ある日、将棋部に所属する少女が、
闇の対局に挑むことになってしまう。
駒を失うごとにー
身体の自由を奪われていく、
”闇の対局”にー。
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「--やっぱり麻帆(まほ)ちゃんは強いなぁ~」
将棋部部長・神崎 隆吾(かんざき りゅうご)は、
苦笑いするー。
部員数5名の将棋部―。
その中で唯一の女子生徒である麻帆は、
将棋部でも最強の実力を持っていたー。
「--ふふふ、ありがとうございます、先輩!」
微笑む麻帆。
隆吾が顔を赤らめる。
麻帆は、将棋が強いだけでなく、
とても可愛らしかった。
もしも、彼女がプロデビューしていれば、
その可愛さも注目されただろう。
「--次は僕と勝負だ!」
別の部員が、麻帆の前に立ちはだかる。
将棋部は、
こうして毎日楽しい日々を送っていたー。
「お先に失礼します~」
麻帆が、部長である隆吾に挨拶をして
部室から出ていく。
「----」
隆吾は立ち去る麻帆の姿を見ながら
顔を赤らめた。
「…っ、気にいらねぇ」
体格の良い男子生徒が呟いた。
部長の隆吾と同じ3年生の将棋部員・三木(みき)だったー。
「---三木…
麻帆ちゃんの実力は本物だ。
そんなこと言うなよ」
隆吾が三木を落ち着かせようとして言う。
「--はん。
ちょっと強い、ぐらいじゃねぇか。
ちやほやされやがって…
気にいらねぇ」
三木が呟く。
三木にとって、麻帆は邪魔な存在だった。
副部長の座に居座る麻帆。
しかも、麻帆は、部長の隆吾含む
3人の部員からちやほやされている。
「--お前もお前だ。
将棋部は、アイツの囲いじゃねぇんだぞ」
麻帆が、まるで姫のように
扱われていることに、三木は腹を立てていた。
もちろん、麻帆にそんなつもりはないし、
控えめで優しい生徒だ。
だが、三木にとっては、不愉快だった。
「--落ち着け。」
部長の隆吾が言う。
それでも、三木の怒りは収まらなかった。
「明日…叩きのめしてやる…
そして、アイツが負けたら、アイツに
将棋部から出て行ってもらう」
三木が言う。
「な…そんなこと…」
部長の隆吾が唖然として言うと、
三木は笑った。
「--ふん。俺が負けたら俺が
出て行ってやらぁ」
三木は、なんとかして
麻帆を将棋部から追い出してやろう、と
そう考えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
下校中の麻帆ー。
将棋と出会ったのは祖父の影響だ。
その祖父は、もう死んでしまったけれどー
麻帆は、祖父が大事にしていたこと
”将棋の勝ち負けよりも楽しむ”
ことを大事にしていたー
「--あ…そうだ」
母から”帰りに買い物してきて”と
頼まれていたことを思いだして
スマホを開く麻帆。
そこには、
買ってくるものリストが写しだされている
「---あのぉ…」
!?
背後から声をかけられた麻帆は
驚いて振り返る。
「---えっ!?」
振り返ると同時に、
麻帆は、口元に何かを
当てられて…
意識が遠のいてしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う…?」
麻帆は目を覚ましたー
すると、そこは、狭い部屋だった。
机と2つのイスー
そして、机の上には、
将棋盤が置かれているー
「---!?」
麻帆は、周囲を見渡す。
部屋には、扉がひとつ
「--ふふふ…やっと目覚めたね」
麻帆が驚いて、声のする方を見ると、
そこには、太ったおじさんがいた。
「---な、、な、、なんですか?ここは…?」
麻帆がおびえた表情で言うと、
男は笑った
「-別に怖がることはないよ。
君の通学路近くの倉庫だ。
そこの扉を開ければすぐ外に出れる。
ただ、俺と一回、将棋で勝負してもらいたくてね。」
男は、椅子に座りながら将棋盤を指さす。
「----」
麻帆は思うー。
少なくとも、この男がまともな男で
ないことは確かだと。
例え、将棋がしたい、というだけの理由だったとしても、
こんな風に拉致してくるやり方はおかしい。
「--きみ、将棋部のNo1なんだろ?
