<入れ替わり>君と交わるなんて考えもしなかった①~予想外~

卒業まで、その子とは、縁が無いと思っていたー

しかし、ある日、
”雲の上の存在”でもあった
クラスメイト女子と身体が入れ替わってしまい…?

※ツイッターのフォロワー様
 音調津様(@Tabikorai)との合作デス!
音調津様のPixivでも読めます!)

第1話は音調津様が担当しています!

※本日の小説 
 「他人の身体で飲む酒はうまいか?②(完)」は
 午前中に投稿済みデス!

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女性が苦手、いや苦手な訳じゃないけれど……
う~ん距離感が分からないといった方が正しいのかもしれない。

理由とかはもう覚えてないけど小学生の頃にクラスの女子に
怒られた記憶があったり中学生の時に半ば勢いで告白して
断られたりとそんなどうでもいいことが原因でなんとなく苦手意識のような物を持ち始めたんだと思う。

ーーーー

高校二年生、いい加減高校生活にも慣れ且つ受験の重圧もない
一番楽しいであろう時期、竹沢勇輝(たけざわゆうき)に色恋の噂は無かった、
決して色恋や女性が嫌ではないのだが如何せん縁がない、以上

勇輝は別にそれでもいいと思っていた、
別に不自由してないしまあ羨ましくはあるが
スクールカーストの底辺にいるようなゲーム兼アニメオタクには
彼女はおろか異性との会話すら遠い世界の話だ(別にいじめられてはいない、念のため)

「おっす、今日も帰るか」

「うぃ、帰るか……数学怠かったな……」

と放課後になってだらだらと教科書を片付けていた
勇輝に話しかけてきたのは倉賀野圭介(くらがのけいすけ)、
高校からの仲だが同じ趣味を持つ者同士で気が合ったので
基本的には登下校は一緒だった。

学校から最寄り駅までは歩いて十分と少し街中を歩く
、帰り道圭介とは他愛もない話、
昨日見たアニメの感想だとかゲームの攻略とか
そんな事ばっかり話す内に駅に着くのだが今日は違った。

「げ……忘れ物したわ……一旦学校に戻るわ」

「んぁ?ああ……分かった、駅で時間潰してる」

ペンケースを学校に置いてきてしまった圭介は
一旦学校へ取りに帰る、勇輝は圭介を置いて一人で
帰るのもなんだか申し訳ないので駅ナカの店舗でも
見ようかとほっつき歩いていた矢先、勇輝は見つけた。

「お、すげぇ壁ドンする奴って本当にいるのか……」

と呑気に呟いてしまったがどうも穏やかではないらしい、
人の少ない脇の通路で壁ドンをされている女子は
制服を見るとウチの学校と同じ生徒、というかあの人……

「同じクラスの……たしか折原さん……だっけ」

……この男残念ながら異性との縁が無さすぎて
自分のクラスの女子すらあやふやだった。

それはそうとどうしたもんか、壁ドンをしている
男性は成人してるみたいで正直ガラが死ぬほど悪い、
折原さんはそんな男性に絡まれて困っているようだった。

このまま無視……はできないが正面決戦は余裕で死ねる、
腕っぷしに自信は無い、詰んだ。

悠長に考える暇もないなかふと言葉が頭をよぎる。

ーー特攻するしかなくね?

ーーーー

「あ、あー、おるはら、あれ?折原さんじゃん、
か、かれし……でもないけど……こんなところでなにしてんのー??」

ほぼ棒読みでの乱入、もう死にたい、
折原さんに絡んでた男はあぁん?とこっちを睨む、アカンもう死んだ。

とにかくガラの悪い男の意識は折原さんからこちらに向けられた。

「に、逃げて……!!」

あまり意味は無いだろうがなるべく小さな声で
あっちにいくように身ぶり手振りで伝え折原さんが
反対側に逃げていったのを確認して安堵、
かっこ良くは無いけれど女の子にいいかっこできたかな……
できたなら人生に一片の悔い無し

