女子高生の身体から抜け出せないまま彼氏と
デートすることになってしまったー。
無事に女子高生としてのデートを終わらせて
身体から抜け出すことはできるのか…。
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「ああああああ…くそ~っ!」
彼氏・誠とのデートー。
父親である白川所長から指示をされて
おしゃれな格好で
待ち合わせ場所に来ていた絵里菜は
一人、落ち着かない様子で足をとんとんさせていた。
「あぁぁ…短いスカートなんてなんではくんだよ!
落ち着かないなぁ~」
絵里菜はスースーする足を
触りながら言う。
「にしても、化粧とかも面倒だよなぁ~
俺なんて髭を剃るだけだし」
「--おはよ」
「ぶふぅっ!?」
背後から突然声をかけられて
絵里菜はびっくりしてしまった。
振り返ると、
そこにはー
彼氏の誠がいた。
「あ、あ、、、お、、、おはよっ!」
絵里菜は内心焦っていた。
今の独り言、聞かれていないか…と。
「じゃ、行こうか」
誠は優しく微笑んだ。
あえて触れないようにしてくれているのか。
それとも聞こえていなかったのか
どっちだか分からず、絵里菜は気まずそうに
誠と一緒に歩いた。
「今日の絵里菜、いつも以上に可愛いなぁ」
誠が笑いながら言う。
「え?あ、、そ、、そう?
ありがとう」
絵里菜は顔を赤らめて返事をする。
なんだか、可愛いなんて言われたことがないから
ドキドキしてしまう。
絵里菜に憑依している水本は思うー
いつか、憑依薬が完成したら
女子高生の身体に憑依して
好き勝手遊んでみたいなぁ、などと
ちょっと邪な考えが溢れ出そうになった。
「---ついたよ」
そこは、映画館だった。
水本は、邪悪な考えを振り払って、
”とにかく元に戻れるまで誤魔化さないとな”と
苦笑いするのだった。
映画館に入る2人。
絵里菜は、気を付けてはいたものの、
女の子としての歩き方ではなく
男としての歩き方になってしまっていた。
「・・・・・」
誠が不審そうに絵里菜の方を見つめる。
「--えっと、絵里菜、見たい映画が
あるって言ってたよね?」
誠が笑う。
「--俺は絵里菜が見たいものならなんでも」
デートの約束をしたとき、
絵里菜は見たい映画が3つあって、迷っていると
誠に伝えていたー
そして、”当日、決めてもいいかな?”と言われていたので
誠は、絵里菜に、見たい映画を決めるように促した。
”な、なんだとぉ!?”
絵里菜の中にいる水本は焦った。
絵里菜の見たい映画とは何だ?
そんなもの知らないぞ。
焦る水本。
絵里菜は冷静に深呼吸をして、
”そうだ”とある考えをひらめく。
「あ、、え、、えと、その前に、
お手洗い行ってくるね」
誠は「わかった、ここで待ってる」と微笑む。
絵里菜は慌ててお手洗いの方に向かうのだった。
上映中の映画は12-。
絵里菜が見たがっていたのは3つー。
なら、それを引き当てれば問題ないー
絵里菜は、何も考えず男子トイレの方に入ってしまう。
「--えっ!?」
男子トイレにいた学生が唖然とする
「--え、、、!?」
絵里菜ははっとしたー。
やべ!またやってしまったー
と。
俺は本当は男なんだぞ!
俺の好きにさせろ!
と内心で思いながらも
必死で言い訳を考えて、
絵里菜は笑みを浮かべた
「あ、、あの、、じ、実は俺、男なんです」
可愛い声で言う絵里菜。
ここは
絵里菜ちゃんには悪いが、男の娘ということに
なってもらおうー。
「あ…は、、はぁ…」
学生たちは困惑した様子で苦笑いする。
慌てて個室に飛び込んだ絵里菜は、
個室で、腕を組みながら
絵里菜の見たがっていた映画を考える。
上映中の映画は12ー。
正直、絵里菜がどの映画を
見たがっていたのかは、全く分からないー
年頃の女子高生が見たい映画はどれだー
水本は必死に考えたー
そしてー
「よし!」
そう叫んで、お手洗いから飛び出した絵里菜は
彼氏の誠が待つところに向かって行きー
静かに微笑んだ。
「わたし、あれが見たい!」
絵里菜が指さした映画はーーー
”夕暮れの義理人情”
任侠映画だったー
年頃の娘は、
イケメンでキャーキャー言うイメージがある。
つまりは、男気だ。
絵里菜の見たかった映画は
任侠映画に違いない。
「---え…」
誠が唖然とする。
「---こ、これでいいの?」
近くにあったパンフレットを手に苦笑いする誠。
「え…」
絵里菜は内心で焦る。
誠の反応からして、これは不正解だったのかもしれない。
「え…あ、ほ、、ほら…
こういう世界って、憧れるじゃない?
