カードを現実化させる力ー
その力を手にした男は、迷わず女子高生に憑依した。
その身体を使って、やりたい放題の男を
止めることはできるのか…。
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”憑依するブラッドソウル”
この世界では、
安くても何百万の値がつく、
激レアカードだ。
生産数は決して少なくはないー
そして、カード自体も強いわけではない。
デュエルにおいて、
憑依するブラッドソウルのカードを
デッキに入れていたら
それは、ファンデッキとみなされるだろう。
しかしー
ある時を境に、それが変わった。
この世界に、”カードを現実化させる力”を持つ
”リアルデュエリスト”という存在が
現れたのだー。
憑依するブラッドソウルは、
たちまち悪用された。
自分自身が憑依するブラッドソウルになり、
他の人間に憑依する、
という使い方が出来たからだー。
そしてー。
薄汚い路地裏で、
カツアゲや、万引きなどを繰り返しながら日々生活
している、ヤンキーの集団がいた。
そのうちの一人、穂村 剛(ほむら ごう)は
日々荒れた生活を送っていた。
家にも帰らず、ワル仲間とつるむ日々ー
そんなある日ー
彼は、手に入れてしまった。
”カードを現実化させる力”をー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「--うん!また明日~!」
友達と別れる女子高生ー。
彼女の名は、
藤堂 真澄(とうどう ますみ)-
真面目で可愛らしい少女だー
病弱な母親のために、
アルバイトをしつつ、家計を助けているー
そんな真澄がー
狙われたー
「くくく…」
憑依するブラッドソウルのカードを自分にかざす剛。
たちまち、彼は憑依するブラッドソウルの姿に変わりー
そのまま、真澄の方に突撃したー。
「--!?」
真澄が背後から迫る”憑依するブラッドソウル”に
気付いたときには、もう手遅れだったー
「きゃあぁ…ぐぼっ・・・あぁ、、、あ…!」
真澄の口から侵入した憑依するブラッドソウル。
真澄は、大口を開けて
その場で苦しそうに蹲る。
「ん…ぐ、、あ…あぁぁあああ…」
苦しそうにもがく真澄。
下校中の他の同級生が
真澄の周囲に集まった。
しかしー
「---どいて」
苦しんでいたはずの真澄が、
目に涙を浮かべながら
低い声で言う。
「え…で、、、でも、真澄ちゃん…
無理しない方が…」
「--うるせぇ!」
真澄は可愛らしい声で叫ぶと、
「ゴキボール」のカードをかざし、
その女子生徒をゴキボールに変えてしまった。
「---きゃあああああ!」
周囲の生徒が叫ぶ。
「--くくくく…」
真澄は笑みを浮かべる。
そしてー
そのゴキボールを踏み潰すと、ニヤリと笑った。
「---くくくく…
リアルの力があれば、なんでもできる…!
この世は俺の思いのままだぜ!」
真澄が怯える周囲の同級生たちに向かって叫ぶー
「ま、、真澄ちゃん!どうしちゃったの!?」
周囲の生徒が叫ぶ中、
真澄は叫んだ。
「--どうしたって?
ひゃはははは!
今日からこの身体は俺のものだ!」
真澄は大笑いしながら、
自分の身体を撫でまわすようにして触りつづけたー
その日からー
周辺の人々は恐怖に襲われることになったー
”リアル”の力はー
諸刃の刃ー
かつて、この力を医療に役立てようとした人間がいたー。
リアルの力で家族を守ろうとしたものもいたー。
確かに、この力は、使いようによっては
人では無しえなかった奇跡を作ることができるー。
けれどー
人間は愚かだー。
リアルの力をこの世界に持ち込んだ男は、
人間に絶望していたー。
そして、彼の予想通り、
リアルの力を手に入れた人間のほとんどは暴走しているー。
”終焉のカウントダウン”で世界を終わらせようとしたモノー
学校中の生徒をカードで支配しようとした女教師ー
警察に追いつめられた際に力に目覚めて、逃亡した男ー
人間は、愚かだー。
「--ひゃははははははは!」
ゴスロリ風の衣装を身に着けた真澄が、
商店街を歩いている。
周囲には可愛らしい女子たちが4人ほど
まるで、親衛隊のようにして歩いているー
彼女たちはー
真澄に憑依した剛に、
”洗脳ブレインコントロール”のカードで
洗脳されて忠実なしもべになってしまった
同級生たちだー。
一人はメイド服ー
一人はくノ一のような格好、
一人はチャイナドレス
一人はナース姿をしている。
そしてー
真澄がまるで、女王様かのように
商店街を堂々と歩いている。
気に入った店があれば立ち寄り、
店員を脅して、
モノを奪うー
「くくくく…あははははははははっ!
