<憑依>怨念の目③~相談~(完)

いじめグループの女子は残りふたり。

怨霊と化した桃子は、
残りの2人への復讐を進めて行くー。

その先に待つ結末は…?

--------------------—

「だいじょうぶ…?」

桃子がまだ生きている頃ー。

桃子には支えになってくれる存在が居た。

クラスメイトたちはー
亜希奈たちにいじめの標的にされないように、
桃子がいじめられ始めてから、桃子を
避けるようになった。

けれどー
彼女は違った。

白石 穂乃花ー。
優しく、可愛らしい女子生徒。

彼女だけは、桃子のことを気にかけてくれた。

「うん。ありがとうー」

昼休みに、
中庭の木の下のベンチで
一人、落ち込んでいた桃子のことを
心配して、穂乃花はやってきたー。

「--何か、困ったことがあったら、何でも相談してね?」
穂乃花が優しく微笑む。

「うん…本当に、ありがとう」
桃子は、心から穂乃花に感謝したー。

穂乃花を巻き込むわけにはいかないー。
だから、桃子は、”助けて”とは言わなかった。

けれどー
”困ったことがあったら何でも相談して”と
そう、声をかけてくれるだけでも
嬉しかったし、十分、心の支えになったー

それからもー
穂乃花は桃子のことを気にかけてくれていたー

亜希奈、芙美、奈々枝の3人から
いじめを受けてもー。

しかし、
ある日ー

「--あはははははは!そんなこと言ってたの!?」
奈々枝が笑う。

「ふふふ…”わたし、何も悪い事してないのに”って
 涙流してたよ」

聞き覚えのある声が聞こえるー

廊下の影から桃子は
その会話を覗くー。

そこには、穂乃花の姿があった。

「そういえばさ、なんであんたは
 桃子の相談に乗ってあげてるの?」
奈々枝が言うと、
穂乃花は笑った

「だって…面白いんだもん!
 困っている人に手を差し伸べるごっこ!」

穂乃花はクスクスと笑うー

桃子に見せたことのない、悪い顔ー

「---!!」
桃子は、唯一の心の支えを失ったー

そのあとに知ったことだったがー
穂乃花は八方美人タイプの女子だったー。

亜希奈たちとも仲が良くー
彼氏も次から次へと取り換えているという噂もあった。

「---穂乃花ちゃん」

ある日ー
桃子はいつものように相談に乗ってくれている穂乃花に
聞いてしまった。

「---わたしのこと…遊んでるの?」

とー。

穂乃花はその言葉を聞くと、にこりと笑って微笑んだ。

「---ふふふ
 桃子ちゃんも亜希奈ちゃんたちも、
 他のみんなも、み~んな、わたしのおもちゃなんだよ」

と…。

穂乃花は、その時その時、近くにいる人間と
”仲良し”のフリをして、
他人の不幸を喜ぶ、邪悪な少女だったー

返事を返せない桃子に向かって
穂乃花は微笑む。

「何かあったら、相談してね♪」

この期に及んでまだ、
穂乃花は”桃子に手を差し伸べるクラスメイト”を
演じていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--あれ?奈々枝ちゃん、今日はもう帰るの?」

放課後ー
穂乃花が、奈々枝に声をかける。

「う…うん…」
奈々枝はいつも美術部の副部長として
美術室に放課後は行く。

しかし、
今日はまっすぐ帰ろうとしていた。

「---ふ~ん、また明日ね~!」
穂乃花が微笑む。

生前の桃子に向けていた笑顔と、
同じ笑顔。

「--(助けて!)」
奈々枝は叫ぼうとした。

奈々枝はー
桃子の怨霊に憑依されているー

”今日の放課後、車に轢かれて自殺しようか”

桃子に、そう告げられている。
奈々枝は、恐怖していたー

間もなく自分はー
亜希奈や芙美と同じようにー

”そんなに助けを求めたいならー
 チャンスをあげる”

桃子は、微笑んだー

「--助けて!」
奈々枝の口が自由を取り戻す。

その言葉を聞いた穂乃花が立ち止まる。

「え?」
穂乃花は薄ら笑いを浮かべたまま、
奈々枝の方を見た。

「--!?」
奈々枝は、自分で驚くー

さっきまで、
周囲に助けを求めようとすると、
憑依している桃子に身体の自由を奪われて
助けを求めることができなかった。

なのに、なぜー?

