彼はリア充だったー。
しかし、ある日、クラスメイトをバカにしてしまったことで、
憑依薬を持つクラスメイトに復讐されてしまうー
消されゆく、自分の存在ー…。
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天坂 海人(てんさか かいと)は
リア充だった。
彼女である生徒会副会長の愛結(あゆ)との
関係も良好、
先生たちからも気にいられていて、成績は優秀
家族関係も良好、
妹の千佳子(ちかこ)からは頼りにされ、
クラスにも友達で溢れているー
まさに、リア充と呼べる学生生活を送っていた。
「---楽しみだなぁ~」
海人がニヤニヤしながら言う。
「~~も~!催促しないの!」
彼女の愛結が呆れ顔で言う。
海人は、素行も良く、
真面目な性格であるものの
”他人への配慮が欠ける”一面があった。
「--誕生日プレゼントは
ちゃ~んと用意してるから、
楽しみにしててね!」
愛結がにこにこしながら言う。
いつも通りの日常。
海人は、楽しい学校生活を送っていたー。
だがー。
そんな、かけがえのない日常は、この日が
最後になることを、海人は知らなかった。
「---お!」
海人が、弁当箱を持ってトイレから出てきた
男子生徒に声をかける。
眼鏡をかけた生気の感じられない男子生徒。
髪の毛がぼさぼさに伸びて
いつも無表情の男子生徒・美智雄(みちお)だった。
「---美智雄!またトイレでお昼か?」
海人は笑いながら言う。
いつも一人でブツブツ呟きながら
ケラケラと笑っているような美智雄は、
不気味がられて、クラスでも孤立していた。
そんな孤立している美智雄にも、
海人は気さくに話しかけていた。
海人に悪気はないー
だがー
海人の日々の発言は、美智雄の怒りを
どんどんため込んでいることにー
海人は気づいていなかった。
「弁当ぐらい、教室で食べても大丈夫だと思うぜ~」
海人が笑いながら言う。
「…余計なお世話だよ」
美智雄が小声でつぶやく。
「--そんなんだから孤立するんだぜ~?美智雄。
なんだったら俺が一緒に弁当を食べてあげてもいいけど?」
海人が言う。
”そんなんだから孤立するんだぜ”
その言葉を聞いて、美智雄は怒りを爆発させた。
今日だけではない。
日々、海人からのデリカシーのない発言に美智雄は
怒りを溜めこんでいた。
「---何様だよ」
美智雄が怒りの口調で呟いた。
「え?」
悪気なく発言している海人は、首をかしげる
「”一緒に弁当を”食べてあげてもいい”って、何様だよ?」
美智雄が、血走った目で海人を見る
「---お、、おい~
そんなに怒るなって~!
ほら!もうちょっと心を開かないと
いつまでも孤立したままだぜ!」
海人が言うと、
美智雄は海人に向かって言った。
「--小さい頃から、ずっと孤立してきた
ぼくの辛さなんてお前には分からない」
美智雄がブツブツと、
やっと聞こえるぐらいの大きさの声で言う。
「---出た~!
