あるところに怨念の宿る仮面があった。
そうとは知らずに、その仮面を
身に着けてしまった少女は、
次第にその仮面に乗っ取られていくー。
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「ねぇねぇねぇ、柚香(ゆずか)~!
これ、キモくない?」
自宅の物置を漁っていた少女・美砂(みさ)が
笑いながら言う。
ふたりは同じ高校に通う友人同士。
今日は美砂の家に、柚香が
遊びに来ている。
美砂は変な仮面を手にしている。
「--なんかね、おじいちゃんがずっとこの物置に
保管している仮面なんだけど…
小さい頃わたし、これ見てよく泣いていたの」
美砂が手にしている仮面は、
とても不気味な雰囲気だ。
確かに、小さい頃にこれを見せられたら
泣いてしまっても、不思議ではないかもしれない。
「--確かに、怖いかも」
柚香が微笑む。
美砂のおじいちゃんは、半年前に
亡くなったー。
それ以降、この物置は放置されたまんまだ。
そんな物置には物珍しいものが
たくさん転がっている。
美砂は、友人の柚香に
面白おかしく物置の中のものを
見せていたのだったー
「--これ、つけてみてよ~?」
美砂がふざけた様子で言う。
イタズラっ子の美砂らしい提案。
「---えぇぇ~…
ちょっとだけだよ~?」
確かに不気味な仮面だが、
特に断る理由もない。
柚香はその仮面をつけて見せた。
ドクンー
「--!?」
なんだか、違和感を感じる柚香。
仮面をつけたまま、柚香は
その場でぼーっと立ち尽くす。
「--きゃははははは!
ぜ~んぜん似合わない~!」
そう言いながら笑う美砂。
「--…似合わない?」
柚香が低い声でそう言うと、
美砂は「え?」と首をかしげた。
「--、、あ…」
柚香がふと我に返る。
仮面を外して、外した仮面を美砂に渡すと
柚香は微笑んだ。
「たしかに、似合わないかも~」
いつも通りの笑顔ー。
美砂は仮面を受け取ると、
「--変な仮面~!」と呟きながら
物置の端っこの方に、
ゴミのように投げ捨てるのだった。
コトリ…
投げ捨てられた仮面が紫色の光を
発したことにー
美砂も柚香も気付いていなかった
「--あ、これも見て~!」
美砂が珍しそうな壺を手にすると、
柚香は「え~?今度はなに~?」と笑いながら
その壺のほうに注目し、
二人とも仮面のことは忘れていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
”今日は楽しかったよ”と
LINEを送る柚香ー
柚香はしっかりもののお姉さん、という感じで、
美砂とは小学時代からの親友ー。
しっかりものの柚香と
お調子ものの美砂ー。
性格は違えど、
ふたりは意気投合して、
こうして、今でもその友情は続いている。
「--ふ~、明日は月曜日だし、
もう寝ようかな」
柚香はそう呟くと、部屋の明りを消して
「おやすみなさ~い!」と呟き、
そのまま眠りについた。
・・・
・・・・・
”イイ、カラダダ・・”
ふと、声が聞こえた。
「え…?」
柚香が目を覚ますと、
そこは、真っ暗闇の世界だったー
”オマエノカラダガ、ホシイ”
「---!?」
不気味な声ー
柚香は周囲を見渡す。
「な、、なに…何なの?」
怯えた表情の柚香ー
そこにー
昼間、美砂の家の物置で見た
仮面が現れる
仮面は宙に浮き、
紫色の光を発している。
”クククク・・・カラダガホシイ”
柚香の方に迫ってくる不気味な仮面。
「い…いやああああああああ!」
!!
