<憑依>わたしとあたし③~未来~(完)

大好きな彼氏と一緒にいたいー

その、強い想いがー
命を落とした彼女を生きながらえさせたー。

ギャル・真希に憑依した真彩ー。

しかし、真彩は真希の身体の影響を受け、
次第に飲み込まれていく…。

最後に真彩が選ぶ道は…?

-------------------------–

夕焼けが眩しいビルの屋上ー。

知る人の少ない、
密かなデートスポットとなっている
その場所で、真希は、”2人”の特着を待っていたー

「--あたし…何してるんだろ」
真希は、夕日を見ながら笑うー

昨日の夜ー
彼氏の康史と男友達の金吾を
呼び出して、今日、ここで自分は二人の到着を
待っているー。

「----…なんだか…」
真希は悲しそうな表情を浮かべるー

派手な茶髪ー
派手な服装ー
派手なミニスカート
派手なメイクー

真希はすっかりギャルに逆戻りしていたー。

けれどー
”大切ななにか”を自分は
忘れている気がするー。

「-----…お待たせ」

先に到着したのは康史だった。

「---康史」
真希は振り返る。

康史と付き合い始めたのはどうしてだっただろうかー。
康史のことを好きになったのは何故だっただろうかー。

付き合い始めてから、そう長くないはずなのにー
前から付き合っていた感じがするのは、
何故だろうかー。

「---……あたし…」
真希は、何を言おうとしたのかも忘れて
目に涙を浮かべるー。

「---…真希…」
康史は、悲しそうな目で真希を見つめたー

もうー
真彩はいなくなってしまったのかもしれないー

康史はそう思っていたー。
日に日に変わっていたノートの筆跡が、
完全にギャルのものー
そう、真希のものにここ数日、戻っていたからだ。

康史は今日、ある決断をして
ここに来ていたー

自分が真希の告白を受け入れた理由ー

それはー
”真希に真彩のことを重ねてみていたからー”

だからー

「---……真希……いや、、、真彩…」
康史は勇気を振り絞って、真希の方を
真剣な表情で見て呟いた。

そして、はっきりとした口調で続けたー

「---真彩なんだろ??…」

とー。

「---…!!」
真希の瞳が震えるー

「や、、やすし……あ、、あたし…わたし…」

自分が、失いかけている
大切なモノを思い出しそうになる真希ー

あと一歩―
何か、
何か、大事なことー

「----おい…」

金髪男の金吾が屋上にやってきた。

「どういうことだ?」
金吾は殺気だっている。

当たり前だー
金吾は、康史のことを知らない。

だからー
今の状況が浮気に見えていても
仕方がない。

「き、、金吾…ち、違うの・・・これは!」
真希が慌てて叫ぶ。

「テメェ…!」
金吾は康史の方に近づいて行き、
康史の胸倉をつかむ。

金吾は、真希と彼氏彼女の関係ではない。
だがー、以前から真希のことは好きだったー

乱暴で、どうしようもない部分を持つ金吾。

それでもー

「---そういうことか」
康史を睨んでいた金吾は、
康史から手を離して、
首を振った。

「--俺と決別しようってか。
 確かに、俺はお前の彼氏じゃないもんな。

 こいつ、お前の彼氏なんだろ?
 じゃあ好きにしろよ。
 俺はもう、お前になんか2度と…」

金吾が吐き捨てるようにして言う。

真希はどうしていいか分からず、
動揺しているー

「あ、、あたしは金吾のことが好きー
 で、、、でも、、わたしは康史のことが好きー…」

そう叫ぶと、真希は、目に涙を浮かべる。

康史は、そんな真希の方を悲しそうな
表情で見つめるー。

「--…おい!お前、それって浮気じゃねぇか!」
金吾が怒りの形相で叫ぶ。

「--違う!わたしは、あたしは、、2人が…
 あぁぁ……あああああ…」
真希は、訳が分からなくなり、
頭を抱えて蹲ってしまう。

あたしが好きなのは金吾のはずー
どうして、康史なんかをー

でも、、どうしてー?

