<憑依>リアルデュエリストVol24~人質~

カードを現実化させる力ー。

それを手に入れた人間の中には、
卑劣な行為に走る者もいたー。

”人質”に取られた身体の物語ー。

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「--そのモンスターを攻撃だ!」

男子高校生2人が、楽しそうにデュエルをしていた。

攻撃を威勢よく宣言した男子高校生の
草薙 大地(くさなぎ だいち)は、
目を見開く。

「--俺がセットしていたモンスターは!」
対戦相手の、赤馬 亮(あかば りょう)が、不敵な笑みを
浮かべてセットしていたモンスターをオープンする。

そのモンスターは”マシュマロン”と呼ばれるモンスターだった。

裏側でセットされていたこのモンスターを攻撃してしまうと、
1000ポイントのダメージを受けてしまう。

「---そ、、そんな馬鹿な~!」

草薙LP/600⇒0

草薙のライフポイントが0になり、
草薙はがっくりと膝をつく。

「--これで100勝0敗」
勝利した赤馬が嬉しそうに言うと、
草薙は「くそっ!」と地面を叩く。

「いい加減懲りろよな。俺の方が強いんだよ」
赤馬は、明るく、社交的な性格だが、
他人を見下す癖が少しあった。

赤馬は、膝をついたままの草薙を
あざ笑うようにしてそのまま立ち去って行く。

赤馬に悪気はない。
だが、他人から見れば”見下されている”と
感じてしまっても仕方がないだろうー。

「---くそっ!」
草薙は唇をかみしめた。

何度やっても、
どんなデッキを使っても、
赤馬に勝つことはできない。

「--おめでとう!赤馬くん!」

デュエルを観戦していた、赤馬の彼女・
丸藤 明日香(まるふじ あすか)が、
赤馬に近づいていく。

明日香の言葉を聞いて
嬉しそうに微笑む赤馬。

2人はラブラブのカップルで、
いちゃいちゃしていたー

「--くそっ!くそっ!」
草薙は、地面を何度も叩く。

100連敗もした草薙の心の中には
”心の闇”が生まれていた。

負け続けたことにより、生じた、闇ー。

それに目をつけたものが居たー

”闇世界”に巣食う謎の存在ー
それが、次元を引き裂き、草薙の背後に現れたのだ。

「ーー草薙 大地よ」

謎の声に呼びかけられて振り返る草薙。

そこにはー
緑色の人型生命体が浮かぶようにして立っていた。

「--悔しいか?」
緑色の生命体は言う。

「な…何だお前は」
驚く草薙。

しかし、緑色の生命体は続けた。

「--お前に、力をやろう。
 手段を選ばずに、勝て」

緑色の生命体から、
謎の光が放たれて、
その光に草薙が包み込まれるー

”勝つためにはどうする?
 克つためには、どうする??”

緑色の生命体の声が聞こえる。

”相手の弱点を奪え
 相手を徹底的に叩きのめせ
 相手を、地獄に突き落とせ”

緑家の生命体が邪悪な笑みを浮かべたー

草薙の脳裏にある光景が浮かぶ。

それはー
赤馬の彼女である、明日香の身体を奪い、
明日香として、赤馬にデュエルを挑む光景ー

そして、明日香になった草薙は、
カードを現実化させる力を使って、
草薙を追い詰めていくー

”お前には、その光景を現実にする力を授けた。”

「---!?」

”勝て。女の身体を人質にすれば
 お前の宿敵は攻撃すらできない。
 勝て。克て!かてぇぇぇ”

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はっ…!」

草薙が、我に帰ると、
そこは、赤馬とのデュエルに敗れた場所だった。

「---…」
草薙は、自分のデッキに眠っていた
”サンダーボルト”のカードを手にするー

すると、それが、”現実化”し、
周囲に雷が降り注いだー。

”そう、それが、お前に授けた力ー”

緑色の生命体の声が聞こえる。

”カードを現実化させる、リアルの力だ”

「--す、、すげぇ」
草薙は笑みを浮かべた。

この力があれば、確かに、赤馬を倒すこともできるだろう。

「---くくく」
草薙は、闇に堕ちたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「--おはよう、草薙くん。朝早くにこんなところに
 呼び出して、どうしたの?」