「--助けて…って?」
穂乃花が奈々枝の方を見て不思議そうな顔をする。

「--わ、、わたし…桃子に憑依されてるの!
 このままじゃ、わたし、、自殺させられちゃう!」

奈々枝は叫んだ。

穂乃花が信じてくれるかは分からない。

けれどー。
亜希奈と芙美が立て続けに自殺している状況なら、
穂乃花は助けてくれるー

そう思った。

「--クス」
穂乃花が笑う。

「--ほ、穂乃花…」
奈々枝は、穂乃花の笑みに、嫌な予感を覚える。

「---いじめていた奈々枝ちゃんが
 悪いんでしょ?」

とー。

「--ちょ、、ほ、穂乃花…!?」
奈々枝はすがるような声で穂乃花に
助けを求める。

「ーーーふふふ、また明日ね」

穂乃花は笑うと、
そのまま立ち去ってしまったー

”桃子に憑依されている”という言葉を
信じてくれなかったのか―

それとも
”分かった上で、見捨てられたのか”

奈々枝は、絶望の表情を浮かべた。

”ほら、穂乃花ちゃんってそういう子だもん”
桃子が、絶望する奈々枝に告げた。

そしてー

”さ、自殺しに行きましょ”
桃子が冷たい声で告げる。

「---あ…」
奈々枝は無表情になって、
学校から外に出たー

”以前、桃子を突き飛ばそうとした交差点”の方に
向かっていく奈々枝。

奈々枝は目から涙をこぼすー

もう、自殺を避けることはできないー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----…」
学校に残っていた穂乃花は微笑む。

「---」
亜希奈、芙美が立て続けに自殺した。

そしてー
さっきの奈々枝の言葉ー

「--う~ん、呪いかな」
穂乃花は少しだけ微笑む。

いじめをする方が悪いー。
自分は、桃子に救いの手を差し伸べたー
亜希奈と芙美と奈々枝は、そうではなかったー
だから、呪われるのよー

穂乃花はそう思いながら、笑っていた。

「クラスメイトが次々と自殺とか…
 なんだか、エキサイティング」

穂乃花はこの状況を楽しんでいたー

そしてー
”自分は桃子に手を差し伸べていたから
 桃子に恨まれていないー”

と、本気でそう思っていたー

穂乃花は、自分の都合の良いように
何でも解釈する少女だったー

「♪~」
ご機嫌そうに廊下を歩く穂乃花。

「あ~、そうだ!
 そろそろ今の彼氏と別れよっと!飽きたし!」
穂乃花はそう言って、スマホを取りだすと
”今の彼氏”に別れを告げるのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いや…だ…」
奈々枝が目から涙をこぼすー

前に桃子を突き飛ばそうとした交差点に奈々枝は居る。

”--ふふふ…あんた、自分が可愛いと思ってるのよね?”
桃子が言う。

返事をしない奈々枝。

桃子はさらに続けた
”みんなに見てほしいのよね?
 だったら最後に、大注目、集めさせてあげる”

桃子はそう言うと、
奈々枝の身体を完全に乗っ取って叫んだ。

「-みんな、可愛いわたしを見て~!!」
とー。

大通りで服を脱ぎ捨てる奈々枝。

”やめて…やめて!”

心の中で泣き叫ぶ奈々枝の声を聞いて
桃子は微笑んだ。

「わたしが何度何度何度、”やめて”って
 言っても、あんたたちはやめてくれなかった」

低く、冷たい声。

”ひっ…”

奈々枝は自分の死が回避
できないことを悟り、悲鳴をあげた。

そしてー
奈々枝は、モデル歩きをしながら
交差点に入っていきー

そのままーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「---…ただいま~」
穂乃花が帰宅する。

穂乃花の元に友達からのLINEが入る。

”ねぇねぇ、奈々枝が交通事故で死んだって聞いた?”

”なんか、自分から車に突っ込んで…”