「あ、勇輝いた……ってなんだこの状況……」

辞世の句(句としての体系は崩壊しているが……)を
詠み終わった辺りで
圭介が偶然勇輝を発見、この時勇輝の脳内BGMは
ロボットアニメメインテーマのサビだった。

「け、圭介、に、逃げるぞ!」

……本当は警察を呼んでとか一緒に取り押さえようとか
言おうとしたはずだったがとにかく結果オーライだった。

ーーーー

「カッコ悪いなぁ俺……」

「大丈夫大丈夫、折原さんなんて綺麗、
というかきらびやかな人に対してそんなことできるなんてさー、
まぁカッコ悪かっただろうけど」

とファストフード店で項垂れる勇輝に対して圭介がケラケラと
笑いながら温かいポテトを齧る、カッコ悪いのは否定しなかった。

「頑張った頑張った、やったことは間違ってないよ、そこは誇っていい」

そんな圭介の言葉が嬉しくちょっと冷めたポテトの味は少ししょっぱかった。

ーーーー

翌日も学校に登校、普段は精々圭介ぐらいしか意識しないが
今日はちょっと違う、昨日のゴタゴタもあったので
折原さんはどうしているかなと目で教室を見回す。

教室の一番後ろ中央の席に彼女はいた。
セミロングの長さにカールがかかったブラウンの髪、
もちろん学校なので指定の制服を着崩して着用、
一歩間違えたらだらしなく見られそうなものだが
彼女の容姿の賜物かとても可愛らしく見えてしまう、
スカートの短さのせいで目のやり場には困るが……

昨日怖い思いをしたしと心配だったが朝から他の女子と
他愛もない会話に花を咲かせていて心配どころか
自分のような日陰者には入る余地も無さそうだなと思った、
一瞬目があったが……まあ特になにもないのですぐに逸らされた。

別にお礼を強要するなんて図々しい話だし彼女からすれば
自分のようなオタクと話すのは嫌かもしれない、勇輝は自分にそう言い聞かせた。

ーーーー

「じゃあまた明日な」

「うぃっす」

乗る路線が違うので学校の最寄り駅で圭介とはお別れ、
あとは一人で電車に乗って降りて歩いて帰るだけだ。

「ん?」

駅ナカのテナントが立ち並ぶ通路を歩いていると
偶然見覚えのある姿を見つけた、まあ見覚えたのは昨日からだけれど……

件の折原さんが駅テナントにて何かを品定めしているようで
友達二人も付き添いにいた。

誰かの誕生日かなにかなのか他の女子と話ながら選んでいる、
興味本意でちょっと聞き耳を立ててみるとお世話になっている方への贈り物らしい、
結構律儀なんだなとそんな印象を抱きながら勇輝はホームに滑り込んできた電車に乗った。

ーーーー

帰宅後は少し授業の復習をするのが日課、だ
いたいキリの良いところで夕食の時間となる。

今日の夕食はパスタと味噌汁、そして白米、
別に美味しいし母恒例の手抜き料理には特に不満は無いのだが
パスタと味噌汁なんて奇妙な組み合わせに疑問を
持たないのだろうかと思案しているとインターフォンが鳴る。

母が直接玄関を開けて応対、いくらかやり取りした後
少し困惑したような表情で母親が勇輝を呼ぶ。

「折原さんって子、知ってる?今来てくれてるんだけれど……」

「え?あ、ああ……知ってるけど……今行く」

まさか折原さんが家まで……?何故……
疑問は尽きないが待たせるわけにもいかないのでさっさと咀嚼をして
飲み込み玄関へと向かった。

「こ、こんばんは……」

女の子の距離感が分からずたじろぐ勇輝、
とりあえず扉を開けたらままもなんなので室内にいれる。

「これ、昨日はありがとう」

と渡されたのは紙袋、
中には透明な瓶が入っておりステンレス製なのか
銀色の蓋がされており中身は色とりどりのマカロンだった。

「う、うん……ど、どういたしまして……かな折原さん」

「優花(ゆうか)、私の名前は優花」 

とほんの少し不満そうな表情

「え、う、うん、優花……さん?」 

「じゃ、私はこれで」

「えぁ、うん、気をつけて、わざわざありがとう」

女の子との距離感が分からず相変わらずの酷い
コミュニケーションで少し自己嫌悪、
彼女が帰った後もしばらくほんのりと香りが漂っていた。 
 
「……どうやって住所割り出したんだろ」

ーーーー

住所の件はあっさりと解決した、
圭介に優花が自宅に来たという事実を伏せてどうやって
住所を割り出したのだろうかと問うと「忘れたの?」と怪訝な顔をされた。

言われて思い出したがクラス替えをした当初にクラスの
誰だったかが皆と親睦を深めるためにとこのご時世にも関わらず住所や
電話番号、果ては家族構成まで記入してきてほしいと紙を手渡してきた。

