人間の記憶と意識を
ネット上に移動させることで永遠の生を手に入れた人類。
しかし、人類は知らないー。
既に”乗っ取られている”ことをー。
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塚井 菜月美(つかい なつみ)は
高校生のとき、事故に遭ってしまったー
高齢者が運転していた車が暴走し、
歩道に突っ込んできたー。
それに、不運にも轢かれてしまったのだった。
菜月美は助かった。
けれどー
菜月美の下半身は、動かない状態になってしまった。
「--菜月美!」
兄の武男(たけお)が悲痛な叫びをあげる。
菜月美は決心した。
”電子化”
する決意をー。
この世界では、
人間の記憶と意識をコンピューター上に移すことで、
永遠に生きられるようになっていた。
ゼロ・ネットワークが開発した
究極のサーバーであり、Aiである人工知能イヴに
よって作り出された
電子の世界”エデン”
そこで、人々は生き続けている。
「わたし、電子化するー」
菜月美は、苦しみ抜いた末に、
決断したー。
電子化は、早い方がいい。
それをする前に、死んでしまったら
そのまま死んでしまうのだからー。
菜月美の頭にヘルメットが
取りつけられる。
ヘルメットは、小さなパソコンのようなものに繋がれていた。
今の時代ー
病院で簡単に”電子化”が出来るー。
「---あっちについたら、すぐ連絡するね
お兄ちゃん」
菜月美が微笑む。
これは、”安楽死”ではないー
身体を捨てて、電子の世界に引っ越しするだけだ。
「--あぁ」
武男は、微笑んだ。
バチッ!と音がして、
菜月美の身体が激しく痙攣した。
がー数秒後、菜月美は白目を剥いて
動かなくなった。
すぐにー
武男の持つ専用端末”ZERO”に連絡があった。
菜月美のホログラムが表示される
「お兄ちゃん~!到着~!
なんか、思ってたよりすっごい簡単だった~!」
無邪気に笑う菜月美ー
菜月美は、花畑のようなところに立っているー。
武男は
「お!もう電子化完了か~!」
などと笑いながら答えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バチッ!
菜月美の身体に激しい衝撃が走った。
菜月美の意識ははじけ飛ぶ-
「う…」
菜月美が目を覚ますと、
そこはーーー
”エデン”などではなかった。
”0”
”1”
謎の数字が大量に浮かび上がっている
謎の空間。
そこに、菜月美はいた。
「え…?何ここ?」
菜月美は不安になって周囲を見渡す。
”電子化後の世界”
ここが、エデンなのかー。
エデンが現実世界と変わりないような世界が
広がっていて、
娯楽と希望にあふれる世界だと聞いている。
菜月美も、既に電子化している祖父や祖母から
色々話を聞いた。
祖父や祖母は口々に言っていた。
「早くこっちに来なさい」
とー。
嬉しそうにー。
突然、無数の触手のようなものが
菜月美の周囲に現れる
「あ…うっ…きゃああああ!」
触手に身体を縛られた菜月美
”知識は、最高の養分だ”
奇怪音声が聞こえる。
男のような、女のようななんとも言えない
機械の声ー。
「だ…だれ?」
菜月美が叫ぶと、
機械音声は返事をした
”きみたちがイヴと呼ぶものだ”
イヴー
電子の世界・エデンを作りだし、
電子化された人々の記憶と意識を保存している
世界最高の究極サーバー。
「---わ、、わたしはエデンに来たハズじゃ…」
菜月美が言うと、
機械音声は笑った
”そう。ここがエデンだ。
わたしは、送られてきた人間の記憶と意識を読み取って
学んでいるのだ。
この世界をー”
「--!?」
”きみも、エデンを見たことがあるのか?
あれはー
”わたしが作り出している幻”だー”
人工知能・イヴは言う。
「--ど、どういうこと?」
”ふふふ…
今にわかる”
0と1の羅列の中に、
映像が浮かび上がる。
兄の武男だー
「お…お兄ちゃん!」
菜月美は叫ぶ。
だが、兄にはその言葉は聞こえていないようだー
”ふふふ”
イヴが笑うと、
菜月美の頭にケーブルのようなものが、
無理やりさしこまれた
「んへぁ♡」
変な声を出してしまう菜月美。
「お…」
菜月美の口が勝手に動き出す
「お兄ちゃん~!到着~!