この世はわたしのものよ!」
せっかく女の身体を奪ったのだから―、と
女言葉を使いながら真澄は
好き放題やっていた。
「---ご、ごめんね、真澄ちゃん…」
真澄の知り合いでも、
商店街の肉屋の店主のおばちゃんは、
真澄に頭を下げていた。
真澄のことは小さい頃から
知っている。
最近の真澄の豹変に、
おばさんは心を痛めていた。
「--なに?金の用意、できてないの?」
真澄が不機嫌そうに腕を組む。
「--こ、、これ以上は…無理よ」
肉屋のおばさんは悲痛な叫びをあげた。
連日、真澄に金をとられて
もう、店も閉店間近という状態ーー。
「ふ~ん」
真澄は、ニヤニヤしながら
他の4人の女子たちの方を見る。
「--じゃあ、あんたもういらない」
真澄はそう言うと、
”昼夜の大火事”のカードを
発動したー
肉屋のおばさんが目を見開く。
その直後ー
肉屋は大爆発を起こした
「うふ…うふふふふ♡
まじめな女の身体を奪って
やりたい放題…
たまんねぇぜ!」
真澄が狂った顔芸を披露しながら
大笑いする。
周囲の4人の女子たちも
真澄と一緒にゲラゲラ笑う。
駆けつける消防隊員ー。
火事を起こした肉屋の火を
必死に消そうとする消防隊員の姿を見て
真澄はケラケラと笑う。
「もうおせぇよ…」
真澄はそう言いながら
さらにカードを発動した。
”恵みの雨ー”
突然、周囲に雨が降り始める。
「-くくく…
火は消してやったぜ!」
消防隊員たちに向かって叫ぶ真澄ー
優しかった女子高生の面影は
もう、そこにはないー
戸惑う消防隊員たちー
そしてー
”サンダーボルト”の
カードを発動すると、
恵みの雨に混じって、雷が轟き始めー
消防隊員たちを焼き尽くした。
「ひはははははははは!」
真澄は、歪んだ表情で笑うと、
そのまま歩きはじめるー
ほどなくして今度は警察官が立ちはだかる。
「とまれ!」
大量のパトカーに囲まれる真澄。
しかし、真澄は無視して、歩き続ける。
他の4人の女子ー
真澄に憑依している剛に洗脳された4人は
少し戸惑っている様子だ。
「ケッ…びびってんじゃねぇよ」
真澄が、可愛い声でそう叫ぶと、
カードを発動した。
「--お前たちももういらねぇわ」
”エクトプラズマ―”
そのカードによって、
周囲の女子4人が、悲鳴を上げながら
魂のような光に変換されていくー
「ひゃはははははははは!」
真澄が両手を広げながら大笑いするー
エクトプラズマ―により
攻撃を受ける警察官たちー
警察官は、何もすることが出来ないまま全滅したー
「---この力があれば…
やりたい放題だぜ!」
真澄は嬉しそうに叫ぶと、そのまま歩きはじめるー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから1週間ー
真澄によって、国内は大混乱に
陥っていたー。
ひとりの人間がー
狂気的な考えを持つ人間が
リアルの力を手にしたー。
それだけでー
この世は、壊れてしまうー
真澄はー
とある大企業を乗っ取っていた。
あらゆるカードを使い、
1週間にして、大企業を乗っ取ったのだった。
「---くくくくく」
漆黒のドレスを身にまとい、
ビルから地上を見渡す真澄ー。
そうー
この世界は自分のものだー。
真澄に憑依している剛は思うー
カードの効果を現実のものにできるー。
この力さえあれば、
何だってできる。
こうして、女子高生の身体を乗っ取って
好き放題することもー
世界を意のままに操ることもー
”くくくく…”
憑依された真澄の様子を見つめる
謎の生命体ー
緑色の生命体は笑うー
”人間とは、愚かなものだなー”
剛に、”リアル”の力を
授けた張本人ー
それが、暴君として振る舞う
真澄の様子を見つめて、笑っているー。
”くくく…
こいつが、どのような結末を迎えるかー
実にたのしみだー”
緑色の生命体は、
真澄による横暴がどこまで続くかみものだな、と
思いながらその場から姿を消したー
・・・・・・・・・・・・・・・
真澄の行動はさらにエスカレートした。
この世の頂点に君臨する
悪の女王かのような振る舞いを続ける真澄。
世界はー
たった一人の少女によって、
支配されてしまっていたー。
”くくく…
救いようのない人間が、
リアルの力を手にするだけでー
この世界はこんなにも、変わってしまうのかー”
緑色の生命体は笑うー
不良である剛が、リアルの力を手にしてから
2か月が経過したー
2か月間支配されたままの真澄は
今やすっかり邪悪な表情に
染まっているー
気に入らない国には
罠カード”全弾発射”を用いて
ミサイルを撃ち込むー。
そうすることでー
世界は、真澄の手に落ちた。
「あははははははははっ♡」
王宮のような場所で真澄は
ご機嫌そうに笑うー
リアルの力を手に入れて
2か月ー。
世界は真澄に屈服した。
「~~はぁ~♡ この力、さいこう~!」
嬉しそうに言う真澄。
自分の太ももをエッチな表情を
しながら触りまくる真澄ー。
