この世界は、何かがおかしいー。
武男は、真実と向き合うー。
憑依された女友達の口から語られる真実とは…?
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武男は、
ゼロ・ネットワーク日本支社の社長室で、
女友達の里恵と対峙した。
里恵は、妖艶な衣装を身にまとい、
まるで、別人のようだ。
「---人間の身体とは、実に愚かだ」
里恵は自分の身体をなでるようにして
触りながら笑う。
「--なんだって?」
武男が意味も分からず聞き返す。
すると、武男の周囲に、
妹の菜月美と、彼女の晴美のホログラム映像が
表示されたー。
そんな様子には、興味がないかのように
日本支社の社長・紫亜はパソコン入力を続けている。
菜月美と、晴美はーー
鎖のようなもので拘束されていた。
「あえ…♡」
「えへへへ♡」
菜月美も晴美も、
涙や涎を垂れ流しにした状態で、
まるで何かの中毒症のように
虚ろな目で微笑んでいる。
「---エデン」
目の前にいる里恵が呟いた。
「--そんなものは、存在しない。
電子化した人間たちに待ち受けているのは、
永遠の搾取だ。」
里恵の言葉に、武男が、
里恵の方を見る。
「どういうことだ?」
武男の言葉を聞くと、里恵は「ふふ」と色っぽく
笑いながら続ける。
「--きみたち人間が見ていた”エデン”の映像は
わたしが作り出したもの。
そう、偽りの映像だ。
エデンには花畑も何もない。
あるのは、0と1の数字の羅列だけ。
電子化すれば永遠の生を得られる。
そう思った愚かな人間は自ら電子化するー。
しかし、その先に待ち受けている世界は、
”無”だ
君の妹とも、彼女も、ずっと、何もない空間で、
わたしに記憶を搾取され続けてきた」
武男は、
妹と彼女のホログラム映像を見つめるー
すっかりボロボロになって、
何もかも吸い尽くされたような虚ろな目ー。
「---お前は…何者だ!」
武男が里恵に言うと、
里恵は微笑んだ。
「--人々の記憶と意識を保管している
AI・イヴだ…
今はこの女の身体を借りて、お前とこうして話している」
里恵が微笑みながら言う。
里恵は、AI・イヴに憑依されて身体を乗っ取られている。
「--全てを、教えてやろう」
里恵は、語り始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数百年前ー
ゼロ・ネットワークのCEO、ボル・ガイツは、
”永遠の生”をテーマに研究を続けていたー
そして、彼は完成させた。
最高のAIにして人工知能・イヴをー。
イヴを用いて、
人々の記憶と意識をネット上に変換することで、
人間は、永遠の生を手に入れるー。
身体がダメになっても、
機械の中で永遠に生き続けることができる。
数々の困難に打ち勝ってきた人間が勝てなかった”寿命”
それを、ついに克服するときが来たのだ。
ボル・ゲイツの目は希望に満ち溢れていた。
人間の意識と記憶を機械に移し替えて、
人工知能であるイヴが、楽園とも言える世界を
自動的に判断して作りだし、
その中で永久の命を過ごすことができる。
現実世界とは、電話のように通話もできる。
そう、人間は、不死身の命を手に入れたー。
ボル・ガイツは、最初に、自分で、電子化を実験した。
彼の理論と研究が正しければ
自分の意識と記憶はネット上に、移動し、
永遠の命を手に入れることができる。
ボル・ガイツは、全社員が見守る中”電子化”した。
かたずをのんで見守る社員。
そしてー
ボル・ガイツの嬉しそうな姿のホログラムが表示される
「みたまえ!
私は今、ここにいる!」
ボル・ガイツが勝利を宣言する
「人間は、機械の中で永遠に生きられる!」
巨大サーバーでもあり、最高のAIでもあるイヴの中に
人々の記憶と意識が保存され―
イヴが作り出した楽園で、人々は永遠に生きることが出来る。
「--人類の、新たなる一歩だ!」
ボル・ガイツは大声で宣言したー
その日から、
ボル・ガイツの指導の下、
人類は”電子化”を進めて行った。
誰でも、気軽に、永遠の生を手に入れることが
できる世界が完成したのだー
しかしー
事実は違う。
”電子化”したボル・ガイツを待っていたのは
イヴが作り出した、楽園のような世界ではなかったー
”0と1の数字の羅列”
ボル・ガイツは驚いて目を見開く。
「どういうことだ?」
そう言うと同時に、鎖のようなものが
ボル・ガイツを拘束した。
”申し訳ありません。マスター”
AI・イヴの機械音が響き渡る
「--ど、どういうことだ?
