<憑依>孤立②~憎悪の果て~(完)

人々の記憶から自分の存在が
消されていくー。

憑依能力を悪用するクラスメイト。

次第に忘れられていく彼の運命はー?

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昼休み。

いつものように、
何気なく、友人の真壁(まかべ)の座席のところに向かう海人。

真壁とはよく、昼休みに
カードゲームなどで遊ぶことが多い。

「真壁!今日はとっておきのデッキを作って来たぜ」
海人が笑いながら言うと、
真壁の表情から笑みが消えた。

「あれ……?ごめん…誰だっけ?」
真壁が苦笑いしながら言う。

周囲の男子生徒に聞く真壁。

しかし、他の生徒も首をかしげている。

「お…おい!真壁!俺だよ…!」

真壁は苦笑いしながら言った。

「…転校生か?
 俺は真壁 拓斗だ。よろしくな」

手を差し出す真壁。

「---!!」
海人は、離れた座席に座っている美智雄をにらんだ。

美智雄がニヤニヤしながら海人の方を見ている。

「ーーーお前!!」
海人が美智雄の方に走って行く。

美智雄の胸倉をつかむ海人。

「--どんどん、みんなから忘れられていく恐怖…」
美智雄がニヤニヤしながら呟く。

「お…おい!もうやめろって!
 俺に怒ってるなら、俺に何かして来いよ!
 真壁とか、千佳子とか、巻き込むのはおかしいだろ!」

海人が叫ぶ。

しかし、美智雄は薄ら笑いを消すことはなかった。

「--じゃあ…放課後。東棟の空き教室で待ってるから
 じっくり話し合おうじゃないか」

美智雄はそう言うと、
ブツブツと呟きだした。

生気のない目で海人を見つめながら
ニヤニヤしている美智雄―

海人は、危機感を抱いていた。

妹の千佳子に、
親友の真壁たちー。

完全に自分のことを忘れているー

このままでは…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

美智雄に指定された空き教室にやってきた海人は叫ぶ。

「おい!美智雄!」
海人がそう叫ぶと、
姿を現したのはー

彼女の愛結だったー

「ふふふ…待ってたよ」
がに股で歩きながら近づいてくる愛結。

「お…おい…まさか!」
海人が唖然としながら言うと、
愛結は笑った。

「--ぴんぽ~ん!
 わたし、美智雄くんに憑依されちゃったぁ~!
 えへへへ~!」

愛結が嬉しそうにスキップしながら
教室中を走り回っている。

「いやぁ~!こんなカワイイ子と付き合ってるなんて
 きみは本当にリア充だな~!」

愛結が胸を触りながらニヤニヤとしている。

「おい!美智雄!俺の彼女に手を出してみろ!
 お前を八つ裂きにしてやるぞ!」

海人が大声でどなった。

愛結は「こわ~~~い!」とふざけたポーズをとって
海人を挑発する。

海人の怒りは爆発寸前ー
いや、既に爆発していた。

確かに、トイレで弁当を食べたり、いつも一人でコソコソしている印象の
美智雄をからかったことは悪かったとは思う。

しかしー

「--美智雄!悪かった!俺の言葉がお前を傷つけたなら謝る!」
海人は土下座したー。

100パーセント、心から自分が悪いと思っているわけではない。

けれどー
こういう状況では素直に謝ることこそが、
最大の解決策であることを海人は知っていた。

「---!!」
海人の手を、愛結が踏みにじった。

「---お前を、孤立させてやる」
愛結が邪悪な笑みを浮かべて、
海人を見下している。

「---な…」
海人は、愛結を見上げて唖然とする。

そして、反笑いで叫んだ

「そうか!お前、俺がリア充だってことを
 ねたんでるのか?」

海人の言葉に、愛結の表情から笑みが消える。

「彼女も居て、妹と仲良しで、
 友達もたくさんいて、
 毎日が楽しそうな俺を妬んでるんだろ?」

海人は、立ち上がると、
愛結を睨みつけて叫んだ。

「---この根暗野郎!
 そんなんだから、孤立するんだ!」

海人は、今の状況で一番言ってはならないことを
言ってしまったー

愛結の表情が歪む。

「---うへ…うへへへへへへへへへ
 きみはいつもそうだ…!
 そうやって、周囲をデリカシーのない発言で傷つけていく。
 君自身は悪気はないんだろう。
 でも、君の何気ない発言で傷ついている人はたくさんいる