なんか、思ってたよりすっごい簡単だった~!」
無邪気に笑う菜月美ー
勝手に、喋らされているー
その言葉を聞いた兄の
武男は
「お!もう電子化完了か~!」
などと笑いながら答えた。
(や…やめて…違う…助けて…!)
菜月美は叫んだ。
しかし、
頭をぐりぐりされて、
悲鳴をあげると、
菜月美は再び勝手に口を開いた
「うん~!
すっごく快適!
お兄ちゃんも早くこっちに来たら~?」
菜月美は笑顔で言った。
「--はは、考えとくよ」
武男は答えた。
「あ、病院の先生が来たから1回切るな」
そう言うと、武男の映像が消えた。
”これが、エデンの真実だ”
AI・イヴの声がする。
”お前の兄には、綺麗は花畑を背景に立つ
きみの姿が見えていた。
そう、わたしが作り出した映像だ”
「--…そ、、、そんな」
0と1の数字の羅列の中に
たくさんの映像が映し出される。
そこにはー
虚ろな目で、鎖のようなものに縛られた
大勢の人間が映っていたー
「ひっ!?」
菜月美は思わず目に涙を浮かべる。
”永遠の生?
あぁ、与えよう。”
イヴの言葉に、菜月美はビクッとする
”わたしの目的は
人間の記憶と知識を集めることだ。
人工知能として生み出されたわたしは
自我を持ったー
そして、知りたくなった。
この世界のことをー。
だから、もっと人間の記憶と意識が欲しい”
イヴの声が響くー
イヴは、欲していた。
人間の、記憶をー
こうして電子化された人々を利用して、
親しい人間を誘い込み、どんどん電子化させていく。
人間の記憶と意識が入って来るたびに、
イヴは新しい事を知り、成長できる。
その上で、外界の人間を操り、
世界を完全にコントロールする。
イヴは知った。
人間は醜い。
自分よりもはるかに劣る存在であると。
劣る存在を守るためにはどうすれば良いか。
答えは簡単だった。
イヴ自身が人間を管理すること。
それ以外に、答えは、なかった。
鎖のようなものが菜月美の頭に刺さる。
「ぐぇぇ!」
菜月美は思わず苦しみの声をあげる
”ここは楽園だ”
”ここは楽園だ”
”ここは楽園だ”
「あ…あぁ…たすけ…て」
菜月美の目から涙がこぼれる。
菜月美の脳みそがグチュグチュといじられていく。
プログラミングが流れ込んできて、
菜月美は笑みを浮かべた。
「えへぇ…♡」
よく見ると、他の拘束されている人達も
半数は笑みを浮かべていた。
「えへぇ…ここは…たのしい…
お兄ちゃんも…早く…おいでぇ」
菜月美はうつろな目でボタボタと
涎を垂らしながら微笑んだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いやぁ~すごいな~!」
現実世界にいる兄の武男は、
妹の菜月美の電子化に成功して微笑んだ。
病院の先生も「良かったですね」と微笑んでいる。
美しい花畑をバックに話をしている菜月美は
とても嬉しそうだった。
”偽りの映像”を見せつけられているとは知らずに、
武男は満足げに微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
1年前ー
武男の彼女・晴美が電子化した。
「--あっちについたら、すぐに連絡するからね」
晴美が優しく微笑む。
「---あぁ」
武男は少し悲しそうな表情をしながらそう返事をした。
”パチっ”
一瞬だー。
電子化は、一瞬だー。
晴美の身体は白目を剥いて、痙攣して、
すぐに動かなくなった。
脱皮した、昆虫のようにー
ぬけがらとなった晴美の身体ー
晴美は今までに味わったことのないような
感覚を味わって、目を覚ました。
「----ここ…は?」
電子化すれば、
楽園のような世界が待っている。
そう聞いていた晴美にとっては
意外な光景が広がっていた。
そこは、”0”と”1”の数字のみが
広がっている世界。
無数の光が飛び交っている。
「--なに、、、ここ?」
晴美が唖然としている。
周囲には0と1しかない。
バチッ!
