<憑依>孤立①~消されていく自分の存在~

彼はリア充だったー。

しかし、ある日、クラスメイトをバカにしてしまったことで、
憑依薬を持つクラスメイトに復讐されてしまうー

消されゆく、自分の存在ー…。

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天坂 海人(てんさか かいと)は
リア充だった。

彼女である生徒会副会長の愛結(あゆ)との
関係も良好、
先生たちからも気にいられていて、成績は優秀
家族関係も良好、
妹の千佳子(ちかこ)からは頼りにされ、
クラスにも友達で溢れているー

まさに、リア充と呼べる学生生活を送っていた。

「---楽しみだなぁ~」
海人がニヤニヤしながら言う。

「~~も~!催促しないの!」
彼女の愛結が呆れ顔で言う。

海人は、素行も良く、
真面目な性格であるものの
”他人への配慮が欠ける”一面があった。

「--誕生日プレゼントは
 ちゃ~んと用意してるから、
 楽しみにしててね!」

愛結がにこにこしながら言う。

いつも通りの日常。

海人は、楽しい学校生活を送っていたー。

だがー。
そんな、かけがえのない日常は、この日が
最後になることを、海人は知らなかった。

「---お!」
海人が、弁当箱を持ってトイレから出てきた
男子生徒に声をかける。

眼鏡をかけた生気の感じられない男子生徒。
髪の毛がぼさぼさに伸びて
いつも無表情の男子生徒・美智雄(みちお)だった。

「---美智雄!またトイレでお昼か?」
海人は笑いながら言う。

いつも一人でブツブツ呟きながら
ケラケラと笑っているような美智雄は、
不気味がられて、クラスでも孤立していた。

そんな孤立している美智雄にも、
海人は気さくに話しかけていた。

海人に悪気はないー
だがー
海人の日々の発言は、美智雄の怒りを
どんどんため込んでいることにー
海人は気づいていなかった。

「弁当ぐらい、教室で食べても大丈夫だと思うぜ~」
海人が笑いながら言う。

「…余計なお世話だよ」
美智雄が小声でつぶやく。

「--そんなんだから孤立するんだぜ~?美智雄。
 なんだったら俺が一緒に弁当を食べてあげてもいいけど?」

海人が言う。

”そんなんだから孤立するんだぜ”

その言葉を聞いて、美智雄は怒りを爆発させた。

今日だけではない。
日々、海人からのデリカシーのない発言に美智雄は
怒りを溜めこんでいた。

「---何様だよ」
美智雄が怒りの口調で呟いた。

「え?」
悪気なく発言している海人は、首をかしげる

「”一緒に弁当を”食べてあげてもいい”って、何様だよ?」
美智雄が、血走った目で海人を見る

「---お、、おい~
 そんなに怒るなって~!

 ほら!もうちょっと心を開かないと
 いつまでも孤立したままだぜ!」

海人が言うと、
美智雄は海人に向かって言った。

「--小さい頃から、ずっと孤立してきた
 ぼくの辛さなんてお前には分からない」

美智雄がブツブツと、
やっと聞こえるぐらいの大きさの声で言う。

「---出た~!
 またマイナス思考~!」

海人が、美智雄を茶化すようにして言うと、
美智雄は、海人を睨んで
ブツブツと呪文のような言葉を唱え始めた。

何かを言っているようだったが、
海人には聞こえなかった。

美智雄は、そのまま立ち去って行く。

「---ねぇ」
偶然通りかかった彼女の愛結が、
海人に声をかけた。

「---別に美智雄くんが
 どこで食べたっていいじゃない…
 あまり茶化さない方がいいわよ」

愛結の言葉に
海人は「別にそんなつもりじゃないよ」と
笑いながら答えた。

美智雄は、チラっと振り返ると、
ブツブツと一人で何かを呟く。

「---”孤立”させてやるー」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

帰宅した美智雄は、
部屋中に積まれた
スプラッター映画のDVDをどかすと、
引き出しから何かを取り出した。

「くふ」
美智雄は笑う。

「くふくふくふくふくふくふ」
美智雄の手に握られているのは
”憑依薬”