 くへへへへ…へへへへへ

 決めたよ! 
 きみを徹底的に孤立させてやる!」

愛結はそう言うと、にっこりとほほ笑んだ

「わたし、今から海人のこと、忘れちゃうね!えへっ!」
イタズラっぽくウインクすると愛結が
「うっ…あ…あ」と苦しそうな声をあげはじめた。

「おい!やめろ!ふざけんな!おい!美智雄!
 愛結は無関係だろ!お!」

海人は狂ったように叫ぶ。

愛結に忘れられてしまうなんて耐えられない

「んひっ…♡ あ…♡ 
 海人…海人ぉ…♡」

愛結が虚ろな目で痙攣をおこしながら
ブツブツと呟いている。

「かいとぉ…♡ かいと…
 あ、、、あ…
 か…い…ちお…」

愛結の目がとろんとして、
虚空を見つめている。

海人はどうにかしようと思いながらもどうにも
出来ず、困惑していたー

「---ちお…みちお…
 み…みちお♡」

愛結の目がとろんとした状態から
輝きを取り戻していく。

「み…みちおくん~♡ えへへへへへ」
愛結はそう言ってそのままその場に倒れた。

「---あ、愛結!」
海人は必死に倒れた愛結を抱きかかえて
呼び起こす。

「--あ…」
愛結が目を覚ました。

「愛結…よかった」
海人は愛結が目を覚ましたことに安心するー

しかしー

「--あ、、、あの…」
愛結が海人の方を見た。

海人の背筋に悪寒が走ったー。

愛結の反応を見て、
愛結が言葉を発するよりも前に、
愛結の身に何が起きたのか、なんとなく分かってしまったからだー。

「…だ…誰ですか…?」
愛結が、困り果てた表情で言う。

「--お、、おい…嘘だろ」
海人は唖然とする。

絶望感が背筋を走って行くような、
身体中に絶望の文字が充満していくような
そんな不気味な感覚を覚えながら、海人は叫んだ。

「おい!嘘だろ!!愛結…!頼む…!
 俺だよ!海人だよ!」

海人は叫ぶ。

しかし、愛結は怯えた表情を浮かべて海人を
見つめているだけで、反応を示さない。

「無駄だよ」
空き教室に美智雄が入ってきた。

いつものような生気のない顔に
不気味な笑みを浮かべながら。

そしてー

「あ、みちお~♡」
愛結が嬉しそうにそう言うと、美智雄の方に
近づいて行き、美智雄に抱き着いた。

呆然とする海人

「くくく…」
美智雄は愛結の頭を優しく撫でる。

「--あぁ…♡」
愛結は嬉しそうに顔を赤らめている。

「--おい!美智雄!貴様ぁ!」
海人が怒り心頭で叫ぶと、
美智雄は笑った。

「憑依した人間の記憶は僕の思いのままなんだよ。
 記憶を消すことも、改ざんすることもね

 いやぁ、憑依薬ってすごいなぁ」

ブツブツとつぶやくようにして言う美智雄。

「こんなことなら、もっと早く憑依すればよかった」
にやりと笑いながら、美智雄は勝ち誇った表情で
海人を見つめる。

「--お、、おい!頼む!やめてくれ!
 愛結を元に戻してくれ!おい!」
泣きそうになりながら海人は叫ぶ。

そんな海人を見つめながら
美智雄は笑いながら愛結に話しかけた。

「知り合い?」

「ううん。全然知らない」
愛結ははっきりとそう答えた。

美智雄は愛結と笑いあいながら、
そのまま空き教室から立ち去って行く

「そ…そんな」
空き教室に膝をつく海人。

確かに自分は、充実した学校生活で
有頂天になっていたかもしれないー

けれどー
他人を巻き込むようなーー
こんなやり方ー

海人は怒りに震えたものの、
どうすることもできずに
そのまま下校したー

「なんとか…なんとかしないと」
海人は、美智雄の”憑依”にどう対抗するか
考えながら家へと帰宅するー

しかしー
家の鍵がしまっていた。

いつも、自分が下校する時間帯には
鍵が開いているのにー。

そう思いながら、インターホンを鳴らす。

「はい」
中から母の声が聞こえてくる

「あ、母さん!俺だけど、
 鍵がしまってて」

海人が苦笑いしながら言うと、
母親から帰ってきたのは、
予想もしない言葉だった。

「あの…どちら様ですか?」
困惑する母の声

「--え…か、、母さん?
 俺だよ!海人だよ!」
海人がそう言うと、
母親は困り果てた声で言う。

「--千佳子の友達かしら?
 ねぇ、千佳子!」

妹の千佳子を母親が呼ぶ。

呼ばれた千佳子がやってきたのだろうか。

インターホンから妹の声も聞こえてくる。

「--えぇ?知らないよ…誰?」

千佳子の声。

そして、母の声が続けて聞こえてきた。

「あの、、すみません…
 うちに息子はいませんので」

母はそう言うと、インターホンを切ってしまった。

表札からは、自分の名前が消されている。

「お…おい…母さん!
 嘘だろ!!おい!!ちょっと!!なぁ!!」

叫ぶ海人ー

しかし、家の中から返事が返ってくることはなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

昨夜は路上で一夜を過ごした。

怒りに震える海人は、
美智雄を血眼になって探す。

「もうゆるさねぇ」

このままじゃ”自分の居場所”が無くなってしまうー。
美智雄のやつを、なんとかしなくてはー。

「美智雄!」
教室に駆け込んだ海人。

しかしー
クラスメイトたちが白い眼で海人の方を見る。

「---誰?」
「知らない?」
「転校生?」
「さぁ?」

ざわつくクラスメイトたちー

「おい!美智雄!」
海人はなりふりかまわず美智雄の方に向かう。

美智雄はニヤっと笑った。

「昨日は楽しかったよ。クラスメイト、家族、
 君のことを知っていそうな人物、役所…
 あらゆる人に憑依して、君の記憶を
 消して回ったよ」

美智雄が笑う。
その笑みは、まるで悪魔のようだった。

「---テメェ」
海人は拳を握りしめる。

しかし、美智雄は強気な態度を崩さない。

近くにいた愛結を抱き寄せると、
愛結といっしょに、海人を見下すような目で
見つめて笑う。

「君は”孤立”した。
 どうだい?孤立する人間の気持ち…
 わかったかい?」

海人は、その言葉を聞いて、美智雄にとびかかろうと思った。

しかしー
担任の先生が入ってくる

「おや?君は?」
先生も、海人のことを忘れていたー

「くそぉぉぉぉ!」
海人は大声で叫ぶ。

「--授業が終わったら、相手してやるよ」
美智雄はそう囁いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

