グレて家を飛び出し、
地元の暴走族とつるんでいた少女ー。
そんな少女はある日、事故を起こしてしまい…?
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「へへへっ…お前は本当に可愛いなぁ~」
夜の峠の一角で、
夜景を見つけながら、
暴走族たちが、笑い声をあげていた。
暴走族のリーダー・アキラが、
女を抱き寄せて微笑む。
アキラは、
この辺りではちょっと名が知れている
暴走族のリーダーだった。
アキラに抱き寄せられた少女・愛衣(めい)は微笑むー
「あたしにはアキラしかいないよ…」
アキラに抱き寄せられて
安心した表情を浮かべる愛衣ー
彼女は、
家出少女だったー。
家庭は崩壊ー
父親は酒に溺れ、愛衣と母に暴力をふるった。
一方の母親は、父親がいないときに
愛衣でストレス発散をし、他の男と浮気を繰り返していた。
そして、容姿があまり良くなかった愛衣は、
それを理由にした理不尽ないじめを学校で
受けていた
親も、先生も、友達も、
誰も頼れない環境で育った愛衣ー。
愛衣は、ついにグレてしまい、そのまま家を飛び出したー
行く宛もなく、夜の街をさまよっていたところー
たまたまコンビニにやってきたアキラたち
暴走族と出くわした愛衣ー。
夜遅い時間に、
コンビニの前で、一人、底をつきそうなお金で
やっと購入したパンを食べていた愛衣を見つけて、
アキラは微笑んだ
「--お前、どうした?」
それが、アキラと愛衣の出会いだった。
誰にも受け入れられず、
行くあてもなかった愛衣を
アキラや、仲間の暴走族たちは
受け入れてくれたー
「そろそろ行く?」
暴走族の一人・カオリが微笑む。
カオリは、愛衣を除くメンバーでは
唯一の女性で、
大人の色気を振りまく女性だった。
まだ未成年の愛衣によって、
カオリは姉のような存在であり、
憧れだった。
「おっ、そうだな」
アキラがバイクに乗り込む。
愛衣も、近くに止めてあったバイクに乗り込む。
愛衣は、派手なメイクで夜の街を
連日、アキラたちと疾走していたー。
アキラは、行く場所のない愛衣を
こうして受け入れ、さらには自分たちのアジトに
愛衣を住ませてくれた。
愛衣にとっては、アキラたちは、本当に
家族のような存在だった。
たとえアキラたちが
世の中にとって、悪であったとしてもー。
「---」
アキラたちは夜の峠を疾走するー
バイクのエンジン音を響かせ、
馬鹿騒ぎしながら疾走するー
嫌なことも忘れて、
愛衣が生まれてきた喜びを感じることの
できる数少ない時間ー
バイクが騒音を立てながら疾走するー。
アキラたちはご機嫌そうに、
危険な運転を繰り返した。
愛衣も嬉しそうに微笑みながら
アキラたちに続くー
しかしー
それは”起きた”
こんなことになるはずがないー
そう思っていたー
けれどー
バイクがーー
突然バランスを崩した
いつもと同じように走っているつもりだった。
でもー
何かがいつもと違ったのかもしれないー
「-----あっ!」
愛衣は声をあげた。
しかし、もう手遅れだった。
猛スピードを出していたバイクから
愛衣は吹き飛ばされてー
そのまま…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ…」
愛衣が気付くと、
自分は浮いていたー
「うっそ…マジで?」
愛衣は下を見下ろすー。
そこにはー
炎上したバイクーーー
そしてーーー
ボロボロになって横たわる自分がいたー
「なんだよ…
あたし…死んだのかよ」
愛衣は呟く。
どうしようもない人生だった。
愛衣は、あっさりと死を受け入れたー
「---アキラ…」
人生で楽しかったのは
何も分からなかった小さい頃とー
アキラたちと過ごした最後の半年間だけー
「--」
愛衣は、”このまま成仏するのか?”と