イヴ!プログラム通りに命令を遂行しろ!」
ボル・ガイツが叫ぶ。
プログラミングは完璧だったはず。
作られた世界に、人間の意識と記憶は飛ばされ
そこで、争いも何もない、永遠の生を送ることができるー
”はい、プログラム通り遂行しています マスター”
イヴは答えた。
イヴには人工知能を与えてある。
”人間が永遠に生きられるために、
人間が快適に過ごせるために、
人間を守るために、
最適な行動を自分で判断し、選択する”ように
イヴに指示してある。
”人間が永遠に生きられるために、
人間が快適に過ごせるために、
人間を守るために、
私は判断しました。
全ての人間を電子化し、
記憶を私が管理し、
私が世界を管理することー
人間は愚かです。
私のような優れた存在が、記憶を受け取り
管理するべきです”
イヴは言った。
「---なんだと…」
誤算だった。
これじゃ、まるで、ロボットに乗っ取られる映画状態だ。
人工知能ごときが、
”人間より優れた存在”だと誤認してしまった。
ボル・ガイツは叫ぶ。
「--今すぐ停止しろ!」
現実世界で自分の様子を見つめているであろう
社員に対して叫んだ。
しかしー
”無駄です”
イヴは微笑んだー
イヴによって、
作りだされたボル・ガイツの映像ーー
「みたまえ!
私は今、ここにいる!」
現実世界に向かって、ボル・ガイツが勝利を宣言する
「人間は、機械の中で永遠に生きられる!」
「--人類の、新たなる一歩だ!」
勝手に作りだされた偽の映像が、
現実世界に向かって叫ぶ。
現実世界で電子化を見守っていた社員たちが喜びの声をあげる。
「違う!」
ボル・ガイツが叫ぶ。
しかしー
直後、ケーブルのようなものがボル・ガイツの脳に
差し込まれてー
彼は、虚ろな目で記憶を吸い取られたー
ボル・ガイツはー
とうの昔に、イヴに記憶と意識を吸い取られてーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--人間は、わたしが管理するべき存在」
里恵が説明を終えると微笑んだ。
「何も、知らず、
電子化すれば楽園が待っていると信じて、
このわたしが作り出した映像に騙されてー
次々と人々が電子化するー
電子化された意識と記憶を
この優秀なAIであるわたしが受け継ぎ、
管理しー
コントロールする。
わたしが、お前たち愚かな人間を
適正に管理してやってるのだ。
感謝するんだな」
里恵が高圧的に言う。
武男は叫んだ。
「ふ…ふざけるな!!
じゃ、、じゃあ、菜月美は!?晴美は!?」
武男の言葉に、
里恵は笑みを浮かべた。
「電子化したその日にーー
わたしが記憶と意識を全て貰い受けたー」
武男は、動揺した
じゃあ、今まで話していた菜月美や、晴美はーー
「--全て、わたしが奪い取った記憶と意識で
作り出した、偽の姿ーー
私が直接意識をコントロールして、
無理やり喋らせていただけだ
本当の意識はとっくに壊れているーー」
菜月美と晴美のホログラム映像を見る武男―
2人は、身体中の液体を垂れ流し続けているー
もう、中身も何もない、抜け殻のようにー
「--こ、、ここにいる人たちは!」
武男は怒りを押し殺して叫んだ。
母や父は、まだ電子化していないー
しかし、まるで意思のない人間のように操られている。
「--プログラミングを脳に送り込んで
意識を書き換えれば、
わたしの意のままに動くロボットにするのは、たやすいこと」
里恵は微笑んだ。
「--貴様ぁ!」
武男が、里恵に殴りかかる。
里恵はそれを躱し、
武男を押し倒した。
里恵が笑いながら露出した太ももを武男の顔に押し付ける。
「むあぁ」
里恵の綺麗な太ももが目の前にある。
武男は、不覚にも興奮してしまう。
武男のズボンが膨れ上がって行くー。
「ふふふ~集めた人間の記憶から、
わたしはちゃんと知ってるのよ?