赤馬の彼女、明日香が
笑いながら校舎裏にやってきた。

「--やぁ」
草薙が胡散臭い笑みを浮かべながら言う。

「ーーー俺さ~、赤馬のやつに、
 カードで全然勝てないんだよな~
 昨日の戦いで100連敗だぜ」

草薙が苦笑いしながら言う。

「--ごめんね。赤馬くん、容赦ない性格だから…」

明日香が気まずそうに言うと、
草薙はにっこりと笑った。

「俺さ…ずっと赤馬に勝つ方法を考えていたんだけどさ…
 ようやく見つけたよ…」

「え?」
不思議そうに言う明日香。

怪しげな空気が流れる。

草薙はにやりと笑って叫んだ。

「こうすれば良かったんだー!」

草薙はそう言うと、
”憑依するブラッドソウル”というカードをかざした。

「---え」
驚いて目を見開く明日香。

目の前にいたはずの草薙が、
”憑依するブラッドソウル”の姿に変わったのだ。

「--君の身体を、貰うよ!」
ブラッドソウルになった草薙は、そのまま明日香の口に
突入した。

「うっ…あああああああああ!」
明日香が苦しそうに、その場に膝をつく

「や…やめて…!入って…こないでぇ!」
明日香が目から涙をこぼす。

苦しそうにもがく明日香。

明日香の悲痛な叫びは、
誰にも届かないー

この時間に、この場所に来る人間は
ほとんどいないからだー。

「ああ…あ…」
明日香は涙をぽたぽたとこぼしながら
膝をついたまま動かなくなってしまった。

「・・・・・くふ」
明日香が不気味な笑い声を発すると同時に
静かに立ち上がるー

「---やった」
両手を閉じたり開いたりしながら見つめる明日香ー。

「やった…この身体があれば…
 赤馬のやつに、絶対に負けない」

明日香の身体を奪った草薙は勝ちを確信する。

「あはは!あは!あはははははははは~!」

目に涙を浮かべたまま、
明日香は両手を広げて大笑いするのだったー

・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。

赤馬は、明日香の様子がおかしいことに気付く。
いつもは笑顔が絶えない明日香。

しかし、今日は一人で行動することが多く、
何かをブツブツ呟いているー

「---どうかしたのか…?」
赤馬は不安に思いながらも、
”調子でも悪いのか?”と思い、
明日香をそっとしておくことにしたー

明日香が、草薙に憑依されているなど
想像もせずにー。

放課後ー

明日香が颯爽と姿を消してしまう。
いつもは”一緒に帰ろ”と言って来たり、
何か用事がある場合でも、
声をかけてきてくれるー

それなのに、
今日は逃げるように明日香は帰ってしまった。

「---明日香」
赤馬は”こういう日もあるよな”と思いながら
下駄箱に向かうー

「--!!」
下駄箱には
”ワイト”
”さまよえる亡者”
”ドラゴンゾンビ”
”ワイトキング”
”マーダーサーカスゾンビ”

様々なカードが置かれていた。

そしてー

”明日香をワイトにしたくなかったら
 屋上に来い”

と汚い字で、書かれたメモが下駄箱に
投げ込まれていた。

「---この汚い字は…
 草薙!」

赤馬はそう叫ぶと、
下駄箱から引き返して、
屋上に向かうのだった…

屋上に辿り着くと、そこには、
明日香が立っていた。

「--明日香!」
赤馬は叫ぶ。

明日香は強い風で
紙とスカートをなびかせながら微笑んだ。

「---ふふふ」
明日香の笑みに赤馬は違和感を感じながら言う。

「---だ、大丈夫か?明日香!」

”明日香をワイトにしたくなかったら屋上に来い”

手紙にはそう書かれていた。
そして、あの汚い字は草薙の字だー。

しかし、ここに草薙はいない。

「---わたしは、大丈夫よ…くくく」
明日香が低い声で呟く。

「---あ、明日香?」
赤馬は明日香を見て不思議そうな表情を浮かべる。

「---赤馬くん…
 くくく、自分の心配をしたらどうかしら?」

明日香が舌を出して
凶悪な笑みを浮かべた。

「--!!」
明日香のは背後から、毒々しい色の煙のようなものが
浮かび上がる。

「---こ、これは…!」
明日香の背後から出てきた謎の物体には
見覚えがあった。

”憑依するブラッドソウル”