可愛いのに、将棋も強いなんて…
おじさん、興奮しちゃうなぁ…」
男が笑う。
「---」
麻帆は悪寒を感じながら男の方を見た。
男は、そんな麻帆の不安を感じ取ったのか、
優しく微笑んだ。
「1回、対局してくれるだけでいいんだ。
そしたら必ず君をここから帰してあげるし、
なんなら、僕のこと警察に言ったってかまわない」
そう言うと、
男は自分の名刺を取り出した。
「--若田 次郎
研究者…?」
名刺を見つめながら言う麻帆。
そこには
メールやLINE、住所までもが記載されていた。
フリーの研究者なのだと言う。
ボサボサした頭をかきむしりながら若田は呟いた。
「--僕と、対局してくれるだけでいいんだ。頼む」
とー。
「----…わかりました」
麻帆はそう返事をした。
ここで、強引に逃げ出そうとすれば、
かえってこの男を刺激するかもしれない。
それなら、対局して、
勝ち負け関係なく、円満に
帰った方がいいー
それにーーー
麻帆は、若田に気付かれないように、
スマホで警察に連絡を入れたー
話すことはできないー
けれどー。
何か異常を感じ取ってくれればー。
「----」
若田は、気付いていたー
だが、無視した。
警察に連絡されようが構わないー。
ついに、”あの力”が完成したのだからー
「では、始めよう」
若田は笑みを浮かべた。
「よろしくお願いします」
麻帆が礼儀正しく頭を下げると、
対局が始まった。
基本的な駒の動かし方をするふたり。
「--ふふふふふ…
そうだ、ひとつ言い忘れていたよ」
若田がニヤニヤしながら言う。
「え…?」
麻帆は嫌な予感を感じながら
若田の方を見た。
すると、若田は笑みを浮かべた。
「この将棋には、特別ルールがあってね…」
「特別ルール…?」
不思議そうに聞き返す麻帆。
若田は、麻帆の「歩」を、自分の「歩」で取ってみせたー
するとー
「---!?」
麻帆は身体に違和感を感じたー
「---指が…!?」
麻帆の左手の薬指が
勝手に動き始める。
「んふふふふふふふ~」
若田が笑う。
「--ちょ…、、な、、なんなんですか!?これ?」
麻帆が叫ぶ。
薬指が自分の意思とは関係なく、動いている。
「くふふふふふ~
今、その指は俺が支配してるんだよ~…
いいかい?
この将棋は”憑依将棋”だ。
ふつうの将棋じゃない。
僕が長年の研究と錬金術で実現させた
”相手に憑依できる将棋”
”玉”側のプレイヤーは、
駒を失うたびに、身体の一部分を
相手に奪われていく、闇のゲームだ!」
若田が叫んだ。
「--そ、、そんなこと…あるわけ…」
麻帆はそう言いながらも、
勝手に動かされている薬指を
見つめて、冷や汗をかく。
「いいかい?
歩は、君の指1本ー
金は、腕ー。
銀は、足ー。
桂馬はー耳ー。
香車はー目ー。
飛車はー胴体
角はー口ー
そしてーーー
玉を失ったととき、
君は、全てを俺に奪われる」
若田は笑みを浮かべる。
「----…う、、、嘘…」
麻帆は唖然としている。
そんなことあるはずがないー
けれどー
「--や、、やっぱり、、こんな勝負、やめます!」
麻帆は逃げ出そうとしたー
しかしー
「いいのかい?一度始めた勝負を放棄すれば
それは”投了”だ」
「----!!」
「--投了は負けを意味する。
そうなったら…
君の身体は、俺のものだ。
分かるね?」
「--そ、、、そんなこと…?」
麻帆は若田の方を見る。
人の身体を乗っ取ることができるなんて、
あまりにも非現実的だ。
ありえないー
けれどー
薬指があざ笑うかのように
くねくね動いている。
「---人の身体を奪うなんてありえない。
そう思ってるんだろ?