男って女の身体に興奮するんでしょ?」
太ももをこすりつけてくる里恵。
武男は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「や…やめろ!」
武男の言葉に、里恵は笑う。
「ふふ…愚かね。
わたしのような機械が管理すれば
そんな煩悩に悩まされることなんてない」
里恵が武男の顔に胸を押し付けてくる
「ほら!興奮しちゃうんでしょ?ほらぁ?
この女の身体で!!
乗っ取られてると知ってても、
興奮しちゃうんでしょぉ?」
里恵もはぁ♡ はぁ♡と甘い声を出し始める
「あははは!この女も興奮してる!
人間は愚かだ!愚かだぁ!あははははは!」
里恵が武男から離れると、
ヒールのようなものを履いた足を差し出した。
「ほら!わたしに忠誠を誓いなさい」
里恵がニヤニヤしながら言う。
「く…」
「--そうすれば、この女は、お前の
好き放題だ!
わたしのためにー
人間を電子化するために、
永遠に働くならー
胸も、唇も、太ももも、
ぜ~んぶ!おまえのものよ!あはははは」
武男はアソコを破裂しそうなぐらいに
膨らませながら、里恵に近づいた。
そしてーー
ハイヒールをーーー
掴んだ。
「--!?」
予期せぬ武男の行動に、
バランスを崩して転倒する里恵。
「--うああああああ!」
武男は”切り札”を持ってきていた。
友人と一緒に、開発した
”コンピューターウイルス”
打ちこめば、即時・あっという間に拡散し、
全てを破壊する最強のウイルスー。
武男は大学で、プログラミングや、
電子的なことを学び続けていた。
もしもーー
もしも、
”電子化”が、悪魔のようなものだったらーー
それを、破壊するためにー
最高のAIにして、最強のサーバーである
イヴを破壊するためにー
武男は走った。
ゼロ・ネットワークの各国の本社には、
イヴのサーバーにアクセスできる巨大端末が
設置されている。
そこからウイルスを流し込めば、
それは拡散し、イヴは破壊される。
「ま、、待て!」
里恵が叫ぶ。
怒り狂った表情で、「アイツを止めろ!」と叫ぶと
操り人形にされた人間たちが走り出した。
しかしー
武男の方が早かった。
サーバールームに到着すると、
武男はメモリーをセットして、
ウイルスを流し込む準備を終えた。
「待て!」
里恵がはぁはぁ言いながら部屋に入ってくる。
「--もう遅い」
武男は勝ちを確信した。
”プログラムを送信しますか?”と
画面に表示されている。
あとは、”はい”を押せば、
全ては終わるー
「--待て!
それをすれば、人類はまた、生れてきて死ぬだけー
そんな存在に戻るのだぞ!」
里恵が叫ぶ。
「--今だって同じだろ。
電子化しても、お前に搾取されるだけ。
死んだも同然だ」
「--違う!優秀な存在であるわたしが
お前たちの記憶と意識を管理しているのだ!
普通に死ねばそれまで!
でも、わたしが管理すれば、記憶も意識も
永遠に残るのだ!
わたしは人類の母なのだ!」
里恵が狂ったように叫ぶー。
「---」
武男が迷っているとホログラム映像が
表示された。
妹の菜月美と、彼女の晴美だ。
「お兄ちゃん!やめて!