またマイナス思考~!」
海人が、美智雄を茶化すようにして言うと、
美智雄は、海人を睨んで
ブツブツと呪文のような言葉を唱え始めた。
何かを言っているようだったが、
海人には聞こえなかった。
美智雄は、そのまま立ち去って行く。
「---ねぇ」
偶然通りかかった彼女の愛結が、
海人に声をかけた。
「---別に美智雄くんが
どこで食べたっていいじゃない…
あまり茶化さない方がいいわよ」
愛結の言葉に
海人は「別にそんなつもりじゃないよ」と
笑いながら答えた。
美智雄は、チラっと振り返ると、
ブツブツと一人で何かを呟く。
「---”孤立”させてやるー」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
帰宅した美智雄は、
部屋中に積まれた
スプラッター映画のDVDをどかすと、
引き出しから何かを取り出した。
「くふ」
美智雄は笑う。
「くふくふくふくふくふくふ」
美智雄の手に握られているのは
”憑依薬”
怪しげなサイトで、1年前に購入したものだ。
美智雄は
スプラッターやオカルト、スピリチュアル、そういったものが
大好きだった。
そんな趣味を楽しむうちに、偶然、とあるスピリチュアルサイトで見つけたのが
”憑依薬”だったー
「--孤立させてやる」
美智雄は普段学校では見せない笑みを浮かべると、
静かに微笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「--お兄ちゃん~」
妹の千佳子が、兄の海人に話しかける。
千佳子は、海人ととても仲良しで、
海人のことを本当に尊敬していた
「ん~?どうした?」
海人が、学校に行く準備をしながら言うと、
海人の部屋に入ってきた千佳子が言う。
「--ちょっと今日提出の宿題で
ひとつ分からないところがあって」
そう言いながら千佳子がノートを
差し出す。
海人がそれを掴もうとしたその時だったー
千佳子がノートを落とす。
「--?」
海人が千佳子の方を見るとー
千佳子は、唇を震わせていたー
「ど、、どうした?」
海人が言うと、
千佳子が口を震わせながら
やっとの思いで呟いた
「た…す…け…て…」
ーー!?
海人は「どうした!?」と慌てて叫ぶ。
海人は妹の千佳子を溺愛している。
その、千佳子が目の前で苦しんでいる。
千佳子は立ったまま、身体を激しく揺らして
白目を剥いている。
「はが…が・・あっ…ぐひ…あ…ぐひぃ!」
奇声を発している千佳子ー
海人が救急車を呼ぼうとした
その時、千佳子の目に輝きが戻りー
千佳子は微笑んだ。
「--やぁ…海人くん」
千佳子がにやりと笑みを浮かべる。
「な…?」
海人が戸惑っていると
千佳子は自分の胸を触って微笑んだ。
「--彼女だけじゃなくて妹まで可愛いなんて…
ほんとリア充だなぁ…」
千佳子が”ふへへ…これが憑依かぁ~”と
独り言のように呟きながら笑っている。
「--な…ち、、千佳子?」
海人が戸惑っていると、
千佳子はにやりと笑みを浮かべたー。
「お兄ちゃん~わたし、
からだを奪われちゃった~!」
千佳子がスキップしながら笑う。
「な…何だって!?」
海人は、大げさに驚いてみせた。
千佳子はたまにいたずらっぽい所があって
ドッキリを仕掛けてくることがある。
今回も、それだと思ったのだ。
「ーーふふふ~!この身体は僕のものだ~!」
千佳子がそう叫ぶと、
制服を乱暴に脱ぎ捨てはじめた。
「お…おい!千佳子!さすがにそれは!」
海人が止めようとすると、
千佳子はにやりと笑う。
「--僕だよ…海人くん」
その表情を見て、
海人は氷ついた。
妹の千佳子とは思えないほどの不気味な表情ー
そして、その表情は
学校で孤立している美智雄の表情に
そっくりだったー
「---くへ…僕のこといつもいつもバカにしてさぁ…
ゆるせないよなぁ」
千佳子がそう呟くと、
ブツブツブツブツ何かを呟き始めた。
「---お、、おい!千佳子!おい?」
本当にドッキリなのかー
海人は不安に駆られながら千佳子の名前を呼ぶ
「--まだ信じてないようだなぁ~」
千佳子はそう言うと、兄の机に飛び乗って、
そのまま股を広げて微笑んだ。
「わたし、こんなことするぅ~?
えへへへへ!