怪しげなサイトで、1年前に購入したものだ。

美智雄は
スプラッターやオカルト、スピリチュアル、そういったものが
大好きだった。

そんな趣味を楽しむうちに、偶然、とあるスピリチュアルサイトで見つけたのが
”憑依薬”だったー

「--孤立させてやる」
美智雄は普段学校では見せない笑みを浮かべると、
静かに微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「--お兄ちゃん~」
妹の千佳子が、兄の海人に話しかける。

千佳子は、海人ととても仲良しで、
海人のことを本当に尊敬していた

「ん~?どうした?」
海人が、学校に行く準備をしながら言うと、
海人の部屋に入ってきた千佳子が言う。

「--ちょっと今日提出の宿題で
 ひとつ分からないところがあって」

そう言いながら千佳子がノートを
差し出す。

海人がそれを掴もうとしたその時だったー

千佳子がノートを落とす。

「--?」
海人が千佳子の方を見るとー

千佳子は、唇を震わせていたー

「ど、、どうした?」
海人が言うと、
千佳子が口を震わせながら
やっとの思いで呟いた

「た…す…け…て…」

ーー!?

海人は「どうした!?」と慌てて叫ぶ。

海人は妹の千佳子を溺愛している。
その、千佳子が目の前で苦しんでいる。

千佳子は立ったまま、身体を激しく揺らして
白目を剥いている。

「はが…が・・あっ…ぐひ…あ…ぐひぃ!」
奇声を発している千佳子ー

海人が救急車を呼ぼうとした
その時、千佳子の目に輝きが戻りー
千佳子は微笑んだ。

「--やぁ…海人くん」
千佳子がにやりと笑みを浮かべる。

「な…?」
海人が戸惑っていると
千佳子は自分の胸を触って微笑んだ。

「--彼女だけじゃなくて妹まで可愛いなんて…
 ほんとリア充だなぁ…」

千佳子が”ふへへ…これが憑依かぁ~”と
独り言のように呟きながら笑っている。

「--な…ち、、千佳子?」
海人が戸惑っていると、
千佳子はにやりと笑みを浮かべたー。

「お兄ちゃん~わたし、
 からだを奪われちゃった~!」

千佳子がスキップしながら笑う。

「な…何だって!?」
海人は、大げさに驚いてみせた。

千佳子はたまにいたずらっぽい所があって
ドッキリを仕掛けてくることがある。

今回も、それだと思ったのだ。

「ーーふふふ~!この身体は僕のものだ~!」
千佳子がそう叫ぶと、
制服を乱暴に脱ぎ捨てはじめた。

「お…おい!千佳子!さすがにそれは!」
海人が止めようとすると、
千佳子はにやりと笑う。

「--僕だよ…海人くん」

その表情を見て、
海人は氷ついた。

妹の千佳子とは思えないほどの不気味な表情ー

そして、その表情は
学校で孤立している美智雄の表情に
そっくりだったー

「---くへ…僕のこといつもいつもバカにしてさぁ…
 ゆるせないよなぁ」

千佳子がそう呟くと、
ブツブツブツブツ何かを呟き始めた。

「---お、、おい!千佳子!おい?」

本当にドッキリなのかー
海人は不安に駆られながら千佳子の名前を呼ぶ

「--まだ信じてないようだなぁ~」
千佳子はそう言うと、兄の机に飛び乗って、
そのまま股を広げて微笑んだ。

「わたし、こんなことするぅ~?
 えへへへへ!
 今のわたしは何でもしちゃうよぉ~
 うひひひひひ~!」

自分のアソコのまわりをいやらしく触る千佳子

「おい!やめろ!」

「--うへへへへ!海人くん~無駄だよ。
 憑依薬って薬で僕は今、君の妹の身体を
 乗っ取ってるんだ。
 どんなに呼びかけても、この女は思いのまま!」

千佳子が机から飛び降りると、海人の方を見て笑った。

「ーー僕のこと、いつもいつも見下しやがって」

千佳子がブツブツと呟き始める。

相手は名乗っていなかったが、
海人は、美智雄が憑依しているのだと気付き、叫んだ。

「---美智雄!妹から出て行け!」

海人は叫ぶ。

すると、千佳子は「あぁ~出ていくよ~!」とニヤニヤしながら笑う。

「ーーー君みたいなやつの妹、どんなに可愛くても