勇輝としては気が進まなかったが半ば強制だったのでしぶしぶ記入して提出、
後日コピーされて人数分が配られた、優花は恐らくこれを辿ってきたのだろう、
勇輝はそんな紙の存在なんてとうの昔に忘れていた。

今日もチラッと折原さんを確認別に意識をしていると言う訳ではない、
今日も相変わらずバッチリ決まった化粧やら着崩した制服で
他の女子たちと会話に花を咲かせていた。

「まぁ……そんなもんよね」

昨日のは単なるお礼、それ以上でもないしそれ以下でもない
折原さんみたいなキラキラした人とはこれ以降話すことはほぼ無いんだろうな、
と勇輝は自嘲した。

ーーーー

「……そろそろ帰るか」

古典でどうしても分からない部分があり教師に
聞いてそのまま図書室で復習をしていた。

勇輝にとって図書室での勉強はわりと日課で
いつも居残って勉強をしていた、成績の事もあるし。

凝った肩を手で適当に揉みながら
広げていた資料集と教科書を片付ける。 

すっかり時間も遅くなり学校に人の気配はまばら、
最初は少し怖かったがいい加減慣れた。

図書室を出て階段を降りれば玄関まで一直線、
階段を降りていると後ろから走ってくる足音、
タッタッタッという一定のリズムを刻んでいたしかし途中で音が消える、
ふと振り替えるとーー

口元に柔らかい感触、そのまま勇輝は躓いたのか後ろから
飛び込んできた女子生徒とぶつかった。

ーーーー

「っ~……」

気絶はしていない、ただしぶつかったときの痛みで悶絶、
声にならない声を出していた。

「う……あ……だ、大丈夫……?」

ようやく痛みが引てきたので起き上がる、
目の前には同じく悶絶する男子生徒……男子生徒?

確か自分がぶつかったのは女子生徒のはずなのに……
と疑問に思いながら肩にかかる髪を払う

「え……なにこれ……声……」

自らが発した声は柔らかい声色でまるで女性だった、
そして手も細くて柔らかく極めつけは自身の服装だった。

「スカー……ト……」
 
まさか……まさかと、まさかそんなことは無いだろうと言う
最後の希望も目の前の男子生徒が起き上がったことで敢えなく崩れ去った。

「……俺がいる」

ーーーー

「……で、この状況どうするのさ……」

と教室の机に座る勇輝、といっても中身は優花

「ど、どうって言われても……」

漠然とした問いに困り目が泳いでいるのは優花、中身は勇輝だった。

「全く……なんで私が竹沢くんに……」

と大きなため息をつく優花、髪をさわる仕草を
したがあいにく勇輝の髪の毛は長くはないので左手が迷子になっていた。

「入れ替わったなんて言っても
誰も信じてくれないだろうし……お互いの家に帰るしか……」

中身は優花だが外見は自分なので普段よりかは
きちんと異性と話せる勇輝が提案する。

「えぇ……でも……まぁ……そうだよね……」

露骨に嫌そうな反応だがこれ以外どうしようもないのもまた事実、
結局おのおのの身体の家に帰る羽目に、
家族に見つかったら訝しがられるのでスマートフォンはお互いのを持ったままにしておいた。

②へ続く

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コメント

第1話は音調津様が書いてくださった部分デス~
私はあとがきと最初のあらすじだけ…笑

明日の第2話は
優花視点(身体は勇輝)と
勇輝視点(身体は優花)の2種類用意してあります!

私が書いた優花視点を、憑依空間で、
音調津様が書いた勇輝視点は、音調津様のPixivで楽しめます☆

お楽しみに~!

入れ替わり<君と交わるなんて考えもしなかった>
憑依空間NEO

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