ごく普通の男子高校生ー
彼は、ある日、交通事故で命を落としてしまう。
しかし、そんな彼はチャンスを手に入れた。
生き返るチャンスを。
がー、何故か男ではなく女として、生き返ることになってしまった…
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「---僕、明日告白するんだ!」
男子高校生の木羽 康也(きば こうや)は、
息巻いていたー
小学時代からの付き合いの
幼馴染・富川 奈那子(とみかわ ななこ)に告白するー
そう決めたのだー。
「--はは、どうせふられるぜ?」
親友の健司(けんじ)が笑いながら言う。
健司も、小学時代からの付き合いだ。
「やってみなきゃわからないだろ~?」
康也が不貞腐れた様子で言うと、
健司は首を振った。
「富川さん、好きな人がいるって噂だぜ?」
健司が言う。
その噂は、康也も知っていた。
だが、あくまで噂であり、
奈那子本人からも、誰かと付き合っているという
話は聞いたことがない。
もちろん、単なる幼馴染の一人でしかない康也に
言うまでもない、ということかもしれないけれど。
「--新渡戸のやつ、モテモテだからなぁ~」
クラスのイケメン・新渡戸 金蔵(にとべ かねぞう)。
彼はモテモテだった。
友達とファミレスに行ったときに、
会計の時に5000円札を出し、
全員の分を驕ったというエピソードもある。
新渡戸は、金持ちのイケメンで、
勉強も運動もできるから、
モテモテなのだ。
「---ぼ、僕は新渡戸なんかに負けないぞ!
明日、見てろよ!」
康也がそう言うと
「はいはい、楽しみにしてるよ」と健二は笑った。
放課後ー
「あ、康也!」
背後から声をかけられて康也はドキッとしてしまう。
幼馴染の奈那子の声。
「---え、、あ、、、あ、富川さん…!」
奈那子の方を振り向くと、康也は笑った。
「も~!なんで最近、他人行儀なの~?」
奈那子は笑うー。
奈那子は高校に入ってから特に可愛らしくなった。
元々小さい頃からの付き合いだから、
前は「奈那子ちゃん」と呼んでいたのだが
高校に入ったころから変に意識をしてしまって
下の名前で呼べなくなってしまった。
「---康也、わたしのこと、
奈那子ちゃんって呼んでたのに」
不貞腐れた様子で言う奈那子
「え、、い、、いや、、その…」
顔を真っ赤にしていると、
「お~!フライングか?」
と、笑いながら親友の健司がやってきた。
フライングー
”告白は明日”と言っていたのに
今日するのか?という意味で
康也は言ったのだった。
「--え、、、え、、え…」
さらにパニックになる康也。
「フライングってなに~?」
奈那子が笑いながら言う。
「--くくく…実はな~!康也のやつ…」
そう言いかけた健司の口を塞いで、
康也は「なんでもないよ!」と言うと、
健司を引きずってそのまま学校から外に出たー。
「--も~なんだよ!
なんで変なこと言おうとするんだよ~!」
学校から出たところで、康也が言う。
「--いやいや、悪い悪い、
ついからかいたくなっちゃってさ」
健司がニヤニヤしながら言う。
健司は昔からこういうやつだ。
「---ま、明日の玉砕楽しみにしてるぜ!」
健司が笑う。
「---そんなに僕に振られて欲しいのかよ…」
康也が不貞腐れた表情でそう呟くと、
「もう、いいよいいよ~!健司なんか知らない!」
拗ねて康也は走り出した。
「おい~!拗ねるなよ~!」
冗談を言う健司ー
しかしー
次の瞬間ー
信号無視のトラックがやってきてー
「---!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あっという間の出来事だったー
康也は、死んだ。
即死ー。
唖然とする健司。
本当に、一瞬だったー
何も、できなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う…」
気付くと、康也は、一面が白い世界に居た。
「---こ、、ここは…?」
康也が呟くと、
背後から声がした。
「--死後の世界…」
康也が驚いて振り返ると、
そこには、メガネをかけた可愛らしい女の子がいた。
同い年ぐらいの女子高生だろうか。
「---き、きみは…?」
康也は自分が轢かれて死んだことにも気づかぬまま
そう尋ねた。
”きみ?”