女の身体もー
世界も、
全てを手に入れた。
「--この世は、わたしのものよ!」
真澄は
勝ち誇った表情で叫んだー。
もう、自分のことは、誰にも止められないー。
だがー
世の中、そう上手くはいかなかったー。
一人の女が、
真澄のいる宮殿のような場所に入ってくる。
「---なんだ、お前は?」
真澄が、警戒心を露わにする。
女は、一枚のカードを手にした。
「--ん?」
女は笑う。
「--このカードを、真澄さまに…」
そう呟く女。
真澄は思う。
”あぁ、洗脳した女の一人かな?”と。
真澄は大量の人間を
好き放題していたせいで、
誰を洗脳したのか、
もはや覚えていないほどの
人間を洗脳していた。
ここに入って来れるということは、
洗脳した女の一人なのだろう。
そう思いながら、
真澄はカードを手にした。
カードを手にした真澄は
表情を歪めた。
”ブラックホール”
手にした瞬間、
カードが光り、宮殿に渦のようなものが現れた。
ブラックホールが発動してしまったー。
「--なっ…」
唖然とする真澄。
カードを現実化させる力を手に入れた人間は、
注意しなければならないことがあるー。
それは、誤作動。
不用意にカードに触れることで、
予期せぬカードの効果が発動してしまいー
結果、死に至る可能性があるのだー。
だからー
リアル・デュエリストたちは
みんな、不用意にカードを触らない。
手にしたカードが、いつその効力を
発揮するか、分からないからだー。
「--ぬああああああああああっ!」
真澄が、近くにあった手すりにしがみつく。
発生したブラックホールに
身体が吸い込まれていくー。
「---」
真澄は、女の方を見た。
「お前はー」
真澄は目を見開く。
この女は、確かー
乗っ取った真澄の妹ー。
「--お姉ちゃんのことを、
これ以上、好きにはさせない…!」
真澄の妹は叫んだ。
普通の人間が、
リアルデュエリストを倒す方法ー
それはー
”自爆させるカードを手渡すことー”
「---お、、おのれぇえええええええ!」
真澄は、狂気的な顔芸を披露すると、
そのまま、ブラックホールに吸い込まれていくー
「お姉ちゃん…」
真澄の妹は、姉が狂ってしまった原因を
ずっと探っていたー。
そして、
”リアルデュエリスト”に辿り着いた。
恐らく、姉は何らかのカードで
狂わされてしまったのだろう―。
妹に出来る最後のことはー。
妹は、ブラックホールに
吸い込まれていく姉・真澄の手を掴んで
微笑んだ。
「お姉ちゃん…ずっといっしょだよー」
と…
姉の真澄は
恨み言を大声で叫びながら
最後まで自分の意識を取り戻すことなくー
ブラックホールに妹と共に吸い込まれて消滅したー。
この妹が、
”姉が憑依されている”ことに気付ければ
救う方法もあったかもしれないー
けれどもー
それは、叶わなかったー
”くくく…”
緑色の生命体は笑う。
”人間は、脆いな…”
とー。
真澄が消えたあとー
世界は元通りになったー
そして、今日もまた、どこかで
”カードを現実化する力”を悪用した
人間の手によって、
誰かが傷ついている。
”この力を、有効的に活用すればー
平和や夢を実現できるかもしれないのにー”
緑色の生命体は笑うー
カードを現実化する力ー。
これがあれば、人間が大きな進化を
果たすことができるはずー。
しかしー
人間は愚かだ。
この力を手にしたものは、
闇に飲まれ、争い、破滅する。
その、繰り返しー。
”いいぞ…もっと、争え…”
今日も、カードで誰かが傷ついているー
そんな世界を見つめながら
緑色の生命体は、静かに微笑んだー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
前に書こうとしたネタで一度お蔵入りに
していたのですが、せっかくなので書いてみました!
次は一風変わったお話(リアルデュエリストの!)を
用意する予定デスー!
コメント
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今回は他者を変えるのは控えめなんですねぇ
続きが楽しみだなぁ
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> 今回は他者を変えるのは控えめなんですねぇ
> 続きが楽しみだなぁ
ありがとうございます~!
次はちょっと変わったお話を
書きたいところデス~!
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>それは、誤作動。
誤作動(マルファンクション)がなぜここで?と思ってしまった…
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> >それは、誤作動。
> 誤作動(マルファンクション)がなぜここで?と思ってしまった…
マルファンクション…!
ありましたネ~笑