考えながらも、
自分が自由に移動できることを知り、
成仏する前に、せめてもう一度アキラに
会いたいと思い、
アキラたちのアジトの方に向かったー
寂れた廃虚の一角に
アキラたちのアジトがある。
「---」
空中を浮遊している自分に違和感を覚えながらも、
愛衣はアキラたちを見つけた
「あっはははははははは!」
アキラの笑い声が響き渡るー
「-ーー」
愛衣は少しだけ寂しい気持ちになりながら
アキラたちの方に向かうー
アキラたちは、いつものように
楽しそうにバカ騒ぎしていた。
「アキラ…」
愛衣の存在には誰も気づかない。
愛衣はもう、
死んでしまったのだからー
アキラやカオリの、
いつも通りの楽しそうな姿を見て、
愛衣は少しだけ微笑むと、
「さよなら…」とだけ呟いて
一人、消えようとしたー
どうやって成仏すればいいのか分からない。
けれど、なんとなく、そのまま空高く浮かんでいけば
あの世に行ける気がしたー
「--いやぁ、まさか勝手に死んでくれるとはなぁ」
「--!?」
成仏しようしていた愛衣が、
動きを止める。
「--あははははは!ほんとよね~!」
カオリの笑い声も聞こえる。
カオリがアキラの方に近づいていくと、
アキラはカオリを抱き寄せてキスをした。
「---え」
愛衣が、困惑した表情で2人を見つめる。
アキラとカオリがそういう関係だった
素振りはこれまでに一度もなかった。
だから、二人がキスしたことに衝撃を受けたのだー
”お前は、俺の女だ。愛衣”
アキラは、いつもそんな風に言っていた。
決して可愛くない自分を、
大事にしてくれたアキラ。
そんなアキラを、愛衣は信頼していた。
それなのにー
「--あの女もバカだよなぁ!
俺が本気で愛してると思ってたみたいだけどよ
誰があんなブスなんか!」
「ふふ~ひっど~い!」
カオリが笑いながら言う。
「--エッチするための
肉便器として飼ってやってたけどよぉ
最近愛が重くて飽きてきてたし、
ちょうど死んでくれて良かったぜ!
くへへへへへへへへへ~!」
アキラが大笑いする。
周囲のメンバーも笑う。
「--ほんとうね~!
わたしもあの女が死んでくれてせいせいするわ~!」
カオリが笑う。
「--妬くなよ、カオリ。
俺はいつだってお前一筋だぜ」
「も~!アキラったら~!」
その光景を見ながら
愛衣は、怒りをたぎらせていた
「なんだよー…
結局…結局あたしのことなんて誰も…」
愛衣は呟く
「---アキラ…
あたしはあんたのこと…好きだったのに!」
愛衣は泣き叫びながらその場から
姿を消したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とあるカップルが、
休日のデートを終えて、帰路についていた。
「あ~もうこんな時間~!」
高校2年の水橋 茉莉(みずはし まり)がスマホの時間を見ながら言う。
落ち着いた雰囲気の可愛らしい少女。
彼氏のために一生懸命おしゃれをしたのか
可愛らしい格好をしているー。
その彼氏の時崎 誠吾(ときさき せいご)が
「そろそろ帰らないとな~」と笑う。
17:30ー
真冬で、あたりはもう真っ暗だ。
2人は、
アキラたちが縄張りとしている付近の高校に
通っている高校生。
「今日は楽しかったよ!」
微笑む茉莉。
誠吾は「あぁ、俺も」と微笑む。
たまたま、近くのコンビニを通りかかる2人。
「---はははははははっ!」
暴走族が、コンビニの駐車場に
派手な装飾のバイクを止めて大声で笑っていた。
「アキラは、わたしのものなのに、
あの女、すっかりその気だったもんね~!」
笑う女ー。
誠吾と茉莉は、目を合わせないようにして
自然とコンビニの前を通り過ぎて行こうとする。
その時だった。
「---あっ!?」
茉莉が、手に持っていたスマホを落とすー
「え?ま、、茉莉?」