授業後。

海人は、空き教室にやってきた。

「ふふふ…最後はこの身体でお別れしてやるよ」
愛結が両手を広げながらふざけた様子で言う。

愛結の側には、意識を失った美智雄の身体が
横たわっている。

「---美智雄!頼む!元に戻してくれ!」
海人は必死に叫んだ。

このままじゃ、自分の存在が
消されてしまうー

人々から忘れ去られるという地獄ー

海人は、恐怖した。

「--や~だね!」
愛結は、海人に唾を吐きかける。

海人は怒りに震えた。

「---僕はね、やると決めたら徹底的にやるんだ
 徹底的に…ね。

 例えば漫画を読むときは、
 第何巻の何ページでどのキャラが登場したかまで
 完璧に覚える

 勉強するときは、テストに出ない範囲まで完璧に覚える

 いじめられた時、嫌な思いをしたときは
 相手のことを骨の髄まで知るー

 ゲームは、徹底的にやりこむ。

 僕はそういう人間だ」

愛結が両手を広げながら演説するかのように言う。

「そして、最後だー。
 もう憑依薬の残量も少ないー
 最後に僕がすることはーーー」

「---!!」

海人は目を見開く。
愛結が倒れて、美智雄が起き上がる。

「僕自身がーー
 きみのことを忘れることだー」

美智雄はにやりと笑った。

「そ、、そんなことが、、できるのか…?」
海人は言う。

憑依した他人の脳に干渉できたとしても
自分が、忘れたいことを忘れるなんて、できないはずだー

「---この薬があれば、できるんだよ」
美智雄は、最後の憑依薬を、愛結に渡した。

「---え?」
愛結が首をかしげる。

「これを飲んで、僕に憑依して、
 僕の中から、コイツの記憶と憑依薬の記憶を消してくれ」

美智雄がそう言うと、愛結は不思議そうな顔をしながらも
「わかった」と微笑む。

「--おい!待て!やめろ!」
海人が叫ぶ。

「--僕は徹底的にやったー。
 たぶん、君のことを覚えている人は、
 もうこの世にいないー

 覚えていても「見たことあるなぁ」ぐらいの人しか
 残ってない。

 誰も、君のことなど、覚えていない」

愛結が憑依薬を飲んで倒れる。

美智雄がにやりと笑った。

「ばいばいー」

「やめろーーーー!」

愛結が、美智雄に憑依して、
美智雄が痙攣しながら
何かを呟いているー

そして、美智雄が倒れて、
愛結と美智雄が起き上がった。

「----あれ…僕は…?」

美智雄が生気のない目で起き上がる。

「---み、美智雄!」
海人が怒りの形相で叫ぶ。

しかしー

「だ…誰だ…きみは?」
美智雄は、もう、海人のことを覚えていなかった。

「--知ってる?」
愛結に尋ねると、愛結も首を振った。

「---転校生かな?いこ!美智雄!」
美智雄の手を引っ張って空き教室から出ていく愛結。

美智雄は海人の方を振り返ったが、
もはや、笑うこともなく、完全に知らない人を見る目線だったー

「う…うわあああああああああああ!」
空き教室で、海人は一人叫ぶ。

もう、誰もー
海人のことを覚えていないー

空き教室に赤いペンで文字が書かれた紙が落ちていた。

海人はそれを見る。

そこにはーーー

”これが真の”孤立”だー”

と書かれていたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依薬で記憶を~…というお話でした…

私が書いておきながら言うのもアレですが、
海人君の知り合いや顔見知り全員に憑依して、
記憶を消すなんて、難しいような気も…笑

美智雄くんの執念が凄まじい…ということに
