女の子の身体になって
生き返った康也ー。
ただし、誰にもそのことを伝えてはいけないのだと言うー。
軽い気持ちで生き返った康也は、
由梨してしか、認識されないことに苦しんでいく…
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「---今日から、転校生がやってきます」
担任の先生が言う。
「---」
由梨は顔を真っ赤にしていたー
何故ならー
由梨は、元々男子高校生の康也だったからだー
交通事故で命を落とした康也は
死後の世界で出会った死神に、
身体を作り替えられて、
こうして、生き返ったー。
交通事故で死んだ康也の身体は
ボロボロに”破損”しており、
こうして、別の身体の情報を元に身体を
再構築するほか、生き返る方法は
なかったのだと死神・ユリは言っていた。
そしてユリは、人間界に干渉し、
こうして、違和感なく元の世界に
溶け込めるようにー
”北井 由梨”として生きられるようにしてくれたー
そのおかげでー
こうしてまた、クラスのみんなと
再会することができた。
それは、嬉しいー。
けど…
「うぉぉぉぉぉ!可愛い~~~!」
クラスの男子たちが叫ぶ。
由梨は、顔を真っ赤にした。
「(は、、、恥ずかしい~~~)」
「北井 こう…じゃない、、由梨です…
よ、、よろしくお願いします」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら
自己紹介をする由梨ー。
どうして恥ずかしがっているのかを
クラスメイトたちは知る由もなかったが、
奥手なメガネっ子だと勘違いした
男子たちはの一部は歓喜した。
「--座席はあそこだな」
担任の先生が、空いている席を指さすー
そこはーー
康也の座席だった。
「--あ、はい」
由梨ー康也は、
ふと思うー
(自分は、どんな扱いになっているのかー)
と。
死神・ユリは、死んだ康也の身体に、
ユリが使っていた女子高生の身体の身体情報を
流し込み、生き返らせる、というようなことを
言っていたー
康也、という存在はこの世界から消えたのかー。
それともー
「--よろしくね!分からないことがあったら何でも聞いてね!」
後ろの座席の少女ー
康也が告白する予定だった
奈那子が微笑む。
「あ…うん…よ、、よろしく…ね」
由梨はやっとの思いでそう返事をした。
小さいころからずっと一緒だった奈那子に、
はじめまして、の挨拶をされて
康也は思わず傷ついてしまった。
「---ひょ~!となりの座席なんてついてるぜ~!」
康也の友人だった健司がとなりの座席。
健司はニヤニヤしながら由梨の方を見ている。
「前は、人数の問題で男が隣だったからよ~!」
健司は笑ったー。
「---!」
由梨ははっとする。
この座席は、生前、自分が座っていた座席だ。
「--この…座席の子は・・・?」
由梨は聞きにくそうに尋ねた。
すると、健司は笑いながら言った。
「--あぁ、康也って男子が座ってたんだけどな。
3日前に交通事故で死んじまったんだ」
とー。
「---そうなんだ」
由梨はそう言いながら、悲しい気持ちになった。
健司がヘラヘラと笑っている。
由梨は、だんだんと怒りが湧いてきたー
(少しぐらい、悲しそうにしてくれたっていいじゃないか)
とー。
クラスを見渡す由梨ー。
クラスメイトが死んだというのに、
ショックを受けている様子がまるでないー
それどころかー
康也の代わりに、由梨というカワイイ子が
転入してきたことに、みんな喜んでいる
雰囲気さえあった。
”僕は、康也だぞ!”
そう叫んでやりたくなった。
けれどー
それをしたら、あの死神が迎えに来るー。
「--ぼくは、もう康也じゃないんだ」
由梨は小声で呟いた。
「え?」
後ろの座席の奈那子が、何か聞こえたような気がして
反応したが、由梨はとっさに「な、なんでもない」と
その場をごまかすのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休みー
「--はぁ~」
由梨は溜息をつく。
女の子としての生活には疲れる。
さっきも、奈那子に、
”ちょっと…スカートの中、見えちゃうよ?”なんて
言われちゃったし、
何かと面倒くさい
「あ~ズボンはきたい!」
由梨はそう呟きながらトイレに向かう。
今日、登校前に女の子としての
トイレを初めて経験したが
康也には物凄く難易度が高かった。
少し、服を汚してしまったぐらいだー
ちゃんと、できるだろうかー
そんな不安を感じながら
トイレに入る由梨。
「---おわっ!?」
中にいた男子が叫ぶ。
「え?」
由梨は首をかしげながら、
立ったまましようとして、トイレの前に向かう。
「---お、、、おわわわわ!?」
男子生徒がさらに困り果てた様子で叫ぶ。
「え……」
由梨は何事かと思っていたがー
ようやく気付いた。
「あああぁ…僕、女の子なんだった!