誠吾が、茉莉の様子の異変に気付く。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
茉莉が苦しそうにその場に蹲って
動かなくなってしまうー
暴走族たちのうるさい声が響く中、
誠吾は、「ちょ、ちょっと!?茉莉!」と
急に苦しみ出した茉莉を心配して叫ぶー。
しかし、茉莉は返事をしない。
苦しそうにしていた茉莉は
やがて、苦しまなくてなりー
そしてー
「---アキラぁあああ!」
大声で暴走族たちの方に向かって叫んだ。
「ま…茉莉?」
誠吾が慌てて茉莉の名を呼ぶが、
茉莉は誠吾の方を見向きもしなかった。
「あ~?」
名前を呼ばれた暴走族のリーダー・アキラが
不機嫌そうに茉莉の方を見る。
「--ちょ、、ちょ!」
誠吾が、暴走族に声をかけた茉莉を
咄嗟に止めようとする。
しかし、茉莉は
誠吾を突き飛ばした。
「あたしのじゃまをするな!」
そのまま茉莉は威勢よくアキラたちの前に立った。
「なんだぁ?お前は?」
アキラは茉莉の方を見て、
ガムを噛みながら、茉莉を睨みつけた。
「---あんたのこと、愛してたのに」
茉莉が真顔で言う。
「え…ちょっ、、ちょっと!?」
彼氏の誠吾は意味が分からないまま困惑する。
茉莉は浮気でもしていたのか?
とー。
「--はぁ?誰だお前?」
アキラがガムを吐き捨てて、茉莉の方を睨むと、
茉莉も負けじとアキラを睨んだ。
「--あたし?
あたしは愛衣だよ!」
茉莉が叫ぶ。
穏やかで優しい雰囲気の茉莉が
いつもは絶対見せないような鋭い目つきで
アキラを睨む。
「--愛衣だぁ?
あははははは!
アイツは死んだよ!」
アキラと、周囲の5、6人の仲間が笑う。
「--あぁ、あたしは死んださ。
でもね。あんたたちの本当の想いを知って
成仏できずに、こうして、他人に憑依して
あんなの前に居るんだよ!」
「----」
アキラは、笑みを消して、茉莉を睨んだ。
「--お前…本当に愛衣か?」
アキラが言う。
その言葉に、茉莉は無言でアキラを睨みつけた。
その目つきから、
目の前にいるのは愛衣だと確信するアキラ。
「---ははは、そうかそうか。
ザンネンだったな。
お前みたいなブスと俺が付き合う?
冗談はよしてくれ!
お前と一緒にいたのは、お前が俺に
いつでも股を開いてくれたからだよ!
ひはははははは!」
「--テメェ!」
茉莉はアキラの方に襲い掛かる。
しかし、アキラの仲間が茉莉を背後から
掴み、動けないようにする。
「--くくく
しっかし、誰の身体だか知らないが
今のお前は可愛いぜ…」
アキラはそう言うと、茉莉に近づいて、
茉莉の胸を触り始めた。
両手を掴まれ、身動きの取れない茉莉。
「んあぁあ♡ や、、、やめ…触るな!」
茉莉が叫ぶ。
誠吾は、自分の彼女が突然豹変して、
暴走族たちに胸を触られたり、
キスをされたりするのを、
黙って見ていることしかできなかった。
「---ま、お前はその新しい身体で
幸せになれよ」
アキラは笑いながら、
茉莉の長い黒髪を撫でまわし、
そのまま突き飛ばした。
茉莉は、コンビニの駐車場に倒れ、
アキラを睨みつけた。
「---じゃあな、愛衣。
お前の身体は好きだったぜ!」
アキラはそう言って笑うと、
そのまま仲間と共にバイクに乗って
走り去ろうとしたー
「--テメェ!あたしは絶対に許さないからな!」
茉莉が大声で叫ぶ。
だがー
アキラたちのバイクはそのまま走り去ったー
「--くそっ!待ちやがれ!」
怒鳴り声を上げる茉莉。
しかしー
そんな茉莉を、誠吾が止めた。
「ま、、茉莉!」
誠吾が言葉をかけると、茉莉は誠吾の方を見た。
「あたしに何か用?」
茉莉は不機嫌そうに言う
「よ…用というか、、その…」
誠吾が困惑した様子で
何を言っていいか分からずにいると
茉莉は叫んだ
「--うじうじした男だな!