「テメェ!俺をからかってるのか!」
真希の方に近づいて行く金吾。

「---」
そんな金吾の前に、康史は無言で
立ちはだかった。

喧嘩では恐らく絶対に勝てないー
だが、康史は臆することはなかった。

「--あぁ?邪魔すんじゃね…」
金吾は、そう言いかけて黙り込む。

康史の強い決意の眼差しを見て
金吾は、気圧された。

「--すぐ終わるから、黙って見ててくれないか」
康史はそれだけ言うと、
頭を抱えている真希の方に近づいて行った。

そしてー
真希を掴むと、
そのまま真希を抱きしめた。

「---真彩…真彩なんだろ?」
康史が優しく語りかける。

「---や、、康史…」
真希に憑依している真彩は、
ようやく思い出したー

自分が真彩であることをー。

「---……わたし…… そう……
 わたし…真彩だよ…」

目からボロボロと涙をこぼしながら言う真希ー。

「…だよな………」
康史はそう言うと、真希を強く抱きしめた。

金吾は訳が分からず、2人の方を見つめている。

「---ごめんな…
 あの時、、俺が守ってやれなくて…」

康史は悲しそうに言う。

あの日ー
デートの日ー
暴走車から自分を守ってくれた真彩ー
康史は何もすることができなかったー

「ううん…いいの」
真希は悲しそうに呟く。

「--わたしね……
 康史と別れたくない、ってばっかり思ってたらー
 気づいたらーー
 あの時、現場にいた、この子に憑依しちゃったみたいなの…
 どうしてか、、どうしてか、わからないけど…」

真希は、全てを語ったー
自分が死んだ直後に、真希に憑依してしまったことー
真希を自分と同じような風貌に近づけて、康史に近づいたことー
けれど、最近は、自分がだんだん薄れていることー。

「---康史…わたし…もう…」
真希が悲しそうに呟く。

「---怖いよ…」
真希が目から涙をこぼすー

自分が、自分でなくなっていくー
自分が、真希になっていくーー

ーー今度こそ、本当にー”死”ぬー?

「---真彩」
康史は真希を抱きしめた。

「---別れよう」
康史が呟く。

「え…」
真希の目が震えるー。

そうだー
自分もー
”それ”を言いに来たんだー

自分は、真彩じゃないー
だから、別れようーと…。

真彩は、それを思い出して、
康史の提案をすんなり受け入れたー

「…俺、、真希…君のことを、全く見ていなかったー
 真彩の面影を感じて、、
 君と、、付き合っていただけだったー…。

 ごめん… 
 だから、俺はきみとは付き合えない。
 俺には、真彩しか…いない」

康史は、真希に語りかけるようにして言った。

「--わ…わたし……あたし…」
真彩は、自分が薄れて行くのを感じたー

もう、思いだせないかもしれないー
いや、消えるのかもしれないー

「---…康史…」
真彩は、真彩としての自分を忘れそうに
なりながら、康史の方を見つめた。

康史は、そんな真希を力強く抱きしめた。

「真彩…
 必ず会いに行くからー」

「--え…?」

康史は悲しそうな表情で真希を見るー。

夕日に包まれた屋上ー
気付くと、辺り一面が、真っ白な世界に
二人はいたー。

康史と、、そこには真彩の姿があった。

「---何十年…待たせちゃうか分からないけど、、
 俺、、必ず真彩に会いに行くからー…」

その言葉に、真彩は優しく、微笑んで頷いたー。

「---俺には、、真彩しかいないから…」
康史が目から涙をこぼして
そう呟く…

「---康史…
 いっしょに、、いられなくて…ごめんね…」

真彩が悲しそうに呟くー。

「---」
康史はそんな真彩を見て、
真彩を今一度抱きしめたー

「いいさ…
 ちょっとの間でも、俺に会いに来てくれて
 ありがとうー。

 でも…その子の身体は、その子のものだからー」

その言葉に、真彩は頷いた。

「うんー。」

とー。

光に飲まれるようにして、消えて行く真彩の姿。

「--真彩!ありがとう…」
康史は、真彩に向かって頭を下げた。

そんな康史を見ながら真彩は微笑む。

「康史ー…
 わたし、、ちゃんと待ってるね…
 あっちの世界のデートスポット見つけて…
 待ってる…」

真彩はそれだけ言うと、
にっこりとほほ笑んでー
光の雫になって、消えてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「--真彩…」

