検死官ジョー。
遺体から人間の悪の部分を抜き出し、
その悪の部分を他人に憑依させる力を持つー
そんな彼が、
心優しい女子高生に向かって…?
※悪の魂シリーズの最新作デス!
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「吾輩は、正義であるー」
検死官ジョーは、
部屋で一人、ぶどうジュースを飲みながら呟いた。
彼は、自分のしていることに
一縷の迷いもない。
自分に対して、絶対の自信を持っている。
「--私の行う行為、
すべてが正義だ」
ジョーは、ぶどうジュースの入った
ワイングラスを天に掲げると、
昨日、検死した遺体から抜き出したばかりの
”悪の魂”手に微笑んだー
ゴールデンウィークの10連休ー
10連休を謳歌したものたちの裏ではー
10連休で苦しんだものたちもいるー。
10連休の最終日、
激務を終えて帰宅する最中に、
交通事故に巻き込まれて犠牲になった男の
悪の魂を、ジョーは抜き出したのだー
「感じる…感じるぞ…」
GW10連休中、ずっと激務に追われていた男は
その疲れで交通事故に巻き込まれてしまった
そんな男の”悪の部分”を抽出したジョー。
恨みー
妬みー
社会への不満ー
憎悪ー
あらゆる負の感情が、
その悪の魂には込められていた。
「--現代社会で疲れ切った人間の憎悪ー
これをーー
幸せ絶頂の女子高生に放り込んだらー
どうなるかな?」
ジョーは、自分の部屋のホワイトボードに
貼り付けてある写真を見つめて微笑んだー
そこには、ジョーの次のターゲット・
女子高生の紗愛(さえ)の写真が飾られていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
紗愛は、友達と楽しく談笑していた。
心優しく、明るい性格の彼女は
学校に友達も多く、
さらに、先生たちからの評判もよかった。
弟が一人いるが、弟との間柄も良好で
家庭内の関係も良好ー
幸せな女子高生ライフを満喫していた。
「え~!みんな彼氏いるの~?」
紗愛が驚く。
紗愛と仲良しの女子3人全員に
彼氏がいることを知り、
紗愛は驚いていたー。
うち2人には彼氏がいることを知っていたが
残りの一人も、最近彼氏が出来たのだと言う。
「あ~!じゃあ、彼氏いないのわたしだけじゃん~!」
紗愛が笑う。
その表情には妬みなどはなく、
ただ単に、純粋に友達と談笑している笑顔だったー。
「--美しい」
そんな紗愛の姿を、いつものように
姿を消して、ジョーは見つめていた。
何故かはわからないが、検死官ジョーには
”遺体から負の部分(ジョーが悪の魂と呼ぶ部分)を取り出す能力”と
”姿をカメレオンのように消す能力”を
身に着けていた。
「憎悪の塊とも言えるこの悪の魂ー
君に吹きこんだら…どうなるかな…!?」
ジョーはいつものように、野球のピッチャーの如く、
悪の魂を紗愛に向かって放り投げた。
「---ひっ!?」
紗愛は、突然不気味な悪寒を感じて
振り返ったー
しかし、姿を消しているジョーのことは
彼女には見えない。
「---…なんだろう…?」
紗愛が不思議そうに呟く。
3人の友達が「どうしたの?」と尋ねると
紗愛は「ううん、なんでもない」と答えた。
「ストラーイク!」
検死官ジョーは、紗愛に悪の魂を憑依させられたことを
確認すると、その場から立ち去った。
「今までの経験上…大体1週間以内には
異変が起きる…
優しく、幸せな彼女は…悪の魂に抗えるかな…?くくく…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「あ、姉さん!」
紗愛の弟、律太郎(りつたろう)が慌ただしく学校の準備をしている。