 こっちからお断りだ

 ま、せっかくだから、憑依薬の力、見せてやるよ」

千佳子が笑いながら得意気な表情を浮かべると、
ブツブツと呟き始めた

何を呟いているのかは分からない。

だがー
”お兄ちゃん”だとか
”知らない”だとか、
そういう言葉が聞こえる。

千佳子の体がプルプルと震えはじめる。

時々「ん…うぅ」だとか、苦しげな声が
聞こえてきて、海人は不安そうに千佳子を見つめる。

「---ふ…ふふふ…さぁ…どうなるかな?」
千佳子はにやりと笑うと、そのまま倒れた。

美智雄が、千佳子の身体から抜け出したのだー。

「千佳子!」
慌てて海人が千佳子を抱き起すと、
千佳子は、目を覚ました。

”服を脱いでいる状況をどう説明すれば?”と
思いながら海人は
ひとまず千佳子が無事に目を覚ましたことを喜んだ。

しかしー

「だれ…?」
千佳子が不思議そうな表情を浮かべて呟く

「--あなた、、だれ…?」

「---!!」

海人は驚いて目を見開く。

「ち…千佳子?」

「---ひっ!?いやああああ!?」
千佳子は自分が服を着ていないことに
気付くと、慌てて自分の制服をかき集めて
そのまま部屋の外に飛び出してしまった。

「おい!千佳子!」

慌てて千佳子を追う。

自宅の1階に服を着ながら駆け下りていく千佳子。

そしてー
千佳子は母親に向かって叫んだ

「お、、お母さん!知らない人が!」

きょとんとする母。

「---知らない?
 何言ってるの?海人でしょ?」

苦笑いしながら言う母。

しかし、千佳子は
意味の分からない言葉を叫ぶだけだった。

兄の海人を怯えるように避けながら
千佳子はそのまま学校に向かってしまった。

「---まぁ、疲れてるのね。
 高校受験も近いし」
母が言うー

海人は”いや、違うー”と悟る。

”アイツが何かしたんだー”と

・・・・・・・・・・・・・・・・

学校に到着した海人は
鬼のような形相で美智雄のところに向かい、
美智雄の胸倉をつかんだ。

「---おい!俺の妹に何をした!」

怒鳴られる美智雄。

美智雄はいつものようにブツブツと
何かを呟いたあとに言った。

「--きみの妹から、
 きみの記憶を消した」

ーー!!

信じられない言葉に、
海人は愕然とする

「---な、、なんだって!?」

「--憑依しているからだの脳に
 直接干渉して、思考を書き換えたり
 記憶を消したりできるんだよ」

「---な…!千佳子を元に戻せ!」

海人が叫ぶ

「---海人、どうしたの~?」

たまたま通りがかった彼女の愛結が
姿を現す。

海人は美智雄から手を放す。

美智雄がニタァと笑った。

「--孤立」

それだけ呟くと、美智雄は
ケラケラと笑い声を立てながら
海人の方を見つめる。

「---みんなから忘れられたら、
 きみ、どうなっちゃうんだろうね。
 ケケ…うけけけけけけ…」

美智雄は、そう呟きながら立ち去って行く。

「おい!待て!やめろ!!おい!!」
海人は美智雄に向かって叫ぶー

「ど…どうしたの?」
困惑する彼女の愛結。

「--な、なんでもない!」
愛結を巻き込むわけにはいかないー

そう思った海人は、
立ち去る美智雄に向かって叫んだ。

「お、、、おい!お前の気を悪くしたなら悪かった!」

海人が叫ぶー

しかしー
美智雄は、振り返りもせずに、笑みを浮かべた。

「--く…ふふふふふ…
 孤立させてやるー」

憑依薬の力を手にし、
狂気に支配された美智雄の計画は、
まだ始まったばかりだったー

②へ続く

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コメント

一度、没にしかけたネタなのですが
せっかくなので書くことにしました~!

続きは明日デス!

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憑依<孤立>

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