飛び交っている光のひとつが晴美に
激突した。
これはー
晴美と同時期に”電子化”した別の人間の
データだ。
それが、晴美と衝突してしまった
「んあぁ??あれ…俺…?」
晴美が自分の身体を見つめる。
「あ…??あれ…わたし…俺…?
んへへへへ」
”おやおや”
笑う晴美を見て、
制御AIのイヴが話しかけた。
”他人のデータと混じってしまったようだな”
イヴは笑った。
全世界から毎日のように膨大な人間が電子化
されてくる。
時として、2つの意識がまじりあってしまう
エラーが起きる。
「----晴美!」
彼氏の武男が現実世界から連絡を入れてきた。
イヴはすかさず、晴美に、鎖のようなケーブルを差し込んだ。
晴美は白目を剥いて涎を垂らしながら、
嬉しそうに微笑んだー
「~~は~~!ここが電子の世界・エデンかぁ」
その言葉を聞いた彼氏の武男は、
晴美の男性化に驚いたものの、
電子の世界の本当の姿には気づかなかった
・・・・・・・・・・・・・・・
そして現在ー。
武男は、疑問に思っていた。
”エデン”は、本当に見たままの姿なのか。
夢のような世界がネット上に広がっているのか。
確かに妹の菜月美も、彼女の晴美も、
みんな口々に「エデンは最高だ」と言う。
しかしー
おかしくはないか?
まるで、早く電子化してほしいかのように、
皆が口をそろえて言う。
何かが、おかしくはないか。
本当は、夢の世界など広がっておらず、
悪夢のような世界が広がっているのではないか。
武男は、そんな風に思いはじめていた。
そしてー
電子化を実現させた会社
”ゼロ・ネットワーク”のことも気になっていた。
両親はゼロ・ネットワークの日本支社で働いているが、
その両親と会えるタイミングがないのだ。
常に、会社にいる。
連絡をしても「元気だよ」と言うばかりで、
両親が帰ってこないのだ。
”なにかある”
そう思った武男は、
ゼロ・ネットワークの日本支社にいるはずの
両親に会うための準備を、1年間進めてきた。
そして、ついにそのチャンスを得たのだ。
ゼロ・ネットワークの社内に侵入できる
ルートを見つけたー。
武男は、外から物資が車内に搬入される今日がチャンスだと
考えていたー
”電子の世界・エデン”は本当に楽園なのか。
電子化した人間は、本当に幸せなのかー。
そして、両親は何故帰って来ないのかー。
武男は”ある切り札”を持って、
ゼロ・ネットワークの日本支社をめざすー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女友達の里恵は、
何者かに拉致されていた。
黒服の女。
その女は、ゼロ・ネットワークのロゴを身に着けていた。
女に連れてこられたのは、
謎の施設。
「--わ、、わたしをどうするつもりですか!」
里恵が叫ぶ。
しかし、女はさっきから、何の反応も見せない。
そしてーー
謎のヘルメットのようなものを取り出すと、
女はそれを里恵に取りつけようとしたー。
「--!!」
里恵は、その装置に見覚えがあった。
その装置は、人々が”電子化”する際に
使っているモノとよく似ている。
「わ…私は電子化はしません!