くへへへへ…
俺も最初はそう思った。
でも、科学と錬金術の研究を組み合わせて
それが可能になった。
そして、俺は憑依将棋を生み出した…!
くくくく…
俺は大学時代、この実験を提案して
教授に追放されて地獄のような日々を
送った!女子たちにも気持ち悪がられた!
でも、俺は正しかった!
憑依はできるんだ…
ぐへへへへへ!
お前の身体を奪って、憑依の研究成果を
全世界に発表してやる!」
狂ったように笑う若田ー
「-----」
麻帆は、完全に狂っている、と感じながらも
テーブルに戻る。
「---私が勝てば…」
「ん?」
麻帆は決意したー
「--わたしが勝てば、
どうなるの?」
その言葉に、若田は笑った。
「憑依エネルギーを高めるためには
こちらもリスクが必要でね…
俺が負けたら、俺はここで、死ぬー。
きみは元通りだ」
麻帆は、どんな仕組みで、こんなことに
なっているのかさっぱり分からないと
思いつつも、
この男が常人では発揮することのできない
力を持っていると感じとり、
覚悟を決めるー
「--この人に勝たなきゃ…帰れない」
とー。
勝つかー
警察の人が助けに来てくれるかー
どっちかで、自分は助かるー
麻帆は、なるべく時間を
稼ぐようにすることを決意し、
対局を再開するのだったー
「----」
若田はそんな麻帆の姿を見ながら笑う。
”きみを選んだのは
俺にとって一番タイプだったからだー。
しかも、俺の好きな将棋も出来ると来た…”
若田は、この2週間
憑依対象を探すために
近所の高校生を物色していたー
その結果ー
麻帆が目に留まったのだった。
”じっくりいたぶって、
君が泣き叫ぶ姿を見せてもらうよ…
カワイイ子が泣き叫んでいる姿は…
快感だぁ”
対局は進むー
「うっ…!」
「くくくくく…」
若田が、麻帆の”銀”を奪ったー
銀を奪われた麻帆は、足の自由を失うー。
「--ふふふ~
これが女子高生の足か~」
左足が勝手に動き回る。
そして、反対側の足を左足で触って
すりすりし始める。
「や、、、やめて…!」
麻帆が叫ぶ。
しかし、若田は止まらない。
「俺の魂の一部が、君に憑依しているんだ。
歩3つ分、で指3本ー
そして、銀の分、左足ー。
きみが負けたとき、
その可愛くてエッチな身体は俺のものになる…
くくく…楽しみで涎が垂れて来ちゃったぜ」
将棋盤の上に若田の涎がこぼれる。
「----……許せない…」
麻帆は呟いた。
「ん?」
余裕の表情を浮かべていた若田が言う。
「---将棋を、こんなふざけたことに使うなんて
許せない!」
麻帆は、怒りを感じていたー
自分を拉致して、身体を奪う、などと
ふざけたことを言っているこの男にー
将棋を変なことに利用しているこの男にー
「---はははは!いいねぇ、その顔!