夕暮れの屋上ー
康史は、真希のことをまだ抱きしめていたー

「…あたし……」
真希が呟く。

「----」
康史は、無言で微笑むと、真希の頭を優しく撫でて
真希から手を離した。

そして、
金吾の方に近づいて行く。

「---終わったよ」
康史が呟く。

金吾は何て言うだろうかー。
殴られるかもしれない。

康史はそう思った。

けれどー
金吾は康史の肩に手を置いた。

「----……」

金吾は何も言わずに頷いた。

どう意味かは分からなかった。

”真希のことは任せろ”
そう意味にも感じた。

康史は、金吾の方を見て、
金吾を信じることにして、
真希のことは、金吾に託すことに決めるー

「---大事にしてやれよ」
康史がそう言うと、
金吾は黙ってうなずいた。

「--あたし、なんで、みんなをここに呼んだんだっけ?」
真希が笑いながら立ち上がる。

「きゃはははは!忘れちゃった~!」
大声で笑いだす真希。

完全にギャルの真希に戻っているー

康史は振り返るー。

真希に憑依した真彩が、真希の身体に
影響されて真希になってしまったのかー

それとも憑依していた真彩が消えて
元の、真希本人に戻ったのかー

それは、もう分からないー
確認する方法がないー

けれどー

「---じゃあな」
康史は小声でそう呟いた。

どちらにせよー
もう、真彩はいない。
真希は真希、
真彩は真彩だ。

康史は、そう思いながら屋上を後にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからー
真希とは接点が無くなり、
話をすることも無くなった。

時々大学構内で真希のことを見かける。

いつも金吾と仲良しにしていて、
あの二人は正式に付き合い始めたようだった。

時々ー
真希と目が合うことがあるー。
そんなとき、
真希がほんの少しだけ寂しそうな表情を浮かべることがあるー

真彩に憑依されていたころの記憶に影響されているのかー
それとも、真希に成り果ててしまった真彩なのかー

答えは、やはり見つからないー

それからもー
康史が真希と関わることはないままー
康史は大学を卒業し、社会人になったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

休日ー

康史は真彩の墓参りに来ていた。

「康史ー…
 わたし、、ちゃんと待ってるね…
 あっちの世界のデートスポット見つけて…
 待ってる…」

「--何十年かかるか分からないけど、
 必ず会いに行くからな…」

康史は手を合わせながら呟いた。

そして、立ち上がる。

「好きな人を何十年も待たせるなんて、
 俺もダメなやつだな」

苦笑いしながらそう呟いた康史は言う。

「けど…
 真彩に助けてもらったこの命、
 粗末にしたら、真彩に怒られるもんな…。

 だから、俺、一生懸命生きるよ。
 そしてー
 誇れるような人生を送ってー
 真彩に会いにいく」

康史はそこまで言うと、
悲しそうに微笑んだ。

「だからー
 いいデートスポット見つけて
 待っててくれよな…」

康史はふっと笑うと、
真彩の墓に背を向けて
そのまま墓場を後にしたー

何十年ー

この世とあの世ー
超がつくほどの遠距離恋愛だー。

康史は、いつの日か
きっとまた会えると信じて、
自分の人生を一生懸命生きる決意をするのだったー

・・・

・・・・

・・・・・

あれからー
何十年が経っただろうかー。

一面に広がる幻想的な光が見える場所ー。
ファンタジー世界のような、
夢のような空間。

そこに、真彩はいた。

「----」
背後から、足音が聞こえてくる。

真彩は振り返るー

そこにはー
あの時のー

大学時代の姿の康史がいた。

「---康史ー」

やっと来てくれたー

真彩は涙を浮かべるー

そんな真彩を見て、
康史は優しく微笑んだ。

「--おまたせー」

と。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

リクエストを元にした作品でした!
”おまかせ”だった結末はこんな感じにしてみました~☆!

リクエストの原文が知りたい方は
第1話のあとがきに書いてあるので
ぜひご覧ください~!

お読み下さりありがとうございました!!

PR
憑依<わたしとあたし>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    公開していただいてからだいぶ日をあけてしまいすみません。

    素敵なストーリーありがとうございました。

    実は、わたしは『わたしはインテリア』をリクエストしたものでもあるのですが、あの時自分自身でいけると思っていたストーリーをはるかに超えるものを無名様に作っていただき衝撃を受けたので今回はお任せにした次第なのです。

    これからも応援しています。ありがとうございました。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    わわ!ご丁寧にありがとうございます~☆!
    少しでもお楽しみ頂けて嬉しいデス~!

    わたしはインテリア~…!
    ネタがびびっと浮かんできたのを今でも覚えてます~!
    それだけ頂いたリクエストが輝いていたのかもですネ!

    今後も頑張ります☆!