<憑依>お前の妹は俺のもの③~絆~(完)

奪われてしまった妹ー。

失意の日々を送る兄の京悟。

晃から、妹の春奈を取り戻すことはできるのか…。

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「---春奈…」
悔しそうな形相でスマホを見つめる京悟。

妹の春奈が、奪われてしまった。

同じ大学の親友・晃が憑依薬を使って、
妹の春奈を奪ってしまったのだ。

”大学辞めちゃいました~イェイ”

春奈のツイッターには、
メイド服姿で嬉しそうにポーズを決める
写真と共にそうツイートされていた。

「--くそっ…」
春奈は夢に向かって、大学でも日々頑張っていた。

そんな大学を急に辞めるなんて
絶対に春奈の意思ではないー

春奈のツイッターを見つめながら
京悟は怒りのあまり、スマホを
そのまま粉砕しそうになった。

エッチな写真を次々とアップしている春奈。

”大切なお兄ちゃんとエッチしました~”と
嬉しそうに微笑む写真もUPされている。

「---くそっ…くそっ…」
京悟は、どうすることもできない己の無力さを
呪うと同時に、どうにか春奈を助けなくてはならない、と
そう思ったー。

「---……」
京悟は、休日を利用して、
あることを決意していたー。

それは、地方にいる両親に相談することだー。
京悟も、妹の春奈も、大学入学と同時に独立して
それぞれ一人暮らしをしている。

だからー
両親はまだ春奈の豹変を知らない。

「---…そうだ…父さんと母さんの力を借りるしかない」

両親は信じてくれるだろうかー。

信じてくれたところで何かできるだろうかー。

けれどー。
やるしかない。

何もせずに指をくわえてみていれば
春奈が苦しむだけだ。

「---よし」
京悟は、明日からの休日で両親に
会いに行く決意をしていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

実家に帰ってきた京悟は、
久しぶりの実家を「懐かしいなぁ」などと思いながら
中に入る。

するとー

「--!!!」

そこには、春奈がいた。

「あれ?京悟も来たの?」
母が笑う。

「--お!珍しいな、兄と妹揃って」
父親も笑う。

「え…」
京悟は唖然とした。
どうして、春奈がここにいるんだ?

