平和な日常を送る女子高生。
しかし、彼女の周囲で異変が起き始める。
”閉ざされた深淵”
それを知ってしまったとき、彼女はー…?
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葉森 涼花(はもり りょうか)は
ごく普通の高校2年生ー
明るく、元気で、容姿も
可愛らしいことから、
学校内でも男女問わず人気がある。
「ねぇねぇ、またこの事件起きたみたいよ~」
友達の一人、オカルト系が大好きな
女子生徒・保野子(ほのこ)が
笑いながらスマホを見せる。
涼花は、そのスマホの画面を見て
「最近、多いよね…
犯人、まだ捕まらないのかな…?」と呟く。
スマホの画面にはー
”行方不明女子大生、発見か?”
と書かれているー
一週間から行方不明になっていた女子大生が
発見されたというニュース。
”発見か?”
などという書き方をされているのには理由がある。
それはー
発見された女子大生がまるで”皮”のようにー
そう、脱ぎ捨てられた脱皮後の皮のような
状態になっているからだー。
人間としての機能が失われており、
表情も、硬直しているー
まその女子大生本人なのか、
それとも、女子大生を模して造られた着ぐるみのような
ものなのかー
その判断がつけられないのだ。
それゆえに”発見か?”という表現が用いられている。
ここ数か月、
涼花の近所ではこの事件が多発していたー
いずれも、
被害者は女性で、
まず、行方不明になり、
数日後に、その”皮”が発見されるー。
当初、警察は発見された皮は、
本人を模して造られた悪趣味な着ぐるみのようなものだと
考えていたがー
精密に調査したところ、人間らしき痕跡が
見つかったことから
”行方不明になった人間が、何らかの方法で
こういう風にされたのでは”という説も広まったー
だが、真相はいまだに分かっていない。
いずれにせよ
行方不明になった女性たちは
誰一人として発見されておらずー
捜査は難航していたー。
そうー
見つかるはずはないー
”皮”が、本人なのだからー。
ある男によって
”皮”にされた挙句ー
最後には脱ぎ捨てられて放棄
されているのだからー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいま~」
涼花が帰宅すると
一学年下の妹・奈津代(なつよ)が
「あ、おかえりお姉ちゃん!」と
元気よく出迎えた。
「--ーー?」
奈津代がじ~っと、涼花のことを
見つめていることに気付く。
「-どうしたの?わたしの顔をじーっと見て」
涼花が尋ねると、
奈津代は「え?あ、、ううん、お姉ちゃん、今日も”可愛い”な~って」
と微笑んだ。
「なぁに、それ~!」
笑いながら自分の部屋に向かう涼花。
今日は、雨が降っているー
雨の勢いはますます強くなるー
あの事件ー
涼花はー
なんとも言えない恐怖を感じていたー
何故ならー
中学時代の同級生で、
高校は別の高校に通っていた友人もー
二か月前に、あの事件の
被害者になっているからだー。
突然、行方不明になり、
数日後に、山中で”皮”になって発見された。
あれから二か月、ずっと連絡がつかないことから、
あの皮のような状態で発見された彼女が、
本人なのだと、涼花は思っている。
考え込んでいるうちに、
着替え終えた涼花は、
スマホを見つめるー。
事件には、共通点があるー
狙われているのは、女性ー。
行方不明になって数日後に”皮”が発見されるー
その後、本人が発見されることはないー。
そしてー
涼花は、二か月前のことを思いだすー
・・・・・・
「---陽香(ようか)ちゃん、
最近どうかした?」
行方不明になるちょっと前からー
友人・陽香の様子が少しおかしかったのだー。
ツイッターで突然、
コスプレ写真をUPし始めたり、
何だか、陽香らしくない行為をし始めたのだ。
”どうかしたって?”
陽香は元気そうだったー
けれどー
「--え、ほら…
なんか最近、ツイッターで色々写真上げてるみたいだし…
なんかあったのかな~って」
”え…写真?”
陽香は、不思議そうな反応をした。
「-ーほら、ツイッターのメイド服とか、チャイナドレス姿の
陽香ちゃんのこと!」
涼花が言うと、
陽香は”え…”と一瞬考え込むような返事をしたー
しかしすぐに
”あ、、、ふふふ・・・
別に。
せっかく可愛い身体なんだから、
ちゃ~んと利用しなくちゃって、ネ”
陽香の言葉に
少し違和感を感じながらも涼花は
言葉を返す。
「---あんまりネットで素顔晒して
ああいう格好しない方がいいと思うけどな…」
真面目な涼花がそう言うと、
陽香は、
”ふふ…でも、興奮するでしょ?”