「---」
穂乃花はそれを見ながら微笑んだ。

「あ~あ…
 いじめばかりしてるからよ」

とー。

穂乃花は亜希奈・芙美・奈々枝の3人とも
親しかった。

だがー
それはあくまでも表面上だけ。

いじめられていた桃子ともそう。

表面上だけ。

穂乃花は、表面上だけ繕うことで生きている。

それはー

”バカ野郎!”
自宅の1階から、”義理の父”の怒声が聞こえる。

母は、本当の父と離婚して
再婚したー。
再婚した男は、暴力夫だった。

穂乃花も、小さい頃は、よく暴力を振るわれた。

そんな父から身を守るため、
穂乃花は自然と”表面上親しくする”
術を身に着けたのだったー

今では、穂乃花が義理の父から
殴られることはない。

何故ならー
穂乃花は”気に入られている”からだー。

「ふふふ…」
穂乃花は微笑む。

桃子ちゃんの呪いで
あの3人は死んだー。

自分のように、桃子ちゃんとも仲良く
しておかないからそうなるのだとー。

「--!?」
ふと、穂乃花が振り返ると、
そこには”赤い目”が浮かび上がっていた。

「---あれ?」
穂乃花は笑う。

「もしかして、桃子ちゃん?」

ーーと。

桃子は、穂乃花の反応が
あっさりしていることに少し驚きながらも呟いた。

”そう、桃子よー”
とー。

これで復讐は終わり。
いじめ女子は4人ー
穂乃花が最後のひとり。

「---別れの挨拶?」
穂乃花が呟く。

「--ごめんね。助けてあげられなくて。」
穂乃花は悲しそうに呟く。

その様子が、桃子をさらに苛立たせた―

穂乃花はー
”微塵も自分が悪いと思っていない”

だからこそ、
今、この状況にもまったく怯えが無い。

亜希奈たちへの復讐を終えた
桃子が、”生前、手を差し伸べていた”
穂乃花に、別れの言葉とお礼を告げに来た、と
そう解釈しているのだ。

”違うー”
桃子が呟いた。

「え?」
穂乃花が微笑む。

”あんたで最後のひとりよ”

「--ー!?」
穂乃花が信じられないという表情を浮かべる。

「な、、…わ、、わたしは、桃子ちゃんを 
 助けようとしたよね?
 わたしは…!?」

とたんに動揺する穂乃花。

”ゆるさない ゆるさない ゆるさない”

桃子の憎悪が爆発した。

目が真っ赤に光る。

そのまま、桃子は、穂乃花の方に近づきー
そしてー

「きゃああああああっ!?」
穂乃花が悲鳴を上げる。

”あんたの身体、貰うわ”
桃子が呟いた。

「ひっ…!?や、やめて…?」
穂乃花が必死に助けを求める。

”自分も自殺させられてしまう?”

穂乃花の脳裏にそんな恐怖がよぎった。
しかし…

”--何か、困ったことがあったら、何でも相談してね?
 って…言ってくれたよね?”

桃子が呟く。

「---ひっ!?!?
 う、、うん、い、、言ったよ!」
穂乃花が笑いながら慌てて言う。

”じゃあさ…
 わたし、身体無くなっちゃって
 困ってるんだ~…”

桃子が恨み募る声で呟く。

「---!!」
穂乃花は恐怖を浮かべて、
返事することもできない

”あんたの身体、貰うね”

桃花がクスクスと笑いながら呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

復讐はおわったー
いじめ女子たちの全てを奪ってやったー

亜希奈もー
芙美もー
奈々枝もー
もういない。

そして、穂乃花は…

翌日ー

「おはよ~」
学校の教室ではいつも通りの
光景が広がっている。

亜希奈ー
芙美ー
奈々枝の3人が自殺した。

学校は対応に追われている。

けれども、授業はいつも通り。

「--おはよう」

穂乃花が教室に入ってくる。

何人かのクラスメイトと会話を交わして
穂乃花は自分の座席へと着席した。

「ふふふ…」
穂乃花は小さく微笑む。

「今日からわたしは、穂乃花…」

穂乃花は、そう呟くと
目を赤く光らせるのだった…。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ダークなお話でした~
最初に内容を考えたときは、
夏なのでホラー!と思っていたのですが、
最終的には、ホラー要素はあまりなくなりました!笑

お読み下さりありがとうございました!!

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憑依<怨念の目>

コメント

  1. 通りすがりの より:

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    いつも見てます!
    以前の家族シャッフルの中にあった、男の子に女性が憑依するまたは、男の子になった女性視点の物語をリクエストしたいです!

  2. 追記 より:

    SECRET: 0
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    男の子になった女性じゃなくて、男の子と入れ替わった女性視点の物語でした!誤字すみません!

  3. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > いつも見てます!
    > 以前の家族シャッフルの中にあった、男の子に女性が憑依するまたは、男の子になった女性視点の物語をリクエストしたいです!

    ありがとうございます~☆!
    リクエスト受け取りしました~!
    家族シャッフルの番外編で書くか
    別のお話でそういうお話を書くか、
    どっちにするか、まだ考え中ですが、
    楽しみに待っててくださいネー!

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 男の子になった女性じゃなくて、男の子と入れ替わった女性視点の物語でした!誤字すみません!

    報告ありがとうございます~☆!

  5. 通りすがりの より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    リクエストにお答えいただき光栄です!よろしくお願いしますm(_ _)m

  6. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > リクエストにお答えいただき光栄です!よろしくお願いしますm(_ _)m

    こちらこそありがとうございます~!
    書くまでに時間がこともあるので
    気長にお待ちくださいネ~☆!