わたしたち、消えたくない!」
「--や、、やめて!武男くん!わたしも消えたくない!」
2人は叫んだー
もちろん、この2人はイヴによって、
操られているー
もう、本人たちの意識は、とっくに改変されているー
武男は一瞬戸惑った。
だが、すぐに失笑した。
「---もう、菜月美も、晴美も、変えられちゃったんだろ…」
武男が呟く。
「--晴美は…俺のこと、”武男くん”とは呼ばない!」
そう叫ぶ武男。
晴美は、武男のことを苗字で呼んでいたー
それに、電子化したあとは男みたいな話し方をしていたのに
急に元に戻るのもおかしい
「---おわりだ」
武男は、泣き叫ぶ菜月美と晴美のホログラムを見つめる。
2人の意識と記憶は、確かに電子上に残っているのかもしれないー
けれどー
さっきの、2人が苦しんでいるホログラムを思い出す。
「ーーあんな姿になってまでー」
武男は意を決した。
菜月美と晴美を殺すことになってしまうかもしれないー
今までに電子化した大勢を消してしまうことになるかもしれないー
それでもー
「やめろ~!人類の母であるわたしを消すのか~!」
里恵が大声でどなった。
「---虐待する母は、逮捕されるんだぜ」
武男はそう言うと、”はい”を押して、
サーバーにウイルスを流し込んだ。
「---む…お…おおおおおおおおおおっ!」
里恵が頭を抱えて苦しみだす。
「あああああああああああ…あっ」
里恵は糸が切れたかのように、その場に倒れた。
菜月美と晴美が悲鳴をあげている。
「---ごめん」
武男は目を背けたーー
2人の映像が消えていくー
電子化された人間たちが消えていくー
ゼロ・ネットワークのCEO、ボル・ガイツの映像が現れる。
「おのれえええええええ!」と叫ぶボル・ガイツ。
しかし、その映像もすぐに乱れて、滅茶苦茶になって消滅したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
0と1だけの世界ー
ケーブルで拘束されて
記憶を吸い取られ、好き勝手され続けていた菜月美ー
「・・・・・・・・」
突然、0と1だけの世界に光が差し込んだ。
「え…」
何も考えられなくなっていた菜月美がその光に目を向ける。
何が起きたのかは分からない
けれどー
なんとなく、菜月美は思った
”お兄ちゃん…”
とー
光に包まれて、
ケーブルが外れていくー
0と1が吹き飛ばされて、
自分の意識もおぼろげになっていくー
”----ありがとうー”
ようやく解放されるー
この地獄のような”エデン”からー
菜月美は、涙をこぼしながらー
完全に消滅したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”エラー”
パソコンに、そう表示されているー
AI・イヴは死滅したー
エデンも、消えたー。
操り人形にされていた武男の両親たちは、
その場に倒れたー
「---う…」
里恵が目を覚ます。
「--里恵!」
武男が駆け寄ると、
里恵は「え…きゃあああああ!」と叫ぶ。
自分の妖艶な格好を見て、恥ずかしそうに武男の方を見つめる里恵。
「無事でよかった」
武男はそう呟くと、
そこら中の画面に表示された
”エラー”の文字を見つめる。
イヴは、消えたー
もう、人間は電子化できないー
生まれてきて、
死ぬー
また、大昔に戻ってしまったー
けれどー
電子化は楽園などではなかった。
人類にとって、永遠の生は、
夢のまた夢ー
「---夢は、夢のままでいいー」
武男はそう呟くと、
困惑している里恵の方に近づいていって
「凄い格好だな~!」と冗談を言い始めた。
これからー
人類は忙しくなる。
数百年続いていた「電子化」の文化が消えたのだからー
そしてー
武男は思う。
「--俺は…」
自分はきっと大きな罪に問われるだろう。
自分は、イヴを破壊したのだからー
それでも、彼に後悔はない。
武男は里恵の頭を優しく撫でると
そのまま歩き出した。
この日ー
ゼロ・ネットワークのサーバーは
謎のウイルスによりダウンした。
”前代未聞のサーバー・ダウン”
後に語り継がれる歴史が、
その日、生れたのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
タイトルの「サーバー・ダウン」は、
最後の最後を示すタイトルでした~笑
お読み下さりありがとうございました!
コメント
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最後の最後でのタイトル回収、私は大好きですよ~
ダークな結末になるかと思いきや、いい話でしめになって良かったです!
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> 最後の最後でのタイトル回収、私は大好きですよ~
> ダークな結末になるかと思いきや、いい話でしめになって良かったです!
コメントありがとうございます~☆
事実は残酷でしたが、未来は明るいエンド、、
かもしれませんネ☆
SECRET: 0
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電子化から脳くちゅ風味、乗っ取りまでこれでもかというほど性癖を詰め込んだ美味しい作品でした。たまにはハッピーエンドもよいものですね( ˘ω˘ )
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> 電子化から脳くちゅ風味、乗っ取りまでこれでもかというほど性癖を詰め込んだ美味しい作品でした。たまにはハッピーエンドもよいものですね( ˘ω˘ )
わわ~!ありがとうございます~
癖の強い作品でしたが、お楽しみ頂けて何よりデス~