<MC>薔薇色の青春

高校2年生のとあるカップルー

幸せな青春時代を過ごしていたふたりー

しかしー…


「ヒロインがヤンキーのねーちゃんになるお話」という
リクエストを元に作ったお話デス!

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保谷 一郎(ほうや いちろう)は
ごく普通の高校生だった。

ほどほどに真面目で、
友達もほどほどー

そして、彼には中学時代からの付き合いで、
数か月前から彼氏彼女の関係になった
大切な恋人・
眞城 亜美(ましろ あみ)がいたー。

彼の、青春時代は順調だった。

そう、あの日まではー。

放課後ー

「--あ、一郎…!」

先に放課後の学活が終わった
亜美が、昇降口で一郎を待っていた。

「--待たせて悪いな~!
 うちのクラスの担任、話長くてさ~」

一郎がボヤきながら笑うと、
亜美が「あぁ~…神崎先生の話は長いからね~」と笑った。

何気ない帰り道ー
けれどー
こうして亜美と一緒に帰る
何気ない瞬間が、何よりの幸せだった。

「そういえば…
 これ、笑えるよな」
一郎が、スマホでニュースサイトを開いて
それを見せる。

その画面には
”まるで特撮!?謎の組織現る”と書かれていたー。

怪しげなニュースばかり取り扱っている
一種のネタ系サイトの情報なので、
嘘だとは分かっていても、
どうしても笑ってしまう。

その記事によると
秘密結社”ブラックギルド”と名乗る組織が
最近、少女を誘拐し、洗脳していると言うのだ。

「あ~それ、わたしも知ってる~」
亜美が笑いながら言う。

ブラックギルドの噂は有名だった。
黒服の怪しい戦闘員たちが
少女を誘拐していくという噂だ。

けれどー

そんな噂が本当なら
今頃、大騒ぎになっているだろうし、
これは、あくまでも
ネタサイトによる、ひとつのネタなのだ。

色々な話をしながら
二人は、別れる場所までやってきた。

「じゃ、また明日」
一郎が微笑む。

「うん。また明日」
亜美も笑い返すー。

二人は、いつものように
こうして別れて、
それぞれの家へと向かうのだったー

それは、いつも通りの光景ー

これまで、
何度も繰り返されてきた光景ー

そして、
これからも何度も繰り返される光景ー、
の、はずだった。

しかしー

「---シャア~!」

「ふっしゃあ~!」

歩く亜美の周囲に
謎の黒服の男たちが現れるー。

亜美は驚く。

これって噂の、
”少女たちを洗脳している謎の組織”
ブラックギルドー?

「きゃああああああっ!?」
亜美は悲鳴を上げたー

しかし、その直後、
小さな麻酔銃のようなものを撃ちこまれて
亜美の身体はぐったりとその場に倒れた。

黒服の男たちが
力なく倒れた無抵抗の網を
そのままどこかへと連れていくのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

謎の電子音が響く部屋ー

そこで、亜美は目を覚ました。

「えっ…!?ちょっ…!?」
亜美は驚く。

自分の頭には銀色の謎の
ヘルメットのようなものが
取りつけられており、
動けないように固定されているー

そしてー
周囲にも、自分と同じような
年齢の女の子たちが
同じヘルメットを被せられている。

黒服の男たちがそれを見つめているー

そして、背後から
奇妙な被り物を被った不気味な人物が現れた。

「は、欲望大使(よくぼうたいし)!」

欲望大使と呼ばれた男は、
ニヤリと笑いながら亜美の方に近づいてきた。

昭和の特撮モノみたいな
悪の組織…

それが、ブラックギルド。

「---くくくく…
 ヤンキー量産計画」

欲望大使は堂々と宣言したー

「--真面目な女子高生たちをさらい、
 洗脳し、全国の少女たちをヤンキーへと変えていく。
 結果、どうなる?
 人々は、真面目だった少女たちの豹変に困惑し
 やがて人間不信となり、自ら破滅の道を歩むのだ」