律太郎はまだ中学3年だー。
受験シーズンで忙しい律太郎のことを
姉の紗愛は何かと気遣っていた。
「-も~~!ご飯粒ほっぺについてるよ~?」
笑いながら言う紗愛。
いつも通りの光景。
「まだ、悪の意識に飲み込まれてはいない…か」
ジョーは、透明人間状態で、紗愛の様子を見つめていたー
これまでー
ジョーは悪の魂を100人以上の人間に
憑依させてきたー
結果
”全員”が最終的には悪の魂に影響され
豹変し、悪の道へと落ちた。
だがー
ジョーは求めている。
いつの日か、悪の魂に打ち勝つことができる
人間が現れることをー
・・・・・・
3日目ー。
紗愛に悪の魂を放り込んでから
三日が経過した。
紗愛の様子に変わりはない。
「ふむ…なかなか強い心を持っているようだな」
ジョーが、透明になりながら紗愛の
学校での様子を見つめている。
いつものように仲良し4人組で
休み時間に談笑している
紗愛は、いつも通りだー。
「--でさ~彼氏がさ~!」
友達が笑う。
紗愛も笑う。
仲良し女子高生たちのごく普通の会話ー。
しかしー
「---!!」
ジョーは見逃さなかった。
紗愛が
”表”に出した最初の異変をー。
「ずるい…」
紗愛は、友達3人と別れたあとに
そう呟いたのだー
「---」
紗愛の表情が曇っている。
紗愛は思うー
”どうして自分にだけ彼氏がいないのだろうー”と。
今までそんなことは気にしたことがなかったし、
3人の親友に、彼氏が出来たことを
心から祝福していたー。
なのにー
「--ずるい…」
紗愛の中の”悪の魂”は徐々に
紗愛に影響を出し始めていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
悪の魂を放り込んでから4日目ー
紗愛は、何故だか弟の律太郎に腹を立てていた。
「--お母さん!これ!」
律太郎が母に色々と頼んでいる。
”わたしは、全部自分でやっているのに”
紗愛はそう思いながら
律太郎の方を睨むようにして見ていた。
いつもならこんなことで腹を立てたりしない。
けれど、今日はー
「---あのさ」
紗愛が口を開く。
「少しぐらい、自分でやったら?」
「---え」
律太郎は、姉の思わぬ言葉に驚く。
紗愛の口調には、
最大限の嫌味が込められていた。
「--ご…ごめん」
律太郎は、普段優しい紗愛からのきつい言葉に
少し驚いて、落ち込んだ様子でそう返事をした。
「---あ、、、ご、、ごめん」
律太郎の落ち込んだ様子を見た紗愛もまた、
”言い過ぎちゃったかな”とすぐに思い直して
弟に謝るのだったー
学校に向かう紗愛。
なんだか、おかしいー。
昨日から、やけにイライラする。
しかも、つまらないことでー。
友達に彼氏がいることは嬉しいことのはず。
弟の律太郎が大変な時期だということはわかっているはずー
なのにー
「わたし…疲れてるのかも」
紗愛は、そう呟くと学校へと向かった。
昼休みー。
ジョーは、仕事を終えて、再び紗愛の様子を
見に来ていた。
「さて…どうかな」
ジョーは溜息をつく。
結果がどうなるかは分かっている。
今まで100人以上の人間が、
悪の魂に影響されて、
道を踏み外したように紗愛も…。
いつものように、友達3人を含めた4人で
雑談している紗愛。
しかし、今日は、なんだかその笑顔が
不自然だった。
「どうしたの?紗愛…
何だか元気ないよ?」
友達の一人が不思議そうに聞く。
「--え、、う、、うん、そんなことないよ」
紗愛は無理やり笑顔を作った。
最近は、
毎日のようにそれぞれの彼氏の話が出てくる。
少し前まで何とも思っていなかったのだが
ここ数日は、なんだかとてもイライラする。
「まぁ…紗愛も彼氏でもつくりなよ~!