きみの顔が恐怖に歪む瞬間が、
実にたのしみだ!」
若田は笑うー
対局は進むー
そこからーー
麻帆の反撃が始まった。
若田は、将棋が好きとは言え、
プロではないー。
むしろー
将棋部のメンバーと同レベルぐらいの
実力に留まっていたー
そのためー
将棋部最強の麻帆にはーー
勝てるはずもなかったー
「王手よ」
麻帆は呟いたー
片足と、片目と、指を何本かー
自由を奪われつつも、
麻帆は、若田を追い詰めたのだったー
「---く…くそっ」
若田は時間稼ぎの行動を始める。
だがー
あと、何手か打てば対局は終わる。
何をしようとも、
若田が勝つ手段は、もう残されていなかったー
王手の前に置かれた”金”を、”飛”で奪う若田ー。
だが、もう守りきれない。
麻帆の持ち駒を使えばー
あと数手で、対局は終わる。
あっけなく飛車も失い、
いよいよ、次の手で、若田の王は逃げ場を失う。
「わたしの勝ちよ」
麻帆は、そう呟いた。
「----……」
若田は唖然とした表情を浮かべているー。
最後にーーー
王の前に飛車を置けば、終わりだー。
「-----…くく」
飛車を手にする麻帆ー。
「---くくくくくくくく…」
若田は笑っているー
「--あなたのまけよ!」
麻帆は宣言したー
しかしー
「---!?」
麻帆は目を見開いたー
”飛車”王の前ではなく、
全く関係のない場所ー。
相手の”歩”の前に置かれているー。
「---え?」
麻帆は、唖然とするー
自分の思っていた位置と違う位置に飛車を置いているー
「--くくくく…
あはははははははははは~~~~!
ザンネンでしたぁ~!」
若田が大笑いしながら、
麻帆の飛車を奪うー
「ど、、どうして…?」
唖然とする麻帆に向かった、
若田は微笑んだ。
「この勝負、君にもう、勝ち目はないよ」
そう言うと、若田はにっこりと満面の
笑みを浮かべたー
「---んぁっ!?」
麻帆は、驚くー
右手が、自分の胸を触って、
揉み始めるー。
「---あ…♡ え……???」
激しく胸を揉みまくる右手ー。
麻帆ははっとした。
「いいかい?
歩は、君の指1本ー
金は、腕ー。
銀は、足ー。
桂馬はー耳ー。
香車はー目ー。
飛車はー胴体
角はー口ー
”金は、腕ー”
「---!!」
麻帆は、若田の王を追い詰める為に
”金”を犠牲にしているー
そのためー
片腕ー…
右腕は、若田に支配されてしまったのだった。
「--くくくくく…!
片腕があれば、俺の勝ちだ~!」
若田は笑う。
右手が勝手に自分の胸を撫でまわすー
「そ、、、そんな…
わ、、わたし、、、どうすれば…」
絶望の表情を浮かべる麻帆を
あざ笑うかのように、
右腕は、スカートに手を突っ込んで
嬉しそうに、あちらこちらを
触り始めていたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
将棋のルールは知っているのですが
細かいセオリーはあまり知らないので
対局内容は、あまり描写しないようにしています…汗
突っ込みどころがあっても許してくださいネ…!
コメント
SECRET: 1
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自分もルールしか知らない弱者ですが、一つ質問が。
一度持ち駒を取られてしまっても再度取り返せば元に戻ったりするんですか?
それとも1度取られた時点でもう奪われたままなのかな
さて、麻帆ちゃんがピンチですが・・・アニメやドラマだとこっからそれでも大逆転しちゃうんだろうけど、流石にそれは無いだろうなあ
あと三木がやはりかませなのかも気になります。もう出番無さそうだけど
SECRET: 0
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無様>
憑依将棋への感想ありがとうございます~!
駒は一度取られても、
また取り返すことはできますよ~☆
ただ、この憑依将棋の場合、
一度奪われた身体の自由は
勝たないと戻ってこないみたいですネ~!
三木くん?
ふふふ…
少しずつ部分的に憑依していく話って他にありましたっけ?
じわじわ憑依して身体を奪っていく展開はいいですね。
憑依もいいけど、入れ替わりバージョンでもこの話は面白くなりそうですよね。
コメントありがとうございます~!
部分的にジワジワはあまりなかったと思いますネ~!☆
確かに、他ジャンルでも面白いお話が書けそうデス~!