対して強くないモンスターカードだ。

「ぐふふふふふふ、
 俺だよ!赤馬!」

明日香と、憑依するブラッドソウルから
同時に声がする。

「--な、、その声は草薙!」

ノイズのかかった草薙のような声が
憑依するブラッドソウルから放たれた。

「--明日香ちゃんの身体は人質だぁ~」

明日香が自分を指さしながら笑う。

「うひゃひゃひゃひゃひゃ~!
 返してほしければ、わたしとデュエルしなさい!」

明日香がカードを手にして微笑む。

「ど、、どういうことだ!?明日香!草薙!」
赤馬は叫ぶ。

すると、明日香とブラッドソウルが同時に口を開いた。

「俺はなぁ、力を手に入れた!
 カードを現実化する力だ!
 その力で憑依するブラッドソウルになって
 明日香ちゃんに憑依したのさ~!

 ほら!明日香ちゃんの身体は俺の思い通りだ!」

「--ブラッドソウルの効果は好き勝手に憑依できる
 効果じゃないはずだ!」

赤馬が叫ぶと、明日香は笑う

「リアルの力には、実際の効果と違う効果を
 発揮するカードもあるらしいぜぇ~」

そう言って胸を揉み始める明日香。

「うふっ♡ あっ♡ あっ♡」

「貴様ぁ~!」

赤馬が叫ぶと、
明日香から飛び出していたブラッドソウルが明日香の中へと
消えていく。

「---ふふふ!この決闘は、
 デスゲームよ!
 わたしを殺すか!あんたが死ぬか!」

明日香がケラケラ笑いながら叫ぶ。

動揺する赤馬。

「わたしのターン!」
明日香が勢いよくカードを引く。

「明日香!やめろ!明日香!」
赤馬が必死に呼びかけるが、
明日香は聞く耳を持たない。

強風でスカートと髪が、ふわふわと
揺らされているー

明日香は笑みを浮かべながら
カードをかざした。

「--ファイヤーボール」

「!?」

赤馬は目を疑った。

相手のライフポイントを500削るだけのカード。

こんなカードでどうするつもりだ?

とー。

明日香の背後から、炎の玉が浮かび上がる。

「な…なんだと!?」
驚くと同時に、その玉が、赤馬に直撃した。

「ぐあああああ!」
赤馬は思わず、屋上の端っこに吹き飛ばされてしまう。

「あははははは!燃えろ!燃えろぉ!」
明日香が、嬉しそうに笑いながら叫ぶ。

「どうだ!?これが俺の手に入れた力だ!
 カードを現実化させる力!」

明日香が拳を握りしめて叫ぶ。

「この力があれば、明日香ちゃんの身体も
 思いのまま!
 そして、お前にデュエルで勝つこともたやすい!
 ひはははははは~!」

明日香が狂ったように笑う中、
赤馬は、痛みで悲鳴をあげる身体をなんとか
起こす。

「---う…うぅ…
 草薙…!自分が何をしているのか分かっているのか?」

赤馬は苦しみながら言う。

女子の身体に憑依して、
さらにはカードで人を痛めつけるなんてことが
あっていいはずがない。

赤馬はそう思いなが明日香の方を見た。

「--ふん、分かってるわよ」
明日香が髪をかきあげながら笑う。

「-お前をこの手で…
 この綺麗な手でぶっ殺してやる!
 くははははは!」

明日香はさらにカードを発動した。

”火炎地獄”

相手に1000ポイントのダメージを与え、
自分にも500のダメージを与えるカード。

屋上中に炎が巻き上がる。

「あはははははは!燃えろ!」
明日香が両手を広げて大笑いする。

「ぐああああああああっあ!」

あり得ないー
カードが現実化するなんてー

赤馬は、そう思いながら痛みに耐える。

自分のライフポイントが、
3500から2500に減って行く。

「---くひひひひひ…」
明日香も笑いながら炎に焼かれる。

制服の一部がやけて、
少し素肌が露出する明日香。

明日香のライフポイントは、これで3500になった。

「--お前のライフポイントが0になったとき、
 どうなるのかなぁ!

 あぁ…この身体が”やめて”って叫んでる!
 でも!今のわたしは、そんな叫びを無視して、
 赤馬くんを殺しちゃうの!うひひひひひっ!