と甘い声で返事をしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そう、様子がおかしかったー。
他の行方不明者もそうー。
行方不明になる数日前から
様子が少し、おかしくなるのだー。
「--どうなってるの…」
涼花は困惑する。
涼花は、この事件に
少なからず興味ー、
と、いうよりも怒りを覚えていた
友人の陽香が巻き込まれたこともあって、
なんとかして解決の糸口を自分でも
見つけ出したいと思っていた。
ふと、時計を見る涼花。
最近、この事件について考える時間が多くなっている。
ふと、三〇分以上経過していることも
珍しくはない。
「---…考えても、仕方ないのに…」
涼花の身近に迫る危機。
友人の陽香が巻き込まれたこともそうだし、
もしかしたら、他のクラスメイトや、
家族まで巻き込まれるかもー
「-----!!」
涼花は、ふと気配を感じて、横目で
扉の方を見たー
するとー
妹の奈津代が姉の部屋の
扉を少しだけ開けて、
部屋の中を覗いているのが見えた。
「---!?」
涼花は悪寒を覚えるー
なぜ、妹が私の部屋を覗いているのかー
と。
普段なら、妹は遠慮なく部屋に入ってくるー。
それなのにー。
「---な…」
妹に声をかけようとしたー
しかし、涼花は、妹に声をかけるのをやめた。
”行方不明になる前に、
おかしな行動をするー”
「---ま、、まさか…」
涼花は”最悪の考え”が頭によぎる。
今度は、妹の奈津代が行方不明になるんじゃないかー
そしてー
奈津代が”皮”のような無残な姿で
発見されるのではないかー
そうー
思ったからだー
「--そんな…ことないよね…」
涼花はそう呟きながらも、
もしも妹が”事件”のターゲットにされているのであれば
妹も、行方不明になってー
皮のようになって見つかってしまうのだろうかー。
もしそうなら、
助けなくてはならないー。
涼花は、妹を救うために、
そう決意したー
そうだー
しばらく様子を見ようー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
ぐっすりと眠った涼花は、
朝、目を覚ます。
「---…」
起きてすぐに、涼花が思ったのは
妹の奈津代のこと。
「---奈津代」
そう呟いて部屋から飛び出すー。
けれどー
奈津代の声は1階からちゃんと
響いていた。
母と談笑しているようだ。
とりあえずは、一安心ー。
「はぁ…」
涼花は溜息をつく。
友達の陽香が皮に
されてからと言うものー
なんだか落ちつかない。
特にここ数日は、妹のことが
心配すぎて、寝ても寝ても
なかなか疲れがとれないぐらいだ。
「--あ、お姉ちゃん」
奈津代が、2階に上がってきて、
涼花と目を合わせる。
「あ、奈津代…
最近…だいじょうぶ?」
涼花は思わず聞いてしまった。
「---…え?」
奈津代が表情を歪める。
「--あ、、ううん、最近、変わったことはないかなって」
涼花が言うと、
奈津代は「え、、な、、何も、、」
と目を泳がせながら言った。
明らかにおかしいー。
涼花はここで、例の事件のことを持ち出そうとした。
例の”人が消息不明になり、皮になって発見される”
事件は、当然、妹の奈津代も知っているはず。
もしも、既に奈津代がそれに巻き込まれているのなら、
何らかの反応を示す可能性も高い。
「奈津代…あのさ、、
ヒトが行方不明になって、皮みたいに
なって見つかる事件だけど…」
涼花が言うと、
奈津代は「な…なに…?」と表情を歪ませる。
「---なにか、知ってたりしないよね?」
涼花はそう聞いたー。
行方不明になる数日前から、様子がおかしくなりー
行方不明になりー
数日後に、”皮”のような状態で発見されるー
皮になった人たちが
一体何に巻き込まれているのかー
涼花には見当がつかない
だからー
こう聞くことしかできなかった。
「あ……わ、、わたし、もう行かなくちゃ!」
奈津代は誤魔化すようにして
慌てて学校に向かおうとした。
「あ!奈津代!待って!」
涼花が叫ぶ。
奈津代は、慌ててー
都合の悪い事から逃げるようにして、
去ってしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校でも、妹のことが
心配で、気が気ではなかった。
授業中も、ずっと
奈津代のことを考えている。
母に、父に、
相談するべきだろうか―
「--だいじょうぶ?」
友人の保野子が心配そうに
声をかけてくる。
「え…あ、うん。だいじょうぶ」
涼花は例の事件を整理するー。
例の事件の流れはこうだ。
まず、その人の様子がおかしくなる。
おそらく、この時点で”何か”に
巻き込まれているのだろうー
友人の陽香もそうだった。
SNSにエッチな写真を上げ始めたりしたころから
”何か”に巻き込まれたのだろうー
そして、数日、あるいは数週間後に
突然、その人物が消息を絶つ。
おそらくは、この時点で”皮”のような
状態になっている。
その後、数日以内に、遺棄された、、とでも
言うのだろうか、皮のような状態になった
被害者が発見される。
そして、その本人が見つかることは、ない。
おそらく、この、”皮”のような状態で見つかるものが
本人なのだと思う。
これの繰り返しー
一人犠牲になると、また誰かが犠牲になるー
誰かの、犯行なのだろうかー。
もしも、妹の奈津代が巻き込まれているのなら、
あと数日、あるいは数週間で、
奈津代は消息を絶つー
そんなことは、絶対にさせないー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅した涼花は、
奈津代の部屋に入ろうとしたー
するとー
「----!!」
「---ふふふふふ♡」
奈津代が、制服姿のまま
自分の胸を触って
妖艶な笑みを浮かべていたー
「---な、、、なつよ…?」
思わず凍りつく涼花ー
やっぱり、おかしいー
「---奈津代!」
涼花が慌てて奈津代の部屋に飛び込むと、
奈津代は、驚いた表情で涼花の方を見たー
「---お、、お姉ちゃ…」
胸から手を放す奈津代。
「奈津代…!何に巻き込まれてるの…!?」
涼花は叫んだー
重い空気が流れるー
そしてー
ぱっくりと身体が割れてー
中からー”男”が姿を現したー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
皮部分に辿り着くまでが長いお話…!
その理由も明日分かる…かも??笑
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