あたしに何の用って聞いてんだよ?
早く答えな!」
茉莉の気迫に気圧された誠吾。
だが、やっとの思いで誠吾は答えた。
「--あ、、あの…俺の、、彼女の身体…
返してほしいんですけど…」
誠吾は冷や汗をかきながら、
そう呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
公園のベンチに腰かけて話をする2人。
隣にいる茉莉は足を組みながらアキラとのことを
話していた。
誠吾は、茉莉に憑依した
愛衣という少女から、
どのようないきさつがあったのかを聞かされていた。
「そ…そんなことが…
お、おれには分からない世界だなぁ…」
誠吾は普通の高校生。
荒れた家庭環境や、暴走族の世界のことは、分からない。
「--あたしは、あいつらを絶対許さない。
復讐してやるんだ」
茉莉が言う。
誠吾は、隣で足を組んでいる茉莉が
気になって仕方がなかったが、
なるべく気にしないようにして言った。
「で…でも、、復讐なんて」
「うるさい!あたしの何が分かるのさ!」
茉莉が立ち上がる。
「--あたしにはアキラしかいなかったんだ!
それなのに裏切られたこの気持ち…
あんたに分かるの?」
茉莉に憑依した愛衣は、
茉莉の身体を使って、アキラたちに復讐するつもりだった。
「---気持ちなんて分からない!
けど、復讐なんて」
誠吾が言うと、茉莉はうるさい!と叫ぶー。
夜の公園で、
まるで高校生カップルが喧嘩しているかのような光景ー
「-ーー関係ないやつに、あたしの人生は
邪魔させない」
そう言って歩き出す茉莉。
「----わかったよ
俺にきみの人生を邪魔する資格はない」
誠吾が茉莉に向かって声をかけた。
「--でも…!
関係ないやつに茉莉の人生は邪魔させない!」
誠吾が茉莉の前に立ちはだかって言うと、
茉莉は誠吾の方を睨みつけた。
「-----……」
茉莉の中にいる愛衣は、
誠吾の茉莉に対する想いを感じ取って、沈黙する。
「-ーーーふん」
茉莉は不機嫌そうに言うと、
その場から立ち去ろうとした。
「--ど、どこへ!?」
誠吾が立ち去ろうとする茉莉に声をかけると、
茉莉は叫んだ
「この身体はあたしのものだ!
あたしがどうしようと勝手だろ!」
それだけ叫ぶと、茉莉は足早に走り去ってしまった。
「ちょ…!待てよ!おい!」
誠吾は慌てて茉莉を追いかけたが、
彼女を見失ってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜の街を歩きながら、
茉莉は笑みを浮かべたー
アキラは毎週日曜日、必ずとある場所を一人で訪れるー。
その時がチャンスー
明日がちょうど、日曜日だ
「--あたしの怒りを思い知らせてあげるー。」
茉莉は、悔しそうにそう呟くと、
ある場所に向かって歩き始めたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
暴走族少女に憑依されてしまった
少女の運命は…・?
続きは明日デス~!
コメント
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復讐憑依物でしたか~。全然関係ないのに憑依された茉莉は可哀そうなことになってますが……。
一体何をするつもりなのか、次回が楽しみですね!
SECRET: 0
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> 復讐憑依物でしたか~。全然関係ないのに憑依された茉莉は可哀そうなことになってますが……。
> 一体何をするつもりなのか、次回が楽しみですね!
ありがとうございます~!
七葉様関係で生まれた作品だったりします~笑