少女は不愉快に思ったー
人間を怖がらせないために、
過去に死んだ人間の身体を再利用して、
こうして、女子高生の姿をしているがー、
本当は、悪魔のような醜悪な姿だし、
そもそも、お前より何百年も長生きだ、
と、少女は思いながら口を開く。
「--わたしか?わたしはユリ…
死んだ人間を連れて行く役目を…」
ユリと名乗った少女がそう言うと、
康也は叫んだ
「死んだ!?誰が?」
康也は周囲の不気味な真っ白を見渡しながら叫ぶ。
「--気付いてないのか?」
ユリが表情を歪める。
一瞬、ユリの顔が、醜悪な悪魔のような姿と重なって見えた。
「---お前は、死んだんだ」
ユリが言う。
「は、、、う、、嘘だ!?
冗談きついよ!
僕は普通に下校していてー」
そこまで言いかけて、康也は
かすかな記憶を思い出すー
健司にからかわれてムキになって、
走ってー
そのあとー
車がー
「---う、、嘘だ…
ね、、、ねぇ、嘘だろ?
僕はまだ死んでない!そうだろ!?」
ユリに向かって叫ぶ康也。
「---…」
ユリは哀れなモノを見る目で康也の方を見る。
「—嘘だ!僕は!!僕は!!!死んでない!嘘だ!!嘘だ!!!」
康也は泣きながらユリに手を触れて、
叫び続ける。
「---」
ユリが手にしている
見たこともない端末に
”エラー”の文字が表示されている。
人間の寿命は、ユリをはじめとする、
人間たちの言う”天国”そして”地獄”の住人によって
決められているー
だが、
時として、”エラー”が起きる。
天使や死神たちが決めた寿命とは
異なる寿命で、死んでしまう人間が
時々現れるのだー
康也も、その一人だった。
”エラー”と表示された画面にはー
康也のデータが表示されているー。
そこにはー
”76”と表示されていたー。
「----……」
ユリは死神だー。
死神として、これまで何人もの人間を
天使に引き渡したり、
そのまま地獄に連れて行ったりしている。
本来ならば、
ユリは、康也を天使に引き渡さなくてはいけない。
しかしー
「-----…」
”エラー”で死んだ人間を見るのは
ユリは、初めてだった。
まだ、彼女…いや、彼かも知れない死神は、
死神になって日が浅かった。
なんとなく、同情したー。
死神として、そんな感情は持ってはいけないのだがー
同情してしまった。
そしてー
「----!!」
ユリは、康也を見ていて、あることに気付いてしまった。
ユリは、瞳を震わせるー
本来であれば76まで生きるはずだったこの少年。
「----生き返りたいか?」
泣きじゃくる康也に、自分の動揺を
悟られないように、ユリはそう尋ねた。
「…え…」
涙をボタボタこぼしながら康也はユリの方を見る。
「---で、、、できるの、、、そんなこと…?」
康也がそう言うと、
ユリは首を振った。
「ふつうは、できない…
だがーー」
そこまで言うと、ユリは言葉を飲み込んで、
別の言葉を吐き出した。
「お前は、特別だ。
わたしがその気になれば、生き返ることもできる」
ユリがそう言うと、
康也は「ほ、ほんとう?」と泣きながら叫んだ。
「あぁ…ただし、条件がいくつかあるー」
ユリはそう呟くと、
にっこりとほほ笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---!!」
康也は、生き返った。
何とも言えない、不気味な感覚だったー。
しかしー
康也は無事に、生き返ったのだったー
「----でも…
こ…これって…」
康也は自分の身体を見つめるー
そこにはー
さっきまで話していた女子高生風の死神・ユリの姿があった。
「---女の子じゃん!!」
康也は叫んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・
康也は、生き返る直前のことを思いだす。
「–条件?」
ユリから、生き返るのに、条件があると言われた
康也は不思議そうな表情で、その条件とやらを
聞き返した。
「--あぁ…そうだ」
可愛らしい容姿なのに、
どこか機械的なユリが言う。
「--そのまま生き返らせてやりたいところだが、
お前の身体は事故でボロボロだ。
もう使えないし、人間の医療で修復はできない。
仮にそのまま生き返ったとしたら