悲鳴を上げて、飛び起きる柚香。
窓からは、朝日が差し込んでいる。
「はぁ…はぁ…ゆ、、夢…」
柚香は冷や汗をかいていた。
久しぶりに、嫌な夢を見てしまった。
友達の家の物置にあった
不気味な仮面の夢を
見てしまうなんてー
「---わたしって案外臆病なのかも」
苦笑いしながら、柚香は、
窓の外を見つめて、朝日を浴びながら、
悪夢の嫌な気分を断ち切った。
・・・・・・・・・・・・・
「おはよ~!」
「あ、柚香!おはよ~!」
学校ー
挨拶を交わす柚香と美砂。
「---昨日はありがとね」
柚香が言うと、
美砂は「ううん~ガラクタばっかり見せてごめんね~」と微笑んだ。
いつも通りの日常ー
いつも通りの学校ー
しかしー
柚香は授業を受けながら、
ふと、自分が”あの仮面”のことばかり
考えていることに気付く。
「---聞いてるか…?」
ふと、社会科の先生が
上の空になっている柚香に声をかけた。
「え…?あ、、あ、はい!ご、、ごめんなさい!」
社会科の先生に質問されていることにも
気付けないぐらい、柚香は上の空に
なっていたのだった。
「(な、、なんで私、あの仮面のことばっかり?)」
そう思いながらも、
柚香は、また、仮面のことを考えてしまう
昼休みー
「あのさ…」
柚香は、美砂に話しかける。
「今日も、美砂の家に少し遊びに行ってもいいかな?」
柚香の言葉に、美砂は首をかしげた。
「え?あ、うん、別にいいけど…」
特に用事もなかったし、
美砂に断る理由はなかった。
柚香は、”あるもの”をもう一度見たいーという
考えに支配され、
我慢できなくなって、美砂にそう言ったのだった。
放課後ー
「まさか、2日連続で遊びに来てくれるなんて~」
美砂が笑いながら言うと、
柚香は、まるで操られているかのように、
無言で物置の方に向かった。
「あ、またガラクタ見学~?
いいよいいよ!」
美砂も嬉しそうに笑うー
柚香は「どうしても見たいものがあるの…」とだけ呟き、
物置の中に入って行った。
柚香に続いて物置に入る美砂。
柚香が乱暴な手つきで何かを探している。
「--ちょ、ちょっと~!張り切りすぎ~!」
美砂は笑いながら言う。
そんな美砂を無視して、
柚香は”あの仮面”を見つけると、
嬉しそうにそれを手に取った。
「あった~~~!」
嬉しそうに叫ぶ柚香。
「--柚香~?その仮面、気に入ったの?」
美砂が苦笑いする。
「うん!」
柚香が振り返る。
「---!!」
美砂は驚く。
一瞬、仮面を手にしている柚香の目がー
”紫色に光った”気がしたからだー。
「---柚香…?」
美砂は驚いてもう一度柚香の顔を見る。
しかしー
目はもう光っていなかった。
「(気のせいかな…)」
そう呟くと、美砂は柚香の方を見る。
「ふぁぁぁぁぁ…すてき…♡」
柚香がうっとりとした表情で仮面を見つめる。
まるで、恋をしているかのようにー
「ちょ、、ちょっと…?
そんなキモい仮面のどこがー」
「キモくない!」
柚香は大声で怒鳴った。
「---!!」
美砂は思わず、ご、ごめんと呟く…。
「----ふふふふふふふふ♡」
柚香は仮面に心を奪われているかのように、
それを見つめ続ける。
「--あ、ご、、ごめん!今日、バイトだった!」
柚香の様子が変だと感じた美砂は
柚香から仮面を取り上げて、
物置の隅っこに放り投げた。
一瞬、不愉快そうな顔を浮かべる柚香。
しかし、柚香はすぐに微笑んだ。
「あ、、そ、そうなんだ!