そうすれば気分も… …っ!!」
友達の一人が、軽い気持ちで
紗愛に彼氏を作るように促したー
がーー
紗愛に睨みつけられたので萎縮してしまった
「さ…紗愛…そ、、そんな怖い顔しないでよ…」
友達がおびえた表情で言う。
いつも優しい紗愛が、無意識のうちに
友達を睨みつけていた。
「え…あ…、、ご、、ごめん」
紗愛は深呼吸をする。
”わたし、どうしちゃったんだろう…”
そんな風に思いながらも、
紗愛はいつものように友達と楽しくお話しようと
なんとか平静を装う。
がー
無理だった。
「--それでさ~何て言ったと思う?」
彼氏トークで盛り上がる3人。
数日前まで微笑ましくそれを見ていた紗愛ー
しかし、
今はー
無理だ。
バン!
机を叩く紗愛。
3人が驚いて紗愛の方を見つめる。
「---ごめん」
紗愛はそれだけ言うと、不機嫌そうに
教室から出て行ってしまった。
「--紗愛…?
どうしちゃったんだろう…?」
残された3人の友達は、不思議そうに、紗愛の出て行った方を
見つめるのだった。
「--ずるい!ずるいずるいずるいずるいずるい!」
誰も居ないお手洗いで、扉を蹴り飛ばす紗愛。
紗愛の表情は怒りに満ち溢れていた。
「どうしてわたしだけ!?」
紗愛は叫ぶ。
「こんなに真面目にやってるのに!?
どうして!?
ずるい…!ずるいずるいずるい!」
怒り狂った紗愛は
狂ったように髪の毛を掻き毟るー。
そしてー
「はぁ…はぁ…はぁ…」
紗愛はなんとか自分を落ち着かせると
鏡に映った自分を見て驚いたー
自分が、鬼のような形相をしているー
「---!!」
紗愛は、そんな自分の姿に怖くなってー
もう一度深呼吸をすると
”イライラしちゃだめ!わたし!”と呟いて
いつもの落ち着きを取り戻した。
「ほぅ…」
ジョーは呟く。
そのまま悪の魂に飲み込まれるかとも思ったが
案外、この子は強いようだ。
ジョーは興味深そうに、紗愛の状態を見守るー。
・・・・・・・・・・・・・・
放課後。
紗愛は明らかに元気のない様子で
下校していた。
いつも、途中までは何人かの友達と
一緒に帰るのに、今日の紗愛は
足早に逃げるようにして下校していたー
「はぁ…はぁ…どうしちゃったの?わたし…」
紗愛は困惑している。
少し前から、イライラが止まらない。
他人への嫉妬に
支配されそうになる…。
「--はぁ…はぁ…」
自分の暴走する感情をなんとか
抑えようとする紗愛。
「はぁ……はぁ…」
なんとか落ち着いてきた…
紗愛はそう思いながら、自宅の扉を開けて帰宅する。
「あ、姉さんおかえ…」
先に帰宅していた律太郎が笑顔で姉に
おかえり、と声をかけようとした。
「--うるさい!わたしに話しかけるな!」
紗愛はそう叫んで、イライラした様子で
部屋へと駆け込んだ。
「姉さん…?」
律太郎は不安そうに姉の入って行った扉を見つめるのだった。
「どうしてわたしばっかり!」
紗愛は怒りにまかせて部屋で暴れていた。
部屋の元を投げて
髪の毛を振り乱しながら暴れ続ける紗愛。
憑依させられた悪の魂の影響が一気に
広がって行くー
紗愛は、世の中への憎悪ー
周囲への嫉妬の感情に支配されていた。
「--ま、こんなものか」
検死官ジョーは失笑する。
この紗愛という子も同じ。
今までと何も変わらない。
悪の魂に支配されて、
悪の道に落ちる。
ただ、それだけのことー。
・・・・・・・・・・・・
翌日ー
ジョーは最後の見物に来ていた。
紗愛は、乱れきった部屋で
眠っているー
疲れて、そのまま寝てしまったのだろうー
10連休ー
休めずに働いた末に
犠牲になった男の憎悪ー。
それに支配された紗愛は
もう、元には戻れないだろう。
男が元々抱えていた世の中への不満ー
それら憎悪の感情に
紗愛は支配されてしまった。
目を覚ます紗愛ー
その表情には、もう優しい笑顔などなく、
世の中を憎む目つきに変わり果てていた。
「---悪の道に、堕ちたか」
ジョーは笑う。
人間の悪の部分だけを取り出し、
それを憑依させるー
どんなに強靭な心の持ち主でも、必ずー
「----わたし…」
立ち去ろうとしていたジョーが、
ふと振り返る。
「----みんなを、、、、傷つけたくない」
紗愛は目から涙をこぼしていたー
唇から血が出るまで、
歯を食いしばりながらー
「---…」
ジョーは、そんな紗愛の様子を見つめた。
ジョーは透明の状態だから、
紗愛には姿は見えない