しておきましょう~☆

お読み下さりありがとうございました!

憑依<孤立>
憑依空間NEO

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    確かに海人は無神経でしたが、特別悪意があったり、虐めた訳でもないし、ちゃんと謝ってるのにそれでも許さずに、あそこまでやる美智雄は実に陰湿ですね。そりゃあ、そんな捻じくれた性格なら孤立するのも当然ですね。

    海人の無神経な言動が美智雄の復讐のキッカケになりましたが、彼女をどさくさに紛れて強奪してるあたり、海人の言う通り、美智雄はリア充の海人にかなり嫉妬してる感じがあるので、もしも海人に無神経な言動がなくても結局同じことやる可能性がなり高そうに思えます。

    それにしても、美智雄の復讐のやり方は色々甘いというか、問題がありますね。

    最後に自分の中から海人と憑依薬の記憶を消すよりも、海人の中から自分の記憶と憑依薬の記憶を消すべきだったと思います。

    だって、そうじゃないと復讐に殺されてもおかしくないし、海人が憑依薬を入手して、自分ですべてを元に戻す可能性もあるでしょうから。

    仮にそうじゃなくても、海人の性格自体が変わった訳じゃないなら、またいつの日かリア充に戻っちゃうんじゃないでしょうか。

    それを防ぐには海人の性格も憑依薬で自分みたいな性格に変えるまでやらないと。

    執念は認めますが、美智雄は正直、想像力などが足りないように思います。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 確かに海人は無神経でしたが、特別悪意があったり、虐めた訳でもないし、ちゃんと謝ってるのにそれでも許さずに、あそこまでやる美智雄は実に陰湿ですね。そりゃあ、そんな捻じくれた性格なら孤立するのも当然ですね。
    >
    > 海人の無神経な言動が美智雄の復讐のキッカケになりましたが、彼女をどさくさに紛れて強奪してるあたり、海人の言う通り、美智雄はリア充の海人にかなり嫉妬してる感じがあるので、もしも海人に無神経な言動がなくても結局同じことやる可能性がなり高そうに思えます。
    >
    >
    > それにしても、美智雄の復讐のやり方は色々甘いというか、問題がありますね。
    >
    > 最後に自分の中から海人と憑依薬の記憶を消すよりも、海人の中から自分の記憶と憑依薬の記憶を消すべきだったと思います。
    >
    > だって、そうじゃないと復讐に殺されてもおかしくないし、海人が憑依薬を入手して、自分ですべてを元に戻す可能性もあるでしょうから。
    >
    > 仮にそうじゃなくても、海人の性格自体が変わった訳じゃないなら、またいつの日かリア充に戻っちゃうんじゃないでしょうか。
    >
    > それを防ぐには海人の性格も憑依薬で自分みたいな性格に変えるまでやらないと。
    >
    > 執念は認めますが、美智雄は正直、想像力などが足りないように思います。

    わわ~!
    たくさんのコメントありがとうございます~☆

    ツメの甘い所も含めて美智雄くん…!
    ということですネ…!

    短絡的に行動して、自分中心に考えて
    興味が無くなったら
    どうでもよくなってしまう…
    そんな性格の持ち主なのかもしれません…!

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