やっぱほら、男のロマンだろ?」
慌てて言い訳を考えた絵里菜。
誠は苦笑いしながら「そっか」と呟くー。
2人は、夕暮れの義理人情を見ることになったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
映画が終わる。
「いやぁ~渋かったな~
主演のブートきよしもいい味出してたし、
何よりも脚本が良かった」
憑依している水本は
任侠映画好き。
そのせいで、
大興奮していた。
「あ…あぁ…」
誠は唖然としている。
「いやぁ、しびれるねぇ」
絵里菜は興奮冷めやらぬ様子で続ける。
「--でも、あのシーンは現実じゃちょっとあり得ないよな~
今まで敵対していたのに
急に仲良しになるなんて、あり得るかっつーの!」
おじさんっぽく、映画の中身にケチをつけ始める
絵里菜。
誠は苦笑いしながらそんな絵里菜の
言葉を聞くのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
映画館から出た2人は
お昼の空腹を満たすために、
ファミレスへと向かうー
着席した2人。
絵里菜が早速メニューを開いて
「あ、お姉さん!」と店員を呼んだ。
違和感をぬぐえず、困惑する誠。
「--ビールと、枝豆と、あと、からあげを」
「--!?」
店員も、誠も唖然としている。
「----お、、、おいっ!」
誠が慌てた様子で言う。
「え?誠くんも、飲む?」
微笑む絵里菜。
しかしー
「お、、おい…!絵里菜…!
ビールはまずいだろ?」
誠に注意されて
ようやく絵里菜は気づいた。
し、しまった!
いつもの癖で!
「--あ、、、あは、、、あはははははは!
ちょっと言ってみたかっただけ~!」
笑う絵里菜。
誠も苦笑いしている。
「え…え~っと…」
絵里菜に憑依している水本は思う。
本当はからあげと枝豆を食べたいが
流石に疑われそうだ、とー。
「チョ、チョコパフェをお願いします」
絵里菜は仕方がなく、
自分のあまり好きではない
パフェを注文した。
ファミレス内で二人の時間が流れていく。
うんざりしながらも、絵里菜はなんとか
誠に話を合わせる。
そもそも俺は男だし、
望んで憑依したわけじゃないから、好きに
やらせてもらうぞー!
などと思っていたが、
上司である白川所長の娘だし、
そもそもこの子自身には
何の罪もないー。
だから、なかなか好き勝手するのも
難しかった。
「---食欲ないの?」
誠が不思議そうに言う。
大好物のチョコパフェを食べる手が鈍い。
「--く…甘すぎて…」
絵里菜は呟く。
「---え?」
誠がさらに不思議そうな顔をする。
流石にやばいと思い、
適当に笑顔を作って誤魔化したが
絵里菜はもう帰りたい、という思いで
いっぱいだった。
「---はぁぁぁ…」
・・・・・・・・・・・・・・・
そして、デートが終わった。
誠は
「今日は、なんだかちょっと、変だったケド、
何かあったのか?」
と別れ際に聞いてきた。
絵里菜は慌てて
「え、、い、、いや、なんでもないよ!」
と答える。
がに股気味で立っている絵里菜を
見ながら、誠は苦笑いすると、
「じゃ、また」と言いながら立ち去って行った。
「はぁぁぁぁぁ~」
絵里菜は”ようやく終わった~”と思いながら
女の子っぽい演技をすることをやめて、
街を歩きだした。
「--さて、そろそろ、元の身体に戻れるかな」
絵里菜は呟く。
この子を演じながら生活するのは
本当に面倒臭い。
たとえば、この身体で好き勝手しても
良いのなら多少は面白いこともできそうだが、
白川所長の手前、それはできない
「--お!水本くん!お疲れ!」
家に帰ると、白川所長が
笑顔で絵里菜を出迎えた。
「できた…できたぞ!」
白川所長が、無色透明の液体を手にしている。
「--憑依から抜け出すための薬だ」
その言葉に、絵里菜は
満面の笑みを浮かべた
「えっ!所長、俺、元に戻れるんですか!?」
「もちろんだとも」
所長は笑みを浮かべた。
所長は言う。
この薬を飲めば、憑依状態から抜け出して
元の身体に戻ることができるー。と。
水本の身体は現在、研究所で眠っている状態だから
そこで目覚めるーと。
「どうだった、私の娘は?」
白川所長がニヤニヤしながら聞く
「え~、あ~いや…
女の子ってめんどうくさいですね…」
絵里菜がソファーに座って