今のわたしは何でもしちゃうよぉ~
うひひひひひ~!」
自分のアソコのまわりをいやらしく触る千佳子
「おい!やめろ!」
「--うへへへへ!海人くん~無駄だよ。
憑依薬って薬で僕は今、君の妹の身体を
乗っ取ってるんだ。
どんなに呼びかけても、この女は思いのまま!」
千佳子が机から飛び降りると、海人の方を見て笑った。
「ーー僕のこと、いつもいつも見下しやがって」
千佳子がブツブツと呟き始める。
相手は名乗っていなかったが、
海人は、美智雄が憑依しているのだと気付き、叫んだ。
「---美智雄!妹から出て行け!」
海人は叫ぶ。
すると、千佳子は「あぁ~出ていくよ~!」とニヤニヤしながら笑う。
「ーーー君みたいなやつの妹、どんなに可愛くても
こっちからお断りだ
ま、せっかくだから、憑依薬の力、見せてやるよ」
千佳子が笑いながら得意気な表情を浮かべると、
ブツブツと呟き始めた
何を呟いているのかは分からない。
だがー
”お兄ちゃん”だとか
”知らない”だとか、
そういう言葉が聞こえる。
千佳子の体がプルプルと震えはじめる。
時々「ん…うぅ」だとか、苦しげな声が
聞こえてきて、海人は不安そうに千佳子を見つめる。
「---ふ…ふふふ…さぁ…どうなるかな?」
千佳子はにやりと笑うと、そのまま倒れた。
美智雄が、千佳子の身体から抜け出したのだー。
「千佳子!」
慌てて海人が千佳子を抱き起すと、
千佳子は、目を覚ました。
”服を脱いでいる状況をどう説明すれば?”と
思いながら海人は
ひとまず千佳子が無事に目を覚ましたことを喜んだ。
しかしー
「だれ…?」
千佳子が不思議そうな表情を浮かべて呟く
「--あなた、、だれ…?」
「---!!」
海人は驚いて目を見開く。
「ち…千佳子?」
「---ひっ!?いやああああ!?」
千佳子は自分が服を着ていないことに
気付くと、慌てて自分の制服をかき集めて
そのまま部屋の外に飛び出してしまった。
「おい!千佳子!」
慌てて千佳子を追う。
自宅の1階に服を着ながら駆け下りていく千佳子。
そしてー
千佳子は母親に向かって叫んだ
「お、、お母さん!知らない人が!」
きょとんとする母。
「---知らない?
何言ってるの?海人でしょ?」
苦笑いしながら言う母。
しかし、千佳子は
意味の分からない言葉を叫ぶだけだった。
兄の海人を怯えるように避けながら
千佳子はそのまま学校に向かってしまった。
「---まぁ、疲れてるのね。
高校受験も近いし」
母が言うー
海人は”いや、違うー”と悟る。
”アイツが何かしたんだー”と
・・・・・・・・・・・・・・・・
学校に到着した海人は
鬼のような形相で美智雄のところに向かい、
美智雄の胸倉をつかんだ。
「---おい!俺の妹に何をした!」
怒鳴られる美智雄。
美智雄はいつものようにブツブツと
何かを呟いたあとに言った。
「--きみの妹から、
きみの記憶を消した」
ーー!!
信じられない言葉に、
海人は愕然とする
「---な、、なんだって!?」
「--憑依しているからだの脳に
直接干渉して、思考を書き換えたり
記憶を消したりできるんだよ」
「---な…!千佳子を元に戻せ!」
海人が叫ぶ
「---海人、どうしたの~?」
たまたま通りがかった彼女の愛結が
姿を現す。
海人は美智雄から手を放す。
美智雄がニタァと笑った。
「--孤立」
それだけ呟くと、美智雄は
ケラケラと笑い声を立てながら
海人の方を見つめる。
「---みんなから忘れられたら、
きみ、どうなっちゃうんだろうね。
ケケ…うけけけけけけ…」
美智雄は、そう呟きながら立ち去って行く。
「おい!待て!やめろ!!おい!!」
海人は美智雄に向かって叫ぶー
「ど…どうしたの?」
困惑する彼女の愛結。
「--な、なんでもない!」
愛結を巻き込むわけにはいかないー
そう思った海人は、
立ち去る美智雄に向かって叫んだ。
「お、、、おい!お前の気を悪くしたなら悪かった!」
海人が叫ぶー
しかしー
美智雄は、振り返りもせずに、笑みを浮かべた。
「--く…ふふふふふ…
孤立させてやるー」
憑依薬の力を手にし、
狂気に支配された美智雄の計画は、
まだ始まったばかりだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
一度、没にしかけたネタなのですが
せっかくなので書くことにしました~!
続きは明日デス!
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