邪魔してごめんね!」
いつもの笑顔ー
美砂も、その笑顔に安心して
「う、、うん」と微笑んだー。
去って行く柚香ー。
美砂は、なんとなく仮面に
心を奪われているかのような
柚香の様子に違和感を覚えるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
「どうしたの?お姉ちゃん?」
柚香の妹が、
虚ろな目で夕食を食べている柚香のことを
見て、不思議そうに問いかけた。
なんだか、様子がおかしい。
「---……」
柚香は、大好物のはずの母のオムライスを
まるで意識がここにないかのように、
無表情で食べている。
「---お姉ちゃん?」
妹がもう一度姉をのことを呼ぶ。
すると、柚香はやっと気づいたかのように
「え?あ…ごめん」とだけ呟いた。
しかしー
その後も、柚香は何か考え込んでいるかのように、
言葉を発することもなく、
ただ黙々とオムライスを食べ続けた。
「---ごちそうさま」
柚香は部屋に戻って行く。
そんな姉の後ろ姿を見ながら
妹は「なにかあったのかな…?」と呟く。
その言葉を聞いて、母親も
「そうねぇ…お姉ちゃんにも色々あるのよきっと」と
心配そうな表情を浮かべた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
部屋に戻った柚香の頭の中に声が響く。
”---来い”
「---」
柚香はうつろな目で立ち尽くしているー
”我の元へー来い…”
「---う…」
頭に響く謎の声―。
それに操られるかのように、
柚香は歩き出した。
玄関から外に出て行こうとする柚香。
「---お姉ちゃん!?
こんな時間にどこに行くの?」
たまたま通りがかった妹が言うー。
もう、夜の10時だ。
柚香はこんな時間から出歩く子ではないー
「-----…行かなくちゃいけないの」
柚香は呟く。
「--行かなくちゃってどこに!?」
妹が困惑した様子で言う。
姉はどうしてしまったと言うのか。
「---行かなくちゃいけないのよ!」
柚香は怒鳴るようにして叫んだ。
「--な、、な、なんなの?
誰かに呼び出されてるの?」
妹はなおも食い下がる。
なんだか行かせてはならない気がする。
そう思ったー
恋愛トラブルか何かかと
妹は思い、「こんな時間からお出かけなんて
お母さんにもちゃんと…」
と、柚香の腕をつかむ。
「---邪魔をするな!」
柚香が大声で叫んだー
「ひっ!?」
腕を振りほどかれた妹は
思わず驚いてしまう。
そしてー
驚く妹を無視して、柚香は
そのまま歩き出したー
”ご主人様”の元に向かってー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
友人である美砂の家の敷地内に
不法侵入する柚香。
そしてー
柚香は一直線に、物置の中へと入る。
物置に、鍵はかかっていなかった。
大した価値の無さそうなものばかりだから、
鍵をかけていないのだろうー
「---…」
柚香は乱暴に倉庫内で何かを
探している。
そして、見つけたー
不気味な仮面を手にする柚香。
「あぁぁぁ…♡」
柚香は嬉しそうに顔を赤らめながらそれを見つめる。
”待っていたぞ…”
仮面から不気味な声が響き渡る。
「---この身体…お好きなようにお使いくださいませ…」
柚香は、最高の喜びをかみしめるかのように、
仮面の前にひれ伏して、そう呟いたー
仮面を手にした柚香はー
仮面の魔力に魅せられてしまっていたー
仮面のこと以外、既に考えられなくなっているー。
”くくく…我を身につけよ”
仮面から声が響き渡る。
「はい…」
柚香は、仮面を手にすると、
躊躇なくそれを身に着けた。
「---あ…!」
柚香の身体がビクンと震える。
そしてー
紫色の光が仮面から柚香の身体に流れ込む。
「ああああああああああっ!!!
あ、、、ああああああああああっ!!!!」
苦しみの叫びをあげる柚香。
やがて、柚香は、その場に膝を折り、
動かなくなってしまうー
2、3分ー。
沈黙が流れる。
「----く…く…」
沈黙していた柚香が立ち上がる。
「くくく…くくくくくく…
あはははははははははは~~~!」
仮面をつけたままの柚香が
大声で笑い始めた。
「---あははははははははは♡
ついに手に入れたぞ!人間の身体!
くくく…あ~~はははははは♡」
柚香は狂ったように笑いながら
自分の胸を触りまくる。
「んふぅ♡ 新鮮な女の身体だ!
ぐへ…うへへへへ…いひひひひひひ♡
たっぷり、、たぁ~っぷり、
使ってあげるからねぇ…♡」
柚香は普段出さないような
おかしな声で言うと、
仮面を身に着けたまま、
倉庫から飛び出したー。
仮面に憑依された柚香は
笑みを浮かべながらー
夜の闇へと姿を消したー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
闇の力が宿る仮面に
憑依されてしまいました…
果たしてその運命は…!?
続きは明日デス~
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