 このデッキは”リアルデュエル”のために
 作ったデッキなんだから!」

明日香は笑いながら、さらにカードをかざす。

「ご隠居の猛毒薬!」

自分が回復するか、
相手にダメージを与えるか。

選択できるカードだった。

「しねぇ!赤馬!」
明日香が叫ぶと、
毒薬がばらまかれて、
赤馬の身体に激痛を与えた。

「ぐっ…あ…!」

赤馬のライフが1700になる。

「--ふふ」
明日香は笑うと、
カードを1枚横向きで、
もう1枚をその後ろに縦向きでセットして
自分のターンを終えた。

「-さぁ、あんたのターンよ!」
明日香が叫ぶ。

「お、、俺のターン!」
赤馬が立ち上がってカードをドローする。

明日香はニヤっと笑う。

「---あんたに…わたしを攻撃できるかしら!
 ふふふ…
 攻撃すれば、苦しむのは、わ・た・し!
 うひひひひ!あはははははははは~!」

声がかれそうなほど大声で叫ぶ明日香。

その瞬間、明日香は縦向きにセットしていたカードを開いた。

「罠カード・仕込みマシンガン!」

このカードの効果により、赤馬はさらにダメージを受ける。
マシンガンの銃弾が、赤馬に直撃し、
赤馬は激しい激痛に悶えくるんだ。

赤馬のライフは残り500。

「--ふん。明日香ちゃんの身体は俺が
 有意義に使ってやる!
 お前は、俺に倒されて…死ね!」

明日香が笑うー

その様子を上空から
謎の緑色の生命体が見つめていた。

”くくく…愚かな人間よ。
 我が思念で、憎しみを増幅された
 あの男は、容赦なく、友人の
 息の根を止めるだろう”

緑色の生命体は不気味な笑みを浮かべた。

明日香は腰に手を当てて
余裕の表情を浮かべる。

この、裏側にセットした
モンスターカードは、
”マシュマロン”

昨日、赤馬に使われたカードだ。

このモンスターを攻撃したとき
”マシュマロン”の効果により、
赤馬は1000ポイントのダメージを受けて
”敗北”する。

「くくく…」
明日香は勝ちが決まったこの状況に
凶悪な笑みを浮かべた。

「くっそ…」
赤馬は、明日香のフィールドを見つめた。

赤馬のデッキはロックデッキだった。
守って守って、相手のライフを
削って行くタイプのデッキ。

だからー
相手を一撃で仕留めるのは難しい。

この状況からの逆転…。

方法はない…。

次のターン、ほぼ確実に明日香、
いや、草薙は何らかの方法で
自分にトドメを刺しに来るだろう。

腰に手を当てて、自信満々な表情で
悪い笑みを浮かべている明日香。

もしも負けたら、
明日香はどうなるー

いや、例え勝利したとしても、明日香は…。

赤馬は困惑の中、
明日香を見つめる。

明日香の背後に
”憑依するブラッドソウル”の姿が浮かび上がっていたー。

草薙が何らかの方法で、カードを現実化させる力を
手に入れたー。

そして、その草薙が憑依するブラッドソウルという
モンスターに変身し、明日香に憑依している。

「リアルの力には、実際の効果と違う効果を
 発揮するカードもあるらしいぜぇ~」

明日香の言葉を思い出す。

「もしかしたら…」
赤馬は手札にあった1枚のカードに可能性を見出した。

それはー

”融合解除”

ーそして、

”ライト二ングボルテックス”の2枚だった。

草薙に憑依されている明日香が
どういう扱いなのかは分からない。

けれどー
やってみるしかないー

「---…って」
赤馬は舌打ちした。

リアルデュエリストの力を持っているのは
草薙だけ。
自分がカードを発動しても、
本来の効果を発揮するだけだろう。

相手デュエリストに憑依した人間を
どうこうできるカードなんて、存在しないー

「くそっ…」
赤馬の目の前に”絶望”の二文字が浮かび上がる。

その時だったー

”諦めるな”

謎の声が聞こえた。
赤馬が驚いて、振り返ると、
そこには、白い人型の小さな生命体が居た。

「---お前は」
赤馬が驚いて尋ねると、白い生命体は言った。

”悪意を、打ち払え”

白い生命体から光が放たれて、
赤馬にその光が宿る。

「これは…!?」

”リアル・デュエリスト。
 君にカードを現実化させる力を与えたー

 その力で、彼女にー
 いや、彼女に巣食う、邪悪を、倒せ!”