なんだかー
スケールの小さい計画を得意気に話し終えると、
欲望大使は「やれ!」と叫ぶー。

「や…やめて!」
亜美は叫ぶ。

しかしー
次の瞬間、
ヘルメットから電流のようなものが
流れ始めたー。

亜美は悲鳴を上げる。

亜美のほかに捕えられている少女たちも
苦しそうな悲鳴を上げる。

「あぁあああああああっ…
 あぁあああああっ!」

女子高生たちの悲鳴があがる部屋。

欲望大使はニヤニヤしながら
その様子を見つめているー

「--ふふふふふ… 
 ヤンキーの誕生だ」

欲望大使が叫ぶ。

「---あ…あ」
亜美はうつろな目で
虚空を見つめるーー

「--…あ…いちろう…」

彼氏である一郎の姿を思い浮かべながら
涙をこぼす亜美ー。

しかしー
さらに電流が流れ始めるー

やがて、亜美の目の輝きは失われてー

「----」

黙り込んでしまうー

だらんと身体を垂らす亜美。

その亜美の顎を掴み、
欲望大使は呟くー

「--今日からお前はー
 お前たちはー
 欲望のまま、荒れ果てた生活をおくるのだ-」

その言葉に
亜美と、他の少女たちは

「はいー…」と呟く。

亜美も、他の少女も、完全に洗脳されてしまっていた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

一郎が、登校すると、
そこには信じられない光景が広がっていた。

亜美がー
髪を茶色に染めて
耳にピアスをつけー
濃い化粧をしてーー

不機嫌そうな様子で
スマホをいじっていたのだったー

「あ…亜美…?」
一郎は困惑する。

いや、一郎だけではない。
周囲の生徒たちは困惑していたー

いつも真面目で
明るい性格の亜美の
突然の豹変ー
驚かないはずは、なかったー。

「--お、、おはよう…どうしたの…?」
一郎は苦笑いしながら言う。

あまりにも容姿が変わりすぎているー

一体、何があったというのか。

「--あ?」
亜美は、低い声でそう返事をしたー

確かに亜美だー
だが、あまりにも様子が違い過ぎてー
外見は亜美なのに、亜美とは思えないー。

「--あたしに、気安く話しかけんな!」
亜美は吐き捨てるようにして
そう言った。

「--え…ちょ、、ど、どうしたんだよ…」
一郎が戸惑う。

周囲も戸惑っている。

バン!
亜美が机を叩いた。
酷く、苛立っている様子だ。

「うっせぇな」
亜美をそう言うと、椅子を蹴り飛ばして
短いスカートから覗く太ももを
晒しながら、教室の外へと
出て行ってしまった。

「あ、、亜美…?」
一郎は、戸惑う。

昨日の今日で、人はこんなに変わるものなのか。
これは、何かのどっきりなのか。
何が何だか、さっぱり分からないー。

「---喧嘩でもしたのか?」
友人の男子生徒が不思議そうに聞く。

「い、、いや、、してない…はず」
あまりの違いに、
一郎はそう答えることしかできなかった。

喧嘩などしていない…はずだ。

「--亜美…」
不安な表情を浮かべる一郎ー。

一体何があったのか。

1時間目、
2時間目、
3時間目、
4時間目…

亜美はうんざりとした様子で授業を受け続け
先生に対しても反抗的な態度を取っていた。

「--どうしちゃったんだ…」

昼休みに突入するー。

亜美は舌打ちをしながら
教室から鞄を持って出て行ってしまう。

「--亜美…!」

一郎は、そんな亜美のあとを追いかける。

亜美を見失ってしまう一郎ー

しかし、あの亜美の豹変ぶりはzえっ帯におかしいー
何か、原因があるー。

そう感じた一郎は、
ようやく校舎裏で、亜美を見つけ出した。

「--あ、、、亜美…」
一郎は、そこにいた亜美の姿を見て
唖然とすることしかできなかった。

「あ?」
亜美は校舎の壁によりかかりながら