太ももをかきながら言う。
「--ふん。確かに君は向いてないかもな。
色気もなにもない」
白川所長がそう言うと、
「俺だって憑依したくてしたわけじゃないんですよ!」と叫ぶ。
苦笑いしながら、
白川所長は、絵里菜に憑依から抜け出すための薬を手渡したー
それを飲む絵里菜。
「---あ…」
すぐに効果は現れたー
絵里菜の意識が次第に遠のいていきー
そしてーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う…」
水本は目を覚ました。
見慣れた研究所の休憩室だ。
「--お、水本!目を覚ましたか!」
研究仲間が笑う
「---」
水本は自分の身体をチェックする。
ちゃんと、アレもある。
正真正銘、自分の身体だ。
「や…やった!ついに戻れた!
やっぱ、俺にはおじさんの身体の方が似合うぜ」
水本がそう言うと、
「にしても災難だったな」
と研究仲間は笑った。
「--あぁ…
ま、ちょっと興奮するところもあったけどな」
水本が笑いながら言うと、
研究仲間も微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--お、目を覚ましたか」
白川所長は、
憑依されていた娘の絵里菜が目を覚ましたことに気付き、
声をかけた。
最初、数時間だけの憑依テストの予定が、
トラブルで、数日間憑依することになってしまった。
その間のことを娘にどう説明しようかと、
考えていた時のことだった。
「あ、、お父さん」
そう言いながら立ち上がる絵里菜。
絵里菜が、がに股で歩いている。
「--!?」
白川所長は絵里菜の行為に違和感を感じる。
「げほっげほっ!」
おじさん臭い咳をすると、
そのまま流し台にたんを吐き捨てる絵里菜。
頭をぼさぼさと掻き毟りながら
絵里菜は自分の部屋へと向かってしまった。
「ど…どういうことだ!?」
白川所長は唖然とする。
絵里菜のいつもの雰囲気とは、違うー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
憑依薬には不備があったことが判明したー
「・・・・馬鹿な…」
白川所長は呆然としている。
憑依されている間の思考が、絵里菜自身の脳にも
影響を与えてー
絵里菜の人格にも影響を及ぼしてしまった。
あの日から、絵里菜はおじさんのような
行動を繰り返している。
「---」
頭を抱える白川所長。
だがー
ここで立ち止まるわけにはいかない。
医療用の憑依薬を実現するために、
さらに改良を重ねなくてはー
まだまだ改良点はたくさんある。
娘が歪んでしまったことは仕方がない。
そしてー
「----」
憑依されていた娘の絵里菜を見て
不覚にも白川所長は興奮してしまっていた。
憑依薬を
医療のために研究し続けてきた彼ー
しかしー
その目的は歪み始めていたー
”医療用憑依薬の悪用”
「くふふ…」
いつの日か、美女に憑依して
チャイナドレスを着てみたいー
白川所長はそう思いながら
今日も、憑依薬の研究を始めるのだった。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
おじさん憑依モノでした!
憑依された絵里菜ちゃんは災難ですネ…!
お読み下さりありがとうございました~
コメント
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怒らないで下さいね。また、傷つかないで下さい。作者様て、リクエスト作品の方が得意なのでしょうか?この作品も良いですがこの作品を含めてリクエスト作品以外の作品はリクエスト作品ほどの作者様の力量が出てないように感じました。
リクエスト作品はどれも力作で特にじゅんすいなこころや大人へのあこがれはずば抜けてました。リクエスト以外の作品にも力量を発揮してくださいね。
SECRET: 0
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19/05/03 様>
ありがとうございます~☆
以前、逆のご意見を別の方から頂いたこともありました(笑
色々な皆様の感想を聞くのはとてもためになります!
これからも
どの作品でも、誰かに楽しんでもらえればいいな~の気持ちで頑張ります!