白い人影はそう言うと、
赤馬を見て頷いた。

「早くしてくれるかしら!?」
明日香が挑発的に叫ぶ。

「---どうなるか分からねぇけど…
 やってみるしかないか!」

赤馬が叫ぶ。

そして、カードを発動した。

”融合解除”

「---はぁ?」
明日香が笑う。

「--わたしのフィールドに融合された
 モンスターなんていないんだけど?
 赤馬くん?
 わたしを舐めてるのぉ~?ふふふふふ」

「違う!」

赤馬は叫んだ。

「融合を解除するのはー
 お前だ!」

赤馬は明日香に指をさした

「えっ!?なにっ!?」

謎の渦がフィールドに現れる。

そして、渦から激しい光が放たれた。

「きゃあああっ!」
吹き飛ばされる明日香ー。

明日香はそのまま気を失ってしまう。

「--お、、おのれぇええええ!」
明日香の中から、憑依されるブラッドソウルが出てきた。

「---ラ…」
赤馬は”ライト二ングボルテックス”のカードを発動しようとして
その手を止めた。

このカードを使ったら、草薙はどうなる?

そう思ったからだ。

しかしー

「---くっそおお!明日香ぁあああ!もう一度その身体を!」
憑依するブラッドソウルが再び明日香の方に向かう。

「やめろおおおおおお!」
赤馬はそう叫ぶと、
”ライト二ングボルテックス”のカードを発動した。

上空から雷が降り注ぐ。

「----!?」
草薙は驚いて上空を見上げる。

”くそっ!役立たずがー”

草薙に憑りついていた緑色の小さな生命体が
草薙から飛び出す。

「---ちぃっ!」
草薙は、闇の瘴気を飛ばして、
憑依するブラッドソウルのカードそのものを破壊した。

草薙の姿を変えていたカードが破れたことで、
草薙が人間の姿に戻る。

雷は、”モンスター”ではなくなった草薙を直撃することなく、
そのまま鳴りやんだ。

「はぁ…はぁ」
草薙はその場に膝をつく。

「---明日香!」
赤馬は、倒れた明日香の方に近づく。

「---う…赤…馬くん」
明日香はそれだけ言うと、小さく微笑んだ。

無事だー。

「--草薙!貴様ぁ!」
赤馬が叫ぶと、草薙は動揺した様子で言う。

「お…俺じゃない…俺は…アイツに、そそのかされて」
草薙の言葉に、赤馬は叫ぶ。

「アイツだと!?」

草薙が指さした方向には、
緑色の小さな生命体が居た。

「---くくくく…
 人間は愚かなモノだな。
 力を与えれば簡単に欲望に溺れる」

それだけ言うと、緑色の生命体は姿を消した。

「今のは…」
赤馬が、緑色の生命体のいた場所を見つめて呟く。

既に、その生命体はいないー

”---巻き込んで、すまなかった。忘れてくれー”

赤馬にリアルデュエリストの力を与えた
白い生命体は、そう呟くと、
赤馬から、光を吸収して、そのまま消滅した。

「--!!」
赤馬が試しにマシュマロンのカードをかざしてみるー

しかし、それが”現実化”することはなかった。

「す…すまねぇ」
草薙は、自分のしてしまったことを後悔し、
心からの謝罪の言葉を口にした…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”どうだった?”

緑色の生命体の背後から、
謎の紫色の生命体が姿を現すー。

”案外、ちょろそうだぜ。人間ってものは”

緑色の生命体が答えると、
紫の生命体は笑みを浮かべるー。

”負の感情を持つ人間に、
 リアル・デュエリストの力を与えろー。
 それだけで、人間たちは、勝手に破滅する”

紫の生命体がそう言うと、
緑色の生命体”御意”と呟いた…。

”ククク…次も楽しみだー”

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

久しぶり(?)のリアルデュエリストでした!
憑依するブラッドソウルさんは、
この世界ではプレミア化しているとの噂も…笑

お読み下さりありがとうございました~!

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