片足を校舎の壁につけて、
煙草を吸っていたのだった。

「お、、おい!亜美ど、どうしたんだよ?」

一郎は、思わず声を荒げた。

外見だけでなく、中身までまるで
別人のようだ。

「---どうしたって?
 いちいちうっせぇな」

声は確かにいつもの亜美だー
だが、そのトーンと、
口調が違うために、まるで別人のようにさえ感じた。

「--な、、何があったんだよ…?」
一郎が言う。

しかし亜美は、たばこの煙を噴かしながら
自虐的に笑うのだった。

「--どうだっていいじゃん。
 あたしはあたしの好きなようにやる。
 あんたに指図される筋合いなんてねーよ!」

亜美がイライラした様子で言うー

「、、じ、、自分が何をしてるか、分かってるのか!?」

一郎が叫ぶ。

亜美はニヤリと笑うだけで全く
自分の行動に疑問を感じていない様子だー。

「一郎もさぁ、
 あたしと一緒に好き勝手やろうよ? なぁ?」

亜美が言う。

顔を近づけてきた亜美を前に、
一郎は少しドキドキしてしまうー

「そ、、そんなこと、、するわけないだろ…」

一郎がそう言うと、
亜美は「つまんねぇ男」と呟きながら
そのまま立ち去ってしまった。

「お、、おい…どうなってんだよ…」
一人残された一郎は、
そう呟くのがやっとだった…。

・・・・・・・・・・・・・・

亜美の行動は、それからも
とどまることを知らなかった。

やがて亜美は、家庭内で暴力を振るい、
家を飛び出してしまった。

「--そ、そんな…」
亜美の両親とも面識のあった一郎は
そのことを聞かされて唖然とする。

学校でも、あの日以降、亜美の様子は
どんどんおかしくなっていっていた。

本当に、まるで”別人”かのようにー

「亜美が、、どこに行ったか…
 分かりますか?」

一郎が言うと、
亜美の母親は、
泣きながら、”どうやら近所の暴走族と仲良くしてるみたい”
と、やっとの思いで口にしたのだった。

「暴走族…」
一応はさらに唖然とした。

亜美が暴走族とつるんでいると言うのであれば
亜美の様子がおかしくなったのは
”暴走族”のせいである可能性は高いー

悪い人と付き合いはじめれば
その影響を受ける、というのが
人間の常だからだ。

しかし、それにしても…

一郎は、それから数日間かけて
暴走族の居場所を突き止めた。

そしてー

「おら!あたしの靴、掃除しなよ」

回りの男たちと共に笑いながら、
亜美が気弱そうなサラリーマンに
足を差し出して笑っていた。

亜美は金髪になり、
耳にも、口元にもピアスをしている。

完全に別人のようだ。

「ほら!あたしの靴を綺麗にするんだよ!」
亜美は、サラリーマンの頭を
乱暴につかむと、笑う男たちに囲まれながら
無理やり自分の靴をサラリーマンに
舐めさせた。

ガラの悪い男たちだらけー。

あんな中に飛び出して言ったら危険だ。

本能が、そう告げている。

しかしー
それでも一郎は、我慢できなかった。

亜美がこんなことをしているという真実に、
耐えられなかった。

「---やめろ!」

別人のようになってしまった亜美と、
その周囲にいる男たちが
一斉に一郎の方を見る

「なんだぁ、お前は…」
ガラの悪い男がそう言うと、
亜美が笑った。

「あぁ、一郎じゃない。
 きゃはははは!
 どう、今のあたし。
 自由に生きるって最高じゃない?」

亜美が別人のような
笑い方をする。

「お…おい!どうしちゃったんだよ!亜美…
 どうしてこんな…」

そこまで一郎が言うと、
亜美は笑った。

「-ーーきゃはははははは!
 あたしがどうして
 変わったか、知りたい?」

亜美の挑発的な笑み。

その言葉に、一郎は
一瞬恐怖を抱いたが、
踏み込むことを決意する。

このままでは、亜美が本当に