ゾンビのような容姿になってしまうー。
だからー
この身体の情報を元に、
お前の身体を再構築して生き返らせる」
ユリが自分の身体に触れながら言った。
「ん?」
康也は首をかしげる。
「--難しい説明は省くが
お前には、わたしの姿ー
つまり、女子高生の姿で生き返ってもらう」
「えぇぇぇっ…!?」
康也は思わず叫んでしまった。
「--ぼ、、僕に、女の子になれってこと!?」
康也が言うと、
ユリは、静かに呟いた。
「--本来、死んだ人間を生き返らせることは
我々死神のタブーだ。
だから身体を新しく用意することはできない。
今、私にできることはこれだけだ」
その言葉に、康也は迷う。
女子高生として、僕が生き返る…?と。
「--…少し人間の世界を操作して
お前は、お前が通っていた高校に
転校生として転入することにしておく
名前は由梨(ゆり)ー。
子供がいない夫婦の娘として
記憶を刷りこんでおくから、
自然に生活に馴染むことができるようにしておくー」
ユリの機械的な説明に康也は驚く。
けれどー
康也は頷いた。
まだ、自分にはやらなくてはいけないことがある。
奈那子にも告白していないし―、
まだ、やりたいこともたくさんある。
「---…もう、一つ…
ここでの出来事を誰かに告げたらー
私が即座にお前を迎えに行く…
いいな?
絶対に口外は無用だ」
「---う、、うん」
康也は少し怖くなってそう返事をした。
「---生き返ったらお前は、由梨だー。
もう、康也ではないー
お前が康也だと絶対に知られてはならぬ」
ユリの言葉に、康也は頷いた。
「---では…心の準備はできたか?」
ユリが言うー。
「--うん…」
ユリは、何故だかとても悲しそうな表情を浮かべていたー
眼鏡の下の瞳は、とても寂しげだー。
人間を生き返らせることもー
人間界に干渉することも、死神の禁忌ー
だが、ユリはそれをしたー。
そこまでして、康也を生き返らせる理由はー
「-----お前は…」
ユリは、そこまで呟いて、口を閉ざしたー。
康也の意識は
光に吸い込まれてー
・・・・・・・・・・・・・・
今ー
女子高生・由梨として再び
この世に舞い戻っていた。
「---ぼ、、僕が女の子になっちゃうなんて…
冗談きついなぁ…」
髪の毛をかくー
長いサラサラした髪が身体に触れる。
「うおああああああ!?」
康也は思わず叫んでしまう。
「--か、、髪…髪…サラサラした髪ぃ!?」
女の子と付き合ったこともない康也は
女の子の髪を触っただけで
震えてしまっていた。
「----…!」
康也は自分の胸のふくらみを見つけて
それに手を触れた。
「ぶっふぉぉぉ!?」
康也はそのまま鼻血を噴きだしてしまい、
ノックアウトされてしまうのだったー。
「ーーー…あ、、あ」
しばらくしてようやく落ち着いた康也は、
見知らぬ両親に、囲まれながら
朝食を終えるー
「---も~!わかんない!」
制服に着替えながら
ブツブツと呟いている康也。
鏡には、不貞腐れた表情の由梨が
映っているー
眼鏡がよく似合う、とてもかわいらしい少女だー
生き返る直前、死神は言っていた。
この子も、以前、普通に生きていた人間で、
死んだ子なのだというー。
その身体を、あの死神が再利用していたのだともー。
そうこうしているうちに、目を瞑りながら
着替え終えた康也は、
鏡を見つめた。
目を瞑っていた理由は、
なんとなく、自分の身体だとは言え
女の子の身体を見つめるのが悪い気がしたからだ。
鏡に映る可愛い少女ー。
康也は呟いた。
「僕は康也ーー
…じゃなくて…もう…由梨なんだ」
自分に言い聞かせるように呟く。
「---わ、、わ、、わたしは、、由梨…」
そう呟くと、康也ー
由梨は、自分の通っていた学校に、
その姿で向かうのだったー
今日は転入初日、ということになっているらしい。
「---な、、なんだか、、、スカートってきもちわるい~…」
由梨はそう呟きながら学校へと向かったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
死後、女の子になって
生き返った康也くんの運命は…?
明日以降もお楽しみ下さい~!
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