ごめん!」
由梨はそう叫んで、慌てて男子トイレから飛び出した。
そしてー
「お…おじゃましま~す」
と呟きながら申し訳なさそうに女子トイレの方に入るのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「--次の授業は体育か~」
由梨はそう呟く。
何の意識もせずに、男子の時と同じように
歩いていると、
周囲の女子たちからの視線が集まった。
無意識のうちに、がに股歩きになっていた由梨。
「--あ…僕、女の子なんだった」
そう呟くと、女の子っぽい歩き方を
意識しながら、康也は教室へと向かったー
そこではー
クラスメイトの女子たちが着替えている最中だった。
「-----!」
由梨は顔を真っ赤にして叫んだ
「ご…ごめんなさい!!」
慌てて教室の扉を閉める由梨。
「--なに…あれ?」
教室で着替えている最中の女子生徒が
そう呟くと、
近くにいた奈那子は苦笑いしながら
「さぁ‥・?」と答えた。
”不思議ちゃんなのかな?”などと
苦笑しながら、奈那子はそのまま
体育の授業に向かう準備を始めた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あぁぁあ…疲れたぁ~」
ようやく帰宅した由梨は、
下着姿で、部屋に寝転んだ。
「ふぁぁ~開放感~」
康也はよく服を脱いでそのまま
寝転んでいることがあった。
その癖で、女の子になったことも
忘れて、下着姿で寝転んでいた。
「---それにしても…酷いよ」
由梨は悲しそうに呟く。
康也が死んだことをみんな何も気にしていない。
自分が死ねば、少しぐらいは悲しんでくれると
思っていたー。
けれど、
そんなことはなかった。
クラスメイトたちは何も変わらず、普通に
生活している。
自分が死んでから3日間経過しているようだったから
その間に悲しみも癒えたのか、
それとも最初から悲しんでなどいなかったのか…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
由梨はなんとなく、
知らない両親、自分の家じゃない家に
居心地の悪さを感じて
早めに登校していた。
「---おっと!」
無意識に男子トイレに入りそうになって、
深呼吸してから女子トイレに入る由梨。
そこにはーーー
幼馴染の奈那子がいた。
「わ!ごめんなさい!」
つい、男子が女子トイレに入ってしまったかの如く
とっさに謝ってしまう由梨。
「---え?」
奈那子が、不思議そうに由梨の方を見る。
トイレに入って来て突然謝る女子。
奈那子からしてみれば不思議な光景以外の
何者でもない。
「---どうしたの?」
微笑む奈那子。
「--あ、いや、、いえ、なんでも…!」
由梨になった康也は焦った。
”女の子になって生きるって、僕にはハードルが高すぎる…”
そんな風に思いながらふと、奈那子の方を見ると、
奈那子の目には、涙が輝いていた。
「え…?」
由梨はそれに気づいて、不思議そうな表情をする。
「あ…ご、、ごめんね…
ちょっとね…」
奈那子はそれだけ言うと、お手洗いから出て行くー。
どうして泣いていたんだろう…?