自分の手の届かないところに
行ってしまうー。

一郎はそう思った。

だからー
ついていくことにした。

周囲のがらの悪い男たちに
強気な口調で何かを言うと、
亜美は「ついて来なさい」と
笑いながら、一郎についてくるように促した。

歩くこと数十分ー

亜美は、どんどん人気のない方に
歩いていくー

亜美の格好は挑戦的で、
目のやり場に困りながら
一郎はただ、黙って亜美についていくー

やはり、こんな人気のないところに
連れてくるということは、
亜美は、誰か悪い人と付き合い始めたことで
その影響を受けてしまったのかもしれないー

一郎は思うー

亜美が誰かに恋をして、
その結果、変わってしまったのだとしたら…

「ここよ…」
亜美が廃虚の建物の扉を指さす。

「---」
一郎が意を決して、足を踏み入れるとー

そこにはー
昭和の特撮ヒーローの敵組織のアジト…
とでも表現すれば良いのだろうかー

不気味な光景が広がっていた。

そしてー
中心には、不気味な被り物を被った男がいるー
闇組織・ブラックギルドの幹部、欲望大使だ。
 
「--ようこそ。我がアジトへ」

欲望大使が笑う。

それと同時に、
さっきまでチャラい様子だった亜美が、
頭を下げてひれ伏している。

「あ、亜美…?」

一郎は困惑する。

亜美は言うー。

「ご主人様ー
 次の素材をお連れしました」

亜美の目はうつろだった。

「--ご苦労。」

それだけ言うと
欲望大使は、一郎の方を見た。

一郎の視線の先には、
謎のヘルメットのようなものがあるー。

「--素晴らしいだろう?
 我がブラックギルドの”洗脳”は」

欲望大使は、亜美の顎をつかみながら言うー

亜美は幸せそうに顔を赤らめている。

「--な…!」
一郎は硬直したー

ブラックギルド―?

洗脳ー?

まさか…!

亜美は、洗脳されているー

「き…貴様!亜美に何をした!?」
一郎が叫ぶ。

しかしー
欲望大使は答えないー

現れた戦闘員たちに
強引に謎の椅子に座らされてしまう一郎ー

そして、一郎は、亜美と同じ
ヘルメットを強引につけられてしまう。

秘密結社”ブラックギルド”と名乗る組織が
最近、少女を誘拐し、洗脳している

あのニュースは、本当だったのか!と
一郎は思うー

「--あはははははは!
 一郎!あんたもあたしと同じになるの!
 ブラックギルドに身を捧げて
 いっしょにやりたい放題やるのよ!」

亜美が笑う。

「--や、、やめろ…亜美、、目を…覚ませ!」

一郎は悲痛な叫びを上げたー

しかし…

「ぐああああああああああ!」
激しい電流が走るー

一郎の中の何かが壊れていく。

「きゃははははははは!
 きゃはははははははははっ!
 ウケる~!」

亜美が大笑いしているー

横では欲望大使も笑っているー

「あ…み…」

一郎の意識は、そこで途切れたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「きゃはははははははは!
 ねぇ一郎、今度アイツぼこさない?」
金髪の亜美が男に抱き着きながら言う。

「へへ…そうだな!
 好き放題やってやろうぜ!」

同じく金髪で、鼻にも口にも
ピアスをしている男ー
…一郎がそう呟いた。

ブラックギルドの魔の手は
広がって行くー

少しずつ、
けれども、確実に…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

リクエストによる作品でした!

昔ながら?の特撮ヒーロー系を
イメージしてみました!

お読み下さりありがとうございました~!

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