「-----わ、、、たし、、、は…!」
紗愛はそのまま家から飛び出したー
わけも分からないまま
憎悪に支配されていく紗愛ー
そんな紗愛に出来る最後のことー。
それはーーー
大切な人たちを傷つけないように、
姿を消すことー。
「---ほう」
ジョーは走り去っていく紗愛を見ながら
呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
1週間後ー
女子高生が行方不明になったという
ニュースが報じられている。
恐らくは、紗愛のことだろうー。
「---憎悪に支配される直前に…」
ジョーはぶどうジュースを飲みながら言う。
「---新しい発見だな」
今まで、悪の魂を憑依させられた人間は
みんな、そのまま悪の心に支配されたー
だが、彼女はー
紗愛は、支配される直前に、
最後の抵抗をしたー
「ーーこれだから、やめられない」
ジョーは
ニヤニヤしながら、ぶどうジュースを飲み干すと、
窓の外の月を見ながら、微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---きゃはははははははっ!」
深夜の街で、ワルたちとつるむ少女の姿があった。
「ほんと、なにもかもがウゼー!」
少女はそう叫びながら、
壁を蹴り飛ばす。
今の彼女にとっての
心のあり処は、世間への不満を溜めこんだ
この人たちと一緒にいることだけー。
「--ははは…!
さ、行こうぜ、紗愛」
金髪の男がギャルのような格好になり、
変わり果てた紗愛を抱き寄せて微笑むー
紗愛はーー
完全に悪の魂に支配されて変わってしまったー
もう、家族への愛情も、
友達への愛情もないー
けれどー
紗愛は、最後の最後で、家族を、友達を傷つけないようにー
行方を晦ましたー
変わっていってしまう自分ー
それがー
紗愛に出来た最後の抵抗だったからー
「あははははははは!
今日もいっぱい気持ちよくしてね♡」
紗愛が嬉しそうに笑うー
世の中への憎悪に支配された紗愛は、
もう二度と、元には戻れないー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
久しぶりの悪の魂でした!
GWと絡めてしまいましたが
あまり関係なかったような…汗
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
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もう少しペース落とされてしっかり練ってみてはいかがですか?
どの話も大して変わらず面白いとは思えません…。
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しっかりしたシリーズだけの魅力があります。
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> もう少しペース落とされてしっかり練ってみてはいかがですか?
> どの話も大して変わらず面白いとは思えません…。
コメントありがとうございます~!
良質な作品は、Pixiv様や他サイト様にお任せします…汗
私の場合は練ってもたぶんこれ以上は難しそうです…!
ペースは、書くのが難しくなったら変えるかもですが
今のところはまだ考えていません…!
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> しっかりしたシリーズだけの魅力があります。
ありがとうございます~!
今後もシリーズ作品、そうでないものも含めて
私の出来る範囲で頑張ります!
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流石に100人超えてくると、予想を上回る子も出てきますね
しっかしコメでバッサリと斬る人もいるとは。無名さんの憑依無双ですってんころりんっと逝っちゃうぞ名前だけに
ちなみにGWは堕落し過ぎて6月になる直前まで影響が出てました。一番ダメなパターンです
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無様①>
ありがとうございます!
たくさんの人がいると予想外の人も出てくるものですネ~!
私はGW仕事でした~☆