とー。

「--ふふふ…来ると思ってたわ」
春奈が笑う。

「---は、、春奈…?」
京悟は、一瞬、春奈が正気に戻ったのかと思った。

しかしー
すぐに違うと気付いた。

春奈の笑みを見て、違うと気付いたー

いつものような優しい笑みではなく、
邪悪な笑みー。

「--くくくくく…あはははははははは!」
春奈が突然大声で笑いはじめる。

「は、春奈?」
母親と父親が困惑している。

「---ひひひひひ…」
そこまで言うと、春奈が突然ピクピクと痙攣し始めて
マリオネットのように不気味な動きをしながら呟き始めた。

「--京悟~…
 お前が、実家の両親に助けを求めることぐらい…」

春奈が操り人形のように動きながら、
棒読みのように呟き始める。

「---は、、春奈!」
京悟は叫ぶ。

まるで、遠隔操作されているかのように
春奈は、”晃の言葉”を喋らされていた。

「俺には分かってるんだよ~」
春奈がブツブツと呟く。

「--お、、おい!?どうしたんだ!?」
父親が混乱しているー。

「--ふふふ…
 今、春奈は操り人形だー。
 憑依させた俺の魂を通じて、
 こうやって、いつでも好きなように操れる…」

春奈は口から涎をこぼしながら
笑っている。

「---や、、やめろ!これ以上…!」
京悟はそこまで叫んで、
母と父の方を見る。

「--父さん!母さん!俺が今日来たのは、
 このことを伝えに来たんだ!」

京悟はとっさに叫んだ。

ちょうどいいー。
憑依されている春奈の姿を見せれば、
両親も納得してくれるはずだー。

「--ど、どういうこと!?」
母が聞き返す。

「お、俺の大学の親友が、春奈を操ってるんだ!
 信じられないと思うけど、本当なんだ!」

京悟の言葉に
母も父も春奈の方を見る。

「--ぴんぽ~ん!
 わたし、身体も心も乗っ取られちゃった~!」

笑いながら言う春奈。

身体はヒクヒクと痙攣している。

「な…なんだと!」
父が怒りの形相で春奈を見つめる。

しかし、春奈は両親の方を見て、笑う。

「---くくく…
 俺が操ってなくても、春奈は、もう俺のものだぜ…」

そこまで言うと、春奈がビクンと震えるー

そしてー
操り人形のような状態から解放されると、
春奈は目を開いたー

「---くふふ…わたし…
 素敵な人の妹になったの!」

両親の方を見て笑う春奈。

「---な、何を言ってるんだ!」
「春奈!しっかりして!」
同時に叫ぶ両親。

しかし、春奈はケラケラと笑うだけで
両親の言葉もまるで届いていない。

「---ねぇ、あんたさぁ~」
春奈が京悟の方を見て、
京悟を睨みつけた。

「これ以上余計なことするなって
 お兄ちゃんも言ってたよね?」

春奈の脅すような口調に、
京悟は一瞬気圧されてしまうも、
すぐに言いかえした。

「--あ、あんなやつの言うことに
 俺は屈しない…!
 春奈…!お前はあいつに好き放題されているだけなんだ!
 目を覚ませ!」

京悟が言うと
春奈は笑った。

「--お兄ちゃんがね、
 あんたの実家、滅茶苦茶にして来いって言ってたの!」

その言葉に京悟は一瞬、何を意味しているか分からず
困惑したー

「---!!」

春奈が机の上に並べられていた食器を
勢いよく投げ始めた。

「春奈!」
京悟が叫ぶ。

「この家、めっちゃくちゃにして来いって…!
 お兄ちゃんが言ってたの!
 きゃははははははは!」

春奈が家中のものを投げたり、
なぎ倒したりしながら、家を滅茶苦茶にしていく。

「--お!おい!やめろ!」
京悟が叫ぶ。

「--お兄ちゃんの邪魔をしたら
 どうなるか思い知らせてあげる!

 きゃははははは!」

ミニスカート姿の春奈が家中で暴れまわる。

止めようとした母親をグーで殴りつける春奈。

「--け、警察を!」
父が警察を呼ぼうとする。

しかしー

「いいのかなぁ?」
春奈がニヤリと笑う。

「--逮捕されるのは、わたしだよ?
 んふふふふふふっ♡」

春奈が笑いながら、
さらに家中のものを破壊していく。

その姿は可愛らしい妹などではなく、
完全に狂った女だったー。

「--あは、あはははははははははは!!!」

破壊の限りを尽くす春奈。

母は何も出来ず泣きじゃくっている。
父は、ただただうろたえている。

「---卑怯者!」
京悟は叫んだ。

「--は?」
食器棚の食器を割っていた春奈が不快そうに振り返る。

「---春奈を操って、こんなことをさせて
 お前は安全な場所で高みの見物か!?」

京悟が叫ぶー

春奈を通してこの光景を見ているであろう
晃に向かってー。

「---くふっ…くくく…くふふふふふふふ…」
春奈がニヤニヤと笑っている。

「---お兄ちゃんのことを悪く言うなんて、
 許せない」

春奈はそう言うと、家の中を乱暴に歩き回り、
花瓶や色々なものを破壊し続けるー。

「やめて!」
春奈を抑えようとする母親。

「邪魔よ!」
春奈は母親を突き飛ばした。

春奈は髪を振り乱し
なりふり構わず家中のものを破壊する。

花瓶を割った時に破片で怪我をした春奈。

しかし、痛みを全く感じていないのか
自分の手をイヤらしく舐めるだけで
本人はまるで気にしていない。

「もう…やめろ!」
京悟は春奈を抱きしめた。

「--邪魔!邪魔よ!」
春奈が大声で怒鳴る。

髪がボサボサになり、
鬼のような形相を浮かべている春奈は
まるで別人のようだった。

母は泣きじゃくり、父はそれを落ち着かせようとしている。

「--晃!お前は春奈を何だと思っているんだ!」
京悟は叫ぶ。

晃のやつが聞いているかは分からない。
いや、きっと聞いている。

「--離せ離せ離せ離せぇ~!」
春奈がもがく。

しかし、京悟は春奈を抱きしめたまま
春奈が動けないようにしているー

そして、続けた。

「晃!春奈にこんなことさせて満足か?
 これじゃ妹でもなんでもない!
 お前は、春奈を妹としてなんか見ていない!
 道具として弄んでるだけだ!」

京悟は必死に叫ぶ。

「妹にこんなことさせて楽しいか?
 なぁ、おい!!
 少しは春奈の気持ちを考えたことはあるのか!?」

京悟はこんなことを言っても
晃が改心してくれるとは思っていないー

けどー
もう、こうするしかなかった。
春奈は完全に操られている。

「--黙れ!だまれぇぇ!」
春奈が暴れる。

「---俺だってなぁ!妹が欲しかったんだよ!」
春奈が突然、晃に完全に憑依されて叫び始めた。

「お前がいつもいつも妹自慢するから!
 俺は…俺は!」

春奈が怒りの形相で
声がかれてしまいそうな大声を出しながら暴れる。

「--お前が嫌な気持ちをしたなら謝る!
 もう二度としない!
 俺には何をしたって構わない!
 でも春奈は無関係だ!
 見てみろよ!春奈の身体、そんなボロボロにして…!
 お前はそれで満足か?」

京悟がそう言うと、
春奈は自分の身体を見つめた。

手からは血が流れー
服は乱れ、
息がハァハァと上がっている。

「--俺を憎むなら直接、俺に勝負を挑んで来いよ!
 