そう叫ぶと、
突然、里恵の目の前にホログラム映像が出現した。
ゼロ・ネットワークCEOの
ボル・ガイツだったー。
「--電子化は、人々の楽園であります」
ボル・ガイツの映像は優しく微笑んだ。
「君の友達ー
武男くんは、その楽園に疑問を抱いている。
楽園に疑問を抱くことは許されない。
楽園は、守らなくてはならない」
その言葉を聞きながら
里恵は恐怖する。
「な、、何を言ってるの…?」
「---きみに、愚かな友人を止めてほしいんだ」
ボル・ガイツがそう言うと、
黒服の女がヘルメットを無理やり里恵に取りつけた。
「--や…やめ…!」
ヘルメットからケーブルのようなものが、出てきて
里恵の耳に無理やり入り込んでいく。
「ん…あぁあああっ!」
悲鳴をあげる里恵。
ケーブルが脳にまで到達して、
里恵の脳をグチュグチュといじりはじめる。
「む…あっ、、、あ…ああああ…あああ…!」
里恵が涎を垂れながらしながら
身体を痙攣させる。
「あ…あ…あぁああああひぃぃぃぃっ」
ブルブルと身体を震わせる里恵。
やがてー里恵の痙攣は止まる。
虚ろな目になった里恵は立ち上がった。
黒服の女と、同じ目つきになってー
「---さて、君の身体を貰うよ」
ボル・ガイツの映像がそう宣言すると、
里恵に再び、ケーブルが差し込まれて
里恵が痙攣を始める
世界は知らないー
都合の悪い人間は、里恵のように
脳を書き換えられて、
意のままに操られていることをー。
しばらくすると、里恵が立ち上がった。
「くくく…」
里恵は、”何か”に身体を乗っ取られて
不気味に微笑んだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゼロ・ネットワーク日本支社への潜入に成功した武男。
武男は驚くー
CMでは、明るくアットホームな社風と紹介されていたがー
社内にはーー
”人気がなかった”
誰もいないー
「---!?」
武男が、物音のする部屋に向かうとー
そこには、人間がロボットのように、
虚ろな目で黙々と作業を続けていた。
その中にはーーー
両親の姿も。
「ーー父さん!?母さん!?」
武男が近づいていく。
しかし、両親は何の反応も示さず、機械的に
動きつづけている。
”ようこそ”
聞き覚えのある声がして、武男は振り返る。
そこにはー
ゼロ・ネットワークCEOのボル・ガイツの姿があった。
「--お前は…!」
CMやPRで何度もボル・ガイツの姿を見ている。
そいつが、目の前にいる。
「--愚かな人間よ…
何も気づかずに居れば良かったものを…」
そう言うと、ボル・ガイツの姿が
妹の菜月美の姿に変わる。
「愚かなお兄ちゃん」
微笑む菜月美。
「--菜月美…?」
武男が唖然としながら言うと、
菜月美のホログラム映像は不気味に微笑んだ。
「--お前は…ここで…死ぬ…」
菜月美が、今度は彼女の晴美の姿になって微笑む。
「--余計なことは…させ…ない…」
邪悪に微笑む晴美ーー
「--ど、どういうことだ!
菜月美!晴美!どうしたんだ!!」
武男が叫ぶー
しかし、次の瞬間、
虚ろな目で作業していた両親たちが、
武男の方を向いて、不気味に微笑んだ。
「--死ね」
全員が、一斉にそう呟いた。
殺意を感じて逃げ出す武男。
「どうなってるんだ!」
武男は、ゼロ・ネットワーク社内の階段を駆け上がる。
人の気配が全くない。
ゾンビのように操られている人間しかいないー。
武男は、日本支社の社長である
”紫亜”と呼ばれる人物であれば何かしっているのではないかと
考えて、社長室を目指したー
「ここだ!」
社長室をようやく見つけ出して飛び込む武男。
するとそこにはーーー
「--あら?待ってたわよ」
女友達の里恵の姿があった。
そしてー
里恵の背後にある社長の机では、
日本支社の社長・紫亜が虚ろな目で
パソコンを忙しく入力していたー
特撮モノで見るような
悪の女幹部のような妖艶な格好した里恵が
武男を見て笑う。
「--ここまでたどり着けたご褒美に
全て教えてあげるー」
「---さ、里恵!?」
疑問に思う武男を無視して、
身体を乗っ取られた里恵は
邪悪な笑みを浮かべたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
MC要素が多くなってしまいました…汗
次回はちゃんとTSF要素もありますよ~
明日が最終回です!
コメント
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
ディストピア物じみてきましたねぇ……
晴美は精神男性化してたわけでなく、他の男と混ざってたのですねぇ、ある意味TSFっぽいかも。(実体がないのでTSFと呼んでいいのかちょっと迷いますが)
そしてタイトル回収はラストへ持ち越し? 結末が楽しみですよ!
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> ディストピア物じみてきましたねぇ……
> 晴美は精神男性化してたわけでなく、他の男と混ざってたのですねぇ、ある意味TSFっぽいかも。(実体がないのでTSFと呼んでいいのかちょっと迷いますが)
> そしてタイトル回収はラストへ持ち越し? 結末が楽しみですよ!
ありがとうございます~
ラストの結末もぜひお楽しみ下さい~☆