そう思いながら教室に向かうと
早い時間に登校したため、まだ教室には奈那子しかいなかった。
奈那子は一人、教室の窓の方を見つめながら泣いている。
「---ど、、どうしたの?」
背後から声をかけると
奈那子は振り返って、涙を目に浮かべながら微笑んだ。
「あ…ごめんね…
昨日、、ちょっとだけ聞いたと思うけど、
由梨ちゃんが転校してくる前に、、
クラスメイトが一人、事故で死んだの」
奈那子が、悲しそうに、康也の事故死のことを
口にする。
「え…」
由梨は”それは僕だ”と言いそうになるのを抑えながら
奈那子の方を見る。
「--その子…康也は、わたしの幼馴染だったー。
ずっと小さい頃から仲良しで、
わたしにとっては本当に大切な存在だったの」
涙を拭きながら奈那子はそう呟く。
「----…わたし、高校に入ったころから
康也のことが好きで、、でも、、
幼馴染だから今更好きだなんて恥ずかしくて
なかなか言えなくて…
そんな風にわたしが臆病になってる間に…
康也……死んじゃった…」
奈那子の目から涙がぽろぽろとこぼれる。
目の前にいる由梨という女子生徒が
女の子の身体になって生き返った康也だとは
夢にも思っていない奈那子ー
康也はそんな奈那子を見ながら思うー
”僕のことが、好きだった…?”
とー。
あの日、康也が事故にあった日の翌日、
康也は奈那子に告白するつもりだった。
もしー
もしも、自分が事故に遭わなければ
奈那子は告白をOKしてくれたということだろうかー。
「---わたしの気持ちは、、
もう、、一生、康也には届かないから…」
奈那子がボロボロと涙をこぼしながら
「転校してきたばっかりなのに、こんな話して
ごめんね…」と無理に微笑んで見せた。
そんな、悲しそうな奈那子の姿を見てー
康也はー
自分が女の子になっていることも忘れて、
奈那子に抱き着いてしまった。
教室で抱き合う由梨と奈那子。
驚く奈那子。
「え…?ゆ、、由梨ちゃん?」
そんな奈那子に向かって、こう呟いた。
「---きっと、、、
きっと、、、僕…ううん、その康也くんに
その気持ちは届いてるよ…
きっと…」
由梨はそこまで口にして、
そのまま奈那子と同じように
泣き始めてしまったー
「----!?」
その時だったー
教室にクラスメイトの新渡戸が入ってきた。
「---わぁ~お…」
抱き合って泣いている奈那子と由梨を見て
新渡戸は顔を赤らめた。
「--これが、百合かー」
そう呟くと、新渡戸は気まずい表情をして、
そのまま教室の扉を閉めるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休みー。
クラスメイトたちは、康也の死なんて
何とも思っていないー
そう、思ってたー
けれど違った。
もちろん、何とも思ってないクラスメイトもいるけれど、
奈那子のように、普段は明るく振る舞っていても
裏で悲しんでくれている子はいたー。
屋上で、外の景色を見つめながら、
ぼーっとしている由梨。
”僕が康也だよ”
そう言いたかった。
けれど、言えなかったー
「---生き返ったらお前は、由梨だー。
もう、康也ではないー
お前が康也だと絶対に知られてはならぬ」
死んだときに
死神・ユリに言われた言葉を思い出す。
「---…言えない…」
由梨は目から涙をこぼすー
僕はここにいるのにー
僕はここにはいないー
由梨は、一人、屋上で、悲しそうに涙をこぼしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー。
康也が車に轢かれた場所を通る由梨ー
ふと、その事故現場に、
康也の友人・健司が立っているのに気付く。
健司は、何かを呟いていたー
こっそりと近づいた由梨ー。
健司はー
拳を震わせていたー
「お前が奈那子ちゃんに告白して
玉砕するとこ、楽しみにしてたのによ…」
健司の声が涙声になっている。
背を向けている状態で、表情は見えないけれど、
健司は、泣いていたー。
「---康也…
俺、本当はお前のこと、応援してたんだぜ…」
健司は、そう呟いて、悲しそうに、
事故現場を見つめ続けたー
そんな健司に声をかけず、
由梨はその場を立ち去ったー。
女の子として振る舞うことも忘れて
無我夢中になって走ったー
自分の死を悲しんでいる人たちを
目の当りにして、
声をかけてあげることもできないことが、
こんなに辛いことだとは思わなかったー
康也は、そう思いながら、家へと駆けこんだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---…」
女の子の身体で生き返った康也の
様子を監視しながら、
ユリと名乗っていた死神は、複雑な表情を浮かべたー。
・・・・
「---つくづく、ついていないやつだー」
数百年前だっただろうかー。
あの時も、そうだった。
自分が、死神になったばかりのころー。
「---…」
死神は、康也のことを見つめながら、
あることを決意していたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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明日で最終回デス~!
待ち受ける結末は…?
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