 何で春奈を巻き込むんだ!!この卑怯者!」

京悟が大声で叫んだ。

「-----」
しばらくの沈黙。

そしてー

「もういい…」

春奈はそう呟くと、
「返してやるよ…」
と続けて、その場で意識を失った…。

「は、、春奈!」
倒れる春奈を抱える京悟。

しばらくするとー
春奈は目を覚ました

「お兄ちゃん…」
春奈は目から涙をこぼしているー

春奈がー
春奈が戻って来てくれたー

「春奈…」
京悟は嬉しそうに春奈を抱きしめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後

「--本当に、ごめんね。お兄ちゃん」

春奈は京悟の家に
再び遊びに来ていた。

「いや、大丈夫大丈夫。
 春奈が悪いんじゃないんだし」

京悟がそう言うと、
春奈は申し訳なさそうに微笑んだー

晃に、説得が通じたのだろうかー。

あれからー
春奈はすっかり元通りー

晃とは大学で顔を合わせたが、
晃は頭を無言で下げ、
もう、京悟には近づいてこなかった。

「--あ」
春奈がカレンダーを見つめる。

「お兄ちゃんの誕生日!もうすぐだね!」
春奈が、あと3週間ちょっとに迫った
京悟の誕生日を指さす。

「ん?あぁ~…まぁ、昔ほどわくわくはないけどな」
京悟が笑いながら言うと、
春奈はニコニコしながら「しっかりお祝いしなくちゃね!」

と微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

半月後ー

春奈の手の怪我も治り、
もう、憑依騒動もすっかり落ち着いた頃ー
京悟は春奈と電話をしていたー

”あ、お兄ちゃん、来週の誕生日!
 わたし、お兄ちゃんの家に行くからね!”

春奈が言う。

「--はは、なんだなんだ、
 今年はやけに誕生日を気にしてくれるな~」

京悟が笑いながら言うと
春奈も電話先で笑った。

”色々迷惑かけちゃったし、
 お詫びの意味も込めてプレゼント用意してるもん~”

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後。

「-----」

大学。

晃は、ふとカレンダーを見た。
今日は、京悟は大学には来ていない。

いやーーー

”もう、永遠に来ない”

今日は、京悟の誕生日ー

「---そんなに、
 妹が好きならーーー」

晃はそこまで呟いて笑みを浮かべたー

春奈を望み通り元通りにしてやったー

”ちょっとだけ”
細工をしたがなー。

”誕生日プレゼントに
 兄の命を奪うー”

細工を…な

「ククク…
 見たかったよ…
 大好きな妹に襲われるお前の顔」

晃はそう呟くと、
大学構内を静かに歩き始めたー

春奈にはー
兄の命を奪うことが、
兄への最高のプレゼントだと、刻み付けたー。

春奈は、何の疑問も抱かず、
兄を殺すだろうー
それが、兄に喜んでもらえることだと、信じてー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピンポーン

「お、来た来た!」

家に春奈がやってきた。

今日は、誕生日ー
妹の春奈がお祝いしてくれるー

京悟は、春奈を家の中に
迎え入れるため、
玄関の扉を開けるのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

妹が奪われちゃう系?のお話でした~!
お読み下さりありがとうございました!

続きは~…
ご想像にお任せデス!

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
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    一見改心したように見えて実はそうでもなかったというオチですね

    最愛の妹に殺される兄よりも操られて兄を殺して犯罪者として逮捕されてしまうであろう春菜ちゃんの方が可哀想です。

    親友相手にここまでやるなんて、思い切り逆らわれた上に卑怯者呼ばわりされたのでキレちゃったんですかね?

    あと、晃は妹が欲しいという欲望は変わらずありそうなので、春菜ちゃんが兄を殺した後、他の好みの女の子に憑依して妹を手に入れようとしそうです。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!★

    このあとは地獄のような光景が広がってしまいそうな
    終わり方でしたネ~…!

    彼はこのあともエスカレートして、誰かに憑依しそうデス…!