笑い始めた。
「にゃはははははははっ!
にゃ~ははははははははは♡」
友希恵は、
”やっと悪魔のような飼い主”から
解放された!
と大声で笑い続けるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ーー10年後ーーーー
とあるカップルが
お酒を飲みながら会話を交わしていた。
「ねぇ…」
酔った様子の女性が微笑む。
とてもきれいな女性だー。
「ん?」
男の方が言う。
「--わたしが、昔、猫だったって言ったら
信じる?」
女が言うー。
男は笑いながら呟いた。
「ははは…
酔ってるのか?友希恵…」
男の言葉に、
友希恵は首を振る。
「ううん…酔ってなんかないよ。
わたし、昔、猫だったの」
その言葉に、
男は友希恵の手を握った。
「--昔が何であろうと、
俺は友希恵のことが好きだから…
それにー
今は、人間だろ?」
男が言うと、
友希恵はその男に
抱きしめられながら小さく呟いた
「にゃあ~…」
とー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ペットとの入れ替わり…!
ちょっと変わった入れ替わりモノでした~!
生き物を飼う時は、大事にしましょうネ!
お読み下さりありがとうございました☆
コメント